特集 2016年8月5日

ヘボコン直前!不器用な人が作ったロボット中間報告

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ロボットなんて作れない人たちが、自作の「自称・ロボット」を持ち寄り無理やりロボットバトルをする、そしてそれをみんなで見守るイベント、ヘボコン。
いよいよ今週末、初の世界大会「ヘボコン・ワールドチャンピオンシップ2016」を開催する。

いよいよ大会直前ということで、出場者(全員不器用!)から送られてきた、ロボットたちの製作工程を一挙ご紹介いたします!
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

前の記事:新兵器「撃てるメガネ」

> 個人サイト nomoonwalk

イベント詳細
ニフティ30周年プレゼンツ
ヘボコン・ワールドチャンピオンシップ2016
8/7(日) 18:00~
※チケットは完売。当日券が出る場合はTwitter等でお知らせします。

ニコニコ動画(日本語)、YoutubeLive(英語)にて生放送を行います。
詳細はこちら↓
https://dailyportalz.jp/b/cs/stream/detail/160802197103/1.htm

出場ロボット紹介

まずは期待のルーキー、チーム「おしょうゆ」の事前構想を見てほしい。
イベント1か月前には数々の部品を取りそろえ、すでに準備万端。
イベント1か月前には数々の部品を取りそろえ、すでに準備万端。
ハイテクノロジーペナルティ(技術力の高すぎるロボットはペナルティを受けるルール)回避のため手加減を宣言する余裕ぶり
ハイテクノロジーペナルティ(技術力の高すぎるロボットはペナルティを受けるルール)回避のため手加減を宣言する余裕ぶり
完璧な設計
完璧な設計
本気すぎないか、これは技術力の低い人のためのイベントだぞ…。
という周囲の心配をよそに、緻密に設計されたロボットの実装は着々と進んでいる…かのように思われた。
かくしてイベント2週間前、7/18にアップされた最新画像。
4番に注目。全然違うものができてきてる…
4番に注目。全然違うものが出来てきてる…
製作過程で、一度ふりだしに戻った感。
そして週末に本番を控えた今週、僕の元に1通のメッセージが届いた。
あきらめた…ッ!
あきらめた…ッ!
事前の壮大な構想、途中で変更になる設計、そしてあきらめの早さ!

技術的な稚拙さだけでなく、作り手の意志の弱さや集中力のなさも重要な評価ポイントとなるのが、最近のヘボコンのトレンドである。
その点、イベント開始前から非の打ちどころのないパフォーマンスを見せつけてきた出場者であった。

つづいて別チームの作業風景もどんどん紹介していこう。
ロボットはまだ出来てないのですが、発射するお寿司ミサイルにネタを仕込むために、DMM.make AKIBAの超音波カッターを使わせてもらって、シャリをくり抜きました。 寿司爆弾をどうやって発射させるかが問題ですが、輪ゴムか何かで天高く舞い上がらせれるように頑張ります!(Tさん)
ロボットはまだ出来てないのですが、発射するお寿司ミサイルにネタを仕込むために、DMM.make AKIBAの超音波カッターを使わせてもらって、シャリをくり抜きました。 寿司爆弾をどうやって発射させるかが問題ですが、輪ゴムか何かで天高く舞い上がらせれるように頑張ります!(Tさん)
「口を動かす前に手を動かせ」というフレーズがあり、現場派の人間にとっては金言とされている。

しかしヘボコンになるとそれも度を越して、仕組みを考える前から作り始めてしまう。口ではなく、「頭を動かす前に手を動かす」という状況。聞きなれた言葉に言い換えれば「行き当たりばったり」である。

超音波カッターというハイテクな工具を惜しげなく投入したうえでなお、見る側に心配を余儀なくさせるプレーヤー。果たして寿司は本当に飛ぶのか!?
概形がぼんやりできました! たぶん象さんと(一応)豚さんは合体します。動力を強くするのとボディーの軽量化が今後の課題です(narajo☆mekabuチーム)
概形がぼんやりできました! たぶん象さんと(一応)豚さんは合体します。動力を強くするのとボディーの軽量化が今後の課題です(narajo☆mekabuチーム)
機体自体を見ると、この時点ではまだ完成形が見えず、未知数という感じ。

しかしながら、散らかった机の上の狭い空きスペースで作るという作業スタイルは、不器用な人独特のものである。初出場のチームながら、みなぎるポテンシャルを感じざるを得ない。
イカプロペラが出来ました。美しいです。(ちいとゆう)
イカプロペラが出来ました。美しいです。(ちいとゆう)
万華鏡のごとく、点対照に広がるイカの姿。それを美しいと感じる気持ちは理屈としてはわかるものの、残念ながらパッと見は完全にラフレシア系である。匂いが強そうなところも共通。
さらに絵のインパクトで見落としそうになったが、コメントに「プロペラ」と書いてある。まさか飛ぶ気なのか。イカで!?
いったん広告です

ほんとに世界大会になった

ここで参加チームの内訳を見てもらおう。

世界大会とか言って、どうせ日本チームばっかりなんでしょ?北海道や九州は離島だから海外!とか言ってお茶を濁すんでしょ?と(主催者自身も)思いきや、ふたを開けてみたら海外から12チームもの応募があった…!

日本 ... 20
香港 ... 4
ハンガリー ... 1
シンガポール ... 1
アイスランド ... 1
フランス ... 1
台湾 ... 1
国際チーム(米国 & 日本) ... 1
国際チーム(フランス & 日本) ... 1
国際チーム(ギリシャ & 日本) ... 1

はるばる海を越えてきてくれる海外チームからも、一部のロボットをご紹介しよう。
GO TEAM ICELAND(Nicolas Kunysz & Ragnheidur Elisabet Thridardottir)
GO TEAM ICELAND(Nicolas Kunysz & Ragnheidur Elisabet Thridardottir)
カラフルでポップな機体の、機首に飾られた人形は天使か女神か。

しかしよく見るとトンボのような4枚羽根をテープで無理やり翼に作りかえたようにも見える。優雅と力技、そして雑さの競演。あと足元を見るとモーターが直結されていて、超高速で回りそう。意外にバイオレンスな攻撃方法を秘めているかもしれない。
I might make this angry uncle this time(Kit Man)
I might make this angry uncle this time(Kit Man)
香港からは4チームがやってくる。「怒ったおっさんを作る」という彼の構想図は完全に日本のトラディショナルなおっさん像だ。八の字眉の表情でツツツと前進するさまは、アングリーというより申し訳なさそうな感じもする。むしろ守ってあげたい気持ちになってくる。

ちなみに彼は過去2回のヘボコン香港の出場経験者であり、過去の出場機がこれだ。
本気のangryが来た
本気のangryが来た
もしかしたら今回も、スケッチに反してめちゃくちゃ怖いおっさんが出てくるかもしれない。

続いて香港からもう1チームご紹介しよう。
これは去年香港ヘボコン出場用のロボット「カップヌードルキング」。私は二代目を作っている、モーターパワーが強化します、ダブル必殺技がある。(Luar Yen)
これは去年香港ヘボコン出場用のロボット「カップヌードルキング」。私は二代目を作っている、モーターパワーが強化します、ダブル必殺技がある。(Luar Yen)
日本語でメッセージをくれたLuarは昨年のヘボコン香港の出場者で、写真は去年の作品。フォークとスプーンをぐるぐる回転させて戦うマシンだった。

よく海外の持ち出し/持ち込みで禁止品として話題になるカップラーメンだが、パワーアップしたカップヌードルキングが空港で没収されないことを祈る。

国際協力


今回は日本チームと海外チームのほかに、インターナショナルチームという制度がある。日本に来られない外国人に、日本人とペアになってロボットを作ってもらい、当日は日本人が出場するというシステムだ。

今回は3つの国際チームが登場するが、そのうちの1チームをご紹介しよう。
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アメリカ×日本のインターナショナルチーム”Hebomate”の日本担当、じきるです。 ヘボコン当日に着用する衣装の一つ「P◯lysics風シルバー目線ゴーグル」が完成しましたのでご報告します。 ちなみにロボットはまだ一切手付かずです。よろしくお願いします。
アメリカ×日本のインターナショナルチーム”Hebomate”の日本担当、じきるです。 ヘボコン当日に着用する衣装の一つ「P◯lysics風シルバー目線ゴーグル」が完成しましたのでご報告します。 ちなみにロボットはまだ一切手付かずです。よろしくお願いします。
完全に形から入るタイプのチーム、登場である。
ちなみにこれが投稿された時点で、当日までのこり2週間。大丈夫かよ…とおもっていたところ…
インターナショナルチーム「Hebomate」のじきるです。アメリカの相方と連絡が途絶えて早10日…このままではやばいと思い、とりあえずヘボコンお馴染みのタミヤのキットを買いました。
インターナショナルチーム「Hebomate」のじきるです。アメリカの相方と連絡が途絶えて早10日…このままではやばいと思い、とりあえずヘボコンお馴染みのタミヤのキットを買いました。
この時点で当日まであと5日。ほぼ日本チームと化したHebomate。逆境に負けず頑張ってほしい!
ヘボコンワールドカップ用ロボットの設計図を描きました(モッサリオ・モッサモッサ)
ヘボコンワールドカップ用ロボットの設計図を描きました(モッサリオ・モッサモッサ)
日本チームの話に戻ろう。こちらは初回ヘボコンでDPZ賞を受賞したモッサリオさん。今回はかわいい猫型ロボットで参戦である。

上の写真が設計図。そしてできてきたのが下のロボット。
ねこへいき「ぬぁんころり」本体完成しました。明日からコントローラを作ります
ねこへいき「ぬぁんころり」本体完成しました。明日からコントローラを作ります
話が違う。顔が「異形」としか言いようがないし、体も猫というよりどちらかというと箱に乗ったナメクジである。

普通のロボットイベントなら書類審査で落とされそうなロボットだが、ヘボコンなら国際大会で日本代表。なんて懐の広いイベントなんだ…、と他人の作品を踏み台にして自画自賛してしまうほどのクオリティである。早く動くところを見てみたい。
流行りの人工知能をロボットに組み込みたいと頑張っています! 進捗はダメです!(Yさん)
流行りの人工知能をロボットに組み込みたいと頑張っています! 進捗はダメです!(Yさん)
めちゃくちゃぼんやりした設計図を書いてきた。設計というよりほぼ概念図みたいな感じである。ところが、何日か後…
ロボットの動作確認しました!
ロボットの動作確認しました!
「AI」って書いてあるけど、書いてあるだけだ。形だけのジャンク基盤を入れるとか、脳の模型を入れるとか、そういうギミックを仕込む色気すら出してこない。手抜きもここまで来ると潔さを感じる。

ただ、見切れているがマシン上方に何かついているような雰囲気がある。まだ隠し機能がありそうなので本番に期待したい。

つづいては同じキャタピラタイプだが別チームのマシン。
ロボットの心臓部、タミヤ製レスキュークローラーが完成。 プラモデル?を初めて作った。 組み立て方が良くなかったせいかまっすぐ走らない。(Aさん)
ロボットの心臓部、タミヤ製レスキュークローラーが完成。 プラモデル?を初めて作った。 組み立て方が良くなかったせいかまっすぐ走らない。(Aさん)
外装の試作機1号、前進、後退、回転動作は問題なし。 カッターナイフを安全に使うため定規を購入すること。
外装の試作機1号、前進、後退、回転動作は問題なし。 カッターナイフを安全に使うため定規を購入すること。
試作機2号を制作、試作機1号に1kgのウェイトを乗せて対戦テスト実施。 試作機2号に1kg乗せると50cmの移動に約8秒かかった。
試作機2号を制作、試作機1号に1kgのウェイトを乗せて対戦テスト実施。 試作機2号に1kg乗せると50cmの移動に約8秒かかった。
初めてのプラモデル、定規を購入することなど、工作に不慣れな様子も読み取れつつ、一方で移動速度を計測するなどそつのない一面も。
いずれにせよ、ここまでハードボイルドな匂いを漂わせていた製作記録は、次の写真で一変する。
ロボットの外装が完成しました。組み合わせて完成させます。名前は「ティッピー&モフルン号」としました。素材はプラスチックシートと布テープです。
ロボットの外装が完成しました。組み合わせて完成させます。名前は「ティッピー&モフルン号」としました。素材はプラスチックシートと布テープです。
カワイイー!

まさかのメチャカワ展開。そして同時に雑。なんたって組み立てが全部テープである。透明テープにするみたいな配慮もなく、べっとりと白テープ。

この雑とかわいさを高度に兼ね備えたビジュアルは、過去2年間のヘボコンではなかった新機軸である。
ゴングを叩いて、その勢いでマシンを移動させる。これなら鳴らすことと移動が両立できて、しかも分かりやすい。(aba)
ゴングを叩いて、その勢いでマシンを移動させる。これなら鳴らすことと移動が両立できて、しかも分かりやすい。(aba)
こちらは初回のヘボコンでオオグソクムシ型ロボをひっさげ出場したabaさんから。

今回は「音の鳴るマシン」をコンセプトに、ゴングを叩く力で前に進む設計。(余談だが、ヘボコン出場者の画力が全員おなじレベル(低い)、というのは面白い現象だと思う)

で、中間報告としてアップされた動画がこれ。
前に進まない…。木槌を後ろに押す段階ですこし後ろに下がってからゴングを叩いてちょっと前に行く。すごい。慣性の法則は実在した。
「勢い」とか「重さ」とか「遠心力」とか、これらは電気を使わなくても使えるのでヘボコン向きと思われがちだ。しかしこっらは実は電気よりもっと険しい「物理」の世界の概念なのだ。安易にあてにすると最終的に地獄を見やすい。

ぜんぜんちゃんと動いてないのに、ゴングの音だけ、妙に凛とした心洗われるような音色なのも笑える。このロボットは製作記録がアップされているのでこちらもどうぞ。

ニフティロボ登場

最後に、僕が作ったロボットもご紹介しよう。このヘボコン・ワールドチャンピオンシップは、弊社ニフティ株式会社30周年のイベントなのだ。ということで、登場するのが「ニフティロボ」である。

ニフティロボはトーナメントには出場しない、予備のロボだ。出場者がロボットを失った場合に登場する。

たとえば、他のイベントではあまり聞かない話だが、ヘボコンではなぜか時折ロボットを家や電車に忘れてくる出場者がいる。
あとは、試合中に大破してどうにもならない状態で勝ち抜いてしまうこともあるかもしれない。そういう場合に登場する予備のロボットが、このニフティロボなのである。
右の「30」をあしらったロボが、ニフティロボ本体。左のミニ四駆はサブ機で、通称「プラズマお客様」。
右の「30」をあしらったロボが、ニフティロボ本体。左のミニ四駆はサブ機で、通称「プラズマお客様」。
明るいところではわかりにくいが、プラズマお客様はプラズマボールを搭載。
明るいところではわかりにくいが、プラズマお客様はプラズマボールを搭載。
ニフティロボの必殺技「プラズマキャノン」発射風景を動画で見てもらおう。
ニフティロボがお客様の背中を押し、(お客様の夢である)プラズマキャノンを発射する。ニフティのコーポレートメッセージである、「With Us You Can(ニフティとなら、きっとかなう)」のフレーズを見事に体現した連携業である。そして最後に文字で現れるコーポレートメッセージ。

これで強かったらヘボコンなのに完成度高すぎだが、どう見てもギミックに力入れすぎてて試合のことを考慮していない。誰もロボットを忘れず、実戦投入の機会がないことを祈るばかりである。

というわけでいくつかのロボットをご紹介したが、これらはほんの一部である。当日は32体のロボットが登場し、数々のどうでもいい試合が展開されるはずである。乞うご期待!

というわけでもう一度イベント概要

ニフティ30周年プレゼンツ
ヘボコン・ワールドチャンピオンシップ2016

8/7(日) 18:00~
チケットは完売。当日券が出る場合はTwitter等でお知らせします。

ニコニコ動画(日本語)、YoutubeLive(英語)にて生放送を行います。
詳細はこちら↓
https://dailyportalz.jp/b/cs/stream/detail/160802197103/1.htm


前日はミニヘボコンも

それから、前日8/6(土)にはMaker Faire Tokyoにてミニヘボコンも開催します!
こちらは作業スペースがありその場で作って戦えるイベント。当日参加できる回もあります。
詳しくはこちらをご覧ください→https://dailyportalz.jp/b/kiji/160701196895_1.htm

ワールドチャンピオンシップに限らず、ヘボコンの最新情報はこちら(国内向け)こちら(グローバル)をチェックしてください!
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