ちしきの金曜日 2016年2月12日
 

百貨店の階段が好きだ

この百貨店の階段にきゅんとするのです。
この百貨店の階段にきゅんとするのです。
百貨店の階段って、独特だ。あの大きさ、フロアの中での位置。あまり人が利用しないあの感じ。

子どもの頃、親が買い物をしている間にここで遊んでいた、という思い出がある人もいるのではないか。

うまく言えないが、なんかいいぞ、百貨店の階段。先日ふとそう思ったので、今回主要百貨店を巡り、階段を愛でてみた。

同好の士がいますように。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。
> 個人サイト 住宅都市整理公団

日本橋三越本店、すごい

百貨店とひと口に行ってもたくさんあるので、今回は東京は日本橋〜銀座の中央通りを巡った。日本を代表する名百貨店が並ぶ通りである。

で、いきなり結論になってしまうかもしれないが、日本橋三越本店の階段室がすばらしかった。さすが日本における百貨店の嚆矢とされる名店である。
1935年竣工。その歴史の重みは階段室にも表れている。
1935年竣工。その歴史の重みは階段室にも表れている。
まずはこちら。まるで額に納められた一幅の絵画のような階段室。
まずはこちら。まるで額に納められた一幅の絵画のような階段室。
豪華な石貼りの空間。まるで石をくりぬいて階段室にしたのかと見紛う空間に、黄金の滑り止めが映える。
豪華な石貼りの空間。まるで石をくりぬいて階段室にしたのかと見紛う空間に、黄金の滑り止めが映える。
これのどこがすごいんだ、と思った方は、おそらく「階段ズレ」している。百貨店の豪華階段を見慣れてしまっているのだ。

ぼくもさいしょは「そうそう、こういうのね」ぐらいにしか思わなかったが、ほかの作品と見比べると、三越の階段への入れ込みようが分かってくる。
虚飾を排したシンプルな出来映えが、素材の豊かさを引き出している。
虚飾を排したシンプルな出来映えが、素材の豊かさを引き出している。
4階から手すりが変わったのはうれしい驚きだった。
4階から手すりが変わったのはうれしい驚きだった。
一面石貼りでやや冷たい感じがあったものが、いっきにふんわりとした雰囲気に。息を切らせてここまでのぼってき者へのご褒美である。
一面石貼りでやや冷たい感じがあったものが、いっきにふんわりとした雰囲気に。息を切らせてここまでのぼってき者へのご褒美である。
この気の曲げ方! 凝ってる。すばらしい。
この気の曲げ方! 凝ってる。すばらしい。
どうだろうか。

このように祝祭空間としての百貨店のありかたを存分に示した階段作品だが、日本橋三越本店のすごさはこれにとどまるものではない。

なんと、ここ、階段室がぜんぶで7つもあるのだ。こんなに階段好き百貨店はそうそうない。

もちろんほか6つもご覧頂こう。つまりこのあともこの調子でひたすら階段の写真が続きますので、よろしくお願いいたします。
しかもご覧のようにデザインが異なる。石の色が変われば、滑り止めの色も変えてきた。すてきだ。
しかもご覧のようにデザインが異なる。石の色が変われば、滑り止めの色も変えてきた。すてきだ。
この階段室はターン部分の柱の存在感がポイントだ。
この階段室はターン部分の柱の存在感がポイントだ。
あとコンセントがおもしろかった。
あとコンセントがおもしろかった。
なんでこうなった。澄ました雰囲気の中にほほえましさを添えている。ナイス。
なんでこうなった。澄ました雰囲気の中にほほえましさを添えている。ナイス。

もしかして過去のものなのかな

思ったのは、もしかしたらこういう百貨店の豪華な階段は、過去のものになるかもしれないということ。

というのは、これら三越の階段が広々として数が多いのは、おそらく避難経路を兼ねているからでして。
三越本店階段室には「避難誘導旗」なるものが各踊場に設置されていた。
三越本店階段室には「避難誘導旗」なるものが各踊場に設置されていた。
この避難階段機能は、現在では明確に分離している。たとえば実際に、三越向かいに最近できた「コレド室町3」には、豪華な階段室はない。
フロア面積が全く違うので単純に比較はできないが、この「コレド室町3」には、三越のような階段室はない。これは防災に関するの法律もあっての変化だろう。
フロア面積が全く違うので単純に比較はできないが、この「コレド室町3」には、三越のような階段室はない。これは防災に関するの法律もあっての変化だろう。
あたらしい商業ビルの避難階段は別途外につけられることが多い(よくあるよね、すごい大きな階段が外についてるビル。あれもいずれ見て回りたい)。

最近モールを見て回っているぼくだが、考えてみたらモールには豪華な階段はない。

つまり、豪華な階段は過去のもので、三越の踊り場にある誘導旗は百貨店における階段の役割の歴史を物語る存在といえるだろう。しみじみ。

いつにも増してまったく共感できない内容の記事を書いている気がしているが、続けたい。

三越本店の残り5つのすてきな階段をどうぞ。
3つめ。つくりは最初のものに似ているが、石の種類が違う。かっこいい路線だ。ここにもコンセントとスイッチがあるが、さきほどのように不思議な感じではない。残念。
3つめ。つくりは最初のものに似ているが、石の種類が違う。かっこいい路線だ。ここにもコンセントとスイッチがあるが、さきほどのように不思議な感じではない。残念。
4つ目こちらも同じつくり。コンセントとスイッチのケーブルに新展開。
4つ目こちらも同じつくり。コンセントとスイッチのケーブルに新展開。


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