特集 2016年10月12日

もっと腕がほしいから阿修羅リュックをつくった

自分に自分の荷物を持ってもらえるしくみ
自分に自分の荷物を持ってもらえるしくみ
「日々の暮らしをもっと便利に快適にしたい!」という気持ちは常に持っている方だと思う。

このところも、ずっと考えていた。自分に、腕がたくさんあれば荷物がたくさん持てるんじゃないかと。ポケットの中身が、いつの間にか消えてしまっていることが時々あるのだけど、1こ1こしっかりと握っていれば、そんな悲しい出来事もぐっと減るんじゃないだろうか。

「ああ、もっと腕がたくさんあればいいのに!!!」

というわけでつくってみたんですが、予想外の感情がわき上がってきました。
1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

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あたためていた感情

かつて、腕時計を付けるのが苦手すぎたために「腕時計専用の腕」をつくったことがあった。異論はあるかもしれないが、わたしは便利と感じた。
腕が、だいたい計4本になった
腕が、だいたい計4本になった
で、ちょっと待てよ、さらに増えたらもっと便利なんじゃないだろうか?……という構想はその後すぐにわいたのだけれど、あとにしよう、あとでしようと思ったままに1年半が過ぎてしまった。

ところで、6本の腕といったら阿修羅像だ。
ちなみにこれは、奈良の興福寺にいらっしゃる像のかたちのつもり
ちなみにこれは、奈良の興福寺にいらっしゃる像のかたちのつもり
たとえば、下の図みたいに色んなものを一気にいっぱい持てたら便利じゃないだろうか!
夢みたいな世界
夢みたいな世界
で、今自分にはすでに2本腕が生えているのであと4本の腕が必要なんだが、リュックのようにして背負うのはどうだろうか。
はしょってしまったのだが、もう片方の腕も同様につくる
はしょってしまったのだが、もう片方の腕も同様につくる
骨組み部分には、ステンレスの棒をつかう
骨組み部分には、ステンレスの棒をつかう
わりと丈夫そうなリュックがダイソーで300円だった。わたしに優しい時代だ
わりと丈夫そうなリュックがダイソーで300円だった。わたしに優しい時代だ
そんなダイソーリュックは、右側の腕と左側の腕の間にくくりつける。腕の色は、自分の肌に合わせ肌色にした
そんなダイソーリュックは、右側の腕と左側の腕の間にくくりつける。腕の色は、自分の肌に合わせ肌色にした
斜め下からあおると、思いのほか神々しい
斜め下からあおると、思いのほか神々しい

荷物を持ってもらおうとすることが全身運動になる

まずは、腕時計をはめてみたい。
と、腕を自分にたぐり寄せたら、みょうに勇ましいポーズになってた
と、腕を自分にたぐり寄せたら、みょうに勇ましいポーズになってた
自分の右腕と脇から下の筋肉がぐんと伸びる。ストレッチ効果がすごい
自分の右腕と脇から下の筋肉がぐんと伸びる。ストレッチ効果がすごい
写真を見返していて自覚をしたのだけど、編集部・橋田さん(左下の手)に手伝ってもらいながら時計を見てるな
写真を見返していて自覚をしたのだけど、編集部・橋田さん(左下の手)に手伝ってもらいながら時計を見てるな
え、ちょっと待って自力で腕時計が確認できないのか……?という不安を感じつつも、他の腕には手さげやビニール袋を持ってもらおうと思う。
腕にとおす。うん、なんだかめっちゃ全身運動だ
腕にとおす。うん、なんだかめっちゃ全身運動だ
普段運動をし慣れている人であれば、これしきりでは運動のうちには入らないのかもしれない。だけどわたしは、ふだん徒歩以外の運動をほとんどしていない上に体がかなり硬い。

ムリをして筋を伸ばし切らないようにとか、腰を痛めませんようにとかというひ弱な思いが募りはじめてきていることを正直に認めたい。
手のひらにスマホを固定したいという気持ちを、おおざっぱに具現化してみたところに
手のひらにスマホを固定したいという気持ちを、おおざっぱに具現化してみたところに
携帯をセットしたら、閲覧するのに腕と脇の筋肉がぎゅっと伸びる!
携帯をセットしたら、閲覧するのに腕と脇の筋肉がぎゅっと伸びる!
ああ、このリュックはむしろ、運動器具なんじゃないか?

そう思うことにしたら、筋肉が伸びるタイミングでいちいち、体にいいことをしているような気分になりはじめた。思考の転換って大事だ。


ところで、せっかく阿修羅をモデルにしているのならばと、首から上もどうにかならないものかと思案してみたりもしている。こんな感じに。
アクリル板のミラーを後方からかざすと、おお、顔が3つ!なんだが……
アクリル板のミラーを後方からかざすと、おお、顔が3つ!なんだが……
!
おだんごのようなものは、自転車のサドルカバーと形が酷似していることに気がついた次第です。カチューシャにつけて設置
おだんごのようなものは、自転車のサドルカバーと形が酷似していることに気がついた次第です。カチューシャにつけて設置
!
装着するのはすぐにやめた。懸命な判断だと思う。

自分がどのくらい幅をとっているかの予想がつかない

体勢が安定したところで商店街を練り歩いてみたい。
お、意外と街に馴染んでないか?
お、意外と街に馴染んでないか?
思っていた以上に、街に溶け込んでる気がする
思っていた以上に、街に溶け込んでる気がする
と、後々写真を見ていたら思った。

だけど、装着中のわたしは、かなりそわそわしていた。そしてそれは、身につけているものに対する「なんかちょっと恥ずかしいぞ」という思いからではなかった。

自分の幅が幅広くなっていて道路を遮断しているような不安を感じていたのだ。
体感としては、このくらい幅をとっているような気持ちだった!
体感としては、このくらい幅をとっているような気持ちだった!
なんでそんなことに?と考えてみたのだけど、おそらくリュック込自分の横幅に、まだ馴染めていないからだと思う。増設した腕には、残念ながら神経は通ってないので、どうにも位置関係の把握がしづらいのだ。
図説するとこんな感じか
図説するとこんな感じか
例えば何かをつくる時に、材料がどのくらいあったら足りるのかわからず、不安だからと多めに買っておいたりすることはないだろうか。

その状態が、この感覚に近いと思う。わからないから、自分の横幅を多めに見積もっておいて、人にぶつからないようにとの注意くばりが過剰になるのだ。
人とすれちがうたびに、やたら極端によける
人とすれちがうたびに、やたら極端によける
自分より道路にはみ出しているものより内側にはいるとすんごく安心する!
自分より道路にはみ出しているものより内側にはいるとすんごく安心する!
もういっそ、横向きに歩いた方がラクかもしれない気がした。今まで体感したことのない謎の境地だ。

横歩きといえば蟹だが、もしかしたら、わたしは今一番蟹に近いところにいる人間なんじゃないだろうか……?と、何言ってんだ自分!と思わず言いたくなるような気持ちもわき上がった。

最初に求めていた、便利さとか快適さとかとはずいぶん遠くにきてしまった気がするけど、これはこれで、かなり新鮮な気持ちだ。

スピリチュアル要素の全くないヨガみたいだ

今年のはじめに入会したヨガスクールからどんどん足が遠のいてしまい、先月ついに退会の手続きをふんだ。そんな出来損ないのヨガ経験者なんだけども、このリュックをつけている時間は妙にヨガのレッスンぽいなぁとも感じた。自分の身体の状態との対話をしているみたいだったからだ。

このリュック、今後は自宅でストレッチをする時用の運動器具として使うのもいいかもしれない。よし、この秋は痩せる。

10/16(日)のデイリーポータルエキスポに持っていきます

ぜひ、試着してみてください。リュックだけじゃなくて、鏡や頭上のおだんごも持っていくので、全身で阿修羅もどきになることもできます。
自分の顔面を生かした阿修羅もどきに!
自分の顔面を生かした阿修羅もどきに!

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