はっけんの水曜日 2016年8月24日
 

ポケモンGO、ベトナムを振り回す

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GOTCHA!(ゲットだぜ!)

欧米でポケゴー旋風が吹き荒れて、お次は日本で吹き荒れて、そうしてやっとこさ先々週頃からベトナムにも吹き荒れて(つまりサービス提供開始)、今この国は嵐の真っ只中におります。

編集・古賀さんから「日本ではほとぼりが冷めた、むしろシン・ゴジラ」と言われてぼくビックリしたんですが、今日はそれでもみなさんに聞いてほしいことがある。ポケモンGOというゲームは、ベトナムという国の、あらゆる人たちを全力で振り回している、というお話です。
1984年大阪出まれ、2011年からベトナム暮らし。日本から3600km離れた土地で、ダチョウに乗ったり、ドナルドのコスプレをしたり、札束風呂に入ったりしている。

前の記事:「むりやりドミノ倒し」
人気記事:「ベトナムの丸亀製麺はパクチー盛り放題」

> 個人サイト べとまる

まずは「歩きスマホ」について我々の意識の溝を埋めておきたい

歩きスマホと聞いて、どんな危険性をイメージします?人や車にぶつかる、とかですよね。違うんですよ、ベトナムだと全然違うんですよ、歩きスマホという言葉はないけれど、人や車にぶつかる以前の話なんですよ。歩きながらスマホをさわるとね、めっちゃされるんです。ひったくり。
寄り添い合って生きるよ
寄り添い合って生きるよ
ベトナム(とりわけホーチミン市)は、全国一位の大阪のそれを煮詰めて粉末状にしたってくらい、ひったくり成分が豊富。在住歴も二年以上の日本人なら、一度も被害に遭っていない人を見つける方が難しいでしょう。

それはやっぱり、おびただしい数のバイクがアシストしちゃってるんです。そこに紛れて通り魔的にひったくりが現れる。歩きスマホなんてした日にゃあなた、後ろからバチッ!と盗られて翌日には中古品市場に出回ります。あまり悪く言いたくはないけれど、事実なんだからしょうがない。あ、でも、血なまぐさいことは少ないよ。フォローにならないか。

何はともあれ、ベトナムで歩きスマホなんて絶対にありえない。
ゴミを食べたらお腹壊しますよ、というくらい当然のこと…。

の、はずだったのに!

ポケモンGOで、めちゃくちゃ歩きスマホしはじめたベトナム人

おとなも!
おとなも!
こどもも!
こどもも!
おねーさんも外国人も、あともしかしたら警官も!
おねーさんも外国人も、あともしかしたら警官も!
み〜んな、ポケモントレーナー!!
み〜んな、ポケモントレーナー!!
友人のラムくん(レベル6)にも来てもらった。
友人のラムくん(レベル6)にも来てもらった。
ラム「このグエンフエ通りはポケモンの巣(密集地帯)なんですよ」
私 「確かにめっちゃ歩きスマホしてるよな」

この通りは常に若者たちで賑わう通りだが(過去記事「ベトナムの若者の頭に草生えるwww」でも登場したところ)、それは夜に限ってのこと。日中はとても暑くて誰も出歩かなかった…はずなのに、ポケモンが放たれてからは風景が一変してしまったのである。それがベトナム各地で起こっている。

当然、ひったくり被害は増えている、にも関わらずベトナム人はスマホを持って歩く、またひったくられる、でも歩く。そんな因果関係すら覆すほどにポケモンGOがベトナム人にとっておもしろすぎるのだ。しかし、一方で、ひったくりをポケモントレーナーが捕まえた、なんてニュースもあったというから一概に治安が悪化したとは言えません。

ポケモンをハントするポケモントレーナーに、ポケモントレーナーをハントするひったくりに、ひったくりをハントするポケモントレーナーに、ついでにバイクに乗ってポケモンをハントするポケモントレーナーをハントする交通警察に…と、非常にややこしい食物連鎖が起きているのです。

サバンナでたとえると、突如めっちゃおいしい草が無限に生えて、インパラたち草食動物がなりふり構わずむさぼって、ライオンたち肉食動物がそんなインパラたちを捕まえて、でもたまに反撃に遭って、そんなライオンやインパラを密猟者たちがガサーッと捕まえていくといったところだ。すげぇ、本当にこのまんまじゃねーか。ベトナムはサバンナか。

ええい、楽しそうだな! 俺もやる!

取材のためにインストールしておいたが、ここではじめてまともにプレイ。
取材のためにインストールしておいたが、ここではじめてまともにプレイ。
ブブブ!
うわっ出たっなんか出たっカニっ!※構える必要はありません
うわっ出たっなんか出たっカニっ!※構える必要はありません
ラム「ポケモンとはいっしょに撮影できますよ」
私 「うそぉ!?」
「このへん?」「もうちょっと左」
「このへん?」「もうちょっと左」
GOTCHA!(ゲットだぜ!)
GOTCHA!(ゲットだぜ!)
私 「楽しくない?…これ楽しくない!?」
ラム「ハマるやろ?」
私 「いやそれはまだ分からん」
ラム「なんで強がる」

ポケモントレーナーのみなさまにおかれましては、目新しくないやりとりでお目汚し失礼いたしました。ここからさらに、ベトナム事情を掘り下げてまいります。

バイクタクシーの客寄せ文句まで変えてしまったポケゴー

ラム「セオム、いるじゃないですか」
私 「あぁ、バイクタクシーのおっちゃんね」

バイク社会のベトナムにおいて、バイクタクシーは主要な交通手段。その場で料金交渉して後ろに乗ったら目的地へ向かってもらう。真っ黒に肌が焼けたおっちゃんから貸し出されるヘルメットは大抵くさい。
よくバイクの上で器用に寝ている。
よくバイクの上で器用に寝ている。
ラム「そのセオムがポケモントレーナーによく使われるようになって」
私 「なるほど、移動しやすいからか」
ラム「一体何を捕まえるんだ?と困惑するセオムが続出したらしい」
私 「あははは!そうか、彼らからしたら一切事情を知らないもんね」

それから徐々に状況を飲み込んで「これは商機だ」と感じたセオムたちは、歩きスマホをしている通行人を見るたびに「ポケモン!ポケモン!(手伝うよ!)」と声掛けしているそうだ。商機の割にやってることは地味だけど。

なお、ベトナムのセオムといえば、日本人観光客に対して日本のギャグで気を引くことが有名。「ゲッツ!」とか、「ワイルドだぜ〜」とか、観光客の誰かが最新情報を与えない限り、古いギャグをいつまでもドヤ顔で言い続けていた。それを覆したと言えば、すごさが伝わるだろうか。

ほかにも、ポケモントレーナー専用の運転代行サービスまで登場しており、ひったくりに遭わない上に、バイクに乗りながらプレーする必要がないから交通警察にも捕まらないね!ということで、話題になっているらしい。

私 「じゃあさ、釣ろうよ」
ラム「釣る?」
私 「ポケモンGOをこれ見よがしに見せつけて、セオムの近くを歩くねん」
ラム「あ〜」
私 「ポケモンをハントするポケモントレーナーをハントするセオムをハントする俺たち、三重ハントや!」
ラム「ハンターハンターやな」
私 「ちゃう、ハンターハンターハンターや!」
ラム「どっちでも…」
私 「よくないぞ!」
これ見よがしに…
これ見よがしに…
ポケモンGOを開いて…
ポケモンGOを開いて…
ん?
ん?
私 「来ーへんやんけ!」
ラム「そう言われても…」
これ見よがしに…
これ見よがしに…
ポケモンGoを開いて…
ポケモンGoを開いて…
ん?
ん?
私 「来ーへんやんけ!」
ラム「いやだから…


セオム「ユー!ユー!」
私  「あっ、来た!」
セオム「ユーゴー、チャイナタウン?」

私  「うざい」
セオム「ア!ベンタインマーケット?」

私  「こいつほんとうざい」
ラム 「勝手すぎるでしょうネルソンさん」

どうやら、「セオムに乗って冒険したいけど踏み出す勇気が出ない優柔不断な日本人観光客」と思われたようで、このあと10分以上に渡って二人体制でガッツリ絡まれました。ポケモンの一言が出ればいくらでも乗ったのに…。

私 「やっぱり来ーへんやんけ!」
ラム「だからそう言われても…」
私 「移動しよう」
ラム「はい」

アパレルにSIMカードに専用車まで!?ベトナムならではの便乗サービス

つづいてのポケモンの巣、タオダン公園に到着。

私 「うおっ」
ラム「うおっ」
うお〜。
うお〜。
うお〜〜。
うお〜〜。
うお〜〜〜。
うお〜〜〜。
夫婦も!
夫婦も!
親子も!
親子も!
バイク乗りまで!
バイク乗りまで!
そして本旨とは関係ないが
そして本旨とは関係ないが
ベトナムにはちょくちょくクォーターパウンダー(マクドナルドの商品)のTシャツを着ている人がいる。
ベトナムにはちょくちょくクォーターパウンダー(マクドナルドの商品)のTシャツを着ている人がいる。
私 「ちょっと待って、ここって普段全然人おらんよね」
ラム「おりませんね」
私 「ベトナムで歩きスマホしてる時点で異常やけど、静かすぎる」
ラム「言ったら悪いけど…こういうゾンビ映画見たことありますよ」

公園に集まるベトナム人といえば、若者が中心で常に賑やかなものだ。が、これだけ人が集まりながら静かだという状況がベトナムではあり得ない。日本へ帰国して電車に乗ると「静かだなぁ」と思うけど、それと似たような静けさがベトナムで起こるなんて。ポケモンGOはベトナムの防犯意識どころか、国民性にすら影響を与えたのか。

って、それは世界各地で起こっているんだろうけど。
この公園で唯一ポケモンGOをしていない人たち
この公園で唯一ポケモンGOをしていない人たち
あ、でもあの中高生はポケゴーきっかけで遊具で遊んでる気がする
あ、でもあの中高生はポケゴーきっかけで遊具で遊んでる気がする
ん、なんだコレ?
ん、なんだコレ?
私 「これ何?」
青年「ポケモンGO専用のSIMカードだよ!」
私 「いや、こじつけにもほどがあるだろ!」
青年「違うって、本当にポケモンGO専用なんだって」
私 「え?」

どうやらこちら、国営の通信会社が発売したポケモンGO専用のSIMカード。長時間の使用に耐えられるよう、最初から大容量のチャージがされており(ベトナムはプリペイド式が一般的)、人が密集している場所でも通信速度が落ちないという。なるほど、そう来たか、しかしまさかの国営企業による取り組みとは…。

私 「売れたの?」
青年「3つ売れたよ!」

ちなみに彼は実家がSIMカードを販売しているらしいので、片手間の小遣い稼ぎと考えれば多く売れている方なのかもしれない。国営企業による商品と認知されれば、今後はもっと伸びるかも。
ベトナム戦争を生き抜いたおじいちゃんに、この事態は飲み込めるのか。
ベトナム戦争を生き抜いたおじいちゃんに、この事態は飲み込めるのか。
で、ほかにも、ポケモンの数によって、デザート無料提供とか、アパレルショップで割引とか、なんていう便乗サービスまで出てきているそうだ。
ポケモンの数によってデザートを無料提供!
ポケモンの数によってデザートを無料提供!
私 「ちょっと待って、異常じゃない?」
ラム「ベトナム人はとりあえず流行りに乗っかるからなぁ〜」
私 「そうだったの?」
ラム「うん」

結局、最後まで「ポケモン!」と声を掛けられなかった私達、最終的にはこちらからセオムに聞いてみた。
器用かつ寂しそうに座るあのおじさんに聞いてみた。
器用かつ寂しそうに座るあのおじさんに聞いてみた。
セオムのおじさんはみんな、なぜか声が甲高い。
セオムのおじさんはみんな、なぜか声が甲高い。
私  「ポケモン、知ってる?」
セオム「あー、知っとるよ、めちゃ流行ってるよね」
私  「なんで声掛けてくれないの!?」
セオム「えぇ!?…いや、何が……だよ」
ラム 「ガセだったのかな」
私  「おいこらラム〜!」
ラム 「すみません」
セオム「あぁ、あんたらの言ってるのってポケゴー・バイク隊か?」

二人 「ポケゴー・バイク隊…!?」
「確かなー…あー…見つからん」「なんじゃそりゃ」
「確かなー…あー…見つからん」「なんじゃそりゃ」
セオム「なんかよ、そいつらはポケモンの場所を熟知しとって、後ろに乗せて連れて行ってくれるんだとよ」
私  「探し方は!?」
セオム「知らん」
私  「こいつほんとうざい」
ラム 「ネルソンさんってば」

そんな訳で、今週末はシン・ゴジラとポケゴーです

ベトナムでのポケゴー旋風、お分かりいただけたでしょうか。リリースされてから私は日本に戻っていないので、ネットニュースを通じてでしか盛り上がりが分からず比較は出来ないのですが、そんなことよりも正直私はシン・ゴジラが観たくて観たくてたまりません。今週末に台湾へ行くので、そこで観れるんですよ!GOTCHA!あ、台湾でもポケゴーできるか!一挙両得でDOUBLE GOTCHA!!
ポケゴー、サービス開始前の、悲しみのベトナム
ポケゴー、サービス開始前の、悲しみのベトナム
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