チャレンジの日曜日 2016年8月7日
 

書き出し小説大賞 第104回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。
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昨日からはじまったリオオリンピック。素晴らしい開会式だったが、素晴らしければ素晴らしいほど、4年後の東京が不安になってくる。果たしてゆるキャラとAKBだけでもつのだろうか。あとはEXILEと初音ミク、小林幸子はがんばってくれるだろう。コロッケのロボ五木を世界にお披露目するにはいい機会かもしれない。入場は歩きスマホで決まり!……期待の百倍不安の多い4年後である。
それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しよう!

書き出し自由部門

携帯も通じない田舎で、だらしなく法事が始まった。
ボーフラ
坊主が夏を反射している。
terayo
猫との隙間が開き、エアコンの設定温度を一度下げた。
夏猫
正午の通り雨は悲劇しか生まなかった。
井沢
バイキンマンを、素直に頭を下げられない自分に、重ね合わせてアニメをみた。
ぬけさく
彼の故郷をあした滅ぼす。
小夜子
教室のオフホワイトのカーテンの大きく膨らむ中にいました。
suzukishika
花びらのなか、一片の蝶の羽根は真似るように落ちていく。
雨の日は寝る
どんな哲学者の言葉よりも、母の溜め息が胸に刺さった。
八重樫
ワープ炊きボタンを押すことで、一人だけ、炊きあがり時間に移動することができる。
マークパン助
セミの抜け殻7つ集めて、セミを蘇らせる。
五月雨のパンツ
中盤のオセロで圧倒しているときのような不安があった。
うぃけっと
吉田のスキップは見る者を不安にさせる。
鳥船
宝くじを当て急に大金を手にした私には、昨日まで心酔していた詩人が狂人にしか見えなくなった。
プレミアムバザー高田
ちくわでタピオカを飲むような人だった。
東ことり
ジャンピングジャック亭フラッシュ師匠が寄せに出られなくなってもう半年になる。
BUTAMAN
夕陽が一瞬だけ見せる緑色は、あの子の泣き顔に見えた。
うにねこ
手を突っ込んだトートバッグに夏の熱気がはいっていた。
xissa
あんな大きさの定礎、あるんだ。
井沢
ボーフラ氏「携帯も通じない〜」terayo氏「坊主が〜」夏にはスクーターの坊主がよく似合う。ぬけさく氏「バイキンマンを〜」これを読んで変態ジャムおじさん目線でアンパンマンを観ていた自分を思い出しました。小夜子氏「彼の故郷を〜」切なくも甘い秀作。マークパン助氏「ワープ炊きボタン〜」誰もいない自宅へ帰りワープ炊きを押す自分を想像したら塩辛いものが頬を流れました。うぃけっと氏「中盤のオセロ〜」不安を表す比喩として覚えておきたい名句。プレミアムバザー高田氏「宝くじを当て〜」逆にハリウッドセレブの奇行に深く共感するようになった。東ことり氏「ちくわでタピオカ〜」モテる変態。BUTAMAN氏「ジャンピングジャック亭フラッシュ師匠〜」原因は客席への度重なるダイブ。井沢氏「あんな大きさ〜」定礎。今夏定礎ブームの予感。

つづいては規定部門。今回は夏恒例の「書き出し怪談」スナック感覚の恐怖をお楽しみにください。

書き出し規定部門・モチーフ「恐怖」

誰もいない廊下を歩いている私は、誰でもない。
東ことり
キャッチボールをする親子の影が一つ足りない。
ビールおかわり
途中から俺の葬式だった。
八重樫
あじさいだと思っていたものは、人間の顔の集合体だった。
もんぜん
この家には、開かずのジャム瓶がある。
タクタクさん
スマホから手のひらサイズの貞子が出てきた。
ぐるりん
スマホの画面に現れた霊は、スワイプしたら消えた。
イワモト
そいつはあの世を裏アカと呼んだ。
義ん母
振り向いたら、だめだ。だ メにな  。ル
Yuzie
エッシャーの階段で、見知らぬ女に追いかけられる。
ぐぬぬぬぬ
ラテアートが彼女の事故を予言していた。
紀野珍
うらめしいという感覚があんまりよくわからない。
xissa
怖くて繋いでいた彼の手から重量感が無くなった。
g-udon
「お前だあ!」彼は誰もいない方向を指差した。
義ん母
おそるおそるサロンパスを腰に貼ってやると、老人の霊は安らかな顔を浮かべて消えた。
コンパスゼット
サルマタに浮かぶ奇妙なシミは、いくら洗っても落ちなかった。
TOKUNAGA
「シロはつめたいの。冷凍庫あけたら、かーちゃん、ころすよ。」
けー
センター街には、釣り糸を垂らしてあくびをする悪魔がいた。「この辺は釣れますか?」
chaki
百話目がプロポーズだった。
NCハマー
「お分かり頂けるだろうか、この水槽のグッピーの半分が幽霊である」
prefab
「わかりません、わかりません」と繰り返し、一つ目小僧は遮眼子を置いた。
きつね
先にシャワーを浴びたぬりかべはもう冷たい。
ヘリコプター
明け方の吉野家は百鬼夜行を終えた妖怪達でいっぱいだった。
くのゐち
数えていたお皿が足りてしまった。
こうちゃん
冷蔵庫と壁の隙間から出てきた女は隙間のかたちをしていた。
伊勢崎おかめ
四方から伸びた白い手が、牌をまぜる。
大伴
カラオケボックスのラップ音は、やがて本格的なラップに変わっていった。
夏猫
水も空気もきれいな土地の霊は、すぐわかる。
suzukishika
叔父の怪談は、結局のところ猥談だった。
morin
セグウェイ婆ちゃんは壁の向こう側へ消えた。
茂具田
ブラジルの幽霊は肩をくんでくる。
正夢の3人目
同窓会で一番はしゃいでいたアイツは結局誰だったのだ。
吉田髑髏
妻を旧姓でググった。
ウチボリ
「御社だ!」
大伴
ビールおかわり氏「キャッチボールをする親子〜」戻ってきたお父さんの霊だろうか、泣ける系の怪談。もんぜん氏「あじさいだと〜」人面あじさい、伊藤潤二のタッチで浮かびました。ぐるりん氏「スマホから〜」イワモト氏「スマホの〜」アプリ化する霊。Yuzie氏「振り向いたら〜」文体で臨場感を出す。xissa氏「うらめしいという感覚〜」ゆとり霊。けー氏「シロはつめたいの〜」死んだペットのことだろうか。読み手無視の台詞が電波系の恐怖をかき立てる。NCハマー氏「百話目が〜」同じ墓に入るんじゃ〜〜 ヘリコプター氏「先にシャワーを〜」ぬりかべなのに不倫っぽい、なんだこれw こうちゃん「数えていたお皿が〜」ケアレスミス。伊勢崎おかめ氏「冷蔵庫と壁の〜」ポスト貞子になれる逸材だと思う。suzukishika氏「水も空気も〜」霊は自然のバロメーター!morin氏「叔父の怪談〜」本当にあったエロい話。茂具田氏「セグウェイ婆ちゃん〜」新しい都市伝説。正夢の3人目氏「ブラジルの幽霊〜」オリンピックの開会式にも百体ほど紛れていた。大伴氏「御社だ!」接待怪談のオチにどうぞ! それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「夏の食べもの」
夏ならでは食べものと言えば、スイカ、アイス、冷やし中華、冷や麦など、いろいろある。飲み物系なら冷たい麦茶、凍ったポカリスエット、青いカクテルやサイダーも夏っぽい。あと縁日で食べるイカ焼きや、りんご飴なんかも情緒がある。まつわる思い出、エピソードのこもった作品を期待します。締め切りは8月19日正午、発表は8月21日を予定しています。下の投稿フォームから自由部門、規定部門を選んで投稿ください。力作待ってます!
最終選考通過者

ミミタロ/Mch/さとつん/もずく酢/宵の舞/自称芸術家/松っこ/たこフェリー/街路樹
デイリーポータルZ編集部からのお願い

冒頭でも紹介した書き出し小説第2弾「挫折を経て、猫は丸くなった」を掲載されたかたにお送りいたします。新潮社から書籍を提供いただきました!

該当のかたには連絡をしておりますが、一部、連絡がとれないかたがいらっしゃいます。このペンネームで投稿したかたは投稿した時期と作品を書いて編集部までご連絡ください。

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編集部連絡先:dailyportal@list.nifty.co.jp
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