ひらめきの月曜日 2016年9月12日
 

ダメなロボットが飛行機でやってきた!!ヘボコン・ワールドチャンピオンシップ レポート

クサビンガー(日本:おショウユ) vs ロボットとキスしたいAI(日本:Zuni) vs Cup noodle king(香港:King of cup noodle) vs 汎用人型ヘボコン決戦兵器(日本:チームタナゴ)
上のロボット名は左上から時計回りです。
上のロボット名は左上から時計回りです。
左上の三角形のロボはクサビンガー。当初の構想ではマシン前部から大量の子機が飛び出すはずだったのだが、イベント直前に「旅行で疲れたので」という理由から子機機能をあきらめ普通のロボットに。

大風呂敷を広げるだけ広げて投げ出す。技術力の低い人ならではの作業量見積もりのできなさ、そして根気のなさと、ヘボコンとしては非常に正しい姿勢である。
Facebookのイベントページにアップされていた、当初の構想図
Facebookのイベントページにアップされていた、当初の構想図
その右にいるのは、ロボットとキスしたいAI。勝利以上にロボットとキスすることを最優先の目的としており、必殺技としてポッキーゲーム機能を搭載している。相手ロボットに近づくと、口にくわえたお菓子が短くなっていき(実際には押されて口の奥に押し込まれているだけなのだが)、最終的にキスに至るという作戦(作戦?)である。
ちなみに中にはAIらしく、脳が入っている。
脳
わかりやすい。

右下のCup noodle kingは、こちらも香港からの参加で、香港ヘボコンの出場経験者。一見テーブルの上にカップラーメンが乗っただけのマシンだが、隠し技として非常に些細なパンチ攻撃がある。
今まで見たパンチの中でいちばん些細なパンチ
今まで見たパンチの中でいちばん些細なパンチ
ついでにラーメンもちょっと回る。全体に動きが些細すぎて、生活感のあるビジュアルにもかかわらず見てるとなんだかかわいくなってきてしまうマシンである。

そして左下は汎用人型ヘボコン決戦兵器。
!
樽型の容器に入っているのが、開発者いわく「人工生命」。試合中はこれがブルブルと震え、後部のキャタピラと合わせて推進力になる。閉じ込められた人工生命というちょっとダークな設定に加え、他にも意図の分からない部品(マシュマロなど)がたくさんついており、得体の知れない不気味さは今大会髄一だ。家族参加とはおもえない非ほのぼのぶりである。

以上、4体の対戦。ところで、技術力の低い人が作ったロボットは、たとえリモコンがついていても、基本的にコントロールが利かない。足回りの工作精度が低いからだ。それを余すところなく満喫できるのがこの試合である。では見てほしい。
試合開始直後。この時点ではなんとなく全機、狙った相手がいるように見える
試合開始直後。この時点ではなんとなく全機、狙った相手がいるように見える
上の写真からけっこう時間がたっているにもかかわらず、試合展開としてはなにも起きていない
上の写真からけっこう時間がたっているにもかかわらず、試合展開としてはなにも起きていない
動いてはいるもののちゃんと舵が取れず、何ら効果的な攻撃ができないままなんとなく真ん中へんに集まってきたロボットたち。これぞ烏合の衆
動いてはいるもののちゃんと舵が取れず、何ら効果的な攻撃ができないままなんとなく真ん中へんに集まってきたロボットたち。これぞ烏合の衆
試合終了直前、人工生命が脱走した!!!!!しかし試合展開には特に影響なく、烏合の衆が5機に増えただけであった。
試合終了直前、人工生命が脱走した!!!!!しかし試合展開には特に影響なく、烏合の衆が5機に増えただけであった。
けっきょく時間切れになり、客席投票による判定で、汎用人型ヘボコン決戦兵器の勝利。たぶんみんな選択に困って、「なんとなく」で選んでたと思う。
2回戦はこんな感じの試合が4試合。つづいて準決勝を経て、いよいよ決勝だ。

決勝戦
汎用人型ヘボコン決戦兵器(日本:チームタナゴ) vs Robot Controlled Controllor Robot(香港:Ricky Chan)
決勝戦は、この記事でもそれぞれ2度目の登場となる、この2機の対決。

「香港ではいつも2位だったので今回も2位を狙う」というRicky。
そして、第1回目のヘボコンで自然発生的に生まれた謎の伝統「敗者のパーツをつけて想いを受け継ぐ」にのっとり、イカとトッポの箱が追加された汎用人型決戦兵器。

これまでの試合を見るに、実力で勝ち上がってきた前者と、半ば運だけで勝ち上がってきた後者という印象である。果たして優勝はどちらの手に!?
スタートと同時に正面から突進するRCCR。しかし人型決戦兵器の網に乗り上げてしまった!
スタートと同時に正面から突進するRCCR。しかし人型決戦兵器の網に乗り上げてしまった!
と思いきやすんなり回避したRCCR、次は人型決戦兵器のサイドに回り込む。
と思いきやすんなり回避したRCCR、次は人型決戦兵器のサイドに回り込む。
人型決戦兵器を押し出しにかかるRCCR。その時、人型決戦兵器の人工生命収容容器が開いた…!
人型決戦兵器を押し出しにかかるRCCR。その時、人型決戦兵器の人工生命収容容器が開いた…!
人工生命を放出し挟み撃ちで逆転を図る…かとおもいきや、人工生命のぶん軽くなった人型決戦兵器、速やかにRCCRに押されて場外へ。
人工生命を放出し挟み撃ちで逆転を図る…かとおもいきや、人工生命のぶん軽くなった人型決戦兵器、速やかにRCCRに押されて場外へ。
人工生命、放出したところであんまり戦力にならなさそうな予感はしていたが、まさかそのぶん本体まで弱体化してしまうとは…。完全にマイナスの効果しかない必殺技だった。

そしてこの試合で、優勝はRCCRの開発者、Rickyに決定!

こうして全試合が終了。「最も技術力の低い人賞」を決める投票を経て、イベントは表彰式へ。

コラム:土屋くんとArduino

急に話はさかのぼる。ワールドチャンピオンシップの前日、実は東京ビッグサイトでもヘボコンを開催した。Maker Faire Tokyo内で開催した、ミニヘボコンである。
イベントの様子
イベントの様子
そこで活躍した一台のロボットがいた。
生き物(日本:土屋英玄)
生き物(日本:土屋英玄)
開発者は小学生の土屋くん。去年の夏休みの工作で作ったワニの下に、リモコンのおもちゃをつけたロボット。
前にハンガーがついているのがポイントで、これにより相手を押しのけたり、自分が転倒しそうになったら支えになったりと、多彩な戦法を実現していた。
そんな活躍を評価され、
優勝と審査員賞をダブル受賞。
優勝と審査員賞をダブル受賞。
そして何を隠そうこのミニヘボコン、予選会も兼ねていたのだ。事前登録のうえ審査員賞を獲得したロボットには、翌日のワールドチャンピオンシップの出場権が与えられる。そして、土屋くんは……
世界の舞台に立つ…!
世界の舞台に立つ…!
実は土屋くんは、もともとワールドチャンピオンシップにも応募してくれていたのに、抽選で落ちてしまっていたのだ。しかし彼はそこで情熱を失わず、ミニヘボコンから這い上がり本戦への出場資格を獲得。これだけでもドラマチックなのに、この話にはまだ続きがある。ワールドチャンピオンシップで彼は準決勝で負けてしまったが、さいごに審査員賞、それも今回最大のゲストであるDavidによる、Arduino賞を獲得したのだ!
Davidが土屋君にArduinoを渡す、感動の瞬間(の一番いいところに弊社の紙袋が置いてあってめちゃくちゃ邪魔)の一枚
Davidが土屋君にArduinoを渡す、感動の瞬間(の一番いいところに弊社の紙袋が置いてあってめちゃくちゃ邪魔)の一枚
ここからは主催者である僕の告白だ。白状すると、僕はDavidが土屋くんにArduinoを手渡すのをステージの隅っこで見ていて、ちょっとだけ泣いてしまった。これは今回のイベントを象徴するシーンだったんだけど、その時点では自分でも、自分が何で泣いたのか、今ここで起きたことがなんだったのか、よくわかってなかった。イベントが終わってからも何日か、ことあるごとに振り返っていた。あれはなんだったのか。で、思い至ったのは、あの場で起きたこと、あれは「教育」だったんじゃないかな、ということだ。

土屋くんはあの大会に(大人とのチームでなく)個人で参加していた唯一の子供である。そんな彼に賞が送られた。それだけでもいい話なんだけど、大事なのは、それが決して「将来のある子供だから」という安易な理由で贈られたものではない、ということだ。この写真を見て欲しい。
この写真はDavidの審査ノートである。
!
ロボットの機能・特徴の詳細なメモと外観のスケッチ、これが全32体分、ノート7ページ以上にわたりびっしり書き込まれていた。ここまで本気で審査した結果、彼がArduino賞に選ばれたのだ。

そして、Arduino賞には賞品があった。開発者自らの手によって、彼の手に、二台のArduinoが手渡されたのである。このことの意味がわかるだろうか?

これはたとえば、おもちゃメーカーの開発者からおもちゃが贈られた、というのとはぜんぜん違う話である。なぜなら、Arduinoは、部品だからだ。土屋くんがこれから始めることは、贈られた賞品をただ消費することではない。Arduinoという部品を使って、自分の手で何かを「作り始める」ことだ。Arduinoとはそういうものだ。だからこそArduinoには教育事業があり、その責任者であるDavidがいる。多くの人に、「ものをつくる」ことのすばらしさを教えるために。

もっというと、Arduinoは電子工作をたしなむ人ならみんなが使っている、世界中の技術者に愛されている製品である。それを与えること、それはまさしく、彼を「技術者の世界に迎え入れる」行為なのだ。

僕らは「教育」というと、学校で机に向かって講義を聴くような、退屈な授業風景を想像してしまう。しかしDavidたちのやっている「教育」は、つまりこういうことなんだと思う。そのあり方に僕は深く心を打たれたし、それが目の前で起きたことについ涙してしまった。そしてもうひとつ、とても名誉なことに、Davidはその教育活動の一環として、ヘボコンを採用してくれている。僕にとってもこれほど名誉なことはない。この出来事は、おそらく今後のヘボコンのあり方にも大きく影響を与えていくのではないか。なんとなく、そんな気がしている。
対Ricky戦
土屋くん対Ricky戦
ちなみに土屋くん、あのよくできたロボットについては「ワニ以外はほとんどお父さんが作りました」と白状していた。
秀逸なオチまでついて、余すところなく全部いい話であった。

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