特集 2016年9月5日

お寺でお泊りボードゲーム

ラインナップの量がすごい
ラインナップの量がすごい
「ボードゲーム」と聞いて普通に思いつくのは、まず人生ゲームやオセロあたりだろうか。カードゲームも含めれば、ウノもそうかもしれない。今回は、そんなボードゲームを遊ぶイベントが山形県であると聞いて行ってきた。
ただし、ゲームのラインナップは500種類以上とのこと。そんなにあるのか。

しかも会場はお寺で、ホストはご住職。宿泊つきで、読経オプションもある。どういうことなのか、体験してみたい。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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いろいろでかいよ長井市

今回の会場は、山形県の長井市というところにある。
強制的に癒される
強制的に癒される
「水と緑と花のまち」をキャッチフレーズとしているだけあって、風光明媚もあからさま。あとは土偶がでかい。
謎のオーラを放つ土偶たち
謎のオーラを放つ土偶たち
市内の「古代の丘」という施設には、強化プラスチック製の自由に触れ合える巨大土偶が15体も散りばめられている。長井市は土偶の名産地だったのか。
子供も泣き出す土偶のでかさ
子供も泣き出す土偶のでかさ
こういうストレッチあるよね
こういうストレッチあるよね
ただ、あとから地元の方に聞いたところ、長井市で出たわけではないメジャー土偶も一堂に会しちゃおうとのことで、こういう構成になったらしい。通りかかった家族連れの子供はなかなか泣き止むことなく、インパクト戦略は成功していると思う。
仁王像も装備した本気のお寺
仁王像も装備した本気のお寺
さて、ボードゲームの会場は「洞松寺」というお寺。応仁の乱で知られる応仁年間(1467-1468)に開山されたとのことで、歴史の重みもがっつりあるタイプ。
イチョウが太い!
イチョウが太い!
木魚がでかい!
木魚がでかい!
巨大なイチョウや木魚に感心していると、ご住職は「イチョウの根元にはうちで出た生ごみを捨ててるんですよ。でかい木魚は実用向きじゃないんですよね…」と教えてくれた。
インドに2年間の留学経験もあるご住職
インドに2年間の留学経験もあるご住職
そんな今回のホスト役でもあるご住職の小野卓也さん。ボートゲーム関連の著書もあり、所有ゲーム数は500種類以上とのこと。
家族との折り合いをつけるのが心配になる充実度
家族との折り合いをつけるのが心配になる充実度
ドイツを中心に、さまざまな国のゲームでびっしり埋まる棚。ぎっしり詰まったボードゲームの箱はそれだけで迫力がある。

奥様との間には「ここからはみ出したものは売却や譲渡をする」という協定があるとのこと。限られたスペースを最大限に生かすための凝縮度であるわけだ。

仏様の教えが心配になるゲームたち

今回ゲームを楽しむスペースは本堂と連なる部屋。ご本尊の釈迦如来像がすぐ横にいる場所で遊ぶわけだ。
おごそかさあふれる会場
おごそかさあふれる会場
よくわかるレクチャータイム
よくわかるレクチャータイム
まずはご住職から世界のボードゲーム事情についてレクチャーを受ける。そして、レクチャーでの参加者とのやりとりを踏まえてご住職が厳選したゲーム体験に移る。
和訳すると「はったり」というゲーム
和訳すると「はったり」というゲーム
はったりのかけあいが常に悩ましい
はったりのかけあいが常に悩ましい
最初のゲームは『ブラフ』。プレイヤーそれぞれが器の中でサイコロを振り、全体で何の目がいくつあるか順番に釣り上げて予想するゲームだ。

改めて「bluff」を辞書で調べてみたところ、出てきた訳語は「はったり」。実際にゲームの駆け引きではったりが重要になってきて、その見極めの悩ましさが楽しい。仏様の教えとはおよそ遠そうなところも面白い。
切手の競りゲーム『スタンプス』
切手の競りゲーム『スタンプス』
釣り上がる値段に熱くなる
釣り上がる値段に熱くなる
続いては『スタンプス』。切手のオークションを通してたくさんのお金を稼ぐゲームだ。

価値の高い切手をできるだけ安く買いたい、そうでもない切手を高値で押し付けたい。入札に参加するもどかしさが面白いところだが、考えているのは金稼ぎ。これまたお寺でするには背徳感がある。
合間に行ったトイレでよみがえるお寺感
合間に行ったトイレでよみがえるお寺感
しかし、このあとおこなった『花火』というゲームは、全員で協力してたくさんの花火を打ち上げるというもの。競うのではなくみんなで協力しあうのは仏様の教えっぽくなってきた気もしたが、真剣になり過ぎて写真を撮り忘れた。

腹ごなしになるゲームもある

5800円で1泊2食付きのこの企画、そうこうしているうちに夕食の時間となった。
滋味あふれる系の夕食
滋味あふれる系の夕食
夏休み気分にさせる食卓
夏休み気分にさせる食卓
メニューは、地元でかつて下宿を営んでいた方が作ったという郷土料理のお弁当。煮物、昆布巻き、醤油寒天など、どれも味付けがやさしくて、とてもおいしい。丸ごときゅうりの浅漬けや味噌餅も、夏休みのおばあちゃんち感を加速させる。

かなりのボリュームだが残さず食べたくて満腹になったところで、夜の部に入ると地元に住んでいる参加者のみなさんもやってきて人数が増えた。
ナショナルの電気製品も雰囲気出してくる
ナショナルの電気製品も雰囲気出してくる
このタイミングでチョイスされたのが、実際にカメラを使って写真を撮る『フォトパーティー』というゲーム。
大人ばかりだけどみんな本気
大人ばかりだけどみんな本気
「体を直角に曲げた空気イス」というお題
「体を直角に曲げた空気イス」というお題
缶の中にはいろいろなお題の書かれたカードがたくさん。ランダムに引いてお題を読み上げ、10秒のセルフタイマーをセットして撮れた写真でお題を達成していた人に得点が入るというゲームだ。

「首から上だけ写らないようにする」「誰よりも高く足を上げる」など、フィジカル系のお題が多く、必然的に体を動かすことになる。
謎の集合写真がたくさん生まれる
謎の集合写真がたくさん生まれる
いくつか撮影したら、プロジェクターで写真を映して答え合わせ。上の写真は「片ひざを上げて立ち、反対側のひじをひざにつけて、親指を鼻につける」というお題。一番上手にできていた人が得点だが、意外とできてない人も多くて、なんだかんだと笑いが絶えない。
言語感覚やセンスが必要なものも
言語感覚やセンスが必要なものも
みんなで頭をひねりまくる
みんなで頭をひねりまくる
続いての『コードネーム』は2チームに分かれての言葉当てゲーム。各ボスがチームメイトにだけわかるようなヒントを出して、自チームに割り当てられた言葉が何かを当てることが目的だ。

理詰めとセンスの両方が必要になり、やりとりのもどかしさがある分、うまく通じあったときの一体感がとても嬉しい。ボードゲームという言葉の一般的なイメージとは一線を画す、コミュニケーションがテーマのゲームだ。
唐辛子の絵の意味もちゃんとある
唐辛子の絵の意味もちゃんとある
夜も更けてきて、最後にしたゲームは『プライバシー激辛』。カードに書かれた質問について、全員がイエスかノーのチップを裏返しで出して混ぜ、何人がイエスを出したかを当てるゲーム。

質問は「恋人との仲が冷めたら、付き合っているうちから次の人を探す」「右隣りの人とキスしてもいいと思っている」といったかなりのプライバシーものばかり。
みんなでニヤニヤするゲーム
みんなでニヤニヤするゲーム
千手観音様「コラーッ!」
千手観音様「コラーッ!」
それでも例示したのはマイルドな方で、カードを読み上げるご住職の口からは、もっと露骨な言葉がバンバン飛び出してくる。個人は特定されないシステムだが、中学生の修学旅行の布団の中のような話題ばかりだ。隣の部屋の千手観音様にボコボコにされかねない。
裏山から吹いてくる風が涼しくて快適
裏山から吹いてくる風が涼しくて快適
そんなこんなで盛り上がり、0時ごろに宿泊組はそのままそこに布団を敷いて就寝。お寺にそのまま泊まるという体験も、なんとも不思議な感じがする。

朝のおつとめでうっかり自分と向き合う

翌朝は7時から任意参加で、ご住職と一緒にお経を読むことができる。
お寺の朝はこれでもかと爽やか
お寺の朝はこれでもかと爽やか
法衣でご住職モード発動
法衣でご住職モード発動
こんな機会でもなければしないことなので、参加してみた。1つ目の『般若心経』はそれなりになじみがある。
で、できるかな…
で、できるかな…
続いての『慈経』は初めて見るもので、内容的には「人間的にめちゃくちゃできた人」という感じ。昨晩ゲームでふざけたりニヤニヤしたりしていた分、心を打たれる振れ幅が大きくてついていくのが大変だ。

やっぱり本気のお寺だ
やっぱり本気のお寺だ
このあと朝食におにぎりを食べて解散。「お寺で宿泊+ボードゲーム」というセットで楽しくも新鮮な体験ができた1日。帰る前に仁王像に改めて向き合い、不思議な気持ちにさせられた。

このイベントはこの9月にも再び予定されているので、この感覚を味わいたい方はぜひどうぞ。

やまがた長井観光局のイベント詳細紹介ページはこちら
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