チャレンジの日曜日 2016年6月26日
 

書き出し小説大賞 第101回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。
> 個人サイト バカドリルHP 天久聖一ツイッター

お持たせしました!ついに今月30日、書き出し小説第二弾「挫折を経て、猫は丸くなった」が発売になります!こんな表紙の素敵な本になりました。猫好きの方が間違えて買ってくれますように。
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Amazonではすでに予約がはじまっております(リンク)。また7月14日は神楽坂で発売イベントを開催。いま話題の落語家、立川吉笑さんが書き出し小説と真っ向勝負してくれるそうです。こちらもチケット予約受付中です(リンク)。よろしくお願いします!
それでは今週もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

つま先から広がった波紋は頭上で消えた。
小夜子
あいつだけ、下の名前で怒られていた。
三が三つ
ヒーローの通夜に大勢の怪人が参列した。
kwsk
病気が治るのではないかと期待させるほど、サドルが熱くなっている。
松井チェリー
「大丈夫……」静かに頷いた君は、燃え盛るシマ腸を凛と見つめた。
よろ肉悪臭
なんのプライドだか知らないけど、父は迷子センターではなく遺失物センターにいた。
猫背脱却物語
読経する和尚を中心にぐるぐると亡霊たちは競歩をやめない。
ろっさん
小蝿が夏をつれてきた。
大伴
勇気を出して、僕は月を褒めた。
文豪ボナパルト
「おまっとさんでした」その言葉でボクは刑期を終えた。
祝儀は二千円
列伝に入りませんか、と誘われホテルまで来た。
マークパン助
お酢の力で君を守りたい。
ゆも
玉虫色の回答と微苦笑を残して、取引先は底なし沼へと消えた。
ボーフラ
何だ? この小さいどうでもいい部屋は?
maruta
悲しかったり、金縛りにあったり、悲しかったり。
トミ子
増量分くらいこぼした。
xissa
けっきょく世界は終わらなかった、と先に言っておこう。
緑ミサ
小夜子氏「つま先から〜」映像的な想像はもとより体感までさせる秀作。水中から見上げる波紋。松井チェリー氏「病気が〜」サドルの熱さをこんなふうに表現した文章は初めて。たしかに痔には良さそう。猫背脱却物語氏「なんのプライドか〜」本当になんのプライドか分からない。文豪ボナパルト氏「勇気を出して〜」夏目漱石の元ネタありきだが、ネタ元とヒネリ方が絶妙。マークパン助氏「列伝に〜」フック(引っ掛かり)のある言葉を入れ込むのは書き出しテクニックの定番。「列伝」には強烈なフックがある。ただしこの口説き方でホテルに誘えるとは思えない。maruta氏「何だ?〜」は一文すべてがフックになっている。人は誰もが「どうでもいい小部屋」に戸惑った経験がある。トミ子氏「悲しかったり〜」悲しさを一瞬忘れさせてくれるのが金縛りというのが切ない。xissa氏「増量分〜」のプラマイゼロ感。緑ミサ氏「けっきょく〜」一時流行ったセカイ系とはなんだったんだろう。

つづいては規定部門、今回のモチーフは「アメリカ」だった。いい意味でバカ&大味な作品が集まりました。

書き出し規定部門・モチーフ「アメリカ」

おまえ、どこ州?
suzukishika
ハンバーガー屋のメニューには『アメリカンジョーク $0』と記載されていた。
流し目髑髏
そうだ。シカゴ、行こう。
顔でか
アメリカに留学して3年。ついに「チキン野郎」と罵られた。
もんぜん
「ニューヨーカー」とは、日本で言う「関西人」に当たる。
イワモト
ロースカロライナ州にも、ようやく忍者教室が開講した。
prefab
ブロードウェイでは立ちションすら「表現」だ。
g-udon
「なんだ,ちっとも自由の国じゃないじゃないか」彼は頭部に天狗と般若の面,股間に白鳥をつけたまま拘置所で呟いた。
ひゅうがじ
こんなコンテストまであるのか。
まじいい
ガックリと肩を落とした私に、ボブはそっとポップコーンが入ったバケツを差し出した。
NCハマー
劇場のポップコーンの落ちたものを拾うとちょうど1人分になる。
五月雨のパンツ
左手にはスナック菓子を抱え、ソフトクリームを持った右手は高く掲げられている。
東ことり
残ったケーキは五つ、リボルバーの残弾は四つだった。
タクタクさん
乳首浄瑠璃、アメリカ公演が今、上演された!
黒パプリカ
「サプリメント先進大国」──その本当の意味を、僕はもうすぐ思い知ることになる。
密偵
思ったのと違う味がしたので訴訟した。
ウチボリ
荷物を運んでくれてありがとう。でも訴えるわ。
terayo
「アメリカのおかしいる?」娘がポテトチップスを持ってきた。
山本ゆうご
テレビで外国が映る度に「アメリカ?」と聞いてきた娘が留学した。
偶数の指達
泣いて全米になった。
マークパン助
泣いた全米がもう笑った。
マエカワグリオ(再)
受話器の向こうで、全米は泣いていた。
大伴
全米がなついた。
xissa
アメリカに対するイメージというと、まずはバカで陽気、ハンバーガーに銃社会、なんでも訴訟など、これだけ影響力のある国ながら日本人はいまだアメリカに対してステレオタイプなイメージしかないように思う。採用作はそういった定番ネタをいつもよりストレートに表現した作品が多かった。suzukishika氏「おまえ、どこ州?」日本での県民性のようにアメリカにも州民性はあると思う。アメリカにもシュウミンショー的な番組はあるのだろうか。顔でか氏「そうだ、シカゴ、行こう」急に思い立って工業地帯に行きたくなることもあるだろう。五月雨のパンツ氏「劇場のポップコーン〜」こういう貧乏くさい発想が大好き。最後は一番多かった「全米が泣いた」ネタを集めてみた。全米と赤ちゃんは泣くのが仕事。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「変身」
変身といえばヒーローや魔女っ子、カフカの「変身」などが浮かぶ。また変身とはなにも外見ばかりではない。内面的な変身もあるだろうし、同窓会であった異性が思いのほか素敵に、またはその逆に変身していることもある。フィクションとしての変身からリアリズムを感じる変身まで、幅広い作品が集まりそうである。あなたなりの変身を見せて欲しい。締め切りは7月8日正午、発表は同月10日を予定している。下の投稿フォームから自由部門、規定部門を選択して送って欲しい。力作待ってます!
最終選考通過者

ひとりすごろく/ラクイチ/ぴすとる/unnnunn/あつし/Yuzie/うきごり/ビールおかわり/卯村/アメリカンざりがに/うにねこ/ocamo/雨の日は寝る/ウウタルレロ/いがそ君/義ん母/ONZE108/merumo/やのけん/茂具田
デイリーポータルZ編集部からのお願い

冒頭でも紹介した書き出し小説第2弾「挫折を経て、猫は丸くなった」を掲載されたかたにお送りいたします。新潮社から書籍を提供いただきました!

該当のかたには連絡をしておりますが、一部、連絡がとれないかたがいらっしゃいます。このペンネームで投稿したかたは投稿した時期と作品を書いて編集部までご連絡ください。

DON / hit4 / HSKN / KESHI / KOB / おこめ / くわ / げっつぁん / シノ / にゃーころ / ファームかずと / 藤 / まんた / もめん / ユーリ / ヨーヨー大会 / 電荷じゃがいも / 日向

編集部連絡先:dailyportal@list.nifty.co.jp
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