特集 2016年7月1日

「へ」を捨てる専用のゴミ袋がある

「へ」を売っている地域に行きます!
「へ」を売っている地域に行きます!
ゴミ袋というものがある。ゴミを入れて捨てる袋なのだけれど、地域によっては、指定のゴミ袋があり、さらに燃えるゴミ用の袋や、不燃物用のゴミ袋など、意外と細分化されている。

そんなゴミ袋のひとつに「へ」専用のものがある。その袋は「へ」以外を捨てることが許されず、しかも非売品で、その地域の人しか手に入らない。そして、その地域では「へ」が熱いのだ。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

火山灰の降る街

鹿児島県と言われて何を思い浮かべるだろうか。芋焼酎、カルカン、屋久島、西郷さん、などが浮かぶだろう。ただ忘れてならないものがある。これを書いている地主が幼少期を過ごした場所であり、さらに桜島があることだ。
鹿児島には桜島があります!
鹿児島には桜島があります!
桜島である。今なお活発に活動する火山であり、子供の頃、小学校から毎日桜島を見ていたし、よく爆発していた。ただ爆破に驚きはない。夏は熱い、砂糖は甘い、桜島は爆発する。そのように当たり前のことなのだ。
よく爆発してるんです、彼(桜島)
よく爆発してるんです、彼(桜島)
桜島が爆発すると「灰」が降る。火山灰である。鹿児島では雨や雪、ミゾレやヒョウだけではなく、「灰」も降るのだ。雨や雪との違いとして、火山灰は溶けたり、流れていったりは基本的にしないこと。つまり捨てる必要があるのだ。
ということで、鹿児島中央駅にやってきました!
ということで、鹿児島中央駅にやってきました!
そして、これが火山灰です!
そして、これが火山灰です!

「へ」の降る街

駅前のゴミ置き場にある黄色い袋。これが鹿児島市にだけある「克灰袋」である。鹿児島市に住んでいる人しか手にいれることができないレアな袋だ。そして、火山灰しか捨てることのできない袋でもある。
これです!
これです!
火山灰が入っています!
火山灰が入っています!
この袋こそ「へ」を捨てる専用のゴミ袋だ。鹿児島は辞書が必要なほど独特の言葉が成立している。「灰」は鹿児島弁で「へ」なのだ。よって、この黄色い袋は「へ」を捨てる専用の袋ということになる。黄色いというところに何か偶然性を感じる。
鹿児島弁で「火山灰」は「へ」と言います!
鹿児島弁で「火山灰」は「へ」と言います!
そして鹿児島市のあちこちに、
そして鹿児島市のあちこちに、
「へ」専用の袋に入ったへが捨てられています!
「へ」専用の袋に入ったへが捨てられています!
火山灰を克服すると意味で「克灰袋」と名付けられた、「へ」専用のゴミ袋。10キロの重みにも耐え、数年で自然の中に溶ける素材であり、地元の方の話では、どこの工場で作られているのかは公表されていないそうだ。袋にも「非売品」と書かれ、ゴミ袋なのにレアな感じがする。
レアな袋です!
レアな袋です!
非売品です!
非売品です!

「へ」の有効活用

市内のあちこちに「へ」がある風景は珍しいものだ。子供の頃は別に不思議に思わなかったけれど、久しぶりに訪れた鹿児島では不思議な空間に感じた。火山灰を「へ」ということも不思議だけれど。
街のあちこちに、
街のあちこちに、
へ!
へ!
「へ」は確かに住んでいると不便なものだけれど、観光客として鹿児島を訪れて初めて気がついた。商魂たくましいのだ。火山灰を商品として扱っているのだ。博多の「通りもん」、東京の「東京バナナ」みたいに「へ」がお土産屋の棚に並ぶのだ。
「へ」を売っていました!
「へ」を売っていました!
星の砂のように「へ」が売られていた。鹿児島では当たり前なので、欲しいと思ったことはなかったのだけれど、お土産である。火山灰を見て、「キラキラで綺麗!」みたいなことはないけれど、お土産なのだ。
缶詰にもなっていました!
缶詰にもなっていました!
中はもちろん「へ」
中はもちろん「へ」
火山灰だし、「へ」だし、綺麗と思ったことはないけれど、火山灰も顕微鏡で見ると、クラスで2番手グループの2番手みたいな美しさがある。それが「へ」なのだ。そう思うと確かにお土産で買いたくなる。
「へ」は綺麗!
「へ」は綺麗!
「克灰袋」もお土産になっている。もちろん袋を売るわけにはいかないので、グッズにしている。住んでいた頃は、「克灰袋」はポストに入っていたり、市役所でもらえたりしたので、欲しいと思ったことはないけれど、鹿児島を離れた今は欲しくなる。
克灰袋もグッズになっていました!
克灰袋もグッズになっていました!
もちろん食べ物にもなっている。「へのアイス」である。「へ」がアイスになる時代なのだ。ちなみに蝿も鹿児島弁では「へ」である。鹿児島は「へ」が降り、「へ」が飛び回る場所なのだ。
「へ」のアイス!
「へ」のアイス!
黒いですね!(へがモチーフなだけで、本当のへは入っていないそうです)
黒いですね!(へがモチーフなだけで、本当のへは入っていないそうです)

「へ」だらけの街

鹿児島はこのように「へ」だらけの街である。桜島を生かしきっていると言っていいかもしれない。今年は爆発が少ないそうだ。少ない方がいい気がするけれど、鹿児島の方に話を聞けば、小さい爆発があった方が、大きな爆発がなさそうでいい、と言っていた。
美しいですね!
美しいですね!
やっぱり大きな爆破はすごいもので、大正時代の爆発では、鳥居がほぼ埋まってしまっている。「へ」はすごいのだ。「へ」を捨てたり、「へ」を売ったりなど、鹿児島では「へ」との共存が必要なのだ。
噴火で埋まった鳥居
噴火で埋まった鳥居
この記事で散々「へ」と言ってきたけれど、最近の若い人は使わないそうだ。私も鹿児島に住んでいたけれど使ったことはない。ただ今になって思う。「へ」って言いたいじゃん。わっぜ、へと言いたい。ちなみに「わっぜ」は「すごい」みたいな意味。これはよく使う。
ぽつねんと「へ」専用袋が落ちているのが、
ぽつねんと「へ」専用袋が落ちているのが、
鹿児島の風景!
鹿児島の風景!

非売品の袋

人は不思議なもので、非売品と言われると急に欲しくなる。それが「へ」専用と聞くとさらにだ。そして「へ」自体も欲しくなる。ということで、へを大量に買って帰った。今もうちにあるのだけれど、今となっては、これに何に使うんだ、となっている。
「へ」の採取もした
「へ」の採取もした
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