チャレンジの日曜日 2016年5月1日
 

書き出し小説大賞 第97回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。
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GW(ゴリラの脇汗)真っ盛り!今回も素敵な作品が集まりました。それでは早速めくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

予想以上に、火事だった。
TOKUNAGA
寝過ごす人々にも、それぞれのドラマがある。
まじいい
一人暮らしの私の家で、風呂蓋の畳み方が違っている。
すいのつい
ハンバーガーショップの机の下で、要らなくなったマニキュアを剥いでる。
merumo
彼のキザな感じは、筆記体のそれと同じだ。
にら将軍ハルナ
僕の目を見つめながら、木魚叩かないでほしい。
大伴
気が滅入る。坂に気付く。登る影が、何故か笑える。
正夢の3人目
炭は弱々しく、代えの網は届かず、肉はぬるく、ごはんはかたい。
suzukishika
雨の中、夜行バスに乗り込んだのは双子のミイラと私の3人だけだった。
morin
強風にのった鳩が倍速で飛んでいく。
まじいい
その日麻里子は屋上から飛んだ。理由は簡単だった。羽根が有るから。あるいは、羽根が有ると思っていたから。
夏猫
現実がふわりとはがれ落ち、幸せな嘘で満ちてゆく。
東ことり
ハンドル以外は全て妄想である。
マークパン助
卑弥呼はみんなの心の中にいる。
おとぎ坊主
年に一度の物まね大会の後、数名に恩赦が与えられる。
マークパン助
妹はアイスの棒を冷やしていた。
東ことり
「いま大縄回してるから後でかけ直します。」
くのゐち
祖父は西洋の猥談に詳しい。
ウチボリ
TOKUNAGA氏「予想以上に〜」派手なサイレンに駆けつけたものの、ただのボヤだったりするとなんとなく物足りない。逆に大したことなかろうと見に行った火事が予想以上だと本当に申し訳ないというか、見くびってごめんなさいという気持ちになる。人は火事との距離感をなかなか掴めない。

にら将軍ハルナ氏「彼のキザな感じ〜」いまは小学生から習うようだが、私の世代は英語は中学校からだった。思春期真っ盛りの少年が人前で英語の発音をするのはとても恥ずかしかった。筆記体も同じくあの「キザな文字」を書くときはどこか気恥ずかしかった。正夢の3人目「気が滅入る〜」文体の独特なリズムと映像が見事にマッチしている。影はよく不穏の象徴として使われるが、ここでは木訥なキャラを演じている。

マークパン助氏「ハンドル以外〜」バカキャラを的確に描いた文章はそれだけで気持ちいい。赤塚不二夫のキャラのよう。東ことり氏「妹はアイス〜」冷やした理由は分からないが、妹の可愛さはモーレツに伝わる。ここ最近の陽気を反映してか、今回はほのぼの間抜けな秀作が目立った。

つづいては規定部門。今回のモチーフは「家電」であった。書き出し家電の売り尽くしセール開催です。

書き出し規定部門・モチーフ「家電」

告白も謝罪も、この冷蔵庫の前で練習をした。
ねもっ血風クン
室外機はとてつもない疎外感に襲われていた。
g-udon
値切って値切って買ったこのテレビは喜んでいるのだろうか。
バイン
どんなにテレビが薄くなっても、タマはテレビの上に乗ろうとする。
東ことり
タマが死んで、こたつが壊れた。
NCハマー
録画一覧から、ずっと消せない番組がある。
梃子
霧ヶ峰、家電やめるってよ。
みぽりん
最後の一粒まで美味しくありたい。それは全米の願い。
よしおう
途切れがちな眠りとテレビの気配がループしている。
TOKUNAGA
恥もハードディスクも一杯だった。
大伴
マッサージチェアの中に入る仕事をして三十年になる。
伊勢崎おかめ
エアコンが木目調では友達も招けない。
xissa
買って三日目、炊き上がりを知らせるメロディに歌詞がついた。
紀野珍
私と夫が言い合いを始めると、娘はテレビのボリュームで抗議する。
ミミズグチュグチュ
野生化したアイボに囲まれた。上空では野蛮なドローンが旋回している。
宵の舞
2時22分、今宵も不法投棄された物たちの宴が始まる。
ぬけさく
レーザーディスクを手放したのも、こんなゲリラ豪雨の日だった。
たこフェリー
「そなたが勇者か。我はセントラルヒーティング」
星空さん
刑は執行され、室外機は止まった。
義ん母
空気清浄機が自動で動き出し、戦場から帰還した私を音で出迎えた。
ぬけさく
沸騰するポットが歌うへんな歌。
xissa
音量1も2も大差なかった。
まじいい
向こうのエアコンがついた。
まじいい
使うたびに少し爆発する。
小夜子
軍人さん! 軍人さん! これ、マイナスイオン出るよ!
正夢の3人目
今回の応募作でもっとも人気のあった家電が冷蔵庫だった。ねもっ血風クンの「告白も謝罪も〜」は過ぎ去りし青春を振り返るようなドラマを感じる。相棒がオートバイではなく冷蔵庫というのがミソ。東ことり氏の「どんなにテレビ〜」とNCハマー氏の「タマが死んで〜」は奇しくも家電と猫の組み合わせ。たしかにこれ以上相性のいいコンビはない。みぽりん氏「霧ヶ峰〜」書き出し小説ではよほどインパクトがない限りパロディは採らないのだが、これは読んだ途端笑ってしまった。どの家電が噂してるんだ。

よしおう氏の「最後の一粒〜」も採用せざるを得ないネタ。上手い。宵の舞氏「野生化した〜」この退廃した近未来感。たこフェリー氏「レーザーディスク〜」レーザーディスクというかっこいい語感を活かす、そんなモチベーションからも作品が生まれる驚き。星空さん「そなたが勇者〜」も語感にインスパイアされたのだろう。まじいい氏は毎回ミニマルな良作を出す。小夜子氏「使うたび〜」それでも壊れないなんて。正夢の3人目氏「軍人さん!〜」戦地にこんなヤツがいたらスゲエうざい。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
元彼・元カノ
元彼、元カノ、周知の通り前につき合っていた彼氏、彼女のことである。嫌でもドラマができてしまうモチーフだと思う。恋愛ものにもなるし、犯罪ものにもなる。ノンフィクションの場合は古傷をえぐる作業になるだろうが、創作とは痛みを伴うものである。異性とつき合ったことがない人は妄想でがんばっていただきたい。締め切りは5月12日正午、発表は14日を予定している。下記の投稿フォームから自由、規定部門を選択し送っていただきたい。力作待ってます!

最終選考通過者

アルピニスト卑弥呼/Mch/あつし/もずく酢/尻炉/井沢/トミ子/チチカステナン号/ocamo/terayo/茂具田/ビールおかわり/まナツ/トミ子/加賀三文字/
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デイリーポータルZ新人賞

 

 
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