特集 2016年8月18日

カブトムシを捕まえたことがない

カブトムシ捕獲ツアーご一行
カブトムシ捕獲ツアーご一行
岐阜県美濃市という、けっこうな田舎町で生まれ育った。豊かな自然もすぐ近くにあったが、そういえばカブトムシを捕まえたことがない。そんなことを飲み屋で知人に話したところ、「ちょうどカブトムシ捕獲ツアーがあるから来ますか?」と言われた。何でも、「虫博士」がナビゲートしてくれるという。行きます。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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今日は涼しすぎてダメかもしれません

というか、東京にもカブトムシはいるのだろうか。決行日は8月上旬。折しも集合場所の阿佐ヶ谷は、「七夕まつり」の真っ最中だった。
毎年大勢の人が上を向いて歩くお祭り
毎年大勢の人が上を向いて歩くお祭り
アーケード街には数多くの出店が立ち並ぶ。
その中には虫を売る店も
その中には虫を売る店も
覗いてみると…おお、カブトムシも売られている。オスが一匹700円という値段設定。
ミヤマクワガタは1000円
ミヤマクワガタは1000円
キリギリスのオスが1500円
キリギリスのオスが1500円
虫市場では、キリギリス>クワガタ>カブトムシというヒエラルキーのようだ。しかし、今回はカブトムシを狙う。

そこへ、「虫博士」が登場。
「虫博士」こと山崎隼さん(31歳)
「虫博士」こと山崎隼さん(31歳)
「今日は涼しすぎてダメかもしれません。もっと、じめじめと蒸し暑くて雨が降った数日後がベスト。去年は20匹ぐらい捕まえたんですが」
このツアーは今年で3回目。もともとは友人と二人で捕まえに行くのが夏の恒例行事だったが、周囲の「参加したい」という声によってツアー化したそうだ。

「つい先日も、ザリガニを釣りに茨城まで行ってきました。200匹ぐらい釣れたかな」

生粋の虫好きなのだ。その時、博士の携帯に電話がかかってきた。
何やら談笑している
何やら談笑している
「どうしたんですか?」と聞くと、「知り合いからだったんですが、七夕まつりで火炎瓶を投げた奴がいるってテレビのニュースでやってるらしく、『お前じゃないか』って(笑)」

のちに、久我山の七夕まつりで起こった事件だと判明した。

ポケモンGOをやりに来た若者とすれ違う

夜の21時。レンタカーに分乗して都内の公園へと向かう。
今年のツアー参加メンバー
今年のツアー参加メンバー
メンバーの一人が言った。「カブトムシが呼んでる気がする」。
公園に到着
公園に到着
じつは、車中で博士に言われた。「カブトムシ業界ってうるさくて、場所を特定しないでもらえますか?」。

狩場が荒れると怒られるんだそうだ。マツタケが採れる場所を秘密にするのと同様の掟だろうか。
「樹液が好きな昆虫」というミニパンフレットも持参
「樹液が好きな昆虫」というミニパンフレットも持参
公園の奥の方で「樹液が出てますね。樹液は発酵してるから光るんです」と博士が言う。おお、たしかに甘酸っぱい香りが漂っている。

しかし、カブトムシは一向に見つからない。むしろ、ポケモンGOをやりに来た若者とよくすれ違う。その中の1組に「ポケモンいますか?」と尋ねると「いないんですよー」とのお答え。
セミはいくらでもいた
セミはいくらでもいた
頭上では、うるさいぐらいのセミの声。2年前にレポートした「セミロックフェス」を思い出した。
「あっ、ミドリオサムシ発見!」と博士
「あっ、ミドリオサムシ発見!」と博士
「手塚治虫のペンネームの由来となった虫ですよ」。虫雑学が次から次へと出てくる。
あらゆる虫に反応する博士
あらゆる虫に反応する博士
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この完璧なまでのフォルム

事態が動いたのは探し始めてから30分後のことだった。
おーい、どこだー
おーい、どこだー
その時、ツアー初参加の僕の目にまさかのカブトムシが飛び込んできた。ふつうに道を歩いているのだ。
メスだけど初ゲット
メスだけど初ゲット
「メスがいたら必ずオスもいますよ。頭上で羽音もするし、音の大きさから言ってオスだと思う」。博士の言葉通り、1匹目のオスはすぐに捕まえられた。
じゃーん! かっこいい…
じゃーん! かっこいい…
何だろう。この完璧なまでのフォルムは。田舎育ちながらカブトムシは「買うもの」という認識だったが、都会でも「捕まえられるもの」だったのだ。

クワガタもいた。
ちょっと見えにくいが中央にいる
ちょっと見えにくいが中央にいる
博士によれば、コクワガタのメスとのこと。通常、クワガタは4月から5月に出現するそうで、この時期にいるのは珍しいという。

「小ちゃいから戻しましょう」と博士。虫への愛を感じる。
2匹目のオスゲット
2匹目のオスゲット
やはりカブトムシは路上ではなく木の幹にいてほしい。そこからは、「いた!」という声が公園内に響き渡る。
ダブルでゲット
ダブルでゲット
ライトを当てると甲羅が反射してキラリと光るので、むしろ夜の方が見つけやすいのだ。

博士はカバンから釣り竿を取り出す

ここで別の公園に移動する。最初は見つからなかったが、「(樹液が)匂いますね」という博士の言葉をきっかけにどんどん捕まえられた。
「ここにいたんです」と指差す博士
「ここにいたんです」と指差す博士
カブトムシも虫ゆえ、街灯に寄ってくる。メンバーの一人が「あの街灯の一番上にいるんだけど高すぎて網が届かない」と言う。博士はすかさずカバンから釣り竿を取り出す。
するすると伸ばして…
するすると伸ばして…
すごい執念だ。結局、このカブトムシも無事にゲットできた。気付けば0時を回っている。翌日に仕事があるメンバーもいるため、そろそろお開きにしよう。

その前に、公園内のテーブルに本日捕まえたカブトムシを並べてみた。
壮観である
壮観である
去年の20匹には及ばないが、10匹近くが集結した。
微妙な色の違いもカブトムシ鑑賞の醍醐味
微妙な色の違いもカブトムシ鑑賞の醍醐味
不思議なことに、彼らには「逃げよう」という思考はないようで、あまり動かずじっとしている。
ブローチにしてもお洒落
ブローチにしてもお洒落
試しに、近くの木の幹に張り付かせて「カブトムシ銀座」を作ってみた。
ぜいたくな演出
ぜいたくな演出
こうして、カブトムシ捕獲ツアーは興奮の中、終了した。
カブトムシ捕獲ポイントまとめ

一、湿度が高くて暑い日を狙うべし
一、雨が降った数日後がチャンス
一、樹液は発酵しているので光る
一、ライトを当てると光るので夜がベター
一、メスがいたら近くにオスもいる

カブトムシの寿命は1カ月から3カ月ぐらい

じつは、記事的には「どこかで売る」「子供にあげる」などの事後プランを考えていたが、このツアーでは基本的に公園にリリースするとのこと。

カブトムシの寿命は成虫になってからだと1カ月から3カ月ぐらい。短い人生を快適な自然の中で過ごしてほしいというのが博士の思いだ。

何はともあれ、都会の公園にもちゃんとカブトムシはいた。そして、自分で捕まえたカブトムシは夜店などで買ったものよりかっこよく見えた。
来年また来ます!
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