特集 2016年4月2日

シウマイの自動販売機があった

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「小さい頃、洋光台駅で新聞の自販機みたいな崎陽軒のシウマイの自動販売機を見た記憶が。今もある?」という投稿がhangaoさん、「崎陽軒、かつてみなと寿司と言う寿司の駅弁があったそう。」という投稿が南区のはまりんさん、からはまれぽ.com編集部へとどいた。

洋光台駅に自動販売機があったかどうかは不明。1970年から1978年まで東横線沿線駅に設置。みなと寿司は1973年から2000年まで崎陽軒店舗にて販売 していたことがわかった。

はまれぽ.com 人見 静馬
はまれぽ.comは横浜のキニナル情報が見つかるwebマガジンです。毎日更新の新着記事ではユーザーさんから投稿されたキニナル疑問を解決。はまれぽが体を張って徹底調査します。

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崎陽軒へ

投稿によると「洋光台駅に崎陽軒のシウマイの自動販売機があった」という。
自動販売機で…シウマイを…。実に尖った発想である。日持ちしないシウマイを自動販売機で販売するとなると、冷凍なのだろうか? 即食べられる弁当が出てくる? それともシウマイ単体? 売り上げはどの程度だったのか?
自販機から出てくるところが想像できない
自販機から出てくるところが想像できない
浮かぶ疑問は枚挙にいとまがない。しかも寄せられた投稿はこれだけではない。「かつてみなと寿司と言う寿司の駅弁があった」というキニナル情報が。今回は崎陽軒が過去に発売した商品を一挙レポート!
崎陽軒本社入り口付近でもシウマイが売られている
崎陽軒本社入り口付近でもシウマイが売られている
崎陽軒本社があるのは「ヨコハマジャストビル」
崎陽軒本社があるのは「ヨコハマジャストビル」
崎陽軒本社は、横浜駅東口を出て5分ほど歩いた場所にある。

中にお邪魔し、広報部に連絡を取ってしばし待つ。通されたのは、パーテーションに区切られた場所。忙しく走り回る社員さんはどの方もスーツを着こなしており、そこだけ見たのでは何の会社か分からない。
なんとなく、シウマイ・オブジェが飾られたオフィスに崎陽軒ジャンバーのような服を思い浮かべていたのだが、そんなことはなかったようである。当たり前か。

自動販売機

担当してくださったのははまれぽでもおなじみの柴田さん。手にはたくさんの資料。頭が下がる。
ハスキーボイスが魅力的
ハスキーボイスが魅力的
しばらく崎陽軒の歴史を交えて雑談。
1908(明治41)年創業の「崎陽軒」。その名は、創業者の1人、4代目横浜駅駅長の久保久行氏の出身地である長崎から名付けられているという。長崎には、太陽が昇る岬という意味の崎陽という別名があるらしいのである。知らなかった。
初代社長 野並茂吉氏。レジェンド・オブ・シウマイ
初代社長 野並茂吉氏。レジェンド・オブ・シウマイ
また、なぜ「シュウマイ」ではなくシウマイと言うか――おそらく多くの方がウマイ(美味い)から来ていると思っておられるだろう。事実、そうアナウンスをしてもいるらしい。だが、実はそれは後付けなのだという(!)。

考えてみれば、シュウマイでも「ウマイ」は入っている。小さいユを抜く理由にはならない。
「シウマイ呼び」の本当の理由は、初代社長がシュウマイと上手く発音できず「シーマイ」となまって発音していたのを、当時の中国人スタッフが現地での発音「シャオマイ」に近いとお墨付きを与え、最終的に「シウマイ」としたのだそう。なるほど~。
さすが名広報、柴田さん…。さまざまな話が飛び出る。
1928(昭和3)年からの変わらぬ味
1928(昭和3)年からの変わらぬ味
しかし、である。残念ながら、自動販売機のことで分かるのは以下のとおりの情報のみ。

洋光台駅に設置していたかどうかは、崎陽軒でも把握できないそうなのである。パソコン環境も無い古い話だからなぁ。
というわけで、自動販売機に関する情報は以下の通り。

商品は「真空パックシウマイ」という常温で長期間保存できるもので、1970(昭和45)年9月28日から1978(昭和53)年9月30日まで設置ののち全面撤去。設置場所は東急東横線、大倉山、綱島、日吉、元住吉、武蔵小杉、田園調布、自由ヶ丘、大岡山、学芸大学、中目黒、渋谷の計11駅だったそう。
設置当時の自販機の広告が入っている(写真下部)
設置当時の自販機の広告が入っている(写真下部)
これが自動販売機(写真提供:平尾秀明氏)
これが自動販売機(写真提供:平尾秀明氏)
ここでは東急中心の情報であったが、柴田さんによると、ほかの沿線駅にも設置していた可能性は否定しきれないとこと。この件について何か情報を持っている方、是非ともご一報いただきたい!
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そのほかの商品たち

そもそも、崎陽軒は今でこそ「シウマイの会社」というイメージが強いが「シウマイ」を発売したのは創業から20年後の1928(昭和3)年で「シウマイ弁当」は40年以上も後のこと。崎陽軒は、もともと「牛乳」「餅」「寿司」などを販売することから事業を開始し、7年後に「駅弁」の販売を始めたという経緯がある。

そんな崎陽軒の、姿を消したお弁当たち。これらは現在入手不可能であるが、直営店舗を抱え、利用者のニーズに応えられる態勢を持っている崎陽軒。リクエスト次第では復活もあるかも!?

柴田さんいわく「限られた情報しか提供できませんが…」という条件つきでそのほかの商品もご紹介いただいた。
みなと寿司!
みなと寿司!
寿司! 崎陽軒といえばシウマイ。シウマイといえば崎陽軒。なのに寿司! これはインパクト大である。
販売期間は1973(昭和48)年から2000(平成12)年まで。崎陽軒店舗のみで販売されていた。

続いて…
うなぎお弁当
うなぎお弁当
「うなぎ弁当」ではなく「うなぎお弁当」なところにこだわりを感じる。
販売期間は1964(昭和39)年から2000(平成12)年まで。

そして…
紐を引くと蒸し直されるジェットボックスシウマイ
紐を引くと蒸し直されるジェットボックスシウマイ
どこでもアツアツが食べられる!(2004年当時20個入850円)
どこでもアツアツが食べられる!(2004<平成16>年当時20個入850円)
画期的なアイデア。昔某漫画でこの仕掛けを見たことがある気がするのだが…時期を考えるとこちらの方が元祖なはず。やはり、創作者にも衝撃を与えたアイデアなのだろう。
販売期間は1987(昭和62)年から1997(平成9)年まで。
2004(平成16)年に一時的に復活したジェットボックスシウマイ
2004(平成16)年に一時的に復活したジェットボックスシウマイ
やはりさまざまなアイデアが崎陽軒の歴史を彩ってきたのだ。しげしげとそれら資料を眺める。
そんな時、筆者の眼に1つの商品が飛び込んできた!
内容もパッケージもピクニックを思わせる
内容もパッケージもピクニックを思わせる
ロールパンを中心として骨つきの鶏肉を主菜とする。その名も「とりあえず」。駅弁として形態が斬新なだけではなくそのネーミングも斬新!

これには柴田さんも、こんな商品があったのかと驚きの顔。
「とりあえず」は1996(平成8)年から1999(平成11)年まで発売されていたらしいのだが、詳しい資料は残っていない。値段さえも不明とのこと。ネーミングの由来を是非とも知りたいものである。とりあえずのとりとチキンの「鳥(とり)」がかかっているのだろうか。
こちらも現物を食べたことがあるという方! 求む、味のレポート!

現在、崎陽軒はきちんとスケジュールを組んで新製品や季節限定商品を開発し、商品によってはリニューアルによるテコ入れを行っているという。おそらく、専門職から管理職までが集まり厳密な審議が行われてもいるのだろう。

取材を終えて

取材後、筆者は「シウマイ」に入っているしょうゆさし「ひょうちゃん」誕生60周年を記念して作られた「金色の還暦記念ひょうちゃん」を狙うべくシウマイ(15個入り590円)を購入した。
このひょうちゃんに
このひょうちゃんに
会いたい
会いたい
お馴染みのパッケージ
お馴染みのパッケージ
シウマイの良い匂いが漂い始める
シウマイの良い匂いが漂い始める
冷めても美味しい
冷めても美味しい
この中にひょうちゃんがいる
この中にひょうちゃんがいる
金色の還暦記念のひょうちゃんかどうか、ドキドキする。聞けばかなりのレア物らしい。
いざッ!
…。
…。

どういう感情表現なのだろうか、筆者にはサッパリ分からない。ポジティブな表情ではないということだけは分かるのだが。

昨今はゆるキャラブームである。過去、筆者なりに分析したことがあるのだが、可愛い無表情というのが人気の出る秘訣の一つなのだろうと感じた。

そんなムーブメントなどどこ吹く風で、見えない何かに不快感を露わにするマスコットキャラクター。何か、デザイン上で譲れないモノがあったのだろう。こうした反骨精神がある限り、崎陽軒は常識の枠にとらわれない商品を生み出してくれるのではないだろうか。
常識に囚われないよう、ちょっと飛躍しまくってみた。
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