特集 2015年12月18日

IoT三兄弟の「IoTかわら割り」

押忍! 俺たちIoT三兄弟。長男・林雄司、次男・住正徳、三男・よしだともふみ。血のつながりはない。IoTで繋がっている3人である!
押忍! 俺たちIoT三兄弟。長男・林雄司、次男・住正徳、三男・よしだともふみ。血のつながりはない。IoTで繋がっている3人である!
今回、我々は空手のかわら割りに挑戦しようと思う。しかし、我々のような素人がかわら割りに挑むのは危険である。IoTでかわらが割れる装置を開発することにした。そして、その装置を大勢のお客さんの前で披露する機会をいただいた。果たして、「IoTかわら割り」はうまくいったのか? その顛末をご報告させていただこう。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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これがIoTかわら割り装置だ

まずは、IoTかわら割りを見ていただきたい。
長男が拳を振り下ろすと離れた場所に置かれたかわらが割れた。これが、IoT三兄弟の「IoTかわら割り」である。これなら、空手道場に通ってつらい修行を積むことなく、誰でも簡単にかわらを割ることができる。
いつものように、装置の開発は三男のよしださんが担当した。

その仕組みを解説しよう。

まず、IoTでかわらを割るにはボクシンググローブを装着する必要がある。空手なのにボクシングのグローブを使う。三男の空手リテラシーの低さがうかがえるが、グローブをつけた拳でパンチを繰り出すとグローブから信号が送られる。かわら側にはその信号を受信する装置が仕込まれていて、受信と同時にかわらを支えるストッパーが外れる。支えをなくしたかわらは下に落ちるが、もともと二つに割れているのでその場で割れたように見える。
グローブとかわらを支えるストッパー
グローブとかわらを支えるストッパー
もともと二つに割れているかわらをストッパーで支える格好でセットする
もともと二つに割れているかわらをストッパーで支える格好でセットする
かわらを支えるストッパー
かわらを支えるストッパー
自ら装置を試す三男
自ら装置を試す三男
この仕組みによって、IoTでかわらを割ることができるのだ。

実際に体験していただくと分かるのだが、これがとても気持ちいい。空手の達人になったような気分を味わうことができる。

ただし、パンチを判定する発信機側の感度調整が難しいという一面もあり、判定基準を厳しく設定すると次のようになってしまう。

なんども拳を振り下ろす長男、ビクともしないかわら。思わず「そんなの関係ねえ」とアテレコしたくなる光景だ。

このように判定基準が厳しいとかわらが割れないのだ。逆に緩めに設定してしまうと、手を振り上げた瞬間にかわらが割れてしまう。ちょうどいい設定にたどり着くまで、長男は何度も何度も「そんなの関係ねえ」を繰り返していた。

AR三兄弟からの招待状

長男の努力の甲斐もあり、「IoTかわら割り装置」のちょうどいい設定もみつかった。これで、今回のミッションの半分はクリアしたことになる。残りのミッションは何か?

「AR忘年会で、宴会芸を披露してください」

AR三兄弟からの招待状である。

AR忘年会とは、毎年12月に開催されるAR三兄弟のイベントで、AR三兄弟の1年間の活動報告やゲストによる余興などで構成される楽しい忘年会である。140名からのお客さんが入る人気イベントだ。そんな場所で、我々IoT三兄弟がゲストとして宴会芸を披露することになったのだ。

我々が「IoT三兄弟」を名乗って約3か月。なかなか挨拶にうかがう機会がないまま、AR三兄弟の方から招待されてしまった。AR三兄弟、長男の川田十夢さんの懐が深いのか、それともこれはトラップなのか。行ってみないと分からないが、我々は「IoTかわら割り装置」で勝負に出ることにした。
AR三兄弟、長男の川田さんから招待状が
AR三兄弟、長男の川田さんから招待状が
AR忘年会で我々に与えられた枠は10分間。遠隔かわら割りをメインに据えた当日の出し物を考えた。

1. 挨拶
2. かわら割りの前に板の試し割り
3. 過去作品のご紹介
4. IoTかわら割り披露

2番目の板の試し割りは、何の装置も使用せずに拳だけで板を割ってみせるという余興である。冒頭で我々の力を見せつけて、一気にその場の空気をつかむ作戦である。空手ショップで試割板も購入しておいた。
空手ショップで購入した試割板
空手ショップで購入した試割板
「怪我などの発生事故についての弊社の責任は一切無いものとさせていただきます」
「怪我などの発生事故についての弊社の責任は一切無いものとさせていただきます」
お客さんの心をつかめるか否か。それは、板の試し割りにかかっていると言っても過言ではない。そんな重責を負うのは、次男の僕である。

できれば、3、4枚の板を一気に割ってみせるくらいの勢いが欲しいが、まずは1枚から試してみた。
これで僕は拳を痛めてしまった。具体的に言うと、薬指と小指の付け根の辺りが痛くて仕方ない。かろうじて指は動くから、骨折はしていないようだが、後から腫れるということも考えられる。レントゲンの必要があるのではないか。

協議の結果、板の試し割りはやらない方向で話はまとまった。

10分間もたすことができるのか? 不安を抱えたまま、AR忘年会「渚のバックトゥーザAR忘年会2015」の会場へ向かった。

気分は道場破り

余興では、3人お揃いの空手着を着用することにした。AR三兄弟のイベントにゲストとして空手着で参加する。気分はまるで道場破りだ。「たのもう!」と大きな声を出したい。
イベント会場の楽屋で談笑するIoT三兄弟
イベント会場の楽屋で談笑するIoT三兄弟
イベント開始までにはまだ時間がある。長男が書いた脚本をもとに、10分間の流れを確認する。

冒頭の挨拶は次のような感じだ。
「3人:おす!
林:おれたちIoT三兄弟だ
林:長男・林雄司
住:次男・住正徳
よしだ:三男・よしだともふみ
3人:おす!

林:きょうはIoTかわら割りを披露したい
3人:おす!」
長男はこのテイストで10分間押し切ると言っている。大丈夫だろうか? 僕のセリフは基本的に「おす」だけなので、気持ち的には楽であるが、これがAR三兄弟のファンの人たち通用するのかどうかは分からない。

そして、AR忘年会は定刻通りに始まった。
司会はSCHEMAの志連博彦さんと橋本健太郎さん
司会はSCHEMAの志連博彦さんと橋本健太郎さん
まずはAR三兄弟の活動報告から
まずはAR三兄弟の活動報告から
それを見つめるIoT三兄弟
それを見つめるIoT三兄弟
ゲスト1組目、ヒューマンビートボックスのすらぷるためさん
ゲスト1組目、ヒューマンビートボックスのすらぷるためさん
それを見つめる長男と次男
それを見つめる長男と次男
ヒューマンビートボックスのすらぷるためさんの芸がすごい。自分の声を楽器にしてあらゆる種類の音をビートに乗せて繰り出してくる。こんなすごい芸の後に、「おす!」でやり切る10分間。舞台袖で待つ我々には不安しかない。

すらぷるためさんのステージが終わり、次はいよいよ我々の出番である。

川田さんから呼び込まれ、我々IoT三兄弟は舞台に立った。

そして、IoTかわら割りは拍手喝さいを浴びた

ここからは、長男が書いた脚本をベースに、我々の10分間を紹介しようと思う。

舞台に登場してすぐ、前述の挨拶をこなした。
IoT三兄弟参上。挨拶をこなす
IoT三兄弟参上。挨拶をこなす
挨拶の後、板の試し割りの代わりになる出し物を披露した。題して、IoT板割りである。
「(住・よしだが下手に移動)

よしだ:(突く)
住:(板が割れる)
(板をもちあげて見せる)
よしだ:(突く)
住:(身体がへこむ)
「もどしてくれ」
よしだ:(突きを戻す)
住:(身体が元に戻る)
よしだ:(突く)
住:(へこむ)
この繰り返し

林:茶番やめ!

3人もとの立ち位置にもどる
3人:おす!」
本当はすでに割れている板
本当はすでに割れている板
三男がIoTで割った
三男がIoTで割った
という茶番
という茶番
IoTで次男の体も折れる、という茶番
IoTで次男の体も折れる、という茶番
続いてはIoT三兄弟、過去の作品ご紹介のコーナーである。スライドショーとともに、引き続き空手口調で紹介していく。
「林:かわら割りの本番のまえに、我々の作品を紹介したい
3人:おす
林:スライド・オン。
林:これは対岸のテレビのチャンネルがかえられるリモコンである。
よしだ:遠距離のテレビを操作できるのである。
住:できるのである。

3人:おす!

林:次のスライドだ
林:これはひもを引っ張るとiPhoneのシャッターが切れる帽子である。
よしだ:背景をまだらにしたので3人が帰国子女のように見えるのである。
住:帰国子女である。

3人:おす!

林:最後はピジョナイザーZ!
林:ハトの視界をIoTで再現したメガネである。これをかぶるとハトのように首を前後に動かしてしまうのである。
林:次男、用意。

住:おす!(ピジョナイザーを付けてハトのようにして歩きはじめる)

林:ハトは首を前後に振ったほうが見やすいのである!

3人定位置に戻る

3人:おす!」
セルフィ帽のご紹介
セルフィ帽のご紹介
ピジョナイザーZの演舞
ピジョナイザーZの演舞
ここまで、長男の空手口調はバッチリと会場の雰囲気にはまり、大いに盛り上がっている。

場も温まり、いよいよ「遠隔かわら割り」を披露する時がやってきた。

「林:ではいよいよIoTかわら割りである!

(よしだ・住 準備を始める)

林:準備はもういいか?

よしだ・住:おす!

林:IoTかわら割り!1回のみなのでよく見るように!
よしだ:(拳を下ろす)
(瓦が割れる)
住:(驚いて倒れる)

3人定位置に戻る

3人:おす!
林:IoT三兄弟でした!メリークリスマス!」
IoTかわら割り、披露!
IoTかわら割り、披露!
大成功!
大成功!
我々IoT三兄弟の「IoTかわら割り」は大成功を収め、140名のお客さまから拍手喝さいを浴びた。

ステージに上がる前は長男の書いたシナリオが不安でならなかったが、10分間やり切ったことで、 IoTと空手がいいケミストリーを生み出したのだと思う。
本番前、難しい顔をして脚本を書いていた長男
本番前、難しい顔をして脚本を書いていた長男
こうして、我々のミッションは無事に終了した訳だが、僕には一つだけ不満がある。

長男が書いたシナリオには、3人で「おす」と言う場面が多かったのだが、本番中、「おす」とちゃんと言ってたのは僕だけだったのだ。それを次回以降の課題として、長男と三男に伝えたい。

AR三兄弟さんたちのご厚意で、我々は多くのお客さまの前で「IoTかわら割り」を披露することができた。ありがとう、AR三兄弟。招待はトラップなのでは、と疑ったりしてごめんなさい。これからもIoT三兄弟を宜しくお願いします。
出演者全員で記念撮影
出演者全員で記念撮影
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