とくべつ企画「味が濃い」 2016年6月10日
 

超濃厚・超高級カルピスハイを楽しむ

お中元に頂いた品で、濃厚カルピスハイを作ります
お中元に頂いた品で、濃厚カルピスハイを作ります
世間的には「お中元」のシーズンらしい。「らしい」、というのは私自身お中元というものに無縁だからだ。社会に出て15年、そんなものを頂いた記憶は一切ない。贈ったこともないが。

その習慣自体も廃れつつあるのだろうが、単に私が贈るに値しない人物だという説もある。今年も期待はできまい。

自分で自分にお中元を贈ろうと思う。

(この記事はとくべつ企画「味が濃い」シリーズのうちの1本です)
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。
> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

お中元を自作自演

しかし遠い記憶をたどってみると、そういえば私が小学生くらいの頃はお中元やらお歳暮やらが父親宛てに届いていた。彼は一介のサラリーマンだったが、お中元を贈られる人物だったのだ。お中元レスな人生を送る息子として、改めて父の偉大さを思わずにはいられない。

モノがお菓子だったときは、4歳年上の兄との奪い合いだ。一方、調味料セットだったときのガッカリ感たるや(贈ってくれた人すみません)なかったなー。
自分にお中元を贈るため、やってきたのは日本橋の三越本店
自分にお中元を贈るため、やってきたのは日本橋の三越本店

三越でお中元を物色

お中元といえば百貨店。ということで、高級百貨店の三越本店にやってきた。 看板からして、いかにも「三越!」といった重厚な佇まいが醸し出されている。そんな「三越!」のお中元コーナーは、新旧、全国津々浦々の名品ギフトが揃い踏みし、まさに王道のラインナップである。
「三越!」かつ「帝国ホテル!」な詰め合わせ。どこに出しても恥ずかしくないギフトの中のギフト
「三越!」かつ「帝国ホテル!」な詰め合わせ。どこに出しても恥ずかしくないギフトの中のギフト
なお、父はこの帝国ホテルのカレーが好きで、お中元で届いたそばからたいらげてしまうものだから、子どもとしては残ったオニオンスープを苦々しくすするしかなかった(今はオニオンスープも大好きです)。

残念ながら父は私が社会人になる前に死んでしまったが、初任給で帝国ホテルのカレーをごちそうするくらいの孝行はさせてほしかった。


湿っぽくなった。お中元である。
先方の喜ぶ顔(自分)を想像しながらモノを吟味し、人生初のお中元を送った(自分に)。
後日、届いた。アマゾンから荷物が届くのも嬉しいが、その比ではない高揚感
後日、届いた。アマゾンから荷物が届くのも嬉しいが、その比ではない高揚感
かくして、人生初のお中元を拝受する。ありがとう、おれ
かくして、人生初のお中元を拝受する。ありがとう、おれ

お中元プレイ開始

写真では「なんだろう?」、みたいなツラをしているが、もちろん中身はわかっている。なぜなら私が買って、私が贈っているからだ。

だが、なんせ人生初なのだ。もう少しだけお中元プレイを堪能させてほしい。
デパートの紙ってなんでこんなにイイ匂いがするんでしょうか
デパートの紙ってなんでこんなにイイ匂いがするんでしょうか
手にとって重量感を確かめ、頬を寄せ包装紙の感触と香りを楽しむ。開ける前からすでに楽しいお中元。開けたら興奮で失禁してしまうのではないか。

さあ御開帳である(失禁はしませんのでご安心ください)。
カルピスや―
カルピスや―
う、うれしい…
う、うれしい…
子どもの頃、テンションが上がるお中元ナンバーワンといえば、それはもうぶっちぎりでカルピスだった。作り置きの麦茶しかない殺風景な実家の冷蔵庫に、カルピスというスター様がおいでなさるのだ。中だるみした夏休みの中盤に「カルピスギフト」なんか送られてきた日にゃあ、もうやばい。これから始まるカルピスとの日々を想像して、ヒマな夏休みが一気に華やいだものである。
信じられるかい? これが全部おれのものだなんて
信じられるかい? これが全部おれのものだなんて
最近は「カルピス北海道」なんてあるのか。北海道の生乳使用とな
最近は「カルピス北海道」なんてあるのか。北海道の生乳使用とな
さて、期せずして届いたこのカルピス(期してたけど)。幸い私は一人暮らしで、原液を奪い合う家人はいない。つまり独り占めだ。

どうしてくれよう。
右にもカルピス、左にもカルピス、まさにカルピス地獄。いや、地獄じゃない、天国天国
右にもカルピス、左にもカルピス、まさにカルピス地獄。いや、地獄じゃない、天国天国
包装紙は綺麗に折りたたむ貧乏性
包装紙は綺麗に折りたたむ貧乏性
さて、カルピスといえば一度やってみたかったことがある。
原液をグラスに注ぐ
原液をグラスに注ぐ
まだまだ注ぐ。今夜のおれは止まらない
まだまだ注ぐ。今夜のおれは止まらない
そう、少年の夢「原液だけカルピス」である
そう、少年の夢「原液だけカルピス」である
カルピスはご存じの通り、原液を水で薄めて飲む希釈用の液体である。だが、そんな理屈は子どもには通じない。カルピスビギナーだった小学校低学年の頃、通常5倍程度に薄めるところ、私は2倍くらいの濃度で作り、それはもう濃厚なカルピスを楽しんでいた。ほどなく、減りが異様に早いことに気づいた兄にぶっとばされたのは苦い思い出である。2倍カルピスは、あんなに甘かったのにね。

家族というコミュニティの一員である以上、原液を無駄遣いする暴挙は許されない。カルピスで社会性を学んだ子どもは私だけではあるまい。
そんな思い出を胸に、人生初の原液カルピス。残念ながら、学びがまったく生かされない大人になってしまった
そんな思い出を胸に、人生初の原液カルピス。残念ながら、学びがまったく生かされない大人になってしまった
濃厚〜
濃厚〜
「濃厚」。当たり前すぎる表現で恐縮だが、うまいとかまずいとかいう次元を超えた、圧倒的な濃厚が押し寄せてくる。この満足感は致死量を超えているかもしれない。

そして想像ほど甘ったるくはなく、意外とふつうに飲める。何よりカルピスの独占という体験は、暴君のごとき支配欲を満たしてくれてじつに気分がいい。
カルピス北海道も
カルピス北海道も
むろん原液でいく。「北海道を飲む!」、やはり強烈な満足感がある。うまいまずいではない
むろん原液でいく。「北海道を飲む!」、やはり強烈な満足感がある。うまいまずいではない
先ほどから呪文のように「うまいまずいではない」と繰り返しているが、単純に味だけでいうなら適度に水で薄めたほうがそりゃあうまい。だって希釈用なんだもの。でも、そんなことじゃない。そんな正論ばかり吐いていて人生楽しいかい? 原液カルピスは親元からの独立と自由の象徴、そしてロマンなのだ。
原液に氷2つ程度入れて「ロック」でいくのもいい
原液に氷2つ程度入れて「ロック」でいくのもいい
ロマンを堪能中
ロマンを堪能中

大人カルピスへの挑戦

とはいえ、私ももはや35歳。カルピスの濃い・薄いに一喜一憂するのは、不惑までに卒業せねばなるまい。

そこで大人の階段を上る第一歩として、もうひとつのお中元を自分に贈った。
祝うことは特にないが、のしをつけてもらった
祝うことは特にないが、のしをつけてもらった
三越の包装効果か、いかにも「良いもの」という雰囲気が漂ってくる。して、その中身は。
見るからにただものではない佇まい
見るからにただものではない佇まい
大分の麦焼酎「煌王」。その名にふさわしい気品が、見た目からしてほとばしっている。
御開帳。ワンルームにお越しいただきすみません、という気持ち
御開帳。ワンルームにお越しいただきすみません、という気持ち
ラベルには「樽とタンクでの貯蔵を味・色・薫りと三回に分け、時刻(とき)と手間をかけて熟成を試みた拘りの貯蔵麦焼酎です」とある。むう...。

自らを省みれば、そんなこだわった仕事は久しくしていない。これからはせめて、三回は原稿を読み返すようにしよう。
すみません、真面目に精進します
すみません、真面目に精進します
その「位の高さ」に思わずひるんでしまうが、意を決して飲んでみる。それもストレートで飲んでしまおう。どうせお中元(という体)なのだ。自分で購入したなら、水やお湯でちびちび割って何か月も持たせるが、頂きもの(という体)なのだから豪快に贅沢に、「濃い」原液を楽しみつくそうと思う。
まずは栓の香りをかぎ
まずは栓の香りをかぎ
しばし、うっとりと眺め
しばし、うっとりと眺め
しかるのち、ゆっくりと胃に含める
しかるのち、ゆっくりと胃に含める
ひゃー
ひゃー
ベタな四段落ちですみません。そして煌王様には伏してお詫び申し上げます。

私は酒が弱いのだ。43度のアルコールをそのまま飲み下せるほどの豪傑では全くなかった。(でも、この酒がいかに味わい深く、丁寧に丁寧に作られたものであるかはひと口でわかった)
そこで、再びカルピスの登場である
そこで、再びカルピスの登場である
このままではせっかくの素晴らしい酒が、文字通り宝の持ち腐れになってしまう。

というわけで、ここはカルピスに再登板願おう。カルピスの原液と煌王様で超贅沢な酎ハイをつくるのだ。
自分史上、最も贅沢なカルピスハイ
自分史上、最も贅沢なカルピスハイ
居酒屋でカルピスサワーを頼むのは躊躇してしまう(子どもみたいでかっこわるいから)私だが、これは大人のカルピスハイだ。
うまーい!
うまーい!
うまいのである。

原液と原液のぶつかり合いは喧嘩になるかと思ったが、実際には互いの良さを引き立て合う素晴らしい友好関係が結ばれる結果となった。

原液カルピスの濃厚なコクはそのままに甘ったるさは抑えられ、あとから煌王様の「慈愛に満ち溢れた神々しいばかりの味わい」(ラベルより)が追いかけてくる。これぞWin-Winというやつだろう。
これぞWin-Win。サミットの首脳たちに教えてやりたい(酔っぱらってきたのでヘンなことを書いています)
これぞWin-Win。サミットの首脳たちに教えてやりたい(酔っぱらってきたのでヘンなことを書いています)
では、グレープフルーツフレーバーのカルピスではどうか。これもカルピス1、煌王様1で調合してみる。
「子どもが生まれました」。写真館の家族写真みたいな雰囲気もある
「子どもが生まれました」。写真館の家族写真みたいな雰囲気もある
うまいの〜
うまいの〜
グレープフルーツの香りと酸味が加わり、こちらも大正解。よりライトでさわやかな味わいだ。深みはやや薄れたが、成熟しきっていない若かりし頃の煌王様の一面を垣間見た気がする(酔っているのでおかしなことを書いています)。
マンゴーカルピス原液×煌王様はフルーティーで濃厚な味わい。無論、至福である
マンゴーカルピス原液×煌王様はフルーティーで濃厚な味わい。無論、至福である
原液同士、「濃厚」×「濃厚」のぶつかり合いは、砂かぶりで結びの一番を見た後のような圧倒的な満足感をもたらしてくれた。濃いって素晴らしい。

まだまだ原液はたっぷり残っている。今年の夏は、家呑みが楽しすぎて仕事にならないかもしれない。

煌王様は我が家の一番高いところに鎮座しています
煌王様は我が家の一番高いところに鎮座しています
カルピスの濃い・薄いに一喜一憂するのは大人じゃないと述べた。だが、告白しよう。おそらく私は生涯、それに一喜一憂し続けるだろう。むしろ、年を重ねるほど、「一喜」のハードルは下がり続けているような気がする。このままいけば、箸が転げただけでそこはかとない幸せを感じるハッピーなじじいになることだろう。そのときは、超濃厚なカルピスを孫たちにふるまいたいと思う。
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