とくべつ企画:むりやり○○ 2016年8月12日

牛乳やラードで作る軍隊式の甘いクリーム

レシピを元に作ってみました。確かに甘いクリームだ。しかも結構うまい。
レシピを元に作ってみました。確かに甘いクリームだ。しかも結構うまい。
旧日本陸軍の作成したレシピに「牛乳クリーム」という料理が出てきます。牛乳や小麦、砂糖の他にラードを使って作る甘いクリームです。

牛乳や小麦、砂糖までは分かります。更にラード?なぜ入れる。そんな物入れて大丈夫なのか?甘いクリームを作るのになぜそんなものをむりやり入れる。揚げ菓子ならともかく、クリームにラードとは。

味を確かめる為、実際に作って試してみました。意外にもこれが美味しかった。

※この記事はとくべつ企画「むりやり○○」のうちの1本です。ライターがいろいろなことにむりやり挑戦します。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

前の記事:グミを溶かしてクリープを入れるとハイチュウが出来る

> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

嘗め物の項目に出てきます

以前、「軍隊料理は不思議でうまい」という記事で「復刻 軍隊調理法」という本を紹介しました。
1982年発行。昭和12年7月26日陸軍省検閲済み「軍隊調理法」の復刻本。
1982年発行。昭和12年7月26日陸軍省検閲済み「軍隊調理法」の復刻本。
こちらの本に先日再び目を通していた時の事。とある料理の材料に目が留まりました。
牛乳クリーム。なぜラード?
牛乳クリーム。なぜラード?
牛乳クリームという料理です。ジャムなど、パンにつける副食のレシピを掲載した嘗め物の項目に出てきます。材料は以下になります。
牛乳(または練乳を5倍に薄めたるもの) 90ml
ラード 8g
卵 20g
小麦粉 10g
レモン香料 少々
砂糖 20g
作り方は以下になります。
たった3行のレシピ。
たった3行のレシピ。
「鍋にラードを溶かして小麦を入れ、塊なきようじゅうぶんに煉り合わせ、徐徐に牛乳を入れてのばし、やや薄き糊状となして砂糖を入れ、最後にじゅうぶんに泡立てた卵および香料を入れて混ぜ合わせ、火より下ろす。」

これだけです。

そして、材料と作り方を見て思いました。「これ、大体カスタードクリームと同じじゃないか?」と。
カスタードクリームの作り方は例えばこちらのサイト。
レモン香料ではなくバニラであることや、ラードを使わない点。材料を入れて行く順番以外、大体同じことがわかります。なぜラードが入るのか?
レシピ通り、分量を量って作る。実際の戦場ではそんなことはしていなかっただろう。
レシピ通り、分量を量って作る。実際の戦場ではそんなことはしていなかっただろう。
パンを作る時には生地をしっとりとさせる為にラードを入れることがあるそうなので、このクリームでもそういう効果があるのか?

とにかく作ってみます。
ラードを溶かして小麦粉投入。少し焦げたので火から離す。
ラードを溶かして小麦粉投入。少し焦げたので火から離す。
徐徐に牛乳を入れてのばす。
徐徐に牛乳を入れてのばす。
  薄い糊状になったら砂糖投入。三温糖使いました。
薄い糊状になったら砂糖投入。三温糖使いました。
泡立てた卵を投入。通常カスタードクリームでは卵黄のみですが、特に記述がないので全卵を使用。
泡立てた卵を投入。通常カスタードクリームでは卵黄のみですが、特に記述がないので全卵を使用。
香料入れてよく混ぜ合わせ火から下して出来上がり。
香料入れてよく混ぜ合わせ火から下して出来上がり。
出来上がったものを皿に移し、冷蔵庫に入れて冷やしてから食べてみました。
見た目は大体カスタードクリーム。香りはほんのりレモン。
見た目は大体カスタードクリーム。香りはほんのりレモン。
卵と砂糖と牛乳の甘い香りの中にほんのりレモンの香りがします。特に油臭いというような事はありません。
おおっ、懐かしい感じでなかなかうまいな!
おおっ、懐かしい感じでなかなかうまいな!
食べてみると、通常のカスタードクリームに似ていますが、もう少し甘さや卵の味に濃さがあり、爽やかなレモンの風味で終わります。

子供の頃、半分駄菓子屋のようなパン屋に並んでいたワッフルの中に入った、独特の風味のあるカスタードクリーム(風?)を思い出しました。

素朴で懐かしい味がします。思った以上にうまい。油のしつこさなど感じず、パンに塗って美味しく食べられます。

脱脂粉乳だとどうなるのだろう?

牛乳クリームはなかなかうまいクリームでした。

と、ここで一つ思った事があります。このレシピは軍隊で使われていた物。もしかすると、牛乳と言っても通常の液体状の牛乳ではないかもしれません。
最近の脱脂粉乳は美味しく出来ています。
最近の脱脂粉乳は美味しく出来ています。
通常の牛乳の代わりに脱脂粉乳でも試してみました。調べたところ、カスタードクリームは脱脂粉乳でも問題なく作れるようなので、牛乳クリームも脱脂粉乳で出来るでしょう。
ちゃんと分量はかります。
ちゃんと分量はかります。
牛乳と同量のお湯に脱脂粉乳を溶かした物を使う以外、作り方は全く同じです。

出きたものがこちら。
見た目は大体同じ出来上がり。
見た目は大体同じ出来上がり。
使った卵の黄身の部分が多かったのか、やや色は濃くなったものの香りや硬さなどは牛乳の時と変わりません。
脱脂粉乳バージョンもなかなかうまいね!
脱脂粉乳バージョンもなかなかうまいね!
味も牛乳で作る物と大体同じです。カスタードクリームよりもやや味が濃く、玉子の甘さとレモンの風味がどこか懐かしい。

あえて言うなら、牛乳よりも脱脂粉乳を使った物の方が、やや口当たりが軽い気がします。

油を変えるとどうなる?

牛乳でも脱脂粉乳でも牛乳クリームは同じように作れました。では、更にラードではなく他の油でも出来るのか?
植物性油を使用。
植物性油を使用。
脱脂粉乳を使い、更にラードの代わりにオリーブオイルを使って牛乳クリームを作ってみました。
作り方は全く同じ。
作り方は全く同じ。
牛乳を同量の脱脂粉乳に。ラードを同量のオリーブオイルに変える以外は全く同じように作ります。出来たのがこちら。
やや柔らかく、色も薄目。
やや柔らかく、色も薄目。
香りに違いは感じませんが、ラードを使った物よりもやや柔らかく仕上がりました。色も少し薄いです。
やや軽めだが、これはこれでうまいか。
やや軽めだが、これはこれでうまいか。
食べてみると、ラードを使った物よりも甘味などは軽く感じます。通常のカスタードクリームと同等か、やや軽いぐらいにも思えます。レモンの香りが前に出て強く感じられるので、そう思えたのかもしれません。

全体としては軽い風味の牛乳クリーム。これはこれで美味しくたべられます。植物油でも問題ないようです。

カスタードクリームとはまた違う美味しさ

牛乳を脱脂粉乳に変えても、ラードをオリーブオイルに変えても牛乳クリームは作る事が出来ました。ラードや牛乳を使う事によって、感じる味の強さが変わるので、好みで使い分けるといいかもしれません。

結局のところ、カスタードクリームと同じ材料になぜラードを足したのか。栄養価を高める為、調達出来る材料の問題など何かあったとは思うものの、正確なところは思いつきませんでした。

これはこれで懐かしく美味しい味だったので、よしとします。
ごま油でもやってみようかと思いましたが、流石に香りが強く出そうなので止めました。
ごま油でもやってみようかと思いましたが、流石に香りが強く出そうなので止めました。
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