広告企画♪ 2016年10月31日

縦画面で見るとちょっとふしぎな動画を作る

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我々が映像を見る環境は映画やテレビ、PCなどの時代を経て、スマートフォンに移行しつつある。

スマートフォンはふつう縦に持つので、画面も縦長だ。どう考えても縦長動画の時代が来そうである。

縦長の画面をうまく利用して、ふしぎな動画を作ってみよう。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

前の記事:レアな空気の缶詰をつくる

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不思議な動画をつくりたい

なんとか縦画面で見るとふしぎな動画、というのを撮ることはできないだろうか。

(「スマホって縦に持つと縦長だけど横に持ったら横長では」というマギー司郎的な考え方は、ここでは一旦忘れて欲しい。)

そんな簡単にできるのかわからないが、とりあえずやってみたい。

重力反転動画

考えたのは縦横が入れ変わっているせいでふしぎに見える動画だ。以前ライターのT斎藤さんが記事でやっていたことの、動画版をやってみるのだ。

まずはじめに試行錯誤の末にできあがった作品をご覧いただきたい。
再生するときは縦長の全画面表示にできるようにして下さい ※壁にはドライシートを使用しています。ウエットシートは素材によっては使えない場合があります。
はじめはふつうにクイックルで掃除しているのだが、途中で壁面を歩いてくる人が現れて…あれっとなるだろう。

撮影方向は横向きだが、被写体の人間は縦画面に合わせて演技しているので、重力が変な方向に働いているように見える、ということだ。

この動画が完成するまで紆余曲折があった。その過程を初めから振り返ろう。

招集されたのはやる気に満ち溢れた撮影メンバーである。
左からDPZ編集部藤原、安藤、ニフティの新人山口さん
左からDPZ編集部藤原、安藤、ニフティの新人山口さん

公園の柱で「とまり木」

はじめに挑戦するテーマは「とまり木」だ。
完成予想図
完成予想図
公園にある柱に3人横向きに座る。向きを反転すると、断崖絶壁から一本の棒が突き出していて、3人が並んで座っている……ように見える映像が撮れるはずである。

まずはやってみよう。
よっ
よっ
ほっ
ほっ
どうだ!
どうだ!
出来上がった不思議な動画がこちら。
座ったポーズの男性が3人縦に積まれるという状態、どうしても体勢に無理が生じる。1分も立たないうちに崩れてしまう。

結果、やけに楽しそうな動画ができあがったが、今回の目的は不思議な動画である。これのどこが不思議かと聞かれたら「何がこんなに楽しいのだろう」という点をまず挙げるだろう。
腕力だけではポーズの維持はむずかしかった
腕力だけではポーズの維持はむずかしかった
3人では無理でも2人なら……?と思い2人バージョンも撮ってみたが結果はおなじようになった。
あいかわらず楽しそう
どうだろう。これもかなりダメである。

楽しそうだけどいまいち不思議な感じが出ていない。なるほど、単純に縦のものを横にすればいいわけではないようだ。

最初から遠い道のりを感じさせる結果だが、まだ策はあるので方法を変えてやってみることにしよう。


クイックルでデスクの掃除でもしながら、
動画制作班の奮闘ぶりをご覧ください。

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不思議なキャッチボール

どうやったらうまくいくのかわからないので、どんどん試していきたい。

続いて撮ったのは「不思議なキャッチボール」だ。重力の向きが変なので、ボールが思ってもみない方向に飛んでいく…というものを想定している。
うんていを利用してお互いの距離をとる。
うんていを利用してお互いの距離をとる。
地面はカメラの前に紙を配置して、準備OK
地面はカメラの前に紙を配置して、準備OK
このままお互いにボールを投げ合えば、きっと不思議な動画が撮れるだろう。…撮れるのだろうか?

出来上がったのがこちら。
地面が揺れている
はじめは(泥沼の上に立ってキャッチボールしてるのか?)とも思ったが、周りのメンバーは「すごい!見える見える!」と言っている。みんなが見えると言っているので、きっと見えるに違いない。間違っているのは僕なのだろう。

そう思うと、だんだん不思議な縦動画として成立しているような気がしてきた。

人間の脳の優しさに頼ろう

そういえば心理学的な現象に「カクテルパーティー効果」というのがある。パーティーような雑音の多い環境でも、自分が話してる相手の声は選択的に聞き取れる、というような現象だ。人間は情報の取捨選択ができるのである。

同じように「これは縦画面の不思議な動画だ…」と集中して見ることで、背景の公園や歩いてる人などの縦動画に不要なノイズをうまく消し去ることができるのだ。

人間の脳の優しさと言ってもいいかもしれない。脳内VFXである。必要なのは「あたたかい眼差し」なのだ。

崖から落ちる男

続いて崖に突き刺ささった棒にぶら下がる男がいて、あわれ力尽き崖下へ落ちていってしまう……という動画を撮ろう。
こういう動画になる予定だ。
こういう動画になる予定だ。
男がぶら下がっている棒は、クイックルワイパーにする。どんな状況なのかは謎だが、ただの棒よりそっちのほうがより一層不思議さが増すだろう。

男が下へ落ちる動きは、ロープで足を引っ張るという原始的な仕掛けにした。

結果としてこういう状況になった。
処刑ではない
処刑ではない
ただこのまま引っ張ると地面に体がこすれて安藤さんが減ってしまう。そこで摩擦を減らすために、100円ショップで買った材料を加工してこんなものを用意した。
キャスターとすのこで作った
キャスターとすのこで作った
今回の撮影の最終兵器と言ってもいい。これに全てがかかっている。作ったのは僕である。

「これ作ってきたの!天才だよ、天才!」と安藤さんが褒めてくれたので、こんどはなんだかうまくいく気がする。

が、実際やってみるとこうなった。
バラバラに散らばる最終兵器
バラバラに散らばる最終兵器
車輪がふたつに割れ、土台の針金がグニャグニャに曲がった。
車輪がふたつに割れ、土台の針金がグニャグニャに曲がった。
悲しくなるくらい派手に壊れた。あらゆるキャスターには重量制限がある。それを超えた場合こうなるのだ。「破滅」ってこういうことだなと思った。
一人落ち込んでいる
一人落ち込んでいる
とは言え動画はいちおう撮影できた。こちらである。
崖を落ちる男
撮れた映像は確認するとメンバーから「ああ、落ちているように見える!」「完全に崖じゃん、これ!」という声があがる。脳内VFX、またの名を「あたたかい眼差し」の効果である。

今、原稿を書きながら冷静な眼差しで動画を見ると、そこには地面をのたうち回る男がいる。不思議な話である。

すこしでもよく見えるよう、こっそり1.5倍速にしておいた。

ほかにもいろいろ撮りました

まだまだコツが掴みきれないのでどんどん撮っていこう。

公園に変わった形のベンチがあったのでこれも利用しよう。ただ座るだけではなく、重力を利用してモノが飛んでくる状況を表現するのが狙いだ。
撮影を手伝ってくれていた営業の橋本さんに被写体になってもらう
撮影を手伝ってくれていた営業の橋本さんに被写体になってもらう
暴風が吹き荒れているという設定で、ひっくり返った傘をさす。そこに風で新聞紙が飛んで来るのである。
撮影時のようす
撮影時のようす
このとき編集部・安藤さんが、デイリーポータルZ営業・橋本さんにものすごい勢いで新聞紙を投げつけていたのが印象的であった。撮影に込める情熱が高まっているのを感じる。
かわいそうだったので物悲しいBGMをついつけてしまった
比較的よくできた気がする(「あたたかい眼差し」によって、みなさんの目には背景の看板の向きがおかしいことや人が歩いてきたことなどはもう見えなくなってしまっているとして)。どうだろうか?

どうだろうか、と言っても答えは求めていない。真実はときに人を傷つけることがあるからだ。こちらからの問いかけだけに留めたい。

ほかにも、
こんな風にしたり
こんな風にしたり
こんな工夫もしたりした
こんな工夫もしたりした
最終的に気がついたことは「背景が気になりすぎるから公園で撮影するのはよくない」ということであった。

ぼくたちは勇気を出して室内にもどることにした。


考えてみたら普通クイックルを使うのは室内ですね。

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奥行きのある廊下が一番いい

事務所に戻ってきて目をつけたのはビルの廊下である。ソリッドな見た目で縦横が等質な感じは、縦横反転動画に向いているかもしれない。

わざわざ公園に出かける必要などなかったのだ。長い旅から帰ってきて青い鳥を見つけた心持ちである。

壁を床に見せかけるために少し細工をして撮ってみよう。
壁にゴミ箱を貼って
壁にゴミ箱を貼って
奥行きが映える視点にカメラをセット
奥行きが映える視点にカメラをセット
横向きになれば
横向きになれば
できあがったのが冒頭にも示したこの動画だ。
できた!?
今度こそうまくいっている……気がする。はじめはふつうに見えつつも、途中で奥から壁を歩いてくる人が現れてくる。かなり不思議な動画に見えるのだがどうだろうか。

自分でうまくいったと思ったし、撮影してくれている安藤さんも「これは完璧だ」と大喜びである。

だがそれも撮影メンバーが見た白昼夢かもしれない。公園での撮影で自分の目も信用できないレベルに来ている。

動画をまったくはじめて見る人の意見も聞いてみよう。
できたてほやほやの動画を見てもらいました。
できたてほやほやの動画を見てもらいました。

不思議な動画、できました

今回の撮影にまったく関わっていない人に一通りの動画を見てもらった。反応は…
上々である!
上々である!
公園で撮った動画については、その意図は理解しつつもしっくり来ていなかったようだが、最後に廊下で撮った動画は見た途端「あーうしろの人、壁歩いてる、不思議~」と驚いていた。

不思議な動画ここに完成である。
横から色々口をはさんだけどな
横から色々口をはさんだけどな
動画を見ている横で「すごいよ!」とか「ふしぎ!」とか好意的な感想を吹き込んだのも功を奏したかもしれない。

横で「見える見える」と言っている人がいると、だんだんとそう見えてくるのだ。我々が今回の撮影中に学習したことである。もし今回うまく見えなかった人がいたら、横で「見える見える!」と励ましてくれる人を用意するといい。

そういう友達がいない人のために驚嘆のコメントを文字で入れたバージョンも作った。ここまでまったく不思議に見えなかった人も最後にこれを試してみてほしい。
励ましのコメントつき

力づくだからこそ古びない

15年くらい前の、CGだとかVFXをうたっている映画をあらためて見直すとちゃちく見えてしまうことがある。技術の進歩のせいだ。

ひるがえって人間の力技はあまり進歩しない。横で紐を引っ張ってる人がいたり、顔に血が登ってたりしてたりするリアルさは古びないだろう。その点で今回の動画はCGには勝っているんじゃないか。

なにより横になって腹筋に力を入れていると、笑ってしまうため、どうやっても楽しそうな動画になるのでこの撮影法、おすすめである。

クイックルの動画と僕の動画、
どっちが「勝ち」だろうか(そういう勝負ではない)。

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