特集 2016年2月18日

勘合符のチョコレートを作る

これが勘合符チョコレートだ!
これが勘合符チョコレートだ!
ピッタリとくっつけることで真実を証明する勘合符。

意外にも、ピッタリとくっついて愛を証明するカップルと通じるところがあるではないか。

ということでチョコレートで勘合符を作ってみることにした。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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チョコと勘合符の素敵な出会い

今年のバレンタインデー、事情(※)により手作りチョコを作ることになった。

そんなわけでうんうん唸って考えついたのが冒頭で書いた「バレンタインのチョコと勘合符は似ている」理論。

ここで勘合符とはなにか振り返ってみよう。

(※=少女マンガ誌「デザート」のプレゼント企画で、各マンガの主人公からチョコがもらえるというのにモデル役としてひとり実写で乱入した。今年いちばんの思い出。)
「日字◯號」「本字◯號」の紙が、日本と明国にそれぞれ100枚あったらしい。
「日字◯號」「本字◯號」の紙が、日本と明国にそれぞれ100枚あったらしい。
こんなのでセキュリティ大丈夫なのか。
こんなのでセキュリティ大丈夫なのか。
日明貿易で使われた、倭寇(海賊、私貿易)と公の貿易船を区別するためのアイテムだ。本物は現存しないらしい。

ふたつに割られた紙をピッタリとくっつけて、底簿で確認する。そんなのでセキュリティ大丈夫かと思うほどシンプルな認証方法である。

今回はそれをチョコで作ろうといもの。

ホワイトチョコレートで台紙を作る

ということで近所のスーパーで材料を買ってきた。
「割チョコ」が既に勘合符っぽい。
「割チョコ」が既に勘合符っぽい。
まずホワイトチョコレートを溶かして台紙部分を作る。チョコを作るのははじめてなので、レシピを見ながらまったくその通りに作業をしていく所存だ。

いわゆる「手作りチョコって言ってもさあ、既成品を溶かして固めただけでしょ」の作業をするわけだ。ぼくもそう思っていた部分があるので絶対に失敗したくない。
湯煎しやすいように細かく切っていく。
湯煎しやすいように細かく切っていく。
けっこうな量になった。
けっこうな量になった。
ここからテンパリングという作業をしていく。要するに温度調節なのだが、テンパリングをするとチョコレートの仕上がりがきれいになるそうだ。

手順としては、一度温めて溶かしたチョコレート(45℃)を、水にあてて冷まし(25℃)、また少し温めて(29℃)から冷やして固める。
ちゃんとお湯の温度も測る。
ちゃんとお湯の温度も測る。
きちんと温度をはかって湯煎をしていく。

チョコを温めたり冷やしたりをするわけだが、温度変化がゆっくりだったり急だったりむずかしい。
途中で温度が下がりすぎて固まりだしたりもした
途中で温度が下がりすぎて固まりだしたりもした
適当でいいかなあと思って気を抜いてやっていたら、途中で冷やし過ぎて意図せず固まりだしてしまった。もちろん、温めるところからやり直しである。

これがあの「既成品を溶かして固めただけでしょ」の作業か……。思ったより面倒だ。
台紙がパンだったら簡単だったのに……
台紙がパンだったら簡単だったのに……
……ここまでふつうのチョコレート作りの話を書いていて申し訳ない。出来上がりはきっと独創的なはずなのだが、過程がふつうすぎる。

しかも、作っているのは思春期のかわいい女の子ではなくアラサーのおっさんである。

心より恥じる。
テンパリングしたチョコを牛乳パックを使った手作りの容器に入れ、
テンパリングしたチョコを牛乳パックを使った手作りの容器に入れ、
冷蔵庫で固める。
冷蔵庫で固める。
10分くらい冷蔵庫で冷やす。

ちなみに本物の勘合符は縦82cm、横36cmというサイズだったらしい。思ったより大きい。原寸だと冷蔵庫に入らないのでスマホサイズにした。

その後、取り出してみると……。
「頑丈そう」という感想がまず浮かんだ
「頑丈そう」という感想がまず浮かんだ
おお、できた! めちゃくちゃ硬そうだ。前歯折れるな、これは。

四角いフォルムだし「溶かして固めただけ」の中の「溶かして固めただけ」ではあるが、出来上がりの感動はある。

魂を入れる

細かいバリを取って台紙部分は完成。続いて文字を書いていく。
いよいよチョコペンで
いよいよチョコペンで
文字を書いていく
文字を書いていく
日本から明に行く船は「本字◯號」と書かれた勘合を持って行った。今回もそのように書くことにする。

ちなみに日明貿易は、「明国への貢物」と「そのお返し」という体で行われていたそうである。これもバレンタインとホワイトデーのやりとりっぽい。

ゆえにこれは単に字を書くだけではなく、チョコレートに魂を入れる作業と言ってもよい。
はじめて作るので壹號(1号)。2年目は貳号になるのだろうか。
はじめて作るので壹號(1号)。2年目は貳号になるのだろうか。

いよいよ勘合符に

で、これを真っ二つに切る。ふたつに切ってこそ勘合符である。

どうやったら綺麗に切れるだろうか。まず包丁を熱して溶かしながら切る方法でやってみよう。
包丁を熱する。攻撃力高そうだなと思う。
包丁を熱する。攻撃力高そうだなと思う。
温めた包丁をチョコの真ん中あたりに当て、ぐーっと押しこむ。じりじりとチョコが溶けて、包丁が入っていく。
きれいに切れたけど文字が少し消えた
きれいに切れたけど文字が少し消えた
熱で文字が少し溶けてしまった。「本字」の部分は真ん中に線があるので、ダメージは大きい。

このままだと見栄えが悪いので、チョコペンで修正することになった。そんなことするならはじめにチョコを切ってから文字を書けばよかったかなとも思う。
それかやっぱりパンにしておけば……
それかやっぱりパンにしておけば……
チョコは3つあるので、こんどは包丁を熱さずに力任せにやってみたい。チョコはパキっと割れるから、こっちのほうがいいかもしれない。
力任せに割るパターンにもチャレンジ
力任せに割るパターンにもチャレンジ
体重をのせていくと、ある程度のところで「ドン!」とチョコが割れた。お、これはいい感じなのでは。
と思いきや、見た目はきれいに切れたが、文字の細かい部分が衝撃で剥がれた
と思いきや、見た目はきれいに切れたが、文字の細かい部分が衝撃で剥がれた
ぱっと見た目はきれいだ。

だが、「字」の左側など、細かい部分が剥がれてしまった。ホワイトチョコレートにもヒビが入っている。切ったときの衝撃のせいだろう。

これも修正が必要だった。熱した包丁で切るのと比べても一長一短である。これから勘合符チョコを作る人は、参考にして欲しい。

トッピングしてできあがり

箱に入れて出来上がり。スタンダードバージョン
箱に入れて出来上がり。スタンダードバージョン
ということで意外に苦労しつつ、ほぼ想定通りのものができた。実直な感じが出ていていいものに仕上がった。

だが、せっかくのバレンタインチョコなので、それらしい飾り付けも加えてみようか。
ピンクのチョコペンでハートを添えたり
ピンクのチョコペンでハートを添えたり
カラースプレーもトッピング
カラースプレーもトッピング
急にかわいくなった。日明貿易も捗りそうだ。

あらためて考えたらこれが一体何なのか理解できない気もしてきたのでパンフレットも添えた。

四字熟語が書かれ、しかも真っ二つに割られた板チョコを急にもらっても意味がわからないだろう
やっぱりかわいい方がいい
やっぱりかわいい方がいい
「勘合符をチョコにするのは意外なことではありませんよ」という内容のことを書いた
「勘合符をチョコにするのは意外なことではありませんよ」という内容のことを書いた
パンにしなくてよかった
パンにしなくてよかった

なんとなく関連がありそうという思いつきで作ってみたが、なかなかいい見た目になって満足だ。

きっともらった方も喜んでくれると思う。味はチョコを溶かして固めただけなので問題なかろう。

ただ、前歯は折れてないだろうか。それだけが気がかりである。
ちなみにこんなエプロンで作るほどやる気満々でありました
ちなみにこんなエプロンで作るほどやる気満々でありました
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