特集 2016年10月8日

かんたん!ハーレクイン入門

全世界で愛される恋愛小説ブランド・ハーレクイン
全世界で愛される恋愛小説ブランド・ハーレクイン
秋といえば、何を思い浮かべるだろうか。
食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋など、多岐に及ぶジャンルの秋の中で、私が最もオススメしたいのは『読書の秋』だ。
私が季節問わず本を読むが、正直夏は読書に向かない季節だと思う。
その理由として、まず、暑くて集中力が途切れがちだということ。そして、じっと本を読むうちの徐々に指が汗ばんでいきページがめくりにくくなっていくこと。
そんな不遇の季節を越えてやってきた秋、皆さんも思う存分読書してください。

そんなわけで、私のこの秋おすすめのジャンル・『ハーレクイン』をご紹介します。
1980年北海道生まれ。
気が付くと甘いものばかり食べている偏った食生活を送っています。


前の記事:おすすめクリームソーダベスト5


ハーレクインとは何か

ハーレクインのレーベルロゴ。
ハーレクインのレーベルロゴ。
ハーレクインとは道化師を意味するフランス語『アルルカン』の英語読みであり、女性向け恋愛小説で有名なカナダに本社を置く出版社の名前でもある。
現在は企業買収等を経てハーパーコリンズ社の一部門となっているが、レーベルとして『ハーレクイン』の名は残っている。

主力出版物である女性向け恋愛小説はロマンス小説の代名詞として知られ世界各国で翻訳されており、日本でもハーパーコリンズ日本法人から数多くのハーレクインロマンスが出版されている。
世界の主要都市で展開されるハーレクインの輪
世界の主要都市で展開されるハーレクインの輪
なお、レーベルロゴは道化師の衣装によく使われるひし形をモチーフとしているそうだ。

というのはWikipediaあたりを見てもらえば分かるので、もう少し具体的に説明していこう。

ハーレクインの外見的特徴

まずは、書店等で他のロマンス小説とハーレクインを間違わないために、その外見的な特徴から説明していこう。

文庫やコミックといった展開もあるが、一般的に「ハーレクインロマンス」といえば、月2回刊行される新書ほどのサイズでカバーのないペーパーバックタイプの書籍を指す。
コンビニで売ってる総集編のマンガみたいなやつである。
文庫本より大きく、新書に近いけど少し小さめ。
文庫本より大きく、新書に近いけど少し小さめ。
月2回刊行で出版社が定期購読をお勧めしていることから、おそらく扱いは雑誌に近いのだろう。
薄くて軽いので持ち歩きに便利だし、文庫本と違いカバーが折れたり外れたりする心配もないし、また、本自体が簡素な作りだから汚れたりしても惜しくないという利点がある。ただ、あまり持ち歩いて読んだことは無い。

たまに、現役で新作が出ていることに驚かれることがあるのだが、おそらく貴族が活躍するような時代設定の話が多い、表紙がフリー素材っぽい等で時代を感じさせないことが原因だと思う。
どれもフリー素材感が漂う装丁。
どれもフリー素材感が漂う装丁。
海外ロマンス小説は表紙がフリー素材っぽいものがわりと多いのだが、新書サイズのペーパーバッグはハーレクインだけである。

ついでに、表紙の左上に『○月5日刊』か『○月20日刊』と表記されていれば、完全にハーレクインだ。
これで、他のロマンス小説レーベルと間違わずハーレクインを選べるようになったはずなので、次のステップへ進もう。

ハーレクインのレーベルと内容分類

ハーレクインには主に、『ロマンス』『イマージュ』『ディザイア』3つのシリーズに分かれている。
ベージュっぽい『ロマンス』、淡い黄色は『イマージュ』、赤い『ディザイア』
ベージュっぽい『ロマンス』、淡い黄色は『イマージュ』、赤い『ディザイア』
『ロマンス』では日常では起こらないようなドラマチックな恋愛、『イマージュ』は身近に起こりうる題材の物語、『ディザイア』は情熱的な物語、といったジャンル分けになっている。
少女マンガっぽい雰囲気の『イマージュ』、昼ドラ的な『ロマンス』、エロスな要素も多分に含む『ディザイア』といったところだろうか。
基本的には、すべてイケメンと出会ってハッピーエンドである。

しかし、ハーレクインにおけるジャンル分けは、レーベルによる分類よりもむしろ時代や舞台設定の違いによる分類の方が分かりやすいと思うので、それをご紹介したい。
<1>リージェンシー
(歴史もの)
貴族の世界を舞台にした歴史ものっぽい作品は多い。
貴族が出てくるとそれだけで非日常感が漂いTHE・ハーレクインといった雰囲気が出るので、とりあえず華やかな作品を読みたい方にお勧めだ。

不勉強ながらハーレクインを読むようになるまで知らなかったが、イギリス・ハノーバー朝ジョージ4世の摂政王太子時代を『リージェンシー』といい、その時代を舞台にしたものが特に人気があるらしい。
ヘレン・ディクソン『花嫁の憂鬱』
ヘレン・ディクソン『花嫁の憂鬱』
このように、ヒロインがドレスを着ていてヒーローがかっちりした感じの服を着ている表紙のものは、かなりの確率でリージェンシーである。

また、タイトルでもある程度の判別ができる。
タイトルに『男爵』『伯爵』といった身分が入っているものはほぼリージェンシーである。
エリザベス・ロールズ『伯爵の無垢な乙女』
エリザベス・ロールズ『伯爵の無垢な乙女』
貴族の優雅な生活が描かれていたり、逆に貧困にあえぐ庶民が出てきたりと、作品によって雰囲気は違うが、よく知らない時代の話なので完全にファンタジーとして楽しめる。

華やかな雰囲気と非日常感は、ハーレクイン初心者にお勧めだ。
歴史に詳しい人がどう感じるのかは分からないが、多分ハーレクインを愛する人はそんなに細かいこと気にしないはずだ。
<2>シーク
(アラブの族長もの)
あまり聴き慣れない言葉かもしれないが、ハーレクインにおいて『シーク』は頻発する単語のひとつなので是非覚えておいてほしい。
シークとは、端的にいうとアラブの族長である。

砂漠の国の王様とかとんでもない金持ちとか、日本で普通に生きていても絶対に会うことのない人たちだ。高須クリニックのCMで高須院長と一緒に水上ゴンドラに乗っている人たちのような感じだろうか。
メイシー・イエーツ『灼熱の足枷』
メイシー・イエーツ『灼熱の足枷』
何となく表紙にエキゾチックな雰囲気が漂っているので見分けやすいと思う。
タイトルも、『砂』や『灼熱』といったものが入っていればたいていシークものである。あと、そのものズバリ『シークの~』とタイトルに付けちゃうのも結構ある。
リン・グレアム『シークの隠された妻』
リン・グレアム『シークの隠された妻』
シーク系でよくあるのは、ヒロインは先進的な教育を受けたヨーロッパ人で閉鎖的で男尊女卑的思想で生きていたシークと最初は衝突するが…といった展開である。
その場合、ヒロインはすごく気が強くて人の話を聞かないタイプの人が多い。
価値観の相違という難関を超えて結ばれるというのはありがちだが分かりやすくて良いし、インターナショナルな玉の輿というところも夢があっていい。
たまに、ヒロインも砂漠の国の生まれだが敵対する部族の出身で…といったロミオとジュリエット的な話もある。

シーク作品は、いかにも族長!といった感じの時代がかったものからオイルマネーを元手に世界を飛び回っている現代的なものまで時代背景は幅広いので、自分の好きなタイプのシークを選ぶ楽しみがある。
<3>現代もの
ヒーローはたいてい社長か医者か弁護士か、といった感じだが、ヒロインは仕事をばりばりこなすキャリアウーマン、あるいは平凡で地味な女性などそれなりにバリエーションがある。
ジュールズ・ベネット『億万長者とメイドの秘密』
ジュールズ・ベネット『億万長者とメイドの秘密』
表紙の男性がネクタイを付けていたら、そこは現代である。
アリスン・ロバーツ『大富豪と望まれぬ娘』
アリスン・ロバーツ『大富豪と望まれぬ娘』
絵に描いたようなフリー素材感があるが、こういうあからさまにフリー素材な表紙も現代ものである場合が多い。

一言で『現代もの』といったが内容的には多岐にわたるので、裏のあらすじなどを見て好みに合うか確認してから読んだ方がよいだろう。
内容が多岐にわたる分タイトルもバリエーションが多いのだが、これがタイトルに付けばたいてい現代ものだというキーワードがある。

上記2作品にも含まれているが、『大富豪』『億万長者』や『シンデレラ』といった身分差を感じさせる単語がそうだ。
そういうものは金持ち同士のきらびやかな世界だったり、突如セレブ世界に紛れ込んでしまう庶民のとまどいが描かれていたりして、どちらにしても日常とかけ離れた世界が楽しめる。

逆に、身近に感じられるヒロインの作品が好みならば、表紙が花や雑貨のフリー素材っぽい表紙のものを選ぶとよいと思う。かなりの確率で地味なヒロインに出会えるはずだ。

ハーレクン内容分類の図解

私なりにレーベルと内容分類を図解してみたので、参考にしてほしい。
縦軸は昼ドラ的情熱度、横軸は年代を表している。
地味ヒロインが活躍することの多いレーベル『イマージュ』にはシークや伯爵はほとんど出てこないので、貴族や王族を求めている場合は『ロマンス』『ディザイア』レーベルから選んでほしい。
おおた的ハーレクイン早見表。何らかの参考になれば幸いです。
おおた的ハーレクイン早見表。何らかの参考になれば幸いです。
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タイトル買いのすすめ

毎月多数の作品が出版されるハーレクインなので、すべての作品を網羅することは難しい。
好きな作家で買う人もいれば、あらすじを見て選ぶ人もいる。中にはジャケ買いもあるかもしれない。
人それぞれの楽しみ方があるが、私がお勧めしたいのはタイトル買いである。

さきほど「タイトルで大体のジャンルが分かる」と言ったが、ジャンルの判断に使うだけではない、そのインパクトで思わず買ってしまうような力強い、あるいは盛り込みすぎなタイトル、はたまた抽象的過ぎるタイトルが多々ある。
そんな中で、最近タイトル買いしたものをご紹介したい。
キャサリン・ジョージ『魅せられたブラジル』
キャサリン・ジョージ『魅せられたブラジル』
多分舞台はブラジルなんだろうな、という以外、よく分からないタイトルだ。
あと、表紙もいろいろなパーツが配置されているけどよく分からない。

タイトルのインパクトにやられて読んでみたが、英語教師の女性がブラジル企業の社員研修で英語を教えるためにブラジルにやってきてそこで出会ったブラジル人社長と恋に落ちるという、まぁタイトルどおりの話だといえなくも無い。

ブラジルの風習やお祭りについて作中に触れられていて、読み終わってから表紙を見ると「これはあのシーンをイメージしているのかな」と思わせる部分もあるが、若干要素を盛り込みすぎだと思う。
レイチェル・トーマス『スペイン大富豪の結婚劇』
レイチェル・トーマス『スペイン大富豪の結婚劇』
スペイン人の大富豪が結婚する話なんだろうな、というのがこれだけで分かる。
まさにその通りの内容である。

契約結婚から始まり、利用するだの騙されただの離婚するだの何だかんだあって、最終的には結婚は継続されハッピーエンドという、安心できるハーレクイン節だった。

スペインって情報は必要なの?と疑問を持つ方もいるだろう。私も最初はそう思った。
しかし、ハーレクイン公式サイトはキーワードで作品検索ができるのだが、『スペイン人との恋』というのがひとつのジャンルとして成立しているのだ。

他にも『イタリア人との恋』や『ギリシア人との恋』もある。
スペイン人は強気で尊大、イタリア人は情熱的、ギリシア人は海運王だと思っておけばほぼ間違いない。
ベティ・ニールズ『クラシック・ラブ』
ベティ・ニールズ『クラシック・ラブ』
表紙も抽象的だしタイトルも抽象的だが、内容は家事手伝いをしながら慎ましく暮らすヒロインが金持ちのオランダ人医師と出会って恋に落ちるという安心のハーレクイン展開だ。
クラシックで典型的なハーレクインのラブストーリーと思えば、まぁ納得のタイトルである。

作者のベティ・ニールズはもう亡くなっているのだが、従軍看護師として働いていた時にオランダ人男性と出会い結婚したという自身の経験の影響か、ヒーローが医師でオランダ人という設定が妙に多い。
作者の経験が生かされすぎている
作者の経験が生かされすぎている
作者の紹介欄を読むのが結構好きなのだが、この作者の場合、自分の経験を作品に盛り込みすぎるところもおもしろいが、『よいロマンス小説がないと嘆く声を図書館で聞いて自分で書きはじめる』というエピソードも行動力ありすぎておもしろいと思う。

ハッピーエンドなので安心して読めます

読書の秋ということで、読書に馴染みの無い人でも軽くさらっと読めるハーレクイン小説をお勧めしてみた。
世界観が特殊なので、その世界にどっぷり浸りたい方も楽しめるし、その世界観にツッコミを入れながら読むのも楽しい。

私はハーレクイン歴が浅く知識がそれほど無いので自分の経験とフィーリングを元にしているが、「その分類は違う!」「そのジャンルならこの作家だ!」といった一家言ある有識者の方がいたら是非ご連絡お待ちしております。
初めてシリーズ買いをしている『花園物語』。ヒーローが普通に町の青年なところが新鮮でした。
初めてシリーズ買いをしている『花園物語』。ヒーローが普通に町の青年なところが新鮮でした。
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