特集 2016年9月8日

かっこいい剣にはパースがついている

かっこいい剣をつくりました
かっこいい剣をつくりました
アニメや漫画に出てくる剣は、ダイナミックだ。ただの絵なのにその重みというか力強さが伝わってくる。

それに対して現実の剣はそんなに強そうに見えない。たいてい手にするのがおもちゃだからというのもあるが、それにしてもである。

ああ、はじめからパースがついていればかっこいいのに……。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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おれの持ってる剣はしょぼい問題

剣というのはかっこいい。
人それぞれかっこいい剣のイメージがあると思うのだが、ぼくは『元気爆発ガンバルガー』とか『勇者特急マイトガイン』とかのロボットアニメがやっていた90年代に子供時代を過ごしたので、巨大ロボットが持っている重たそうな剣が一番かっこよく感じる。
どのロボットもみんな剣を携えていて、必殺技ももちろん剣だったのだ。

そういう経緯で刷り込まれてしまった巨大な剣への憧れがかなりある。当然剣のおもちゃを買ったりした。

しかしどういうわけか、ロボットが持っている剣はかっこいいのに自分が持っている剣はしょぼいのである。
こういう剣のおもちゃがよく売られているのは、みんな剣にあこがれているから
こういう剣のおもちゃがよく売られているのは、みんな剣にあこがれているから
振っている分には楽しいけど、見た目はしょぼい
振っている分には楽しいけど、見た目はしょぼい
しょぼい。しょぼすぎて「無課金」という感じがしてしまう。巨大ロボットの剣と一体何が違うのだろうか。どうしたらグレートガンバルガーの剣みたくなるのか。
かっこいい剣と言えば、これが理想
かっこいい剣と言えば、これが理想
そう、このロボットが持つ剣の妙なパース。これがかっこいいのであった。

この構図はよく「勇者シリーズ」というロボットアニメシリーズで見られたので「勇者パース」とか、その制作会社であるサンライズの「サンライズパース」とか言われているものだ。ロボットが持っている剣が画面に向けて突き出され、大きく見えるようパースが誇張されている。

これだよこれ。はじめから「勇者パース」がついている剣があればいいのに……。

つくりました

ないものは作るしかない。実用性はともかく(当然)見た目だけがかっこいい剣を作った。
かっこいい!
かっこいい!
うまく撮るとこのくらいになる
うまく撮るとこのくらいになる
明らかにかっこよくなった。発泡スチロール製なのにまるで雄々しい威圧感がある。(ロボットアニメを見たことがない人には、目的がよくわからないトリックアートに見えてるのではないかだけが心配だ。)

縦に持つとこうなる。
最もほころびを生む角度
最もほころびを生む角度
逆さまのネクタイみたいな形をしている。
遠近法の逆をいくように剣先が広がっていて、これを広角レンズと組み合わせると上の写真のようなすごい効果を生み出す。

というかロボットの剣も、ふつうに持ったときはこうなってないとおかしいはずなのだが、それを感じさせないのがアニメのすごいところだ。
発泡スチロールに銀のテープを巻きつけただけ作られているので、片手で持てるくらい軽い
発泡スチロールに銀のテープを巻きつけただけ作られているので、片手で持てるくらい軽い
こんな変なものを作らずとも、広角レンズ使えばどれでもなるのでは?と思われるかもしれない。だが、元のおもちゃの剣と比較するとこうなる。
元気爆発だ!!!!
元気爆発だ!!!!
体調が悪いので早退します……
体調が悪いので早退します……
もはやふつうの剣が爪楊枝にしか見えない。

明らかに元の剣より長くなってはいるのがちょっとズルではあるが、長さがないと持つ人の体が小さく写らないので仕方ないのだ。

どちらにせよ実際戦ったら瞬時に根本からぽっきりいくので許してほしい。
背中側から見ると、遠近感が打ち消されて普通の剣に見える
背中側から見ると、遠近感が打ち消されて普通の剣に見える
振りかぶってもかっこいい。
どうですか
どうですか
発泡スチロール製であることに加え、思いっきり振るとすぐ壊れる構造なのにも関わらず、写真でみると世界が救えそうな気がしてくる。強さとは遠近感なのかもしれない。

では、パースをつけたらなんでも強くかっこよく見えてくるのだろうか。やってみよう。

次のページでは「遠近感がすごい太巻き」が登場!
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布団たたきもパースをつけてかっこよく

剣はパースをつけることで強く、かっこよくみえるようになった。

もしかしたら剣以外の平和的なものも、「勇者パース」をつけることでかっこよくなってしまうのではないだろうか。試みたい。
例えば布団たたきとか。
例えば布団たたきとか。
最近布団たたきする人もあまりいないかもしれないけど、「晴れた日の午後」という感じがする平和的なアイテムだ。これに剣と同じように勇者パースを付けてみる。
よっしゃ!!!
よっしゃ!!!
どうだろう。ホームラン予告をするように、びしっと布団たたきを構えてるように見えるだろうか。(野球を知らないので、現実にホームラン予告にあるのかを知らない。あるの?)

ちなみに剣の方は長さをかえるズルをしていたので、こんどは長さを揃えている。
長さを揃えて幅だけを変えた
長さを揃えて幅だけを変えた
もしかしたら後ろから見たほうがいいかもしれない。
パァン! パァン!
パァン! パァン!
どうやら後ろから見たほうが力強く振りかぶっている感じがして良いようだ。一流テニスプレイヤーの布団たたきのような躍動感がある。

おそろしいことだ。布団たたきもやはりパースをつけることでかっこよくなってしまったのだ。万能すぎるぞ、勇者パース。

食べ物もパースでかっこよく

布団たたきも平和的だが、もっとかっこよさからかけ離れたものもパースをつけたらかっこよくなってしまうのではないか。例えば食べ物なんかも。

細長い食べ物といえば、太巻きである。これにパースをつけたらどうなるだろう。
上から見るとこう。
上から見るとこう。
剣と布団たたきはカメラに近い方を太くするという方法を取ったが、逆に奥を細くするという方法でやってみた。

では比べてみよう。
普通の太巻き
普通の太巻き
勇者パースの太巻き
勇者パースの太巻き
シュッとした! すごくシュッとしたぞ!
今はじめて太巻きをかっこいい食べ物だと思うことに成功した。

ただ残念ながら皿にパースを付けることができなかったので、すこし邪魔というかかっこよさに悪い影響を与えているような気がする。画像処理で消去してみよう。
新幹線みたいだな、と一瞬思ったりもするがそれもまた違う。
新幹線みたいだな、と一瞬思ったりもするがそれもまた違う。
まるで飛び出しているようだ。ただの太巻きと比べてとても速そうな印象もある。
「太巻きが速い」という状況がどのようなものかがわからないが、ピンチのときに駆けつけてくれそうな頼もしさがある。
間に合え!!
間に合え!!
最後に勇者パースの太巻きを食べて終わりたい。
なんといってもこの太巻き、ちょっとかじるだけでのどの奥の方までくわえ込んだように見えるのが特徴である。
なんといってもこの太巻き、ちょっとかじるだけでのどの奥の方までくわえ込んだように見えるのが特徴である。
おえっ
おえっ
味はふつうでした。

トリックアートへのあこがれ


かっこよさとは遠近感である。そして遠近感とはトリックアートだった。

すると、はじめはかっこいい剣にあこがれだと思っていたものは、もしかしたらトリックアートへのあこがれだったのかもしれない。
そういえば「鏡を使って消えたように見えるトリック」もずっと気になっている。

こんどの休みにはトリックアート美術館に行こう。
論理的には缶ビールより瓶ビールのほうがかっこいいはずである
論理的には缶ビールより瓶ビールのほうがかっこいいはずである
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