はっけんの水曜日 2016年6月15日
 

「日本一低い山」のぼり比べ

この規模の山の話です
この規模の山の話です
「日本一高い山」といえば、もちろん富士山である。しかしその逆、「日本一低い山」も当然存在する。
「低い山」界で著名な三低山、「天保山」「弁天山」「日和山」を登り比べてみた。
1983年徳島県生まれ。大阪在住。エアコン配管観察家、特殊コレクタ。日常的すぎて誰も気にしないようなコトについて考えたり、誰も目を向けないようなモノを集めたりします。

前の記事:「「JR全線乗りつぶし」ってどんな趣味?」
人気記事:「この「エアコン配管」がすごい!」

> 個人サイト NEKOPLA Tumblr

「日本一低い」とはいったい

「日本一低い山」がいくつかある、とさらっと書いたが、いきなり日本語として破たんしている。でもウソではない。そう書いてあるのだ。
騙されたと思ってちょっと見て欲しい。まずこれが、日本一低い山「天保山」
騙されたと思ってちょっと見て欲しい。まずこれが、日本一低い山「天保山」
こっちは、日本一低い山「弁天山」
こっちは、日本一低い山「弁天山」
そして最後は、日本一低い山「日和山」。どう見ても3つとも「日本一低い」って書いてある
そして最後は、日本一低い山「日和山」。どう見ても3つとも「日本一低い」って書いてある
これ、厳密には「○○という条件で、ここは日本一低い山」という、日本一低い山争奪戦が各地で繰り広げられているのである。
イメージとしては、名物によくある「初代」「元祖」「本家」の名付け方に近い。それくらいのニュアンスの違いである。ホテルでいえば、「本館」「別館」「新館」みたいな(ちょっと違うか)。
いろんな表示を見てまわると、どういう条件で日本一低いのか書いてあった。関係ないが、「単位がミリメートルやん!!」とセルフツッコミが入るのが大阪らしい
いろんな表示を見てまわると、どういう条件で日本一低いのか書いてあった。関係ないが、「単位がミリメートルやん!!」とセルフツッコミが入るのが大阪らしい
「一番じゃなきゃダメですか?」という有名なセリフ(?)がある。低い山に限っていえば、やっぱり一番じゃなきゃダメなのだ。「日本で二番目に低い山」だとアピールが弱くなるし、下手をすれば「日本で三番目に低い山」という、さらに微妙な立ち位置にもなりかねない(私はそんな微妙なのも好きだけど)。

しかし、このような曖昧な表示では登山者の誤解を招くおそれがある。などと国民生活センターのようなことを考えたので、それぞれどのくらい日本一なのか、順番に登って確かめてみた。

低い山の王様「天保山」

低い山に関心がなくても、天保山の名前は知ってる人が多いだろう。大阪の「海遊館」があるのが天保山(地域名)であり、その海遊館の横にひっそりとそびえるのが、日本一低い山「天保山」だ。
天保山の最寄り駅は、大阪市営地下鉄「大阪港駅」。市街地にあって交通の便がよいのが特徴で、駅を出ると視界にいきなり観覧車が現れる
天保山の最寄り駅は、大阪市営地下鉄「大阪港駅」。市街地にあって交通の便がよいのが特徴で、駅を出ると視界にいきなり観覧車が現れる
5分ほど歩いた先の突き当たりが運命の分かれ道。左へ行くと、家族連れでにぎわう海遊館へ。そして右へ行くと、天保山がそびえる公園に
5分ほど歩いた先の突き当たりが運命の分かれ道。左へ行くと、家族連れでにぎわう海遊館へ。そして右へ行くと、天保山がそびえる公園に
その、何の変哲もない公園入口。海が近い
その、何の変哲もない公園入口。海が近い
まずは公園の正面にある階段(13段)を上る
まずは公園の正面にある階段(13段)を上る
そのまま公園内の平地を直進
そのまま公園内の平地を直進
私の足で118歩、1分ほど歩いた先に、再び階段(8段)がある
私の足で118歩、1分ほど歩いた先に、再び階段(8段)がある
ゲートボールをしている地元の方々を横目に進むと……
ゲートボールをしている地元の方々を横目に進むと……
三角点と共に、山頂の表示が出現。お疲れさまでした
三角点と共に、山頂の表示が出現。お疲れさまでした
別に公園の案内をしていたわけではなく、これが天保山なのだ。

気になる標高は4.53メートル。いろいろと突っ込みどころはあるが、とにかく「山」感がないのが気になった。公園の一部というのもあって、ふもとからの高さを全く実感できないのが大きな理由である。

おまけに天保山の山頂よりも、公園内にある別の丘の方が高いのだ。
天保山山頂から望む、隣の丘(山ではない)
天保山山頂から望む、隣の丘(山ではない)
その丘の上から望む、天保山山頂。山とは何なのかを考えさせられる
その丘の上から望む、天保山山頂。山とは何なのかを考えさせられる
残念ながらずいぶん前に撤去されてしまったが、昔は丘の上に挑発的な看板があった(2001年撮影)。いい看板なので復活してほしい
残念ながらずいぶん前に撤去されてしまったが、昔は丘の上に挑発的な看板があった(2001年撮影)。いい看板なので復活してほしい

天保山は日本一低いのか

天保山の起源は、公園の入り口に日本画と共に記されている。なんでも、「川浚え(かわさらえ)の土砂を積み上げてできた」山らしい。つまりは、人工の山ということになる。
できた頃の天保山はこんな感じだったらしい。今とは比べものにならないくらい高い。地盤沈下によって、どんどん低くなっていったとのこと
できた頃の天保山はこんな感じだったらしい。今とは比べものにならないくらい高い。地盤沈下によって、どんどん低くなっていったとのこと
私は天保山に何度も訪れているので、ある程度の変遷が分かる。数年前までは、特に但し書きもない、本当に「日本一低い山」だった。
2011年の山頂。この頃は何の註釈もなく「日本一低い山」と書いてあった
2011年の山頂。この頃は何の註釈もなく「日本一低い山」と書いてあった
風向きが変わったのは、2014年のこと。天保山よりも低い「日和山」が、国土地理院に山として認定されたのだ。日和山についてはこのあと訪問するので、詳しくは後ほど。
そしてどうなったかというと、「二等三角点のある山の中では日本一低い山」になった。この注釈は、今のところ商店街に設置されてる看板にだけ書いてあった
そしてどうなったかというと、「二等三角点のある山の中では日本一低い山」になった。この注釈は、今のところ商店街に設置されてる看板にだけ書いてあった
知名度も、そして低さも間違いなく日本一だった天保山。それが突如あらわれた(なぜ突如あらわれたのかも後で分かる)日和山によって、王者の座を奪われてしまったのだ。ああ、なんと過酷な日本一争いであることよ。

というわけで、天保山は厳密には「日本一低い山」ではなかった(日本で二番目に低い山)。
しかし、地元ではいまも「日本一低い山」として親しまれている。私も天保山には馴染みがあるので、無下に二番目と呼ぶのも気が引ける。ここはひとつ、「日本一低い山の一種」ということにしておきたい。
商店街のお店に行くと登頂証明書がもらえた。都会にいながらにして気軽に登山気分が味わえるスポット、それが天保山
商店街のお店に行くと登頂証明書がもらえた。都会にいながらにして気軽に登山気分が味わえるスポット、それが天保山
日本一低い山・天保山(4.53m)
大阪府大阪市港区築港3丁目2番
!

孤高の存在「弁天山」

次に紹介する「弁天山」は、四国・徳島県にある。私の地元でもあるため、実は毎年正月に登山している馴染みの山だ。もうかれこれ10年くらい元旦登山を続けている。
JR牟岐線「地蔵橋駅」から約1kmほど行った田んぼの真ん中に、突如出現するこんもりとした緑色。これが、日本一低い山「弁天山」である
JR牟岐線「地蔵橋駅」から約1kmほど行った田んぼの真ん中に、突如出現するこんもりとした緑色。これが、日本一低い山「弁天山」である
天保山とは対照的に、まわりには田んぼや畑といった、のどかな風景が広がっている
天保山とは対照的に、まわりには田んぼや畑といった、のどかな風景が広がっている
登山道の入り口に鳥居があるのが特徴。山頂に神社があるのだ
登山道の入り口に鳥居があるのが特徴。山頂に神社があるのだ
最近では、富士山の世界遺産登録を祝う看板が出ている。日本一低い山として、日本一高い山をリスペクトする姿勢が見られる
最近では、富士山の世界遺産登録を祝う看板が出ている。日本一低い山として、日本一高い山をリスペクトする姿勢が見られる
富士山をかたどったライトアップをしていた時期もあった。よほどの富士山好きとみてとれる
富士山をかたどったライトアップをしていた時期もあった。よほどの富士山好きとみてとれる
登山道もわかりやすい。鳥居をくぐると、山頂まではゆるやかな石段が続くので、そこを道なりに登るだけ
登山道もわかりやすい。鳥居をくぐると、山頂まではゆるやかな石段が続くので、そこを道なりに登るだけ
山の左側から見るとこんな感じ。人がいるところが山頂
山の左側から見るとこんな感じ。人がいるところが山頂
登山時間は約15秒。山頂には、記帳所(左)と祠(右)が鎮座していた
登山時間は約15秒。山頂には、記帳所(左)と祠(右)が鎮座していた
ここは天保山と違って、登山しているときに一応「山を登っている」という実感があった。また、周囲が田んぼや畑ばかりなので、山のこんもりした感じも際立っていて素敵だ。
家にジオラマを飾りたいと思うほどに、弁天山は愛おしい山である。
山頂からの景色はこんな感じ。こうしてみると、そこそこ高さがあるように感じる
山頂からの景色はこんな感じ。こうしてみると、そこそこ高さがあるように感じる
ちなみに山頂の記帳所の中には、かつて登頂したという福山雅治と、
ちなみに山頂の記帳所の中には、かつて登頂したという福山雅治と、
キンタロー。の写真(わざわざポスターを作ったのか?)が貼ってあった。先の富士山リスペクトもそうだが、こういうミーハーなところが田舎っぽくて良い
キンタロー。の写真(わざわざポスターを作ったのか?)が貼ってあった。先の富士山リスペクトもそうだが、こういうミーハーなところが田舎っぽくて良い
賽銭箱に取り付けられた、謎の盗難警報器のことも気になる
賽銭箱に取り付けられた、謎の盗難警報器のことも気になる
毎年登っているので分かるのだが、昔はこのようにただの木の賽銭箱だった(2005年撮影)。何があったんだ弁天山
毎年登っているので分かるのだが、昔はこのようにただの木の賽銭箱だった(2005年撮影)。何があったんだ弁天山
そして肝心の低山競争については、天保山など我関せずといった感じで、堂々と「日本一低い」を自称している。もちろん、天保山を抜いて日和山が日本一になった今でも、弁天山は揺るがない孤高の存在を気取っている。なぜなのか。

弁天山は日本一低いのか

弁天山の標高は6.1メートル。天保山の4.53メートルと比べると、実に1.3倍もの高さがある。高い! いや、正確には低いけど、高い。
しかし、弁天山にはある特徴があった。ふもとに設置されている由来の看板を見てみると……
「自然で古来よりある山では」日本一低い、という但し書きが。ここに書かれている他の低い山というのが、「天保山」と、この後に紹介する「日和山」だ
「自然で古来よりある山では」日本一低い、という但し書きが。ここに書かれている他の低い山というのが、「天保山」と、この後に紹介する「日和山」だ
思い出して欲しい。天保山は、川浚えの土砂を積んだ人工の山だった。自然にできた山である弁天山は、そんな人工山なんて端から相手にしてなかったのである。

たしかに人が土を盛れば、そこが低い山になる。人が盛ったかどうかで山の価値が決まるものではないが、同列で比較するのは難しい。自然にできた低い山が、それをアピールするのは納得のいく話である。

弁天山は、厳密には「日本一低い山」ではない。純粋に高さを比べると、日本で三番目である。しかし、自然にできた山として大きなアドバンテージがあるので、弁天山もやはり「日本一低い山の一種」ということになるだろう。
弁天山にも登頂証明書があって、山の向いにあるラーメン屋でもらうことができる(10年前にもらっていた)
弁天山にも登頂証明書があって、山の向いにあるラーメン屋でもらうことができる(10年前にもらっていた)
日本一低い山・弁天山(6.1m)
徳島県徳島市方上町弁財天8番地1
!
さて、最後はたびたび名前が出てくる「日和山」へ。

 ▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓