ロマンの木曜日 2016年5月12日
 

脱サラ養蜂家

「王台」は女王蜂になる幼虫が育てられる小部屋

ミツバチの社会構成もまた面白い。まず9割が働き蜂で、これは産卵しないメスだ。残りの1割は働かないオス蜂。そして、集団の中に1匹だけ女王蜂がいる。
こちらが女王蜂
こちらが女王蜂
師匠が嬉しそうに言う。「女王蜂は他の蜂と比べてお腹が大きいうえに、妙に色気があるんだよ」。

採れたてのはちみつも試食させてもらった。
周辺で満開になっているアカシアのはちみつ
周辺で満開になっているアカシアのはちみつ
これが劇的においしかった。蜂が一生懸命集めたものだと思うと、さらにありがたみが増す。

師匠と金子さんは、他にもいろいろと面白いものを見せてくれた。
シェルターのような「王台(おうだい)」
シェルターのような「王台(おうだい)」
「王台」は女王蜂になる幼虫が育てられる特別な小部屋。2匹の女王蜂は共存しないので、万一同じ巣箱の中にこれが2つあった場合は片方を取り除いてしまうそうだ(人工的に分離させる場合もあり)。
スナック菓子のような「王椀(おうわん)」
スナック菓子のような「王椀(おうわん)」
「王椀」とは女王蜂を育てるための「王台」のもとになるキャップのようなもの。この中に女王蜂候補だけに与えられるローヤルゼリーが溜まる。

また、ミツバチには分蜂、すなわち「巣分かれ」をする習性があり、この時期にはひとつの集団が2つに分かれ、片方は新たな巣を求めて出て行ってしまうことがよくあるという。

「低い草むらとかに作ってくれれば回収できますけど、けっこう高い木の上に作ることもあるので、その時はあきらめるしかないですね」(金子さん)
上の方に「分蜂群」が行ってしまうことがあるという木
上の方に「分蜂群」が行ってしまうことがあるという木

天然の「ミツロウ」はリップクリームになる

数時間ほどお邪魔したが、養蜂の世界は知らないことだらけだった。たとえば、荒れたミツバチをおとなしくさせるためには、麻の布を焚いた煙をかける。
昔ながらの「ふいご」を使用
昔ながらの「ふいご」を使用
ミツバチが作り出した天然の「ミツロウ」は化粧品、ろうそく、クレヨンなどの原料にもなる。
きれいな六角形で構成させる「ミツロウ」
きれいな六角形で構成させる「ミツロウ」
天然の「ミツロウ」を精製して汚れを取るとリップクリームになり、これは市場価格1500円ほどで売られている。
丸めるとそのままろうそくに
丸めるとそのままろうそくに
「ミツロウ」で作ったろうそくの炎は、夕焼けの色温度とほぼ同じなんだそうだ。自然界の神秘である。

どうやら刺されることはないとわかったら、周囲の景色も見えてきた。
久しぶりに見たヘビイチゴ
久しぶりに見たヘビイチゴ
キジは「ケーン」と鳴く
キジは「ケーン」と鳴く
師匠によれば、「キジの卵はすげえうまいから、囲いの中で飼ってる蜂屋が多いんだよ」とのこと。

「balance」という自身のブランドから発売

金子さんは、間口が狭い養蜂の世界を少しでも変えたいと考えている。その一環として、都心での養蜂を始めた。

「荻窪にある知り合いの家の屋上を借りて、ちょうど3週間前に2箱からスタートしました。都内でも花はけっこうあるんですよ」
屋上の養蜂場
屋上の養蜂場
世界的にもミツバチは減っているため、こうした都市での養蜂スタイルが注目されつつあるそうだ。
こちらにもぎっしりといた
こちらにもぎっしりといた
千葉と同様、女王がいるかを確認して、産卵状態をチェックする。その際に「王台」を見つけたらすべて潰す。
巣箱に貼ってあった「検査済証」
巣箱に貼ってあった「検査済証」
ミツバチの幼虫を全滅させる腐蛆(ふそ)病などの伝染病に侵されていないことを保健所が保証するものだ。

このようにして集めた金子さんのはちみつは、「balance」という自身のブランドから発売されている。飲食店などへの販路も徐々に広がっているという。
1本1980円(税込)
1本1980円(税込)
上のはちみつは、カラスザンショウの花の蜜。すっきりとした甘みの中にスパイシーで芳醇な味わいがあり、今まで食べきてたはちみつとは明らかに違う。

花とミツバチと人間と

ひょんなことから人生が大きく変わった金子さん。「まだまだ、これ1本では食っていけない」とはいうものの、将来的には養蜂に関するすべてのものを扱う商社的な方向性も考えているという。

折しも「JR高田馬場駅近くでミツバチが大量発生」というニュースが話題になったばかり。ミツバチたちは駆除されてしまったが、金子さんは「何も悪くないのにかわいそう。声をかけてくれれば回収しに行ったのに」と残念がっている。

花とミツバチと人間とが三位一体となって作り上げる養蜂との世界。甘さと厳しさが同居する、深い深いお仕事でした。
 蜂場をバックにポーズをキメる二人 蜂場をバックにポーズをキメる二人
蜂場をバックにポーズをキメる二人 蜂場をバックにポーズをキメる二人

<取材協力>
【Facebook】https://www.facebook.com/balance.tokyo.jp
【balance on the BASE】http://balance.theshop.jp

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