チャレンジの日曜日 2016年9月18日
 

書き出し小説大賞 第107回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。
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仕事用のMacがぶっ壊れました。しかもなぜか書き出し小説の原稿だけが保存されておらず、応募作約800通を再選考しました。ワイルドだろ〜〜?と、思わずいにしえのギャグが口をつく心境です。それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

手すりに甘えた夜だった。
もんぜん
雨としかいいようのない雨の匂いが好きだ。
village-bridge
ポケットのなかで、ミイ、と鳴いているものがある。
早百合
小鉢に入った、夜みたいなものをつつく。
義ん母
詰め直した銀歯を舌でさわりながら、吹替版の洋画をながめていた。
TOKUNAGA
もうやっていないテレビ番組の夢をよく見る。
紀野珍
新システムの守り神たる私の仕事は、システムに指一本触れないことだ。
Mch
スズメバチが縄跳びから出て行かない。
ウチボリ
ご飯を食べるところより上に、ゴミ箱がある。
雨の日は寝る
凡人が足をとられ、天才が軽々と飛び越える、それは「脈絡」である。
プレミアムバザー高田
席を譲られた老アンドロイドは、そのまま沈み込んで動かない。
ボーフラ
目薬をさして雨の町を見る。
xissa
ハーフタイムを過ぎ、子供らは飽きはじめた。
まじいい
たまり醤油を泳ぐ馬がどんどんいい感じに仕上がっていく。
ら+
世界が見えない何かで仕切られているのを初めて知ったのは、校区の違いで幼馴染みとは別々の小学校に通うことになったときだった。
よしおう
もんぜん氏「手すりに〜」秋の夜、ほろ酔いの頬に手すりの冷たさを感じる秀作。village-bridge氏「雨としか〜」夏の雨と秋雨の匂いはまた少し違う気がする。義ん母氏「小鉢に〜」これも秋の夜長を感じるオツな秀作。Mch氏「新システムの守り神〜」私のMacが壊れた原因もMac上でWindowsを走らせるアプリを入れたからのようです。さわらぬOSに祟りなし。プレミアムバザー高田氏「凡人が足をとられ〜」小学生にこんななぞなぞ出されたら嫌だろうな。ら+氏「たまり醤油を〜」たまり醤油のテカりと馬の毛並み、なかなか思いつかない光沢つながり。よしおう氏「世界が〜」そう言えば子供の頃って妙に校区や県境にときめいた。

続いては規定部門。今回のモチーフは「超能力」でした。全身に保存できなかったファイルが浮き出る能力が欲しい。

書き出し規定部門・モチーフ「超能力」

彼女の魂胆ならいつでも透けて見えた。
それでも嬉しかった
母は僕が昼に食べたものを夕飯に選ぶ。
まじいい
人が降りる駅が分かるこの能力は、地味に役に立つ。
夏猫
全ての集中力を使い果たし、お好み焼きはひっくり返った。
茂具田
人の頭上に数字が見えるようになってずいぶん経つが、いまだに何の数だか分からない。
Mch
同じまちがいを何度でも再現できる。
xiss
父は超能力より先に手が出るタイプの男だった。
それでも嬉しかった
クラス替えの時、新しい担任とクラスメイトを当てる子がいた。
あざらし
どの念写にも、あの人が写りこんでしまう。まいった。恋である。
けー
姉がテレビの中で、よそ行きの超能力を披露している。
かわいい寝顔
見つめ合い、殺し合う。
卯村
博打ですってんてんになり、流石に素っ裸は恥ずかしいってなわけで長屋まで瞬間移動した。
g-udon
ハセベは力を使いすぎ、残高とともに消えた。
小夜子
ドライアイスを川に投げ込んで以来、あだ名が「魔術師」になった。
九官鳥級艦長
眠りの里田の予言はよく当たるが、寝言とまざっている。
東ことり
顔を見ただけで女子のくしゃみが分かる。
ウチボリ
雨を予見するチカラは、偏頭痛という形で現れる。
紀野珍
透視の授業の間は、担任がお爺さんに代わる。
松っこ
きみがまだ超能力を諦めていなかった頃、それは人生で最もモテない時代だったのではないかな?
マークパン助
スケベキネシスの使い手たもっちゃん。彼と出会ったのは幼稚園の頃だ。
正夢の3人目
誰にでも見えると思ってた。
ひろな
間違いテレパシーだった。
TOKUNAGA
お母さんの履いているパンツだけ見えた。
トミ子
それでも嬉しかった氏「彼女の魂胆なら〜」今回のモチーフはなぜか甘酸っぱい恋愛ものに仕上げた作品が多かった。恋と青春と超能力は相性がいいらしい。嬉しかった氏はもうひとつの「父は超能力より〜」も秀逸。夏猫氏「人が降りる駅が〜」残業帰りにはうれしい能力。Mch氏「人の頭上に数字が〜」これまでに使用中のトイレを開けられた回数だと思う。xiss氏「同じまちがいを〜」ポジティブシンキング!かわいい寝顔氏「姉がテレビの中で〜」よそ行きの、がよい。シモネタ系能力は外じゃ厳禁。g-udon氏「博打で〜」エスパー長屋もの、もっと読みたい。落語とSFは意外と相性がいい。ウチボリ氏「顔を見ただけで〜」卓球の石川佳純ちゃんは可愛いくしゃみのはず。トミ子氏「お母さんの〜」心底残念。なお今回も哲ロマ氏が得意の網戸ネタを送ってきてくれましたが、華麗に無視しておきました。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「危機的状況」
冒頭からいきなりのピンチ! 映画では定番の手段、エンタメ系の小説でもよく使われる手法ではないだろうか。掴みが命の書き出し小説でも一度はトライしておいたいテーマである。状況的なピンチはもちろん、心理的な危機もあるだろう。今回の自由部門、ウチボリ氏の「スズメバチが縄跳びから出て行かない。」はいい作例になっている。みなさんの筆で、主人公をいきなり窮地に追い詰めて欲しい。締め切りは9月30日正午、発表は10月2日を予定している。下記の応募フォームから応募されたし。力作待ってます!
最終選考通過者

梅肉/吉田髑髏/八重樫/豆ん棒/井沢/ウリムク/哲ロマ/菅原 aka $UZY/卯村/タクタクさん/チチカステナン号/
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