特集 2016年2月10日

JRの料金路線図、山手線が消えるのはどのへん?

どこまで行けば山手線が消えますか?
どこまで行けば山手線が消えますか?
鉄道の路線図に興味がある。

興味があるので、JRの駅のきっぷ売り場の上にある「JR近距離きっぷ運賃表」こと、料金路線図がきになる。

この料金路線図、改めてよく見てみると、駅ごとにデザインが微妙に違っている。

いったい、どれほどの違いがあるのだろうか?
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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路線図鑑賞家と共に調べます

以前「路線図をただながめていいねーっていうだけのオフ会」で記事に登場していただいた路線図鑑賞家の井上さんと協力し、浮間舟渡から蒲田までの駅をひとつづつ確認し、写真を撮って見比べてみることにした。

井上さんは蒲田から北上し、ぼくは浮間舟渡から南下していく。
路線図鑑賞家でライターの井上さん
路線図鑑賞家でライターの井上さん
なぜ浮間舟渡から蒲田までなのか? それは、JRの1日乗車券が北は浮間舟渡、南は蒲田までしか使えなかったからだ。
都区内パスは本当に東京都内でしか使えない、あと、上下をぐにゃっと潰した感じの路線図も気になる
都区内パスは本当に東京都内でしか使えない、あと、上下をぐにゃっと潰した感じの路線図も気になる
当日、浮間舟渡に向かうぼくは、新橋から京浜東北線に乗り込んだ。

しかし、電車内の路線図を確認し、浮間舟渡が京浜東北線ではないことに気づく。浮間舟渡は埼京線だった。

ここで、路線図好きは路線図には興味あるけれど、基本的な鉄道知識はあまりないことが浮き彫りになる。
ピースが似合わない年齢になってきました
ピースが似合わない年齢になってきました

ずいぶんちがう路線の描かれ方

というわけで、赤羽駅で埼京線に乗り換えて浮間舟渡にやってきた。で、さっそく料金路線図を撮影。
浮間舟渡の料金路線図
浮間舟渡の料金路線図
その頃、蒲田方面から北上する井上さんからも順調に撮影が進んでいるとの連絡が入る。

一方、ぼくは北赤羽駅のトイレにカメラを忘れ、王子から引き返して取り戻すなど、アクティブな取材を行っていた。
蒲田の料金路線図
蒲田の料金路線図
料金路線図は、各駅の構造によりサイズがまちまちで、さらに「その駅からの料金」を表示しているため、全ての駅で表示される料金も違ったものになる。

浮間舟渡と蒲田の料金路線図を見比べただけでもけっこう面白い。たとえば八高線の曲がりぐあい。
浮間舟渡の窮屈さ
浮間舟渡の窮屈さ
浮間舟渡の方がかなりひん曲がっている。蒲田に比べこちらの方が上下の高さがあまりなかったのだろうか。

窮屈なスペースに無理やり入っている八高線は、よくみると色っぽささえあるような気がしてきた。

それから、端っこがどこまで入っているのか? というのもちょっと気になる。
蒲田からだと熱海があるが、浮間舟渡は鴨宮までしかない
蒲田からだと熱海があるが、浮間舟渡は鴨宮までしかない
蒲田からだと熱海を越えて網代まで入っているものの、浮間舟渡からだと国府津、鴨宮までがやっとで、小田原さえ入ってない。

この差はいったいなんなのか?
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秋葉原で落ち合う

さて、ふたりとも滞りなく各駅の料金路線図を撮影しつつ、2時間ほどで秋葉原に到着した。
秋葉原に到着
秋葉原に到着
秋葉原でおちあった後、それぞれが撮影してきた料金路線図をながめながらなにがどう違うのか鑑賞してみた。

まず面白かったのは、山手線の形だ。まん丸のものも多いのだが、看板のサイズによる制約で、いろんな形に歪んでいるのが面白い。

ぼくが見た中では日暮里がずいぶんひしゃげてるなと思ったが、井上さんが採取してきた品川は上下に潰れたものと、左右に潰れたもの、まんまるのもの、の3パターンが同じ駅の別々の場所にあった。
いろんな形の山手線by品川
いろんな形の山手線by品川
料金路線図の山手線の歪みパターンを堪能したい場合は、品川がおすすめであるということがわかった。

端っこはどこまで入ってるのか問題

さて、この料金路線図、駅の場所によって、端っこの駅が微妙に変化しているということはさきほど書いた。

中心駅の場所によって端っこの駅も少しづつ変わっていく。

例えば、宇都宮は、王子までは存在していて、上中里に入ると消える。といったぐあいだ。
王子は端っこが宇都宮だが
王子は端っこが宇都宮だが
宇都宮が消える上中里
宇都宮が消える上中里
王子より北にある駅では宇都宮まで入っていたのだが、王子の隣の上中里に入ると宇都宮がぷっつり消える。

しかし、ふしぎなことに、上野に行くと宇都宮が復活する。
宇都宮復活
宇都宮復活
料金路線図では、起点となる駅から遠い順番に少しづつ消えていくのかな? とぼんやり考えていたのだが、上野で宇都宮が復活している意味はなんなのか?

やはり上野は「宇都宮線の起点ぞ」という意味もこめて宇都宮があるのだろうか?

もしかして1660円?

端っこの駅が消えたりまた出たりする基準がよくわからないですね? ボードのスペースで決めてるのか?
なにが基準なんでしょうね……。距離かしら……。
ん!?
ん!?
あれ? これってもしかして……端っこの駅って全部1660円じゃないですか?
あ! ほんとだ! そうですよ、これ1660円ですよ!
でも久里浜は1420円で終わってる……。
いや、いいんですよ、久里浜は終点だから。ほかはほとんど1660円で終わってますよ! 料金路線図は基本的に1660円までの駅しか載せないんですよ!
蒲田の料金路線図。たしかに1660円の駅までしか載ってない
蒲田の料金路線図。たしかに1660円の駅までしか載ってない
この「端っこの駅はほとんど1660円」というのは、我々、路線図マニアからしたら大発見である。鉄道マニア内ではすでに周知の事実だったかもしれないが、ただの路線図好きはよく知らなかった事実である。
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営業キロ数なのか?

このまえ、静岡の袋井に行った時に料金路線図を撮影したので、それを見てみましょう。
やっぱり!
やっぱり!
ほら、1660円だ! 予想通りですね。これって、つまり下の券売機で買えるきっぷの金額の上限ってことじゃないですか?
そうか、うっかり路線図の形ばかりみててそっちに気がむかなかった……でも、そうなると、上野で1940円の宇都宮が復活してたのはなぜなんでしょうかね?
例外もある……ということでしょうか。やっぱり起点の駅だし、上野からだと宇都宮までのきっぷを買う人も多いだろうから……。
ちょっとまってください。これ、もしかしたら営業キロ数と関係があるかも、たしかJRの運賃って営業キロ数で変わってくるから。時刻表があれば営業キロ数と運賃の対応表があったはずなんだけど……。
そうか、ちょっと本屋で買ってきます!
約10分経過。
買ってきました! えーと、運賃表……。本州3社の幹線の運賃ですね……。
えーと
えーと
あったー!
あったー!
やはり、料金路線図の端っこの駅は、営業キロ100キロメートルの1660円区間であった。
これ、正確にいうと「料金路線図は基本的に営業キロ100キロ区間を掲載している」ということかもしれないですね。このまえ石巻で撮影してきた料金路線図を見てください。
端っこの料金がけっこうバラバラだけど……
端っこの料金がけっこうバラバラだけど……
東北本線や常磐線の端っこは幹線の100キロ区間、1660円で終わってますが、陸羽東線の端っこ、鵜杉は地方交通線だから同じ100キロ区間でも金額が1850円になる……。
そうか、しかしそうなると、気仙沼が1710円で終わってるのが気になりますね。
BRT(震災で被災した線路をバス専用道路に変更したバス路線)の営業キロや料金はまた別になるのかな?
これも、上野の宇都宮みたいな例外かもしれないですね……。
どうも西村京太郎トラベルミステリーみたいになってきた。推理小説では、データを元に推理を展開するタイプの探偵は安楽椅子探偵というらしいが、まさにこれだ。

しかし、データによる推論だけではどうしようもない疑問点がわき上がってくる。

そう、山手線はどのへんで消えるのか? ということだ。

山手線は100キロ超えると消えるのか?

都内の料金路線図は、シンボルのように描かれている山手線。山手線がまんなかにあると、自分の今いる駅の位置がイメージしやすいという利点もあると思う。
この山手線はどのへんで消えるのか?
この山手線はどのへんで消えるのか?
はたして、この山手線も100キロを越えるとプッツリ消えるのか、途中までが1660円区間の場合はどんなふうに描かれているのか?

こればかりはいくら推理しても実物をみなければなんとも言えない。
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片道100キロ以上の切符は途中下車が可能!

山手線内から100キロ以上離れた場所の料金路線図を確認したい。ところが、困ったことに、料金路線図は必ず改札を出た場所に存在する。

いちいち改札を出て確認し、また切符を買って……ということをしていると、お金がいくらあっても足りない。どうすれば確かめられるのか……。
そういえば、JRの切符ってたしか長距離だと途中下車ができませんでしたっけ?
そうだ! 片道100キロ以上の切符だと途中下車できたんだった。
詳しい説明は省くが、営業キロが片道100キロを越える乗車券は、途中下車が可能なのだ。
ややこしい言いまわしだけど、片道の営業キロが100キロ以上だと、途中の駅でぶらり途中下車ができる
ややこしい言いまわしだけど、片道の営業キロが100キロ以上だと、途中の駅でぶらり途中下車ができる
東京から沼津までの往復乗車券を買うと、山手線の駅以外で途中下車が可能で、例えば、横浜や小田原で途中下車し、観光してから沼津まで行く、ということもできる。

しかも、切符の有効期間も長くなるので、途中下車したところで一泊してから帰りも途中下車しつつ帰ってくる。ということも可能だ。

このルールにもとづいて乗車券を購入すれば、お金を気にせず、料金路線図を途中下車しつつチェックできるという寸法だ。
沼津まで買いました
沼津まで買いました

なかなか消えない山手線

ということで、熱海にやってまいりました。

駅前に降り立ったのはじめて
駅前に降り立ったのはじめて
駅前の無料足湯には目もくれず、切符売り場に向かう。
おぉ……これは!
おぉ……これは!
ズドーン!
ズドーン!
山手線が、ある……。

熱海から山手線内までは1940円になるにもかかわらず描いてある。これは1660円以上でも、利用者が多い駅は路線図に描かれるということだろうか。

あと、どうでもいいが、熱海の山手線は各駅から伸びる乗り換え路線がカラフルでかわいい。

これは1660円以上でも、利用者が多い駅は路線図に描かれるということだろうか。

ちなみに、熱海からだと、大井町までは1660円、品川に行くといきなり1940円に値上がりするらしい。

これはもしかして、熱海から品川に行く場合、大井町までの切符を1660円で買って、大井町でいちど下車し、改めて大井町から品川までの切符140円を購入した方が安いのでは? と思った。

ただ、JRの料金システムはちょっと複雑でわからないことが多いので、ここでは深く掘り下げないでおきたい。

山手線に近づくにつれて現れる料金表示

さて、気になるのは熱海駅のとなり、湯河原。湯河原までくると、山の手線内の駅も一部1660円区間になるのではないか?
一部書いてある!
一部書いてある!
乗り換え駅が消えて1660円区間の駅が出てきた
乗り換え駅が消えて1660円区間の駅が出てきた
湯河原のさらに隣、真鶴はどうか?
中央線がでてきた!
中央線がでてきた!
真鶴まで来ると、中央線が登場する。しかし、面白いことに、水道橋や千駄ヶ谷までは1660円らしいけど、おそらく飯田橋や四ツ谷は1660円以上かかるので省略してあるのがおもしろい。

熱海より先で山手線が消えるのは?

熱海から上り方面に進むと、駅がジワジワ増えてくるのがおもしろかったが、下り方面だとどこから山手線が消えるのか?

熱海の下り方面の隣駅は、まず函南である。
函南ですっぱり消えた山手線
函南ですっぱり消えた山手線
山手線が消えた。

これは、函南駅からJR東海のエリアになるので消えるのも納得がいく。路線図も、JR東日本エリアは緑色、JR東海エリアはオレンジ色に分けられている。

では、熱海から同じJR東日本の伊東線の方へ下っていくとどうだろうか? 途中下車した函南から別途乗車券を購入して引き返して行ってみた。
伊東線の真ん中らへんの駅、網代駅
伊東線の真ん中らへんの駅、網代駅
山手線は……
山手線は……
ありました
ありました
網代駅は、山手線内から1660円以上あるものの、やはり同じJR東日本グループだからか、しっかりと残っていた。

網代駅でさえ山手線が描かれていたということは、おそらく終点の伊東の料金路線図にも山手線は描かれているだろう。たぶん。

山手線、なかなかしぶとい。

山手線、JR東日本内であればなかなか消えない

今回わかったことは

1) 料金路線図は、営業キロが100キロまでの駅が掲載されている。
2) 利用者の多い駅は100キロ以上でも掲載されていることがある。
3) JRの管轄が変わると、デザインもがらっとかわる。

などだ。

これは、オフィシャルに確認したものではないので、違うかもしれないけれど、概ね間違ってはないと思う。

東海道線を下った場合はJRの管轄がかわるまでずっと描かれていた山手線。

では、山手線から北上した場合はどこまで山手線が描かれているのか……。

理論上は、高崎や宇都宮の手前あたりで消えるはずだ、しかし、残念ながら今回調査はできなかったので、またの機会に調べてみたい。

路線図ナイト~路線図をながめて「いいねー」って言うだけの飲み会~を開催します!

やります
やります

2月13日(土)午後18時からお台場の東京カルチャーカルチャーで「路線図ナイト」を行います。

この記事を飽きずに最後まで読み通したあなた! 来てくれますよね。

デイリーポータルZ・ライター西村と、この記事にも登場してくれた路線図鑑賞家の井上マサキ氏、鉄道ライター、栗原景氏、インスタントリア充、地主恵亮氏などが登場予定!

よろしくお願い致します!

イベントサイトはこちら→「路線図ナイト
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