特集 2016年8月26日

カーテンがスカートに見える

あまりの巨大さに驚いている人。
あまりの巨大さに驚いている人。
わが家のカーテンがスカートに見える。
街を歩いてたまに見かけるカーテンみたいなスカートではない。スカートみたいなカーテンだ。

せっかくスカートに見えるのだから、誰かに履かせてみたい。どうにかして履かせられないだろうか。サイズもぴったり合う、巨大な女の子に。
1991年北海道生まれ。埼玉在住。20歳まで海鮮が苦手だったので、
北海道で寿司を食べた経験がほとんどない。もったいないとよく言われるが、自分でもそう思う。

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> 個人サイト わたしたわしじゃないじゃない

カーテンみたいなスカートってあるよね

これがわが家のカーテン。どうですか、見えますか?
これがわが家のカーテン。どうですか、見えますか?
いかがでしょうか?
おそらく100人中96人はスカートに見えたと思う。しかしそれでも残りの4人を見捨てることはできない。全員に「カーテンがスカートに見える」と言ってもらうまでこの話は終わらない。

カーテンが、よりスカートに見えるように、『実際に履いているように見える状態』をつくるには、どうすればいいか考え「プロジェクターで女の子を映せば、カーテンを履いているように見えるのでは?」という結論になった。

つまりこういうことだ。
今回の計画の設計図である。
今回の計画の設計図である。
こういうことだ、といわれてもこの拙い図で理解していただけたか、おおいに不安が残る。web上で見るだけだからいいが、もしこれが自宅のポストに入っていたら、間違いなく怪文書だ。最寄りの警察署でなるべく早めに相談実績をつくっておいた方が良い。

つまりプロジェクターをうまいこと使えば、天井を突き抜けて人間が立っているように見えるという目論見である。

ようこそわが家へプロジェクター

Amazonにて購入。
Amazonにて購入。
プロジェクターはレンタルで手配してもよかったのだけど、借りるだけでも4、5000円かかるので思い切って買ってしまった。なんと13000円。プロジェクターとしてはかなり安い部類だが、今の自分にとっては、半年に一度クラスの大きな買い物だ。その前の大きな買い物は滑り止め付のまな板で2700円だった。まな板は日々の料理で使っているので、プロジェクターにもまな板の5倍は活躍してもらいたい。

「記事に使ったあと、大画面でゲームとかできるかも!」と考えていたのだけど、購入後に確認したところ、音声の入力端子が最近のゲームには対応していなかった。変換ケーブルを使えば接続できなくもないが、音がでない。薄暗い部屋で座り込み、ひたすら無音でマリオカートならできる。
でもプロジェクター使うのって楽しい。
でもプロジェクター使うのって楽しい。
投影するイラストは、少年漫画のアシスタントをしている知り合いに頼んで描いてもらった。

お願いしたその場で描いてもらい、一分足らずで完成したのを見て、自分にできないことは人を頼るといいと学んだ。今回の記事で唯一ためになる情報である。
描いてもらったイラストをスキャンして色を塗る。
描いてもらったイラストをスキャンして色を塗る。
こうして記事を書いていて気づいたが、プロジェクターで投影するなら背景は目立たないよう黒で塗りつぶすべきだと気付いた。しかし、そのくらいのミスはもはや関係ない。なぜならうまくいかなかったから。

計画失敗。どうしよう? どうする?

このとき投影しているのは自分でつくって失敗したやつ。
このとき投影しているのは自分でつくって失敗したやつ。
上の写真を見ていただければわかると思うが、映し出された画面が小さすぎた。画面の大きさはプロジェクターとスクリーンの距離に比例する。離れれば離れるほど画面は大きくなるのだ。

予想と結果が違うことは珍しくないが、ここまで手間とお金をかけての失敗はかなり痛い。家計を切り詰めて塾通いをさせていたはずの息子をゲームセンターで見つけてしまったときの心境って、きっとこんな感じだろう。
狭いワンルームなので、これ以上後ろにはさがれない。
狭いワンルームなので、これ以上後ろにはさがれない。
わが家の間取り図。細長い部屋に住んでいます。
わが家の間取り図。細長い部屋に住んでいます。
図の①の位置では距離が足りなかった。しかし、わが家にはもう一つ窓がある。そちらにカーテンを付け替えて、図②の位置からなら倍以上の距離を使える。
ごちゃごちゃしていて申し訳ないです。
ごちゃごちゃしていて申し訳ないです。
段差も
段差も
試してみたのだが、それでも距離が足りない。この位置でだめなら、これ以上のスペースはわが家にはないぞ。どうしようおれ、……どうしよう?
トリックアート……にはならなかった。
トリックアート……にはならなかった。

映すのが無理ならば、つくってしまおう

ここで発想を切り替えて、プロジェクターは諦めることにした。他の方法でカーテンをスカートのように履かせよう。

繰り返しになるが、プロジェクターはまた後で何かに使うので、無駄な買い物ではなかった。きっとそのうち何かに役にたってくれるはずだ。

たとえば、プロジェクターでネコの動画を映せば、ネコを飼っている気分だけでも味わえないだろうか。電源を入れたプロジェクターはかなり暖かいので抱いて寝れば本当にネコを飼っているのとほとんど同じだ。むしろ本当にネコを飼うよりも安く済むので得である。
この写真に政治的な意味はありません。
この写真に政治的な意味はありません。
プロジェクターのことは一度忘れてコンビニでストッキングと新聞紙を買ってきた。新聞とストッキングの組み合わせだけで、何をしようとしているのか推測できたと思う。そう、ストッキングに新聞紙を詰めて、脚をつくろうというのだ。

すでに夕方だったのでコンビニに置いてあるのがスポーツ新聞と囲碁新聞だけだった。少し考えてスポーツ新聞を二部選ぶ。これからすることに使うのは囲碁新聞じゃなくて、スポーツ新聞の方がふさわしい(女性がいっぱい載ってるし)。

ちょうど都知事選が終わった後なので、一面に大きく新都知事の写真が掲載されていた。都知事を丸めてストッキングに詰める。とんでもないフェチか反社会組織のような行いだが、こちらは至って冷静である。
ストッキングが破れないように新聞紙を詰めていく。
ストッキングが破れないように新聞紙を詰めていく。
完成したのがこちら。
完成したのがこちら。
違う。絶対にこれじゃない。完成したものを見て、いや正確にいえばつくっている途中ですでに嫌な予感はしていた。

中学校の体育祭で横断幕をつくったとき、明らかに絵がゆがんでしまっていたのだけど、「よくできた」と担任教師は言っていた。あのときのように、うそでもいいから「よくできた」と言ってくれる人が突然わが家に来てくれないだろうか。麦茶くらいなら出します。

詰め込みすぎると新聞紙の角で破けそうになるので、あまりたくさんは入れていないのが、この妙な細さの原因だ。ストッキングではなくてタイツを買ってくるべきだったかもしれない。生地が薄いせいでうっすら新聞紙が透けて見えている。右足が夕刊フジで、左足が日刊ゲンダイのミイラ。そんな悲しいものを生み出したかったわけではなかった。
だめだとわかっているけど、一応カーテンの裏に置いてみる。
だめだとわかっているけど、一応カーテンの裏に置いてみる。
カーテンの裏に「何かいる」ようには見えるけど、少なくともスカートを履いているようには見えない。ここから出てくるのはどんなに良くてもE.T.か、正座のできない即身仏だ。
カーテンにクリップでとめている。あまりにも悲しい一枚。
カーテンにクリップでとめている。あまりにも悲しい一枚。
どんな顔をしていいかわからなくなってしまった。
どんな顔をしていいかわからなくなってしまった。
干からびたようなストッキングを片手に持っていると、とても悲しくなってくるが、これで終わりにするわけにはいかない。これを読んだ全員に「カーテンを履いているように見える」と言ってもらいたいのだ。

これまでの作業はなんだったんだろう

こうなれば最終手段だ。

プロジェクターでの投影や立体なんて贅沢なことはいわない。平面でいい。つまりは、紙でいい。脳さえ認識してしまえば、肥溜めも風呂も同じだ。イラストだろうが写真だろうが、自分が女の子だと思ってしまえば、そこに女の子は存在する。
印刷してみたら50枚近くになった。
印刷してみたら50枚近くになった。
イラストを印刷し、貼り合わせてポスターのようなものをつくる。これをカーテンの裏の窓に貼りつければ、当初の目的である「カーテンがスカートに見えるようにする」を達成できる。

それに『手段を選ばず目的を達成する』と書けばダークヒーローみたいで少しかっこいい。
この姿勢の作業だと、なぜか文化祭っぽさがでる。
この姿勢の作業だと、なぜか文化祭っぽさがでる。
窓に貼りつける。これはかなり本来のイメージに近いぞ。
窓に貼りつける。これはかなり本来のイメージに近いぞ。
どこからどう見てもスカートだ。手法のチープさは置いといて、巨大な女の子がスカートを履いているように見える。この瞬間、わが家のカーテンはスカートになった。
「伝説の樹の下」みたいな写真。
「伝説の樹の下」みたいな写真。
せっかくなので上半身も貼り合わせた。作業中に流していた映画が二本目に突入しました。
せっかくなので上半身も貼り合わせた。作業中に流していた映画が二本目に突入しました。
脚立がないのでキャスターつきの椅子に乗って貼りました。
脚立がないのでキャスターつきの椅子に乗って貼りました。

本当はこれをプロジェクターでやりたかったのだ(正確にはプロジェクターなら、もっとトリックアートのようにできていたはずだけど)。ずいぶんと遠回りをしてしまったが、目的は達成できた。

幸せの青い鳥は近くにいて、運命の女性はカーテンだった。平面で下半身しか存在しないような相手だが、それが運命なら甘んじて受け入れよう。いやむしろ2倍以上大きいのだから、足さえあれば十分だ。
スカートをめくったら窓があった。
スカートをめくったら窓があった。

後悔はあるが、満足もしている

印刷した巨大な女の子は、捨てるのも忍びないので、そのまま窓に貼ってあります。ある種の同棲ですね。外から見られたらちょっとしたホラーかもしれませんが。
帰宅時に油断しているとドキッとする。
帰宅時に油断しているとドキッとする。
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