特集 2016年4月6日

古き良きハノイの人多すぎで足の踏み場もないカフェ

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日本にはコンビニが多いが、ベトナムにはそれ以上にカフェが多い。

一階のスペースが余っちゃった!どうしよう?カフェ開こう!…誇張なく、それくらいのノリでカフェがポンポン開く。その背景には、フランスから持ち込まれたコーヒー文化と、起業や副業に大らかな社会という要素があるのだろう。

今回は、ベトナム人の友人が内緒だよとこっそり教えてくれた、おそらくハノイでもっとも「古き良きベトナム(ハノイ)を感じられるカフェ」を紹介しようと思う。内緒というくだりは嘘です。
1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

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そもそも商売する気が感じられない店構え

以前紹介した「ジブリっぽいカフェ」も隠れ家的要素があったのだが、それでもここに比べると全く比にならない。看板が出ているだけ探す分にもイージーモードだというものだ。今回のカフェは知る人ぞ知る…の一線を越えて、むしろ実は知られたくないのではないかというくらい隠れ家に徹している。

今から写真をお見せするので、是非探してみてくださいね。
ここです!
ここです!
ここでーす!!
ここでーす!!
こっこでーす!!!
こっこでーす!!!
カバン屋じゃねーか、と言われると、ハイそうなんです!どう見てもカバン屋です。

ここはホアンキエム湖という、ハノイのガイドブックには必ず載っている湖(観光エリア)で、同時に市内でもっともバックパッカーが多い場所。そんな訳でバックパックを売る店も多いのだが、実はこの奥にカフェがある。
カモフラージュとかじゃなくて普通にカバンを売っている。
カモフラージュとかじゃなくて普通にカバンを売っている。
海外で店に入るには確かな情報と「ここで合っている」という確信があるとなかなか踏み入れないと思うが、ここではどれほど下準備と鉄の意志を以って臨んでも、その確信は揺らいでしまうかもしれない。
だって、これですよ!
だって、これですよ!
ドラクエよろしくタンスとか開けても怒られなさそう(怒られます)。

最近、ベトナムのカフェ界では隠れ家スタイルが流行っている。それは「流行り」と呼ばれるように、あえて意図的に「隠れ家感」を演出しているものである。しかし、このカフェの年季の入りようはそんな商業的なものとはかなり遠い位置にあるだろう。「養殖の隠れ家」ではなく、まさに「天然の隠れ家」だ。
これが入口のドア!ほんと何にもないからね!
これが入口のドア!ほんと何にもないからね!
ここから中へ、するとさらに驚く光景を目にする。

ひしめき合う客たちと押し寄せるハノイの情緒

ギ~ッ(ドアを開ける音)。
な!
な!
なんだこれは!!
なんだこれは!!
ひしめいている…ひしめき合っている…!

テーブル席などはなく、プラスチック製のイスと、飲み物をのせるちょっとした台がいくつかあるだけ。そこに若者たちが深く腰を下ろしてコーヒーを飲んだり談笑している。いやいや、君たち、パーソナルスペースが狭すぎるだろ!暖を取るお猿さんじゃないんだから!
でも日本の満員電車もこんな感じか。
でも日本の満員電車もこんな感じか。
しかしながら、ただただ窮屈で狭苦しいという訳ではない。狭いは狭いが、ここではそれでいて「ハノイの情緒」というものを大いに味わうことができる。

ベトナムと言っても地域によってまるで雰囲気は違って、商業都市・ホーチミンの景観が「発展」の象徴なら、首都・ハノイの景観は「伝統」の象徴だ。もちろんどちらも発展の一途にあるし伝統もあるが、象徴と呼ぶ分には間違いないはず。

日照日数が少ないためどこか陰りのある風景、コポコポと音を立てドリップされるコーヒーの香り、ラジオから流れる少しかすれたようなベトナム歌謡、それこそがハノイの情緒だと、個人的にはそう考えている。
この陰影がまさにそれ。
この陰影がまさにそれ。
昔の製法で淹れられた奥のコーヒーたち。
昔の製法で淹れられた奥のコーヒーたち。
セピア色に褪せた写真もハノイらしさに輪をかける。
セピア色に褪せた写真もハノイらしさに輪をかける。
私にとっての古き良きハノイ、のちにベトナム人からの評判を見てみると、彼らにとっても郷愁を感じる場所らしい。ハノイの昔の冷凍保存、ここに見たり。日本で言えば、日本家屋の縁側で茶を飲む、みたいなものなのかもしれません。

看板商品はたまごコーヒーとタバコのバラ売り

発展とともにあらゆるものの価格が高騰しているベトナムだが、このカフェは人気店でありながらも常に価格は抑えめ。それこそが若者たちがひっきりなしに訪れる理由なのかもしれない。
メニュー。
メニュー。
12,000ドンから17,000ドン、だいたい60円から85円くらい。
12,000ドンから17,000ドン、だいたい60円から85円くらい。
看板商品は以前紹介したカフェにもあった、たまごコーヒー。
看板商品は以前紹介したカフェにもあった、たまごコーヒー。
また、ここではタバコのバラ売りもあり、店内は煙で少し白く濁る。
また、ここではタバコのバラ売りもあり、店内は煙で少し白く濁る。
こちらは「アイスショコラ」、別名冷えたチョコソース(命名)。
こちらは「アイスショコラ」、別名冷えたチョコソース(命名)。
手書きのロゴがめちゃカッコイイ、ちなみに意味は「たまごコーヒー」。
手書きのロゴがめちゃカッコイイ、ちなみに意味は「たまごコーヒー」。

ハノイのカフェのルーツがここにあった

せわしなく動く女主人に話を聞いた。
…と思ったらほぼ満席だけに忙しいらしく、応える余裕がなかった。
…と思ったらほぼ満席だけに忙しいらしく、応える余裕がなかった。
あとから調べつつ分かったこと。

・カフェの名前はCafe Dinh(カフェ・ディン)。
・女主人の祖母、Bich(ビック)おばあさんがはじめた。
・1990年代には、学生や芸術関係者のたまり場となった。
・ハノイのカフェ文化黎明期には4つの有名なカフェがあり、Bichおばあさんの父・Giang(ジャン)さんはそのひとつのオーナー。また、コーヒー文化の伝道師として淹れ方などを各地で教えていたとのこと。
謎の少女のご尊顔は、若かりし頃のBichおばあさんだった。
謎の少女のご尊顔は、若かりし頃のBichおばあさんだった。
光の反射でわかりづらいけど、一番左端がGiangさん(多分)。
光の反射でわかりづらいけど、一番左端がGiangさん(多分)。
つまりこの女主人、ハノイ・カフェ文化の始祖(4つあったのなら四天王?)、その意志を引き継ぐひ孫ってとこか。いろいろと想像するそばで、彼女はひっきりなしに動き回り、カウンター内に溜まったコーヒーの香りが、かき混ぜられ漂っていた。

古き良きハノイを体感したいなら一度は是非!

このCafe Dinh、ハノイでもっとも有名であろうホアンキエム湖という観光スポットそばにある。安宿から中級ホテルが集まる場所でもあるので、ものすごくアクセスが良い。紹介したような通路なのでたどり着くまでにちょっと勇気が要るかもしれないが、外国人がそうそう簡単には体験し得ない古き良きハノイが堪能できる。本当にベトナム人ばかりなので、注文(メニュー名)くらいは予習していった方が良いかもしれません。
外から見ても奥が暗すぎて民家にしか見えない。
外から見ても奥が暗すぎて民家にしか見えない。
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