ロマンの木曜日 2016年7月14日
 

坂とハンバーグを測量する

我ら測量ブラザーズ!
我ら測量ブラザーズ!
関東平野に含まれるとはいえ、東京の地形は起伏に富んでいる。都内には、かなり急勾配の坂も多い。中でも、ずっと気になっているのが文京区の目白通り脇にある「胸突坂」だ。見上げると思わず「おお」と声が出る。いったい何度ぐらいあるのか。勾配の角度を測ってみた。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!
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あたかも梯子を上るような急勾配

とはいえ、分度器で測れるわけではないので素人には手が出ない。そこで今回は、測量会社に勤務する人物の全面協力を仰いだ。
五島鉄平さん(35歳)
五島鉄平さん(35歳)
じつは彼、有名なハンバーグマニアでもあり、そちらの方面で以前取材をさせてもらった時に聞いた本業の測量トークが興味深かったのだ。

企画の趣旨を説明すると、「何ですか、それ! ハンバーグより全然面白いじゃないっすか!」と乗り気である。

さっそく、日取りを決めて決行しよう。師匠、よろしくお願いします。
会社の車に測量機器を積んで師匠登場
会社の車に測量機器を積んで師匠登場
ネットで都内の急坂を検索してみると、新宿7丁目の「梯子(はしご)坂」がもっとも勾配が急だという情報を得た。まずは、そちらに行ってみる。
坂の上に到着
坂の上に到着
標識には「あたかも梯子を上るような急勾配なので、この名前が付いた」とある。

そういえば、刑事ドラマで測量士の変装で張り込みをするシーンを見たような気がしますが、実際あるんですかね?

「いや、一箇所にそんなに長時間いないので無理でしょう」
我ら測量ブラザーズ!
我ら測量ブラザーズ!
師匠が作業着を貸してくれるというので期待していたところ、「すみません、下を忘れました」とのこと。僕だけ中途半端なリゾート感が漂っているが、文句は言えない。
ポールに付いている反射鏡
ポールに付いている反射鏡
測量機器から光波(レーザー)を反射鏡に当てて、距離や角度を計測するという。細かい原理も教えてくれたが、難しすぎてよくわからなかった。
水平を取る気泡菅
水平を取る気泡菅
いよいよ、勾配角度の計測である。

地主さんや不動産屋からの依頼がほとんど

坂の下に光波トランシットという測量機器を置き、僕は反射鏡の付いたポールを持って坂の上に立つ。光波トランシットは250万円ぐらいする。
光波トランシットのレンズを覗く師匠
光波トランシットのレンズを覗く師匠
ちなみに、街中で測量していると近隣の住民からよく声をかけられるそうだ。

「一番多いのは『何が建つの?』という質問。一戸建は歓迎だけど、誰が住んでいるかわからないアパートは敬遠されがちなんです」
頂上でポールを持つ弟子
頂上でポールを持つ弟子
「出ました」と師匠が言う。

梯子坂の勾配は15度だった。ネット情報ではもう少し急だったのだが、計測ポイントの選び方などによって数値に若干のバラつきが出るという。
90度から74.59度を引いたのが勾配角度
90度から74.59度を引いたのが勾配角度
わりと地味な結果になってしまった。「まあでも、しょうもない坂ですよ」と師匠もご不満の様子。そもそも、石段である時点で坂とは呼べない気もする。

「僕、すごい急坂を知ってるんで、そこ行ってみましょう」と師匠。よくよく聞けば「胸突坂」のことだった。おお、行きましょう。
測量ブラザーズの旅はまだまだ続く
測量ブラザーズの旅はまだまだ続く
「仕事の測量では、地主さんや不動産屋からの依頼がほとんど。土地の面積を決めるために境界を表す杭を打つんですが、杭の種類もめちゃめちゃ多くて、それ専門のマニアもいるほどです」

立ち止まって「ほら、これが境界杭です」と師匠。
コンクリート杭の横に新しい金属杭
コンクリート杭の横に新しい金属杭
金属杭の左上辺は「ここまでが道路」ということを示す。師匠が持っている赤鉛筆は「トンボ2200」で、コンクリートにガリガリ書いても芯が折れない硬度を誇るプロ仕様なのだ。

さらに、近くにあった段差スロープ板についても言及する。
段差の衝撃をなくすスロープ板
段差の衝撃をなくすスロープ板
「同じ段差スロープ板でも、コンクリート製、鉄製、プラスチック製といろいろあって、これにもマニアがいます」

あらゆる世界にマニアはいる。

光波トランシットは距離も測れる

胸突坂に着いた。

以前、この坂をハイヒールを履いて上って「急坂もハイヒールで上ればちょうどいい按配なのでは?」という記事を書いた気がするが、検索しても出てこないので夢だったのかしら。
写真で見る3倍ぐらいの急勾配です
写真で見る3倍ぐらいの急勾配です
神田川と目白台を結ぶ坂で、上り切ると学生時代の村上春樹が住んでいた和敬塾がある。
「師匠、イケてますね」「うん、いいですね」
「師匠、イケてますね」「うん、いいですね」
しかし、計測の結果は13度。「梯子坂」を超えられなかった。
無念
無念
ところで、この光波トランシットは距離も測れる。
右の赤いマンションまでの距離を測ってみる
右の赤いマンションまでの距離を測ってみる
「適当な壁にレーザーを当ててみてください」
当てている
当てている
すると…。
117.6メートル
117.6メートル
すごい。細かい原理も教えてくれたが、難しすぎてよくわからなかった。

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