とくべつ企画:むりやり○○ 2016年8月16日
 

いつもの電車でむりやりビール列車

いつもの電車でビールを楽しんだ
いつもの電車でビールを楽しんだ
日本各地に鉄道各社が企画するビール列車というイベントがある。車窓を楽しみながらビールが飲めるという多幸感溢れる企画列車だ。一度は乗ってみたいが、どの企画も人気が高く定員も限られている。おいそれと参加できるものではなさそうだ。だったらいつもの電車でむりやりビール列車を楽しんでしまえばいい。例えば京浜急行で。

※この記事はとくべつ企画「むりやり○○」のうちの1本です。ライターがいろいろなことにむりやり挑戦します。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。
> 個人サイト すみましん

出発は泉岳寺、特急券のいらない列車で

むりやりビール列車を実行すべく、僕と林さんは泉岳寺駅で待ち合わせた。泉岳寺から三崎口方面の下り列車に乗り、車窓とビールとおつまみを楽しむ予定だ。

事前に、僕はビール係で林さんがおつまみ係と決めていた。ビール係として、350ml缶を6本、クーラーボックスに用意している。1人約1リットル飲める計算である。
約2リットルのビールを用意
約2リットルのビールを用意
14時の約束だったのだが、林さんは約束の時間よりも10分早く泉岳寺に到着していた。むりやりビール列車に対するはやる気持ちが表れている。
約束の時間より10分も早く来ていた林さん
約束の時間より10分も早く来ていた林さん
泉岳寺のホームで林さんと合流すると、

「さっき、13時55分に全部前向きのクロスシートの列車が来たんですよ。それを待ちましょう」

と報告があった。クロスシートとは、中央の通路を挟んで2人掛けの座席が配置されているタイプで、確かに、その方が新幹線のようで旅のムードが高まる。新幹線で飲むビールが格別にうまいことを僕たちは知っている。

林さんが見たというクロスシートの電車を、泉岳寺のホームで待つことにした。

泉岳寺のホームで1時間、クロスシートがなかなか来ない。

この日は土曜日。平日のダイヤではないが、5分おきに電車がやって来る。これだけ本数があれば、全部前向きのクロスシートもすぐに来るだろう。

と軽く考えていたが、入ってくる電車は2台続けてロングシートタイプ。車両の左右の窓を背にして座る長いベンチタイプの車両だった。
ロングシートタイプ
ロングシートタイプ
ロングシートに座って車窓を楽しむには、靴を脱いで窓向きに座る必要がある。そんなおじさんが2人並んでビールを飲んでいたら、それはとてもまずい状況だ。やはり、林さんが目撃したクロスシートタイプを待たなければならない。
これはちょっと…
これはちょっと…
ロングシートタイプは見送る方向
ロングシートタイプは見送る方向
時刻表を確認すると、林さんが目撃したクロスシートの電車には、「快2D▲」というマークが付いていた。同じマークがついている電車が、14時台にも3本もある。15分、35分、55分である。早ければ14時15分の電車がクロスシートかもしれない。

ちなみに、時刻表の下にあった凡例を見ると、2Dは2ドアのことで3Dは3ドアのことを指すことが分かった。二次元と三次元を意味するものではないらしい。
「快2D▲」の電車を狙う
「快2D▲」の電車を狙う
しかし、15分と35分に入って来た電車は、いずれもロングシートタイプだった。林さんのクロスシートはなかなかやって来ない。35分のロングシートを見送ったあたりで、僕は林さんを疑い始める。本当に全席が前を向いたクロスシートの電車を見たのだろうか?
入って来る電車が
入って来る電車が
ことごとくロングシート
ことごとくロングシート
「ここまで待ったので、どうせなら55分の電車まで待ちましょう。僕が見たのも13時55分の電車だったので、14時55分にも期待できると思います」

林さんが強く主張するので、55分の電車に期待をかけることに。

と、その時、林さんが見たクロスシートタイプと同じ青い電車が反対側のホームに滑り込むのが見えた。
林さんが見たクロスシートタイプ
林さんが見たクロスシートタイプ
「さっき見たのあれです!あれが折り返して来るのでは?」

泉岳寺の駅に折り返し地点があるのかどうか、僕たちにはその辺の知識が全くない。青い電車の車掌さんに「55分にこっちに来ますか?」と大声で聞くという方法もあるが、もちろんそんなことはしない。林さんを信じて、55分の電車を待つ。

できるお父さんとできないお父さん

14時55分が近づいた頃、僕たちが立つ先頭車両付近のホームに、小さな子供を連れた家族が2組現れた。2組とも僕たちの前に立って電車を待っている。
僕たちの前に2組の家族が
僕たちの前に2組の家族が
お父さんがカメラを構えたりしていて、2組ともレジャー感が溢れている。これはきっと、クロスシート狙いだ! 一番前に座って最高の眺望を楽しもうとしているのだ。さきほど反対ホームで見かけた青いクロスシートが55分にやって来るに違いない。

泉岳寺のホームで小一時間、ロングシートを見送った甲斐があった。

青いクロスシートがやって来る確度が上がって嬉しい気持ちと同時に、2組の家族に横入りされて納得がいかない感情も芽生えた。

「僕たち、ここで小一時間待ってたんですけどね」
「まぁ、小さな子供がいることですし」
「一言あってもいいですよね」
「待ってますか? とかね」

クロスシートを待つ家族たちに聞こえないボリュームで不満をぶつけ合った。

しかしどうだろう。

このお父さんたちは、14時55分に青いクロスシートが来ることを事前に調べて知っていたのだ。来るかもしれませんね、というフワっとした気持ちで待っていた僕たちとは目的意識が違う。

事前に来ることが知っているお父さんと、来るかどうか分からず小一時間ホームで待つお父さん。できるお父さんは明らかに前者で、情報弱者の僕たちは敗者である。
これが青いクロスシートの電車に違いない
これが青いクロスシートの電車に違いない

むりやりビール列車を楽しむ3つのコツ

そして、14時55分、ついに青いクロスシートの電車がやって来た。2100と書いてある。

できるお父さん率いる二家族は一番前のシートへ走る。
特等席はできるお父さんたちが確保
特等席はできるお父さんたちが確保
一番眺望が良さそうな特等席はできるお父さんたちに取られてしまったが、僕たちは僕たちでいい席を確保できた。
それぞれの写真を
それぞれの写真を
撮り合う
撮り合う
むりやりビール列車を楽しむコツその1
青いクロスシートタイプの列車を選ぶ(京急の場合)
泉岳寺始発の青いクロスシートはホームについて間もなく発車した。

さあ、ビールだ。
エビス、スーパードライ、一番絞り。僕の中の金メダル、銀メダル、銅メダル
エビス、スーパードライ、一番絞り。僕の中の金メダル、銀メダル、銅メダル
まずは銀メダルから
まずは銀メダルから
発車間も無くビールを飲み始めたのには理由がある。泉岳寺を出ると電車は地下から地上に出る。その瞬間をビールと共に味わいたいのだ。
むりやりビール列車は地上に
むりやりビール列車は地上に
地上に出るとすぐ、おつまみ係の林さんが、カバンから最初のおつまみを取り出した。
最初のおつまみ
最初のおつまみ
ジャーン!うなぎの串焼き
ジャーン!うなぎの串焼き
最高だ
最高だ
電車に揺られながらうなぎを食べてビールを飲む。電車に乗って5分も経たないうちに、これ以上ない多幸感に包まれてしまった。

車窓からは北品川のビル群が見える。シン・ゴジラが壊したビルだ。
シン・ゴジラが壊したビル
シン・ゴジラが壊したビル
あっという間にうなぎをたいらげてしまった。串をゴミ袋に捨てようとしたら、林さんから「待った」がかかる。串は捨てないで持っているように、とのことだ。
串は捨てちゃダメ
串は捨てちゃダメ
何故、串を捨ててはいけないのか?
うなぎの串をこう使う
うなぎの串をこう使う
そう、次のポテトフライを食べる際に再利用できるのだ。
片手にビール、片手に串刺ししたポテトフライ
片手にビール、片手に串刺ししたポテトフライ
むりやりビール列車を楽しむコツその2
おつまみは串物から食べて、その串を使い回す。
うなぎの串焼きからポテトフライまで、電車に乗って15分くらいしか経っていない。上の写真を見ても分かるように、林さんは既に2本目のビールに口をつけている。どれだけ僕たちのテンションが上がっていたのかが分かっていただけると思う。
電車はまだ京急川崎辺り
電車はまだ京急川崎辺り
僕も林さんに続いて2本目のビール
僕も林さんに続いて2本目のビール
できるお父さんが確保した特等席の後ろには立ち見席が
できるお父さんが確保した特等席の後ろには立ち見席が
ポテトフライとビール、という組み合わせを楽しんでいると、間髪入れずに林さんの3品目が登場した。
ごちそうローストビーフ
ごちそうローストビーフ
ごちそうローストビーフ、1150円! である。

早速、一切れを串に刺していただく。
ごちそうローストビーフ
ごちそうローストビーフ
たまらんですわぁ〜
たまらんですわぁ〜
最高だ。魚介→野菜→肉、という流れがいい。電車の進みに合わせてビールも進む。
早くも3本目のビール
早くも3本目のビール
うまいつまみにうまいビール。いつもより弾む会話。まさに走る家飲みである。そんな感覚が味わえるのも、小一時間クロスシートを待ったおかげである。

良いことだらけのむりやりビール列車であるが、ここで一つだけ注意点を挙げておく。
林さんのズボンにハンカチが…
林さんのズボンにハンカチが…
林さんのズボンにハンカチが置かれている。
ローストビーフのグレイビーソース
ローストビーフのグレイビーソース
ローストビーフにグレイビーソースをかけようとした時に、電車が揺れてズボンにこぼしてしまったのだ。

座席にドリンクホルダーなどが用意されていないので、ソースなどをかける動作が難しい。僕たちがむりやりビール列車に仕立てているので、それは仕方のないことなのだが。
むりやりビール列車を楽しむコツその3
ソースなどを必要とするおつまみには気をつけて。

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