特集 2016年1月14日

野菜ジュースのパッケージを飲む~親切な八百屋さんのはなし~

野菜ジュースのパッケージ通りに、野菜を集めてみました。
野菜ジュースのパッケージ通りに、野菜を集めてみました。
野菜ジュースのパッケージはいい。
色とりどりの野菜がぎゅっと集まって誇らしげにこちらに微笑みかけている、お馴染みのあれである。
満を持して、いよいよ集まりました、という特別感がある。
あれを飲んでみたいと思うのだ。

シンプルな試みだが、うまくいかずに落ち込んでいるところをある八百屋さんに助けてもらったりする。
水戸黄門の登場を今か今かと待つような気持ちでお読みください。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:スターバックスを日高屋風にする


野菜生活のパッケージ

野菜ジュースのパケージには、もちろん野菜ジュースに使われている野菜が描かれている。
しかし使われたものがすべて載っているわけではないし、分量も実際とは異なるだろう。
見た目を良くするためにデフォルメして描かれているのである。
その楽しげなイラストはどんな味がするのか、確かめてみたいと思うのだ。
今回は、野菜生活のパッケージを飲んでみる。
今回は、野菜生活のパッケージを飲んでみる。
パッケージを見ながら野菜を集めてみた。
パッケージを見ながら野菜を集めてみた。
こうして実際に野菜を並べてみると、大きさのバランスがずいぶんパッケージと違うことに気がつく。
実物に触れて考えてみるとそりゃそうだよな、この大きさだよな、という説得力があるのだが、パッケージはパッケージで今まで違和感がなかったなあと思う。
不思議である。

そしてこれをミキサーにかけると、こうである。
こうなった。
こうなった。
…そりゃあまあ、そうなるでしょうなあ!とお思いかもしれない。
でも、野菜を集める前はこうなるとは思わなかった。
不思議なものである。

味の方も推してしるべし、という感じではあるが、その前にここに至るまでの経緯を記したいと思います。

野菜ジュース選び

まず、ぼんやりと楽しげでいいよなあと思っていた野菜ジュースのパッケージを、しっかり観察してみる。
1日分の野菜。野菜が近い。
1日分の野菜。野菜が近い。
これも近い!迫り来る野菜。
これも近い!迫り来る野菜。
見覚えのない野菜が写り込んでいる。紫色のニンジン?
見覚えのない野菜が写り込んでいる。紫色のニンジン?
裏側までびっしりどアップの野菜。かぼちゃの断面って迫力がある。
裏側までびっしりどアップの野菜。かぼちゃの断面って迫力がある。
こちらはマンゴーだけおいしそうにカット。アセロラがかわいい。
こちらはマンゴーだけおいしそうにカット。アセロラがかわいい。
野菜生活。今までのものと比べるとずいぶん落ち着いて見える。
野菜生活。今までのものと比べるとずいぶん落ち着いて見える。

スーパーに行ってみる。

パッケージは野菜生活に決めた。
一番野菜がしっかり写っているし、なんとなく見たことあるものばかりだからだ。
側面に使われている野菜の一覧があるので分かりやすい。
側面に使われている野菜の一覧があるので分かりやすい。
野菜一覧に「ビート」という聞いたことのない野菜が載っていて一瞬ひるんだ。
しかし正面のイラストには描かれていなかったので一安心である。
(このビートには、また後に出会うこととなる。)

こんな感じであたりをつけたのだが、野菜が思うように見つからない。
普段スーパーに行かないので、どの野菜がどのくらい珍しいのか、今の季節どんな野菜が手に入りにくいかなどがよく分かっていないのだ。
赤じそらしき葉っぱがパッケージにあったのだが見つからない。ベビーリーフに入っていた紫色の葉っぱで代用することに。
赤じそらしき葉っぱがパッケージにあったのだが見つからない。ベビーリーフに入っていた紫色の葉っぱで代用することに。
真ん中の紫キャベツも見つからなかったので、同じ色の玉ねぎ、レッドオニオンで代用することに。
真ん中の紫キャベツも見つからなかったので、同じ色の玉ねぎ、レッドオニオンで代用することに。
パッケージ通り並べてみたのがこちらである。セロリや小松菜も見つからなかったので、全部ほうれん草で代用した。
パッケージ通り並べてみたのがこちらである。セロリや小松菜も見つからなかったので、全部ほうれん草で代用した。
野菜たちを水滴で濡らしており、パッケージに少しでも近づけようとする工夫が見られる。
赤じその代わりに買ったベビーリーフもちゃんと頑張っている。
赤じその代わりに買ったベビーリーフもちゃんと頑張っている。
ちなみにパッケージはこうである。大きさのバランスが異なるものの、楽しい色合いなどは再現されていると思う。
ちなみにパッケージはこうである。大きさのバランスが異なるものの、楽しい色合いなどは再現されていると思う。
で、いきなり全部切った。
で、いきなり全部切った。
ここから怒涛の失敗である。
コップ1杯飲めればいいのに野菜を全部切り(失敗①)、それをミキサーと間違えてフードプロセッサーでみじん切りにし(失敗②)、そもそもレッドオニオンを入れてしまっている(失敗③)。
みじん切りにしてしまった大量の野菜を何とか飲めるものにしようと鍋で煮込んでみたのだが、目にしみる煙がもくもく出てくる。

泣ける。
失敗②によって出た煙を失敗③が泣けるものとし、さらに失敗①によりそれを大量に出しているという構図である。
手と手を取り合って何をしようとしているのだ、失敗たちは。

失敗の様子もお見せしたかったのだが、野菜を切ってからはなんとか軌道修正しようと焦っていたらしく、1枚も写真を撮っていない。
必死で涙を流しながら鍋を見守っていたのだ。
目にしみる煙がたくさん出る理由の図。
目にしみる煙がたくさん出る理由の図。
結局スープのようにして1週間かけて飲んだ。
味は、人参8割、玉ねぎとレモンが1割ずつ、という感じであった。
くーっ、健康!!!という感じの味。
牛乳で割るとすこし飲みやすくなった気がした。
感じた味の割合。人参が強いのは、丸々2本入っていたからでしょう。
感じた味の割合。人参が強いのは、丸々2本入っていたからでしょう。
こんな顔しながら飲んだ。
こんな顔しながら飲んだ。
レシピはこちらになります。
レシピはこちらになります。

仕切り直しだ

仕切り直しである。
これは野菜ジュースのパッケージの味ではない。
なぜなら失敗したからである。
もう一度、野菜を代用せずに正しく集めて、ミキサーにかけて、コップ1杯分だけ作ればいいのだ。
必要な野菜を集めるために、八百屋さんを巡る。
必要な野菜を集めるために、八百屋さんを巡る。
しかしなかなか見つからない。
しかしなかなか見つからない。
なかなか見つからない。
赤じそと紫キャベツがないのだ。
この季節にはない野菜なのだろうか。
余談だが、野菜探しに訪れた商店街にあったレトロな雑貨屋さんで、
余談だが、野菜探しに訪れた商店街にあったレトロな雑貨屋さんで、
「地券」が売っていた。歴史の授業で出てくるやつだ。本物らしい。
「地券」が売っていた。歴史の授業で出てくるやつだ。本物らしい。
買った。裏側が権利書になっているらしく、所有者が変わっていく様子が分かる。
買った。裏側が権利書になっているらしく、所有者が変わっていく様子が分かる。

プロ、現る

地券は見つかったが赤じそと紫キャベツが見つからない。
どうしたものかと訪れた八百屋さんに紫キャベツらしきものが!
ヤオヤプラスさん
ヤオヤプラスさん
紫色だ!
紫色だ!
やっと見つけた!と思ってスタッフの方に店内の写真撮影の許可を取る。

快く許可を下さったのだが、何に使うのですか?とのことだったので、野菜ジュースのパッケージを飲みたいのだ俺は、という破天荒な自己紹介をしながら野菜生活のパッケージを見せた。
「探してるの紫キャベツですよね?あれ白菜ですよ。」
「探してるの紫キャベツですよね?あれ白菜ですよ。」
恥ずかしい!
そうですよね、白菜ですよね。そうですよね、どうしようかな…。
とまごまごしていると、

「全部集めときましょうか?明日まででいいですか?」

とのこと!
どうしても見つからなかった紫キャベツも市場へ行って仕入れてきてくれるらしい。
なんて、なんてフットワークが軽くて器の広いプロなんだ!
大喜びして甘えてしまった。
オーナーがイラストを見て、なんの野菜か考えてくれた。
オーナーがイラストを見て、なんの野菜か考えてくれた。
オーナーは「こんな大きいニンジンないよ」「これ、素人が描いたな」などと言いながらも真面目にパッケージを見てくださった。
確かにキャベツより大きいニンジンは見たことがありません。

しかし、野菜のプロが、その大きな手で小さな野菜ジュースを抱えてうなっている。
頼んでおいてなんだが、奇妙な絵面である。
女性のスタッフの方が、パッケージを見ながらメモをしてくれた。
女性のスタッフの方が、パッケージを見ながらメモをしてくれた。

ヤオヤプラス

今回このようなきっかけでご協力いただいた、東京都品川区にある八百屋さん、ヤオヤプラスでは普通のスーパーにはないような珍しい野菜を買うことができる。
探している野菜があれば、店頭になくても市場から素早く仕入れて、小売をしてくれる。
野菜好きにはたまらない八百屋さんみたいである。
決して広くない店内だが、色々な野菜が所狭しと並んでいる。眺めていてもとても楽しい。
決して広くない店内だが、色々な野菜が所狭しと並んでいる。眺めていてもとても楽しい。
ニンジンに葉っぱが付いているだけでなんだかテンションが上がる。
ニンジンに葉っぱが付いているだけでなんだかテンションが上がる。
このカゴに入っているものは、なんと全部大根だそうです。
このカゴに入っているものは、なんと全部大根だそうです。
そのうちの一つ、黒丸大根。普通の大根より辛味が強いが、焼くと辛味が抑えられて、レンコンのようなぽくぽくした食感になる、とのこと。
そのうちの一つ、黒丸大根。普通の大根より辛味が強いが、焼くと辛味が抑えられて、レンコンのようなぽくぽくした食感になる、とのこと。
確かにジューシーなレンコンという感じでおいしかった。塩を振って焼いて、七味をつけて食べた。
確かにジューシーなレンコンという感じでおいしかった。塩を振って焼いて、七味をつけて食べた。

トキイロヒラタケ

翌日、集めてくださった野菜を買いに再びヤオヤプラスへ向かう。
夜のヤオヤプラス
夜のヤオヤプラス
集めてもらった野菜を確認する。
集めてもらった野菜を確認する。
ついでに、珍しい野菜を色々紹介してもらった。
ビート。野菜生活の側面に載っていて、これはなんだと疑問に思っていた野菜。邂逅!
ビート。野菜生活の側面に載っていて、これはなんだと疑問に思っていた野菜。邂逅!
ビートはカブの仲間で、ビーツとかビートルートなどとも呼ばれている。
カブと同じように料理に使っておいしく食べられる。
ヤマブシタケ。中華料理の四大山海珍味の一つで、脳の神経に良い物質が入っているキノコ。
ヤマブシタケ。中華料理の四大山海珍味の一つで、脳の神経に良い物質が入っているキノコ。
とてもいいものなのだと思うが、何しろキノコなので、説明の言葉が怪しげに響く。
ビートとヤマブシタケでコンソメスープを作ってみた。
ビートとヤマブシタケでコンソメスープを作ってみた。
ビートから出た赤い何かを吸ったヤマブシタケがすごいビジュアルになったが味はおいしかった。ビートはさっくりとした食感のカブ、ヤマブシタケは噛みごたえのあるシイタケ、という感じ。

このビジュアルに反しておいしいので、ヤンキーが子犬を助けた時のように、ビートとヤマブシタケの好感度が跳ね上がってしまった。
こうしてかわいい女子はヤンキーと付き合うのか!
なるほど!
そしてこちらである。トキイロヒラタケ。
そしてこちらである。トキイロヒラタケ。
サーモンの切り身かと思うくらい鮮やかなピンク色をしたキノコ。
独特の匂いがあり、鍋に入れると食べ合わせによっては全体が台無しになってしまうこともあるとか。

買って嗅いでみた。
!!
!!
すごく立体的な顔になった。
オーナーはとにかく独特の匂いと言っていたが、確かになんとも言い難い深い香りである。
シイタケの香りが苦手な人がいるが、それとはまた違う。
カルキと深い森の湿気の匂い、という感じ。
ツーンとはこないが、じんわり強烈に香る森の匂い。

しかし、このトキイロヒラタケ、ニンニクと炒めるとこの匂いがキノコのいい風味に変わり抜群においしくなるのだとか。
恐る恐るニンニクと炒めてスパゲッティの具にしてみたらすごくおいしかった。食べ応えがあってより風味の豊かなマイタケ、という感じだった。また食べたい。
恐る恐るニンニクと炒めてスパゲッティの具にしてみたらすごくおいしかった。食べ応えがあってより風味の豊かなマイタケ、という感じだった。また食べたい。
このようにヤオヤプラスは、野菜をただ売るだけではなくこちらの相談に乗ってくれて知らないことを教えてくれる、提案型の八百屋さんである。
僕が店内をうろうろしている間にも、地元の方が野菜の産地などについて熱心に尋ねていた。
「なんか珍しい野菜ありますか?」って聞いて色々紹介してもらうのはとても楽しかった。
「なんか珍しい野菜ありますか?」って聞いて色々紹介してもらうのはとても楽しかった。

ついに野菜がそろう

少々脱線したが、いよいよ野菜ジュースのパッケージを飲む。
大事な野菜を、まずはパッケージ通りに並べてみる。
大事な野菜を、まずはパッケージ通りに並べてみる。
できた…。感慨もひとしおである。ニンジンに少し葉っぱが残っているところがこだわりポイント。
できた…。感慨もひとしおである。ニンジンに少し葉っぱが残っているところがこだわりポイント。
「この時期フレッシュの赤じそは手に入らないよ」とのこと。それが分かっただけでも収穫なのに、対案として漬物を持たせてくれるヤオヤプラスさんすごい。
「この時期フレッシュの赤じそは手に入らないよ」とのこと。それが分かっただけでも収穫なのに、対案として漬物を持たせてくれるヤオヤプラスさんすごい。
そして、紫キャベツの大きさである。
何度も載せているが、パッケージはこれ。
何度も載せているが、パッケージはこれ。
で、実際がこれ。でかい!
で、実際がこれ。でかい!
キャベツ丸々1個なのだからそりゃあでかい。パッケージに小さく描かれすぎなのだ。
もしかしたら、野菜がぎゅっと集まってるんじゃなくて、キャベツより後ろの野菜はすごく遠くにあるものとして描かれているのかもしれない。
横から見るとこうなっていたのかもしれない。
横から見るとこうなっていたのかもしれない。

いよいよ飲む

前回の反省を活かして、すべての野菜を8分の1にカット。
前回の反省を活かして、すべての野菜を8分の1にカット。
前回の反省を活かして、ミキサーにかける。
前回の反省を活かして、ミキサーにかける。
嗅ぐ。
嗅ぐ。

完成!

そしてできたのが冒頭のこちらである!
長かった…。ついに「野菜ジュースのパッケージ」のジュースができた。
長かった…。ついに「野菜ジュースのパッケージ」のジュースができた。
飲んでみる。
飲んでみる。
「キャベツ。」
「キャベツ。」
キャベツである。
キャベツ!
キャベツ9割、あとセロリとレモン、という感じ。
味の割合。大体キャベツ。
味の割合。大体キャベツ。
これだけ長々とやった割には、「キャベツの割合が大きかったのでキャベツの味になりました」という新規性のかけらもない情報をお届けすることになった。

だがこれが真実なのだ。
野菜生活のパッケージはキャベツの味がする。
なぜならキャベツは大きいからである。
レシピになります。
レシピになります。
なんだかすんなり引き下がれなくて、余った果物と野菜をおいしくなるようなバランスで入れてジュースを作った。
なんだかすんなり引き下がれなくて、余った果物と野菜をおいしくなるようなバランスで入れてジュースを作った。
うまいー。リンゴとかいっぱい入れたからー。
うまいー。リンゴとかいっぱい入れたからー。

キャベツの味がする「野菜ジュースのパッケージ」のジュースは、結局コップ3杯分できた。
全部の野菜を8分の1にカットしたのにけっこうできるものである。

とにかく今回は知らない食材にたくさん出会えてとても有意義な時間を過ごすことができた。
いつも行くスーパーでも意外と馴染みのない食材ってあるものなのだということが分かったので、苦手意識を持たずに積極的に関わっていくと楽しいのかもしれない。
ヤオヤプラスのオーナー、スタッフの皆様、ありがとうございました!
「最後に写真をよろしいですか?」と聞いたら紫キャベツを持ってくれたオーナー。今思うと、これから作るジュースの味を示唆していたのかもしれない。
「最後に写真をよろしいですか?」と聞いたら紫キャベツを持ってくれたオーナー。今思うと、これから作るジュースの味を示唆していたのかもしれない。

取材協力
ヤオヤプラス
〒142-0062 東京都品川区小山6-7-3
TEL. 03-5498-0439
URL. ヤオヤプラス facebookページ
▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←
ひと段落(広告)

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ