ひらめきの月曜日 2016年1月25日
 

大人が今さらはまるアイロンビーズ

はまり具合をお察しください
はまり具合をお察しください
最近アイロンビーズに夢中だという親戚の子供に付き合って一緒にやってたら、むしろ自分がはまった。
ビーズをちまちま並べてアイロンで熱するとくっつくあれだ。手芸品にありがちな、作ったものの行き場のなさからしても、自分には縁のないものだと思ってた。

しかし、やってみてわかったのは、かわいさへの強烈な推進力。立体展開すると知性も刺激してくる。これ、いい年こいた大人も面白いやつだぞ。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」
> 個人サイト テーマパーク4096 小さく息切れ

かわいさの暴力、アイロンビーズ

小さく切った樹脂の管を並べて作るアイロンビーズ。こういうやつだ。
とりあえず11000粒入りのを買った
とりあえず11000粒入りのを買った
子供でもできる手作り遊びの定番であるようだ。

細かい粒をじわじわ並べて模様や絵を作り、アイロンでくっつける。それが何かの役に立つわけでもない話だ。個人的にはこうした手芸っぽい趣味は全くない。

とは言え、親戚の子供がはまっているらしく、今度一緒にやりたいらしい。まあ、猫でも作ってみるか。
これ、苦手なやつだ……と思ったはずなのに
これ、苦手なやつだ……と思ったはずなのに
突起の並ぶ専用プレートに、1粒ずつビーズを猫っぽく置いていく。面倒くさいな、これ。

と、思っていたのもつかの間。やり始めてみると、「耳はこうした方が猫らしいな」「鼻の色はこれかな?」と、本気で考え出している。

とりあえず猫でも作っておけば手堅くウケるだろ、という大人の不純はいつしか消え去り、夢中になってる自分がいるのだ。
漂うかわいさの予感
漂うかわいさの予感
並べ終わったら、くっつき防止の紙をかぶせてアイロンがけ。簡単ではあるが、均等に熱や圧力をかけるときれいにできるので、意外と技術がいる。

ほどよくとけたら紙をはがして出来上がりだ。
できました、ねこちゃんでーす
できました、ねこちゃんでーす
作る前は「猫」だったのが、出来上がると「ねこちゃん」と呼びたくなる。自分で作ったからだろうか、そこに愛しさがまとわりついてくるのだ。
さらに熱と圧力を加えたつぶしバージョンもかわいい
さらに熱と圧力を加えたつぶしバージョンもかわいい
作り方は思い付きの適当だし、作っているのがおっさん。それでも強制的にかわいくなるアイロンビーズのかわいさ直進力がすごい。
ここまでの道のりが長い
ここまでの道のりが長い
これ、面白いやつだぞと察すると、今後の作業効率を上げたくなるのが大人らしさ。11000粒の色分けを始めたら止まらなくなった。

かかった時間は5時間ほど。これって効率が上がったと言えるのだろうか。

ともあれ制作を再開しよう。アイロンビーズのかわいさ構成要素は、ドット絵感にもあるだろう。たまたま当サイトのロゴマークはドット絵風なので、アイロンビーズ化してみよう。
だんだんできていく楽しさ
だんだんできていく楽しさ
ビーズをたくさん並べればいくらでも解像度は上げられるが、どんどん大きくなってしまうという難点もある。どこをどう省略するか、意外と頭をひねる必要があるのが面白い。
実存としてのデイリーポータルZ
実存としてのデイリーポータルZ
そして出来上がったデイリーポータルZ。なんだろう、いつも画面で見ているものが、物体として手にできてそこにあるのが不思議に思える。
心なしか偉そうに見える
心なしか偉そうに見える
なんとなくテレビの前に置いてみると、どんな番組を映しても当サイトに見えてくる。物体としての存在感ゆえの意外な効果だ。

そして、やっぱりなんだかかわいい。ねこちゃんのときもそうだったが、出来上がってしまうと問答無用のかわいさが生まれてくるのだ。
かわいさに対抗したい
かわいさに対抗したい
かわいいなと思いつつ、強引なまでに前に出てくるそれに屈したくない気持ちも湧いてくる。油断すると引き込まれるものに負けたくないのだ。

どうにかしてアイロンビーズのかわいさを打ち消したい。例えば、酢だこならどうだろうか。
できました、すだこでーす
できました、すだこでーす
できあがった酢だこと向き合う。やっぱりかわいい。

いや、正直に言おう。写真からもわかるだろうが、作りながら「刺身っぽくしちゃおっかなー」と思ってしまったのだ。

シンプルにすだこって書くだけで終わらせたくない。かわいさに対抗するはずだったのに、結局は意匠を施している自分。アイロンビーズは内面にまで侵食してきているのだ。

これじゃだめだ。より無機的に、「サラリーマン」ならどうだろう。
お前ならやれるはず
お前ならやれるはず
かわいさのかけらもない言葉、サラリーマン。これなら勝てるはず。
できました、サラリーマンでーす
できました、サラリーマンでーす
やばい、今、俺、ほっこりしてる。

作っているうちにサラリーマンもついかわいく縁取っちゃう。無意識のうちに、かわいさの共犯者になっているのだ。

かわいさへと向かっていくアイロンビーズの推進力は、いつの間にかメンタルまで巻き込んで、強烈な勢いで完成に向かっていく。
かわいい、でも意味はわからない
かわいい、でも意味はわからない
もういい、かわいいのはわかった。ただし、問いたいことがある。一体、君たちの存在価値はなんなんだ。

そう、かわいいだけで意味がないのだ。意味を持ちだすことで、別角度からかわいさに切り込んでいきたい。

かわいさの反対、例えばそれは機能性。もしかすると、機能を持たせることによってかわいさの壁を壊せるのではないだろうか。
意味を持たせてかわいさを打ち砕きたい
意味を持たせてかわいさを打ち砕きたい
そこで作ってみようと思ったのは、トイレのドアにつける表示。どうだ、お前に意義を与えてやる。

そして、トイレという文字に加え、なんとなくピラミッド的な物体も描いてみた。かわいさを打ち消す追加手段としての悪ふざけだ。

しばらくしてできあがったトイレ表示。完成品をさっそく使ってみよう。
グゴゴゴゴ…
グゴゴゴゴ…
これは…
負けた気がする
負けた気がする
なんだこれ、やっぱりかわいいぞ。話が違うじゃないか!

毎日お世話になるお手洗いへの扉に、オリジナルの手づくりプレートを飾る。「丁寧に暮らす」ってこういうことだろこの野郎。

意外なところで生活にうるおいが生まれた。勝負としては僕の完敗だ。

3Dで迫ってくるアイロンビーズ

私がはまるきっかけとなった親戚の子供は鉄道好き。電車の前面をまねして並べて楽しんでいたが、そのうち「これ、本物の電車みたいにしたい」と言い出した。

気持ちはわかる。ただ、アイロンビーズは平面に並べて作るもの。だから本物みたいに立体にはできないよね……と思って調べてみたら、そうでもなかった。
親戚の子供の影響でここから先は全部鉄道
親戚の子供の影響でここから先は全部鉄道
こちらは阪神電気鉄道7861形という電車を立方体にデフォルメしたもの。こうして立体としても作れるのだ。

これ、接着しているわけではない。
プチプチはめて組み立てる
プチプチはめて組み立てる
接する面のビーズ同士が噛み合うように作ると、かなりしっかりとはまるのだ。組んでいく感触もプチプチッと気持ちいい。
こういう風になってます
こういう風になってます
展開するとこんな感じ。ビーズを並べるとき、どうすればちゃんと噛み合って立体になるのか、並べ方を考える面白さが出てくる。
びっくり顔みたいでかわいい
びっくり顔みたいでかわいい
練習で作ったこの電車。デフォルメしたかわいさはあるけど、見ているうちにもっと本物っぽくしたくなってきた。やっぱり長さがあった方がそれらしいし、車輪部分に段差もつけたい。

なんだこれ、いつの間にか制作意欲をぐいぐい刺激してくるぞ。
埼玉と東京を結ぶ命綱、埼京線
埼玉と東京を結ぶ命綱、埼京線
というわけでできたのが、埼京線E233系。小物入れとした使いたかったので、上の部分は開けておいた。

…小物入れ? 入れる小物のあてもないくせに、小物入れ。

気の利いた雑貨作り気取りか。発想という個人の内面までかわいくしてくるアイロンビーズがすごい。
ディティールを変えたくなって3台制作
ディティールを変えたくなって3台制作
埼京線は私が作ったE233系の3台目で、実はこれに至るまで京浜東北線と京葉線も制作。できたものを本物の電車と比べて見ているうちに、細かい表現を少しずつ変えたくなってくるのだ。

アイロンビーズに向上心を刺激されている自分。そんな心の奥にまで触れてくるとは。
段差の部分の仕組み、複雑に考えすぎた
段差の部分の仕組み、複雑に考えすぎた
下部の段差をつけたくて構造を考えていたら、やたらと部品点数が多くなってしまった。ここはもっとすっきりさせたい。あと、もう少し電車らしいバランスもとりたい。
埼玉と東京を結ぶ命綱、パート2
埼玉と東京を結ぶ命綱、パート2
そしてできあがったのが西武鉄道2000系。入れる小物のあては相変わらずないままに、電車の小物入れがどんどん増えていく。
すっきりできて嬉しい
すっきりできて嬉しい
外観の見た目は埼京線と同じように下部の段差がありつつも、構造を変えたことで部品点数は大幅に減少。「もっとよくしたい」と湧きあがってきた気持ちに向き合って考え、結果を出せたのだ。

できたらそういうポジティブは、アイロンビーズ以外で出したい。どうして普段は発揮しないところを突いてくるんだ、アイロンビーズ。

それらしく作れることがわかってくると、今度は逆にミニマムな方向性も考えたくなってくる。
ここがこうなるから、そこはこうなって…
ここがこうなるから、そこはこうなって…
この部分を突起にして、それを受けるところはへこませて…と構造を考えるのが面白い。
立体パズルのようでもある
立体パズルのようでもある
上の並べ方を加熱してパーツ化。これらを組み上げると…
おお、電車になったぞ
おお、電車になったぞ
こうなる。存在意義はわからないが、とりあえずかわいい。電車らしく見える最小限度に挑戦した感じがあって楽しい。

挑戦。そんな言葉を口にするなんて、どれだけ久しぶりだろう。アイロンビーズにこんなに活性化される自分が意外だ。

トイレにサラリーマンは完全に意味不明
トイレにサラリーマンは完全に意味不明

どんなものを作っても、かわいさへと強烈な勢いで向かっていくアイロンビーズ。さらには作る者の内面にまで入り込んでくる。

使うあてもなく作りたくなるこの感覚。手芸にはまったおばちゃんが作品をどんどん人にあげ始める流れって、これのことだな。

妻に「アイロンビーズで作れるけど、新しいメガネケースいらない?」と聞いたら「いらない」と即答。情熱の行き場を持て余している。
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