とくべつ企画「スーツで行く絶景」 2016年9月21日
 

スーツで行く戦場ヶ原はあの世っぽい

全体的にあの世っぽい写真が続く記事です
全体的にあの世っぽい写真が続く記事です
先日の三連休、皆さんはどんなバカンスを楽しんだろうか? 僕はといえばスーツでハイキングしてきた。ごくごく一般的な楽しい行楽である。その服装以外は。

※この記事はとくべつ企画「スーツで行く絶景」の1本です。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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奥日光の絶景地・戦場ヶ原へ

ビジネスにはビジネス、ハイキングにはハイキングの、それぞれ然るべき服装というものがある。今回はあえて、そのTPOを逆転させてみる。もしかしたら、何か新たな発見があるかもしれない。

というわけで、僕はスーツを着てハイキングに出かけることにした。向かうは日光の絶景地・戦場ヶ原である。
東京〜日光はスペーシアで2時間弱
東京〜日光はスペーシアで2時間弱
朝9時の北千住発日光行き、特急スペーシア。三連休の初日を日光で過ごすと思しき観光客で満席だ。みな動きやすそうなカジュアルな服装をしている。うん、みんなが正しい! 旅をアクティブに楽しむためには、機動性とリラックスを備えた服装が望ましい。

若干の居心地の悪さを感じつつ東武日光駅へ降り立った。
東武日光駅に到着。ナナメで失礼します
東武日光駅に到着。ナナメで失礼します
東京から日光駅まで2時間弱。さらにそこからバスで1時間と少し。ハイキングコースの入口である日光湯元ビジターセンターにたどり着く。
後ろ手を組むと、議員の視察っぽくなる
後ろ手を組むと、議員の視察っぽくなる
ちょいとルートの情報でも入手しようと立ち寄ったところ、入口に不安な張り紙を見つけてしまった。
「クマレクチャー」とある。え、クマ出んの?
「クマレクチャー」とある。え、クマ出んの?
なんと、ここいら一帯の森にはツキノワグマが棲息しているらしい。ビジターセンターのホームページによれば8月は11件、7月は22件の目撃情報があり、そのうちのいくつかは僕がまさにこれから歩こうとしている道中でのことである。
クマかー
クマかー
撮影係として同行してくれている編集部の古賀さんは痩せていてクマ的にはまずそうだから、先に食われるのは多分おれだろう。スーツ姿で死んだら、ネットで「自然なめすぎwww」って叩かれるんだろうな。それはやだな。
だがひるんではいられない。こんなに素晴らしい自然が僕を呼んでいるのだ
だがひるんではいられない。こんなに素晴らしい自然が僕を呼んでいるのだ
偉そうに手を振ってみる。地元のみなさん、次の選挙もヨロシク
偉そうに手を振ってみる。地元のみなさん、次の選挙もヨロシク
スーツで田舎に来ると、選挙区を視察する1年生議員みたいだ。思わず「我が地元」みたいな心持ちになる。新人の仕事はぞうきんがけと地方のドサ回り。地元に媚を、もとい顔を売り、支持を確たるものにせねばなるまい。
橋の強度をチェック
橋の強度をチェック
いや、センセイというより、どちらかというと地方遊説中に迷子になったばかな秘書である。
このクイズは難しすぎる。センセイに言ってやさしくしてもらおう
このクイズは難しすぎる。センセイに言ってやさしくしてもらおう
山火事用心。その防災意識が頼もしい
山火事用心。その防災意識が頼もしい
ビジターセンターでもらった地図を頼りにしばらく歩くと、ゴーっという滝の音が聞こえてきた。滝壺へ向かってみよう。
あっ、滝がある!
あっ、滝がある!
滝壺へ向かう。自然が深まるほど、スーツの冗談感が際立つ
滝壺へ向かう。自然が深まるほど、スーツの冗談感が際立つ
奥日光を代表する名瀑・湯滝
奥日光を代表する名瀑・湯滝
滝壺には観瀑台があり、高さ70メートル、長さ110メートルの豪快な流れを間近で眺めることができた。日光では華厳の滝が有名だが、この湯滝も相当にダイナミックである。
滝とともに
滝とともに
スーツを着ているときにカメラを向けられるとなぜか、かっこつけたポーズになってしまうから不思議である。滝の迫力を全力で写真におさめんとする隣のおじさんのがむしゃらさとは対極だ。だが、そんなクールなポーズがわりかしはまる。絶景とスーツ、じつは相性がいいのではないか。
しかし、鮎を頬張る姿はまぬけだ。食いしん坊とかっこつけは相性が悪い
しかし、鮎を頬張る姿はまぬけだ。食いしん坊とかっこつけは相性が悪い
さて、滝でリフレッシュした後は、深い森の中へ突入する。ものものしい鉄のゲートがその入口だ。扉の脇には「クマに注意!」の案内も掲げられている。ここから先は、いよいよクマのテリトリーである。
いかにも危険ゾーン、というたたずまいのゲート。ここから先は自己責任ですよと言わんばかりだ
いかにも危険ゾーン、というたたずまいのゲート。ここから先は自己責任ですよと言わんばかりだ
注意!っていわれてもね…
注意!っていわれてもね…
クマ以外にも危険がいっぱい
クマ以外にも危険がいっぱい
古賀さんは小柄な女性なので、もしクマが出現したら僕が守らねばなるまい。本音を言えば自分だけでも助かりたいが、そもそも戦場ヶ原を提案したのは僕なのだ。古賀さんを無事に家族のもとへ帰す責任が僕にはある。だが、もし古賀さんが僕をかばって襲われてくれるとしたら、その犠牲に甘えることはやぶさかではない。

ともあれ、ビジターセンターで教わったクマへの対処法を思い出しながら、足早に森を突き進む。
森の中、クマさんに出会わないことを祈りつつ
森の中、クマさんに出会わないことを祈りつつ
幸いクマには遭遇しなかったが、反対側の木道を歩くハイカーとはけっこうすれ違った。年配の方が多く、こんな恰好で叱られるかと思ったのだが、概ね反応は温かい。

スーツはTPO関係なくシルバー層に好印象だ。
倒れた木の根がお化けのよう
倒れた木の根がお化けのよう
木道が設けられ革靴でも歩きやすい
木道が設けられ革靴でも歩きやすい
倒木が橋みたいになっているぞ。渡ってみよう
倒木が橋みたいになっているぞ。渡ってみよう
怖いからやっぱりやめとこう
怖いからやっぱりやめとこう

いよいよ戦場ヶ原へ

森ゾーンを抜けると、湿原ゾーン。目的地の戦場ヶ原だ。
森の奥に開けた湿原が見える
森の奥に開けた湿原が見える
戦場ヶ原に差し掛かると木々が途切れ、明るい空間が広がっている。鬱蒼とした森の向こうにぼんやりと光る湿原。その雰囲気はなんとなく、あの世っぽい。このまま進むと死んじゃうが、足が勝手に動いて引き返せないやつだ。
その先は地獄か天国か
その先は地獄か天国か
酔いつぶれて目覚めたら森にいた、みたいな図
酔いつぶれて目覚めたら森にいた、みたいな図
現世に未練を残しつつ歩いていると、遠足の小学生の賑やかな一団とすれ違う。若いのに気の毒に。
全員が挨拶してくるのでこちらも一人ひとりに返すこんにちは地獄。君らは1回で済むが、こっちはけっこう大変だぞ
全員が挨拶してくるのでこちらも一人ひとりに返すこんにちは地獄。君らは1回で済むが、こっちはけっこう大変だぞ
2000mを越える連山を望む大湿原
2000mを越える連山を望む大湿原
キモチイイネー
キモチイイネー
引きで撮ると、あの世感が増す
引きで撮ると、あの世感が増す
ここまで歩くこと約3時間。木道が整備された平坦なルートとはいえ、革靴でのハイキングはやっぱりしんどい。そろそろ嫌になってくる頃、ゴールのバス停まで残り500メートルの看板が見えた。よかった、現世はもうすぐだ。
この日最大級の根っこお化け
この日最大級の根っこお化け
ゴール間際になってようやく戦場ヶ原の由来を知る
ゴール間際になってようやく戦場ヶ原の由来を知る
そんなこんなでゴール。心なしか足が短くなった気がする
そんなこんなでゴール。心なしか足が短くなった気がする

森にスーツは意外と合う。ただし亡霊的に

このとくべつ企画はスーツ姿で絶景に行くミスマッチ感を楽しむものだが、森や湿原にスーツは意外となじむことがわかった。といっても、亡霊的ななじみ方だけど。
スーツで遭難した、まぬけな地縛霊である。

ともあれ無事に帰ってこられてよかった。きっとクマも、森での予期せぬフォーマルにびびったのではないかと思う。
電車に乗ると、途端にサラリーマン感が漂う。やっとTPOがマッチした
電車に乗ると、途端にサラリーマン感が漂う。やっとTPOがマッチした
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