ちしきの金曜日 2016年7月1日
 

地下鉄路線の匂いを嗅ぐ「嗅ぎ鉄」・大阪編

大阪市営地下鉄の「嗅ぎ鉄」チャート(暫定版)
大阪市営地下鉄の「嗅ぎ鉄」チャート(暫定版)
大阪に行って地下鉄に乗るたびに思うことがある。「東京と匂いが違うなー」と。

東京と大阪の違いという以前に、地下鉄路線によって匂いが違うのではないか。たとえば東京だと丸ノ内線は鉄っぽくって、千代田線は有機っぽくって、東西線は潮っぽい香りの印象がある。

一方、大阪だと御堂筋線は古い家の匂いで、中央線は土っぽいイメージ。なんとなく。

せっかく大阪に来たので、確かめてみよう。「嗅ぎ鉄」大阪版である。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。
> 個人サイト 住宅都市整理公団

しょっぱな降りる駅を間違える

郵趣にかわって趣味界の王様の座を占めた感のある鉄道趣味。「乗り鉄」「撮り鉄」などのカテゴリーがあるが「嗅ぎ鉄」はあるのだろうか。

オープンエアな地上の路線ではなく、より香りを楽しめる(と思われる)地下鉄を舞台に「嗅ぎ鉄」を行ってみよう。今回まずは大阪市営地下鉄だ。東京や名古屋や上海でもいずれやろう。ロンドンでもやればよかった

やり方は簡単。地下鉄をぐるぐる乗り換えて、匂いを嗅いで印象をメモする、というだけだ。いわゆる官能検査である。
今回嗅ぎまわった経路。9つの駅で7つの路線の香りを堪能した。(大阪市交通局ホームページの路線図に加筆)
今回嗅ぎまわった経路。9つの駅で7つの路線の香りを堪能した。(大阪市交通局ホームページの路線図に加筆)
まずはやっぱり御堂筋線だ。しかし梅田は人の匂いが強すぎる。より純粋な「鉄臭」を味わうためにもうちょっとひとけの少ない駅まで行ってみよう。 とりあえず南下だ。

で、しょっぱなから降りる駅の選択を間違えた。雰囲気で「大国町」で降りてしまったのだ。

降りた途端、梅田とは違う匂いがして「やった!ちゃんと匂いがする! これが御堂筋線の匂いだ!」と思ったが、見たらここ四つ橋線とホーム空間が一緒だった。これでは路線ごとの個性を味わうことができないではないか。しまった。
大国町駅。となりに四つ橋線ホームが。これでは匂いを分離できない。初歩的ミス。ちなみに乾燥して砂っぽい香りがした。
大国町駅。となりに四つ橋線ホームが。これでは匂いを分離できない。初歩的ミス。ちなみに乾燥して砂っぽい香りがした。
ともあれ、意識して嗅いでみるとやはりちゃんと匂いがする! と手応えを得たのでよしとしよう。

隣の「動物園前駅」に行ってみよう。
こうやって思ったことをメモしていきます。
こうやって思ったことをメモしていきます。

動物園前駅・祖父母の家の匂い

ホームの壁画がかわいい。
ホームの壁画がかわいい。

ここ動物園前駅も堺筋線との乗換駅だが、ホームの場所は別々なのでよしとしたい。むしろ急いで堺筋線ホームに行けば、匂いの記憶が新しいうちに比較できるという利点がある。

天王寺駅より先のあびこ駅あたりまで行けば他路線との乗り換え駅でない「純粋御堂筋線駅」を嗅ぐことができるが、なんというか、ぼくがイメージしているザ・御堂筋線の匂いって梅田〜動物園前の間にある気がするのだ。

あと、あびこ駅とかに行っちゃうと戻ってくるのがめんどうだし。

などと言い訳を考えつつホームに降りた。

するととたんに押し寄せてくる香り。明らかにさっきとちがう匂いだ! おもわず顔がほころぶ。おちつけ、と眼を閉じて胸一杯に動物園前駅ホームの空気を吸い込む。
大きくホームの空気を吸い込む。しっかり嗅ごうとすると自然に眼が閉じる。そして壁画の猿がかわいい。
大きくホームの空気を吸い込む。しっかり嗅ごうとすると自然に眼が閉じる。そして壁画の猿がかわいい。

湿っている。かすかに、だが明らかに何かの匂いがするのだが、うまく表現できない。

なんか懐かしいにおいだ。

古い畳の匂い?

祖父母の家の匂い、とでも言ったらよいだろうか。
キリンかわいい。
キリンかわいい。

長い目で見てほしい「嗅ぎ鉄」

言葉にするのがたいへん難しくはあるが、予想以上にしっかりと嗅細胞に訴えてくる個性。

そのあまりにもしっかりとした嗅ぎ心地に、「これは御堂筋線の匂いではなく動物園前の匂いかもしれない」とはやくも企画の骨子を揺るがす疑惑が脳裏をよぎった。

しかもホーム上の位置を変えたら匂いが変わったではないか。階段付近は仁丹っぽい香りがする。

路線別の匂いどころか、駅ごとですらないとなると、これはどうしてよいものやら。考えてみれば、さらに時間帯や時代、季節や天気によって違ってくる可能性もじゅうぶんある。どうしよう。
出口付近で香りが変わった。仁丹っぽい! 見上げたら空調がある。これのせいか? だとすると「空調のそばでは嗅がない」というホーム上サンプリング場所に関するルールを制定した方がいいかもしれない。
出口付近で香りが変わった。仁丹っぽい! 見上げたら空調がある。これのせいか? だとすると「空調のそばでは嗅がない」というホーム上サンプリング場所に関するルールを制定した方がいいかもしれない。
いや、例えば人間だって機嫌が良い日とそうでない日、仕事の時間とプライベートの時間、子どもの時と大人になってから、などそれぞれ違う見た目と振る舞いをする。

しかしそれでも、同じひとりの人としての個性が貫いているように、路線にも通底する匂いがあるはずなのだ。そう信じたい。

とにかく、まだ「古い畳」「仁丹」は同じカテゴリーにあるような気もするので、目下判断は保留しよう。そして暫定的に「御堂筋線は祖父母系の香り」としておこう。

「路線によって匂いに個性がある」というのが単なる思い込みの可能性は高いが、デイリーポータルZは論文ではないのである。きわめて非科学的だが、それをいうなら血液型占いとか水素水の方が先である。とがめる順番ってものがあるだろう。

趣味としてまだよちよち歩きの「嗅ぎ鉄」だ。少しずつ作法や手法を育てていこうではないか。

ウイスキーやワインの評価のよう

はやくも自信をなくし逆ギレ気味だが、先に進もう。

「おばあちゃんち、おばあちゃんち」と呟きながら急ぎ足で同じ動物園前駅の堺筋線ホームへ向かう。忘れないうちに。

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