ひらめきの月曜日 2016年9月12日
 

ダメなロボットが飛行機でやってきた!!ヘボコン・ワールドチャンピオンシップ レポート

改めてイベントについてご紹介しよう。ヘボコンは技術力の低い人のためのロボットバトルイベントだ。

競技はロボット相撲で、各自持参したガラクタ寸前(または直後)みたいなロボットを操り、トーナメントで戦う。優勝・準優勝は決めるものの、いちばん名誉ある賞は、投票で選ぶ「最も技術力の低かった人」賞、次に審査員賞が続く。
これが当日のトーナメント表だ!(世界大会でもやっぱり手書き)
これが当日のトーナメント表だ!(世界大会でもやっぱり手書き)
会場の東京カルチャーカルチャーには、今までにない人数の人が入った(チケット売り過ぎた)
会場の東京カルチャーカルチャーには、今までにない人数の人が入った(チケット売り過ぎた)
レポートでは、いつものように、特に印象に残った試合をご紹介したのち、各賞および登場ロボットを紹介させていただきます。

Ancle flip table (香港:Kit da studio)
vs
growing robot(日本:ウナゴリラ)
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香港からやってきたKit da Studioは、ヘボコン香港での優勝経験を持つ。今回のロボットの必殺技はちゃぶ台返し。日本のオールドスクールな「オヤジ」をモデルにしたロボである。
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ほんとに返す。すごい。ちなみに彼は来日前、「ロボットって見ようによっては爆弾っぽいけど飛行機持ち込んで大丈夫?」としきりに心配していた。当日持ってきた実機を見たとき、その爆弾に見えなさにびっくりした。

対するGrowing Robotは、伏せた紙袋のような形状で、いかにも中になんか隠してそうなたたずまい。戦いの中で成長するロボットというコンセプトだが、「たまに成長しないときもあります」という精度の低さがウリ(?)である。

オヤジと戦うことで成長するという熱い少年マンガみたいな組み合わせになったが、はたしてGrowing Robotはオヤジを越えられるのだろうか!?
試合開始とともにベールがはがれ、なにやら膨らみ始めるGrowing Robot。予想以上の勢いで成長する!
試合開始とともにベールがはがれ、なにやら膨らみ始めるGrowing Robot。予想以上の勢いで成長する!
そこへAncleのちゃぶ台返し攻撃!当たったか当たらないかで言えば命中どまんなかだが、ヘボコンにおいて成功した必殺技が実際にダメージを与えられるケースはごく一部である。
そこへAncleのちゃぶ台返し攻撃!当たったか当たらないかで言えば命中どまんなかだが、ヘボコンにおいて成功した必殺技が実際にダメージを与えられるケースはごく一部である。
そうしている間にもGrowing Robotは完全体に近づいていく。ちゃぶ台を失ったAncleが今度は直接すくい上げ攻撃を仕掛けるも…
そうしている間にもGrowing Robotは完全体に近づいていく。ちゃぶ台を失ったAncleが今度は直接すくい上げ攻撃を仕掛けるも…
ふわっとかわされ、自分の手の勢いで後ろに転倒。Growing Robotの勝利!!
ふわっとかわされ、自分の手の勢いで後ろに転倒。Growing Robotの勝利!!
ちゃぶ台返し攻撃は、見ての通りヘボコン的にはかなり高い技術水準にあったと思う。しかし、だからといってヘボの精神を忘れたわけではない。命中したときの意味のなさ、勢いで転倒してしまう詰めの甘さ、そしてなにより、それに事前に気づいていたのに(気づいていたのだ)直してこなかったいいかげんさ。そんな人間性の部分もひっくるめてのHeboinessに、会場は沸いたのである。

Cyborg Lion (シンガポール:Din Chan)
vs
みすずロボ2号(日本:dot)
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Dinはシンガポールでヘボコンを主催するオーガナイザー。シンガポールといえば、そう、マーライオンである。マーライオンは口から水を吐くが、それをロボットで再現するのは難しかったらしく、代わりに持参したのがこちら。
棒
試合前、Dinが英語で何か言ってからライオンの口におもむろに棒を刺し始めた時点で、会場は何が起きているのか理解できていなかった。少し遅れて通訳が入り、「水の代わりに…」と聞こえた時点で会場が爆笑の渦に包まれた。水の代わりに棒。しかも丁寧に水色に塗ってある!
めちゃくちゃかわいい。そしてめちゃくちゃ鋭利
めちゃくちゃかわいい。そしてめちゃくちゃ鋭利
対するみすずロボ、今回の出場者で最もやる気のなかったロボットである。当日になって急いで作って16時(=出場者の集合時間)にようやく完成。本人は18時(=イベントの開演時間)に会場入りしたという志の低さである。みすずロボの名前は「会場までの電車で見た広告から適当に取った」。明らかにみすず学苑だ。

海外から来てくれた人 vs 集合時刻にあわててロボット作った人、最もモチベーション落差の大きい試合が、いま幕を開ける。
コトコトゆれながらゆっくり動くCyborg Lion。一方でみすずロボは市販ラジコンをそのまま使っておりスピードが速く、小回りもきく。ヘボコンで勝とうと思ったら、重要なのは実は「いかに自分で作らないか」である。性能は金で買え。
コトコトゆれながらゆっくり動くCyborg Lion。一方でみすずロボは市販ラジコンをそのまま使っておりスピードが速く、小回りもきく。ヘボコンで勝とうと思ったら、重要なのは実は「いかに自分で作らないか」である。性能は金で買え。
順当にCyborg Lionを押し出そうとするみすずロボ。しかし意外に踏ん張りが利いていて、押せない
順当にCyborg Lionを押し出そうとするみすずロボ。しかし意外に踏ん張りが利いていて、押せない
いったん引いて助走をつけようとするみすずロボ
いったん引いて助走をつけようとするみすずロボ
ところが切り返しの際に操作ミスで場外に!!!
ところが切り返しの際に操作ミスで場外に!!!
一時は危なかったが、最終的に一生懸命やった方が勝って、本当によかった。思わず運動会明けの小学校の体育教師みたいな気分になってしまう戦いであった。

ポールダンスロボ・パーティーロック・アンセム(日本:アニポールきょうこ)
vs
巨神兵 (日本:hoshitoshi115)
アニポールきょうこさんは第1回目のヘボコンからたびたび登場してくれる常連選手で、元ポールダンサー。一貫してポールダンスをテーマにした、人形が高速回転するロボを作り続け、今回で6体目だ。「ポールダンスってこんなでしたっけ!?」のツッコミも何度言ったかわからない。
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過去のポールダンスロボ(一例)
アンセムの名の通りBGM演奏機能までついた(市販のBluetoothスピーカーを乗せただけ)今回のロボのコンセプトは、「とにかくアゲる」こと。そしてもうひとつ最高にアゲアゲな必殺技があるのだが、それは後ほど見ていただこう。

一方の巨神兵。競走馬がキャタピラに乗って疾走するという男らしいコンセプトだが、紙粘土で作ってあることとパステル調の彩色のおかげで、妙にメルヘンチックな雰囲気を醸し出している。チャームポイントはお尻。
大量生産品には出せないプリッと感
大量生産品には出せないプリッと感
いずれも手作り感あふれる見た目の両ロボット。試合の様子は動画で見ていただこう。
スタートと同時に巨神兵サイドから何かが飛び出した。隠し技のミサイル攻撃か!?と思いきや…
スタートと同時に巨神兵サイドから何かが飛び出した。隠し技のミサイル攻撃か!?と思いきや…
頭が取れただけ……!!!
頭が取れただけ……!!!
騎手の頭部を失いつつもキャタピラ特有の馬力(馬だけに)の強さでポールダンスロボを土俵際に追い詰める
騎手の頭部を失いつつもキャタピラ特有の馬力(馬だけに)の強さでポールダンスロボを土俵際に追い詰める
そのまま押し出しで巨神兵の勝利!と同時にポールダンスロボから大量の札が!!!!
そのまま押し出しで巨神兵の勝利!と同時にポールダンスロボから大量の札が!!!!
ポールダンスロボ最新作、パーティーロック・アンセム。その必殺技は「マネーキャノン」。両肩に乗せた箱から大量の札を発射し、敵を一網打尽にする掃討兵器……のはずであった。しかし本番の緊張からか操作方法を間違えており、ようやく発射できたのは負けた瞬間。武器というよりはまるで豪快に吹き出す血しぶきのように、とめどなく発射される札束。パーティーロック・アンセムの名に恥じぬ、最高にアゲな最期となった。

ところでいま紹介した2試合、どちらも敗因は操作ミスである。ヘボコンの出場者はロボットが完成するとそれだけで満足してしまい、全く操作練習をしてこない傾向にある。技術力だけでなく根気もない。それがヘボコンの恐ろしさなのである。

コラム:ゲスト審査員がすごい

今回はスペシャルゲスト審査員として、この方をお招きした。
Arduinoの創業者の一人、David Cuartielles氏。それを全く感じさせない表情であるが、めちゃくちゃ重鎮である。
Arduinoの創業者の一人、David Cuartielles氏。そうと全く感じさせない気さくさであるが、めちゃくちゃ重鎮である。(Maker Faire Tokyo と共同招聘)
Arduinoというのは世界中で使われてるマイコンボードで、簡単にいうとデバイス(ロボットも含む)に組み込むための小さいコンピュータだ。それ自体が技術の塊だし、そのファンも全員技術者。

そんな技術界の重鎮を、不器用な人だけを集めた、技術の底辺みたいなイベントに呼ぶ。僕のいままでの人生で一番の、人脈と予算を駆使した壮大なギャグである。
実はDavidはスペインでヘボコンを開催してくれているオーガナイザーの一人でもあって、その縁で今回来てもらうことができた。彼はArduinoの教育事業の責任者で、ヘボコンも学生向けの教育プロジェクトの一環として開催しているという。ヘボコンが世界的な技術企業の教育プロジェクトに。2年前にその話をされても、僕は「何かの詐欺かな?」としか思えなかっただろう。意表を突きすぎた展開である。
ヴァレンシアでのヘボコンの様子
ヴァレンシアでのヘボコンの様子(arduino.cc より
ちなみに映像撮影をしてくれた大北くんが、David本人に「ヘボコンでArduino使うのはどう?」と聞いてみたところ、「そんな頭使ったことしちゃダメだ」と言っていたそうだ。開発者本人の口からそのセリフが聞けるとは、感無量である。

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