特集 2016年4月19日

暗闇ごはん体験でわかった!食べるという行為そのもの

まっくらの中でごはんを食べるイベントがある
まっくらの中でごはんを食べるイベントがある
まっくらの中でごはんを食べるイベントがあるらしい。海外でいう「ブラインドレストラン」を日本でやってるのが「暗闇ごはん」というイベントだ。

視覚をなくしてごはんを食べるといろいろなことが浮かび上がってきた。
2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

前の記事:松を押すのが流行っているらしい

> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

お寺で行われている

「暗闇ごはん」はお寺で行われている。主宰の青江覚峰さんはお坊さん(しかもMBAも持ってるらしい)で料理マンガの監修もされている。

今回はそのマンガ『サチのお寺ごはん』に出てくる精進料理を中心に暗闇でたべるイベントだそうだ。
口頭で説明が入る。「何だと思われますか? ご自由に喋ってください」「だれかの言葉につられるんですよね」など体験をリードする役割
口頭で説明が入る。「何だと思われますか? ご自由に喋ってください」「だれかの言葉につられるんですよね」など体験をリードする役割

わからないままたべていく

そもそものシステムがおもしろい。

まず参加者はアイマスクを着け手を引かれて席につく。会場の広さもテーブルの大きさも前に誰がいるのかもわからない。

そこから暗闇のまま精進料理のコースをいただく。ぼろぼろこぼすし、自由にしゃべっていいが何たべてるかは教えてもらえない。

最後にアイマスクをとると会場の広さや状況がわかり、その後何をたべていたのかもすべてわかり感動する。
これらを見えない状態で一品ずついただく。何をたべてるのかはかなりむずかしい
これらを見えない状態で一品ずついただく。何をたべてるのかはかなりむずかしい
どこに何があるのかもわからない。こぼしたり変な食べ方もしてしまう ※アイマスクをしながら撮影したのでブレまくってます
どこに何があるのかもわからない。こぼしたり変な食べ方もしてしまう ※アイマスクをしながら撮影したのでブレまくってます

感覚をとぎすまして食べる

くらやみの中でたべるごはん体験は大変おもしろかった。

これが本当のスローフードかというほどにおぼつかない手つきでおそるおそる箸がつまんだものをかじる。何をたべているのか、何味なのか、自分の頭の中がぐるぐる回る。

(……ヤングコーン!? ヤングコーンだ!!)

思わず「ヤングコーンですよ!」と口に出す。

「ヤングコーン?」
「おお、ヤングコーンだ…」

ヤングコーンひとつでみんながここまで感動できる日がくるとは思ってなかった。 今となってはそれがどうしたんだという話である。

そもそも精進料理が初体験だったが、暗闇にすることで素材や味の微細なちがいを感じられた。なるほど、このイベントは精進料理に合っているのだなあ。
主催の青江さん。最後に全部の料理の説明がある。今日は監修をつとめるマンガに出てきた精進料理だったらしい。ダシが大豆だったりするやつだ。なんと繊細な…
主催の青江さん。最後に全部の料理の説明がある。今日は監修をつとめるマンガに出てきた精進料理だったらしい。ダシが大豆だったりするやつだ。なんと繊細な…

暗闇ごはんを自分でもやってみる

しかし考えてみたら目隠ししてごはんをたべるというシンプルなものだ。青江さんにきいたらぜひお家でもやってみてくださいとのことだった。それはおもしろそうだ。

自分でメニューを考えてデイリーポータルZ編集部の古賀さんと藤原くんに味わってもらうことにした。
持ち込みOKのカラオケに呼び出されたデイリーポータルZ編集部の古賀と藤原
持ち込みOKのカラオケに呼び出されたデイリーポータルZ編集部の古賀と藤原
本来うまいもの

うまいものを食べさせる

ここからはオリジナルのブラインドレストランである。古賀&藤原に食べさせるもの1品目は「最近たべたうまいもの」にした。

本来うまいものを見えない状態で食べるとどうなるのか?
たまごパンがとてもおいしかったのでお二人に食べてもらった
たまごパンがとてもおいしかったのでお二人に食べてもらった

不安すぎて怒りさえする

古賀:なんかパンみたいな匂いする気がする。なにこれ(笑) ん? なあにこれ?(怒) これさあ、おなじみのたべもの? え、なにこれ? ん!?
藤原:……たまご?
古賀:たまごパン? わかった、ロールパンにたまごサラダがはさまったやつ? でもロールパンにしては硬い気が……ああ、すっごい見たい。

ここでも何が正解かは教えてもらえない。古賀さんは不安すぎてもう怒りさえしている。
実際はもう少し暗いです。おそるおそるたべる二人
実際はもう少し暗いです。おそるおそるたべる二人

見えないとおいしくない

――味わえますか?

古賀: 味わえない。見たさがつのる。
藤原:なんだろう?という感じが強いですよね。
古賀:すごく平坦な味というか、起伏のない味になる
藤原:はじめと終わりがない感じですね

その後明るいところでパンを食べてもらったところ二人ともこれは美味しいといっていた。

見えない状態でたべると何たべてるのかがわからなくて美味しさより不安が勝るのだ。おいしさは安心がないと感じられないのである。
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なんだかわからないもの
二品目。なにこれ、なにこれ
二品目。なにこれ、なにこれ

わからないものをたべてもらう

二品目はおそらく正解がわからないだろうなというものを用意した。

藤原:え、なんだこれ?
古賀:なにこれ、超気持ち悪いんだけど
藤原:なにこれ?
古賀:え、なにこれ? 知ってる食べ物? グミの味がするけど
藤原:グミを水につけたような…
賀:やだ、なにこれ、すっごいまずい。まっずー! これグミじゃないの? いちじくみたいなもの?
いちじく? いえ、ちがいます
いちじく? いえ、ちがいます
正解はカネボウの知育菓子でした
正解はカネボウの知育菓子でした

不安に歯止めが効かない

――二品目はこれです

古賀:あ! あれか!
藤原:たのしいお寿司屋さんの…
古賀:わからないとまずかった(笑)
藤原:これ見た目以外大事じゃないでしょう!

――それを目隠しで食べるという(笑) ちなみになんだと思ってたべました?

古賀:グミを水につけたものと思って。なにやってんの?と思った
藤原:グミを水につけたらこうなるのかーと思った
古賀:二層あってそれがすっごい恐ろしかった

藤原くんのグミを水につけたものという発言が伝播し、食べ物から離れたイメージになったようだ。このようになんだかわからない食べ物は誰かの発言で誘導されたりする。そして古賀さんは恐ろしいとまで言っていた。

信じられるものがないので、不信感を抱くとどんどんネガティブな方向にいってしまうことがわかる。
味がわかるか?
見切り品だったグミもついでに出した
見切り品だったグミもついでに出した

グミの味は外装にあった

――おまけでこっちも試してもらっていいですか?

古賀:これ完全にグミだね。こっちはおいしい。

――じゃあ何味?

藤原:ぶどう?
古賀:ぶどう……? わかんない

――正解はいちごソーダなんですけど、グミだとわかっても何味かはわからないんですね

古賀:そうだね、味がわかんないんだよね
藤原:パッケージが大きいですよね、でっかくイチゴが描いてある

考えてみればグミを食べるとき私たちはパッケージを見ながら食べている。グミの味はどこにあるかといえば、パッケージにあるといってもいいのだ。
味がわかるか?2
同じカネテツの「ほぼカニ」と「カニみたいだぜ」を食べ比べる
同じカネテツの「ほぼカニ」と「カニみたいだぜ」を食べ比べる

微妙な食感のちがいを感じとっている

――カニカマを食べ比べてもらいたいんですが

古賀:なんか長いね思いのほか。……あっ、繊維の方向がちがうね
藤原:食感がちがいますね
古賀:あたし後でたべたほうがよりかまぼこっぽい。魚の味がする
藤原:後半食べたほうがやわらかい気がする
「微妙にちがう!」やはり感覚としては鋭敏になってるのだろ
「微妙にちがう!」やはり感覚としては鋭敏になってるのだろ

認識していると味のちがいがわかる

――2本のカニカマはカネテツの「ほぼカニ」と「カニみたいだぜ」でした。限りなく似てますよね

古賀:へー、同じメーカーだ
藤原:何がちがうんでしょうかねえ
古賀:こっちは斜めで、こっちは縦だ、繊維が

――へー、そうなんだ。自分でも事前に食べてみたんですがそこまではわからなかったですよ

古賀:こっち(ほぼカニ)が高いと思う
藤原:ぼくもそっちだと

正解である。舌は確かに働くようだ。さきほどのグミとのちがいは「カニカマの味がわかっている」ことである。認識をした上だと舌は鋭敏にはたらくようだ。
「ほぼかに」と「カニみたいだぜ」の区別がついた二人
「ほぼかに」と「カニみたいだぜ」の区別がついた二人
組み合わせてくるパターン
一見、ダブルバーガーとポテトであるが…
一見、ダブルバーガーとポテトであるが…

組み合わせの楽しさ

次は暗闇ごはんで味わった「同じ野菜でも種類がちがう」というパターンである。タネ明かしされたときにたのしいのだ。今回はこれをファーストフードで再現した。精進料理と対極である。

古賀:あ、ハンバーガー?
藤原:なんか…罠が仕掛けられてるんですか?
古賀:あ、これマックでしょ、ふつうに
藤原:枚数が多いですね
古賀:ダブルバーガー? あ、マックだよ。匂い完全にマックだね。
藤原:うん、マック。
古賀:でも肉が二枚あるのなんだろ? マックじゃないのかな? ドムドムバーガーとか?
藤原:コンビニでパンの列に並んでるハンバーガーのような気もします
正解はロッテリアのハンバーガーとマクドナルドのハンバーガーを
正解はロッテリアのハンバーガーとマクドナルドのハンバーガーを
合体させたダブルバーガーだった
合体させたダブルバーガーだった

実はマクドナルドではなくて…

――これは合体してます。マクドナルドのハンバーガーに下半分ロッテリアのハンバーガーくっつけたダブルバーガーです

古賀:えーっ!? なにそれ! 気づくわけないじゃん! (たべる)うん、下だけたべるとマックじゃない気がする。でも確実にマックの味したんだ。マックの肉の味がすごい強いことがわかったよ。でもポテトはマックのポテトだった感じがしたんだけど……もしかしてそれも混じってんの!?

――そうです、混じってます!!


実はマクドナルドとロッテリアのポテトがまぜられていた
実はマクドナルドとロッテリアのポテトがまぜられていた
古賀:(笑)
藤原:微妙にちがいますね、今たべると
古賀:すごい! でもそんな夢にも思わなかった。

――ミステリーの「実は…」っておもしろさあるじゃないですか、あれの一番意味のないやつ

古賀:おう、感心した!
まさか…やられた! の一番意味のない形
まさか…やられた! の一番意味のない形
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いろいろあるものが楽しい
味好みみたいなおかきアソートものであるが…
味好みみたいなおかきアソートものであるが…

あてっこがおもしろい

次はいろいろ入ってるもの。暗闇ご飯でもいろいろな野菜をかためたものがあり、「これはオクラ?」「カブ?」とわいわい当てながらたべるのが楽しかった。ということでおかきのアソートものを食べてもらった。

古賀:うわー、なんだろ? あれかな、味好み? 味好みじゃない?

――こういうのメーカーでいろいろありますよね

藤原:メ、メーカーをあてるんですか!?
古賀:わたし味好み大好きなんですよ。どのメーカーでも。食べ慣れてるからあれだな、とかわかるわかる。これちょっとピンクのやつじゃない?
「これピンクのやつじゃない?」正解。さすが味好みファンの古賀さんだが…
「これピンクのやつじゃない?」正解。さすが味好みファンの古賀さんだが…

超人的な舌を持つ人が出てきたりする

――ピンク?(正解)ほー、どうでしょうかね

藤原:にぼしありました
古賀:んんー!? でも味好みじゃないなこりゃ。こんなパーツあったっけな?

――(爆笑)

古賀:え。なに? なんで笑ってんの?

――いや、タネ明かしの後に説明します

古賀:えー、でも味好みじゃない気がする。ジェネリックな気がする。あー、でも味好みかなあ。なんか豆みたいなあったなあ。イオンのやつ? うーん…

――はい、正解発表します。正解は「味のこだわり」ですね
古賀:なに余計なこだわり選んだのよ

――それにこれを混ぜ込んでます…!!

古賀:もしかしてこれ!?

――そうです! よくわかりましたね、古賀さん! 「こんなパーツあったっけな?」というのはまさにそれです。本当にすごい…!!
味好みに小粒のおかき「餅太郎」を追加してあったのだ
味好みに小粒のおかき「餅太郎」を追加してあったのだ
それを見破った味好みファンの古賀さん。よくこんなの当てたな!
それを見破った味好みファンの古賀さん。よくこんなの当てたな!
古賀:(爆笑)こんなちっちゃなやつ入ってないもん! 味好みにさあ!
藤原:全然気づきませんでした…

――そりゃ気づかないよ、こんなの

これなにかなー?とクイズが延々つづくのは楽しいが味好みの中に別のおかきを混ぜ込む超難問クイズを用意した。しかしそれも正解したという……味好みファンをなめるなという結果だった。(味好みじゃないけど)
味好みファン、未だに笑いが止まらず
味好みファン、未だに笑いが止まらず
視覚要素の大きい食べ物
なんだろうこれ? 青いなにかをたべる二人
なんだろうこれ? 青いなにかをたべる二人

すごい見た目のものを目隠しでたべる

――次は煮物です。特別な煮方をしています

古賀:え、え、え、えなにこれなにこれ…え、なになになになに… あっ、カニカマ!? カニカマ煮たの!?
藤原:味がしない…
古賀:カニカマ、何で煮たんだろう
正解はカニカマの青煮(青い食紅で煮た)
正解はカニカマの青煮(青い食紅で煮た)
青いカニカマは思ったよりも食べるときついらしい
青いカニカマは思ったよりも食べるときついらしい

青いカニカマは本当にきつい

――正解は青煮っていう……ぼくが今考えた名前なんですが青い食紅で煮ました

古賀:(笑)
藤原:宇宙人の肉って感じですよね

――そうそう(笑)死肉って感じの

古賀:この気色悪さ、かつてないね。前に大塚さんが青くしたらまずくなるって記事でやっててへーって思ってたけど、実際に食べたら思ったより嫌だった。カニカマ嫌いになりそう。これもうほんと帰りたい。青いのほんとやだ。

藤原:ぼくも青いカニカマは……ほんといやでした

鼻をつまんでたべるの視覚ver.である。見た目が最悪なものでも暗闇ならばやはり平気でたべられる。という結論よりも「カニカマを青く煮ると最悪」という事実の方が大きい。

ゾンビのカニカマの誕生である。
ゾンビのカニカマである
ゾンビのカニカマである
『サチのお寺ごはん』は新刊がそろそろ出るらしいです。G.W.中には寺社フェス向源があるそうです
サチのお寺ごはん』は新刊がそろそろ出るらしいです。G.W.中には寺社フェス向源があるそうです

美味しさの底に流れているものがわかった

――暗闇でごはん食べるのおもしろいですよね

古賀:見えないのは不安だってことがわかった。だからマックくらい自信をもって「ああこれマックだ」と言えるものがあると一気に解放される感じがあった。けどマックじゃなかったんだけどね(笑)

――半分ロッテリアという(笑)でも正解を知ると味が戻る

古賀:戻る戻る。景色も一気に見えた。だからお寿司のお菓子のやつとかがちょう怖かったよ。何食わされてるんだろう…って。あと青いカニカマ……。

――青いカニカマ食わせてすいませんでした…!

かつてフグを食べて死んでいった私たちの祖先の仲間がいる。暗闇でごはんをたべて味わえなくなるのは、私たちの体が彼らのことを思い出しているからではないか。もしこれがフグだったら死んでるぞと。

マクドナルドはどこ行っても同じ味だから美味しく感じるんだとか、安全があってはじめて美味しいのだとか。(だからといって生活を変えるわけではないが)どこかできいたような物言いがはからずも実感できてしまった暗闇ごはん体験だった。
あひー! まぶしい!
あひー! まぶしい!

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