特集 2016年10月4日

体内をネクタイで透視する

ネクタイひとつで、より的確に情報が伝わるように。
ネクタイひとつで、より的確に情報が伝わるように。
先日、三十代の知人数人と「体調が悪い」という話をしていて、気付いたことがある。
彼らは、まだ自分の身体の衰えに感覚が付いてきていないのだ。

例えば、内臓のどこが良くないのか、という表現が上手くできない。「なんとなくお腹のこの辺が重いんですよ」とか、そんな漠然とした表現しかできていないのだ。

これではいけない。体調悪い先輩として、若手が良くない部分を明確に言えるメソッドを考えてあげたい。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

ネクタイによる情報伝達を試みる

我々四十代ともなると、体調の悪さにも慣れが出てくる。
「いや、こないだから肝臓のこの辺りがちょっとね」とか「胃の噴門(入口)が痛くてさー」とかそれぐらい、的確に腹を押さえながら言うことができる。
なんせ慣れているからだ。ここ10年ぐらいそんな話ばっかしてるからだ。
人生で初めて、100均の礼装用白ネクタイを買い占めるという体験をした。
人生で初めて、100均の礼装用白ネクタイを買い占めるという体験をした。
では、まだ体調の悪さに慣れてない人はどうしたらいいのか。
問題は、人間の内臓が外から見えないことだと思うのだ。
どこが肝臓か、どこが膵臓か、胃のどの辺りが痛いのか。心臓って正確にどの辺だ。そういうのさえきちんと分かっていれば、自分の体調不良にも向き合えるはずだ。
画像サイトで内臓の画像を購入する。内臓、1200円だった。思ったより安かった。
画像サイトで内臓の画像を購入する。内臓、1200円だった。思ったより安かった。
であれば、内臓の可視化こそが解決策のはずだ。
自分の中がちゃんと見えさえすれば、「ここが痛い」と指差して的確に話ができるだろう。
なんせ、見えてるんだから安心だ。
うっかり胃を示すつもりが肝臓の辺りを指で押さえるミスなんかも無くなるだろう。
若手諸君、憶えておくと良い。我々体調悪い先輩は「いや、そこ胃じゃないから」とか密かに思っているのだ。
あとはアイロンプリントでじゅーっと転写。
あとはアイロンプリントでじゅーっと転写。
さて、前フリが長くなって申し訳ない。
要するに今回は、ネクタイに内臓をプリントしておくとお腹の中が見えてる的な感じになるんじゃないか、という試みである。
人間の透視図。今後は“きだてぶくろ”とかそういう怪獣っぽい臓器も入れたい。
人間の透視図。今後は“きだてぶくろ”とかそういう怪獣っぽい臓器も入れたい。
どうだろうか。これなら自分の痛いところとか不調なところがバッチリ見えるはずだ。

ネクタイなのでどうしても見えてる幅が狭いのが難点だが、だいたいの内臓の場所さえ分かれば、まぁいいのではないか。
オープンカフェで体調の悪さを訴える僕。最近ちょっと肝臓がなー。
オープンカフェで体調の悪さを訴える僕。最近ちょっと肝臓がなー。
使ってみた感想としては、思ったより確実に体内の不調部が指し示せて便利だ。
なんせ、自分の胸元から腹にかけてを見たら、そこに内臓があるのだ。
漠然と「なんか分からないけどこの辺が変な感じ」というより、「あっ、心臓が不整脈!」と気付けた方が、病院に行く時も心の準備ができるというもの。ネクタイによるファーストオピニオンである

あと、自宅から徒歩5分のカフェまでこの格好で写真を撮りに行ったのだが、意外とネクタイが内臓だということは気付かれない。ビジネスユースでもいけそうだ。
体調不良と、そもそもネクタイに慣れてない三十代。
体調不良と、そもそもネクタイに慣れてない三十代。
ちなみに、体調不良に慣れていない三十代の代表として、編集部藤原くんにもネクタイを着けてもらった。
若いとは言え彼ももう三十歳。どこかしこか痛いとか良くないとかいう部分もあるだろう。
そんな時にこのネクタイが役に立つのだ。
胃を指しつつ、大腸もつまむ。これはこれで痛そう。
胃を指しつつ、大腸もつまむ。これはこれで痛そう。
「最近、食後に胃の下の方がちょっと重い感じがします」
あー、そこは幽門部だ。十二指腸につながるところで、いろいろとダメージを受けやすい部分らしいぞ。若いとは言え、気をつけて欲しい。

どうしても漠然とした痛みがある時用ネクタイ

一方、やはりどうしたって「腹部全体がなんとなく痛い」みたいな時もある。
そういう場合は、内臓ネクタイも使いにくい。
自宅のドアに模造紙を貼って撮影。これをネクタイにプリントする。
自宅のドアに模造紙を貼って撮影。これをネクタイにプリントする。
痛みも、なんとなく痛いというのは不安が大きい。痛む理由がちゃんと分からないと、僕ら四十代も怖いのだ。
そこで必要になってくるのが、痛みにきちんと理由を与えてくれるネクタイである。
「あー、これならお腹が痛いのもしょうがないよね」というやつだ。
「なんかこの辺がずっと痛いんだよね」
「なんかこの辺がずっと痛いんだよね」
お分かりいただけただろうか。
お分かりいただけただろうか。
とりあえず、これなら痛いのもしょうがないだろう。
もしくは仮病でお腹が痛い、というアピールするのにも使えるはずだ。
残念ながら僕はネクタイをキチンと締める職種ではないが、こういう用途なら積極的に使っていってもいいかもしれない。

明るいところで見てもちょっと声が出る怖さあるな。
明るいところで見てもちょっと声が出る怖さあるな。
ズボンのチャックを「社会の窓」と呼ぶが、ネクタイは「体内の窓」になりえそうだ。
なんかサイボーグっぽい透視図とか、そういうネクタイもかっこいいかもしれない。
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