特集 2016年1月8日

死なないで!ベトナムの道路の渡り方・七ヶ条

死なないで!ベトナムの道路の渡り方・七ヶ条
死なないで!ベトナムの道路の渡り方・七ヶ条
道路を渡るとき、あなたは覚悟を必要としますか?

ベトナムは、要る。

なぜなら? 信号が無いからです!!
1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

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ハードすぎるベトナムの道路横断

いや、いきなりちょっと言い過ぎた。
信号が無いことはない、ただ歩行者信号がすごく少ないのです。

それはつまり、ベトナムの道路を渡るときに車とバイクが行き交う中に突っ込んでいかなければならないということ。論より証拠! こちらをご覧ください。
ある昼下がりのホーチミン市。
ある昼下がりのホーチミン市。
笑っていますが、恐る恐る渡っています。
一体何をしているの?と言われるとその疑問はもっともで、これは友人の結婚式で流したビデオです。踊っている事情は「Happy YouTube」あたりで検索してもらうとして、ベトナムらしいシーンは何かなと思ってこの状況を選びました。

そもそもベトナムは一家に一台というくらいのバイク社会で、子どもが小学生くらいであれば一家5人がバイク一台で移動している光景も珍しくありません。街中の実態を見ている限りだと、ベトナム社会的に大人3人はNGだけど大人2人に子ども3人までならOKですよ、みたいな印象です。あくまで印象。
こちらは大人一人に子供三人の場合。
こちらは大人一人に子供三人の場合。
こちらは大人二人に子供二人の場合。身体の大きさによって位置を調整する。
こちらは大人二人に子供二人の場合。身体の大きさによって位置を調整する。
そのためか、交通環境は都市部でさえも車両優先ということが常識。歩行者信号の数が少なけりゃ、道路の舗装だってバッキバキに壊れたままのことも多い。
バッキバキに壊れた舗装。
バッキバキに壊れた舗装。
通勤ラッシュ(上)と帰宅ラッシュ(下)、これ並べた意味あんまりないな。
通勤ラッシュ(上)と帰宅ラッシュ(下)、これ並べた意味あんまりないな。
この通り、ベトナムの道路横断はハードすぎるのだ。

そんな訳で、観光客にしろ、在住者にしろ、「危ないから」という理由によって頑として渡らない人も多い。それは極々自然な選択肢かもしれない…しれないんだが!勇気を出して渡ってみれば、世界はグググイーッと広がるんですよ!

そして、YouTubeで「how to cross vietnam」と検索すると、出るわ出るわベトナムの道の渡り方を教えてくれる欧米人の皆さま。危険であることには変わりません!が、これはこれでベトナムが代表する「裏コンテンツ」には違いない。

そこで今回は、ベトナムの道路横断のハウツーをご紹介したいと思います!長い人生、ベトナムに来るやかもしれません。今読んでおいて損はありませんぞ。

守って楽しもう!ベトナム道路横断七ヶ条

レクチャーするならこちらに来て日の浅い人がいいということで、在越一ヶ月以内の二人に来てもらいました。
住み始めて三週間の榎本くん(左)、一ヶ月の小暮さん(右)です。
住み始めて三週間の榎本くん(左)、一ヶ月の小暮さん(右)です。
私 「へーい!横断してるかい!?」
二人「あんまり意識してません!」
私 「だよね!」

まず前提として、ベトナムのバイクは避ける技術がものすごく高い。それは車両にしろ歩行者にしろ、信号を守ったり守らなかったりするため、対応の高さに直結しているから。「赤・黄・青」が「橙・黄・黄緑」になっている感じ。このニュアンス、分かってもらえるだろうか。その上で暗黙の了解があるのです。

私「その暗黙の了解、道路横断七ヶ条がこれだー!」
其の一:次の停止まで待て、死ぬぞ。
其の二:急に走らない、死ぬぞ。
其の三:後ろに下がらない、死ぬぞ。
其の四:運転手とアイコンタクト、しないと死ぬぞ。
其の五:ハンドパワーが使えます、使わないと死ぬぞ。
其の六:車の進行方向だけに気を取られるな、死ぬぞ。
其の七:車に逆らうな、死ぬぞ。
「じゃ、説明していくよ!」「死亡確率高すぎじゃないですかね」
「じゃ、説明していくよ!」「死亡確率高すぎじゃないですかね」
実際は死にません…多分!

其の一:次の停止まで待て
!
私「車が止まっていたとして、渡るでしょ?」
榎「はい」
私「実は、車用の信号が青色に切り替わる5秒前だったりで、歩行横断中に車が走りだすことがよくあるのよ」
榎「あー」
私「そうなっても慌てずにゆっくり進んでりゃいいというか、其の二以降はそのときの渡り方の話なんだけど、安全・確実に渡りたいなら次の停止まで待つことだね」
榎「でもいつ止まるか分からないですよね?」
私「大体、45~60秒で切り替わるから、それまで待つ。当然、歩行者信号があればそれを守ってね、だからといって車が走ってこないとは限らないけど
ベトナムの車両信号。歩道からはかなり見づらいから、とにかく最大60秒待つ。
ベトナムの車両信号。歩道からはかなり見づらいから、とにかく最大60秒待つ。
ベトナムの歩行者信号は日本と大差なし、でも数が本当に少ない。
ベトナムの歩行者信号は日本と大差なし、でも数が本当に少ない。
其の二:急に走らない
!
私「日本人やアジア圏の観光客の方に多い気がするんだけど、車が走っていないタイミングを見計らって走る」
小「車が走ってないのだったらいいですよね?」
私「いや、道路を走るなんて最も死に近い行為だよ」
小「最も死に近い行為…!
私「道路には結構な数のネズミが死に晒してるんだけど、あいつら急に走った結果そうなってるからね」
小「さっきから死ぬ死ぬ言いまくってませんか」
私「急に走らないってのは歩行者と車両との間の暗黙の了解みたいなもので、これだけは破っちゃダメなんだ」

其の三:後ろに下がらない
!
私「これも暗黙の了解のひとつだね」
小「運転手も歩行者が後ろに下がると思ってないと」
私「うん。歩行者の背後から50cm先は弾幕、銃弾の代わりに車両が飛び交ってると思って歩いた方がいい」
小「横断歩道は戦場ですか…」
私「3歩踏み出したらもう先に進むしかないと思って!どうしても下がりたかったらゆっくり方向転換ね、そうしたら車側も進行方向はすごい警戒してくれるから」
運搬バイク。右上はどこでもドアか。
運搬バイク。右上はどこでもドアか。
其の四:運転手とアイコンタクト
!
私「眼力は通じるんだよ」
榎「?」
私「ベトナムの道路では通じるんだよ、『渡るぞ、俺は渡るぞ、だからお前は速度を落とせ』って念じて見つめつづけると、本当に速度を落としてくれるもんでさ」
榎「車であってもですか?」
私「うん、案外」

其の五:ハンドパワーが使えます
!
私「ここまで話してきた内容だとさ、横断中に手を出したところであんまり意味が無いって思うでしょ?」
小「まぁ…そうですね」
私「意味、あるんだよ!大体、実際の手のサイズの、5倍くらいのテリトリーには車は近付いて来ないから!まさにハンドパワー気分だよ。手品じゃないけど」
小「そんなものなんですか!」
私「運転手も無意識に、歩行者の動きに集中しているんだろうね。だから本当に近づくなー!って時は手を出して。上に挙げるんじゃなくて、制止する感じで前に突き出すのよ」
ハンドパワーを使っている決定的瞬間を捉えた写真。
ハンドパワーを使っている決定的瞬間を捉えた写真。
こんな中を歩いてますからね!
こんな中を歩いてますからね!
其の六:車の進行方向だけに気を取られるな
!
私「一車線分を渡るときは、基本的に左右どちらかの方向からしか車もバイクも走ってこないものなんだけど」
榎「それはそうですね」
私「常に、逆方向への警戒も怠らないこと」
榎「どうしてですか?」
私「逆走してくるから
榎「ひぃ…」

其の七:車に逆らうな
!
私「車、とくにバスやトラックには逆らうな。というより、とにかく絶対に近づくな!です」
小「危ないんですか?」
私「無論!ベトナムの道路においては大きければ大きい車両ほど態度が横柄だと思った方がいい。内輪差もあるから、とにかく近付かない。バスやトラックが近付いて来たら絶対に進行方向には立たないでね、問答無用に迫ってくるから。側面からも、最低2mは距離を取って一時停止してほしい」
小「ひぃ…」


以上、七ヶ条でした。
こんなに書けるものなんだ、と自分でも驚いています。

欧米人観光客の背中にアベンチャーズを見た

私「じゃ、やってみようか!」
二人「はい!」

私「今の時間帯は穏やかだから平気だよ」
榎「まるで漁師みたいなこと言いますね」
私「お!ちょうど先客がいるから見てみよう」
タイミングを見計らう欧米人カップル。
タイミングを見計らう欧米人カップル。
動き出し…って、んん!?
動き出し…って、んん!?
めっちゃ増えた!!
めっちゃ増えた!!
そうか、誰か渡る機会を後ろから狙っていたんだな!!
それにしても…なんていうか……。
それにしても…なんていうか……。
「アベンチャーズ」みてぇ、観たことはないけど。
「アベンチャーズ」みてぇ、観たことはないけど。
こうして6人も横に並べられたらなんだかやたらとかっこよく見えてしまって、「アベンチャーズ」というアメコミヒーローが湯水のように出てくる映画を思い出した。思い出したと書いたが、観たことはないのです。なんだなんだ、ただ道を渡っているだけなのにズルいぞ欧米人。
念のため補足しておきますが、
念のため補足しておきますが、
この人達は3ペアずつ他人同士です。
この人達は3ペアずつ他人同士です。
他人だけども、道を渡るときだけは語らずとも協力体勢に入るということか。かっこいいなそれ。「他人と一緒に渡るべし」ということもひっそりと其の八に加えよう。

僕らもそろそろ渡りましょう

さぁ、そろそろ渡ろう! レッツ、トライ!
緊張の瞬間…!
緊張の瞬間…!
ザッ!
ザッ!
…。
…。
ん?
ん?
おぉ!
おぉ!
車に対して手前に男が立つということか!紳士、紳士だねそれ!「横断道」(武士道的な意味合い)的に正しいよ!そんなものはないけど、正しいよ!
あとは流れで。
あとは流れで。
二人「到着ー!」
二人「到着ー!」
バス「ブワァー!」私「ビクッ!」
バス「ブワァー!」私「ビクッ!」
私「で、どうだった?」
小「ちょっとずつ渡るのでゲームみたいでした!」
私「そうだろうそうだろう!」
榎「向こうから避けてくれるので十戒みたいでした!」
私「そうだろうそうだろう!」

と、勇気を出して渡ってみれば、意外に轢かれないベトナム道路横断。とはいえ、見えないタブーは確かにあるので、くれぐれもお気を付けた上でお楽しみください!

ベトナム人は横断下手=北海道県民は寒さに弱い!?

今回の取材についてベトナム人の友人に話したところ、「外国人の方がベトナム人より渡り方が上手いと思う」という発言が飛び出した。突っ込んで聞くと、ベトナム人は昔からバイク移動なので、自らの足で道を渡ることに慣れていないという。その状況って何かに似てるな。あ、そうだ、まるで「北海道県民が寒さに弱い」ってやつだ。沖縄県民が暑さに弱いでもいいけども。いずれにせよ、今回の七ヶ条を思い出しながら是非とも現地でチャレンジしてほしい。そして、最後にもうひとつ付け加えるなら、「考えごとをしながら渡ると、死ぬ」。
最後に他人のYouTubeで締めるのもなんだが、道の渡り方を教えてくれる欧米人のおねーちゃん。他にも動画はワッサワッサありました。
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