はっけんの水曜日 2016年11月9日
 

自撮りのとき顔を隠せないスマホケース

スマホケースを作った
スマホケースを作った
自撮りというのは、かっこよく撮りたくなってしまうものである。とくに鏡の前で撮る全身が入るやつは。

みんなそうやって考えるので、世の中にはかっこいい自撮り写真しか残っていかないことになる。でもそれはちょっとどうなんだと思ってしまう。この世に大衆食堂は必要である。

そこで、自撮りという行為がおかしなものになるアイテムを作った。
1994年愛知生まれ。大学であいまいな学部に入ったらあいまいな人間になった。いまわかっていることは、自分はけっこうひげが伸びるタイプだということ。

奇妙な写真

まずはこちらの写真をご覧いただきたい。
「今日はオーバーオールにしました。」
「今日はオーバーオールにしました。」
ふつうの自撮り写真である。こういうのはよくインスタグラムに上がっている。もしくは2ちゃんねる。

では次にこちらを見て欲しい。
「農夫ファッション。」
「農夫ファッション。」
ひとつ違っているところがある。

左手の形とかではない。

スマホで口が隠れていないのだ。

今回僕が作ったのは、この「顔の前にスマホを持っていっても口元が隠れないスマホケース」である。

作り方

このスマホケースは自分でプリントして作った。作り方はこうだ。

(1)スマホケースを用意する
(2)スマホケース用の画像を用意する
(3)プリントする

以上である。簡単に書いたけど「プリントする」の工程はよくわからないと思うので写真とともに説明したい。当たり前だけど紙とは違って家庭用のプリンタにスマホケースは入らないので、もっと違う方法である。
ダイレクトUVプリンタを使いました
ダイレクトUVプリンタを使いました
使ったのは、紙以外の物体にプリントできるマシン、「ダイレクトUVプリンタ」。インクを吹き付けて紫外線照射でインクを固めるという方法で、あらゆる物体にプリントできる。ひとんちにはないような代物である。こんなプリンタが家庭にあったらアブダビである(つまり高価)。

今回は名古屋にある「CRE8BASE KANAYAMA」というものづくりスペースでこのマシンを使わせていただいた。
画像を作る
画像を作る
まずはスマホケースにプリントする画像をパソコンで用意する。ケースのサイズに合わせて写真を切り取って、僕の顔部分が目立つように画像の背景をすこし暗くした。

写真はその場で自分を撮って使えばよかったのだけど、なぜかわざわざ過去の写真から探していちばんドヤ顔のやつを使った。

自分の顔をケースにしようとしているので気がおかしくなっているのかもしれない。
目にリアルタイムでモザイクをかけるというアイテムを作ったときの写真を使った
目にリアルタイムでモザイクをかけるというアイテムを作ったときの写真を使った
プリントの仕方だが、紙のプリンタと違ってプリントされるものではなくマシン自体が動く。MRI検査と同じしくみだ。大人のいやがる例えである。
マシンの上にケースをセッティングすると
マシンの上にケースをセッティングすると
インクが出るところが動いてプリントされる
インクが出るところが動いてプリントされる
自意識過剰なスマホケースが完成した。

正直、作るまでにはかなり躊躇があった。自分の顔をスマホの裏に背負うのだ。十字架である。電車で出したくない。

でも一緒に作っていた知り合いの「あんたの顔でしょ。いつも晒してるんだから。」の一言で変に納得して、すんなり作ってしまった。今考えるとそういうことではない気がしないでもない。

いろんなところで自撮り

もともとは、自撮りのとき口元をスマホで隠している人のスマホに顔が描いてあったらまぬけでおもしろい、と思ったのが事の発端だった。

でもよく考えたらそんなこと誰も思っていないのだ。誰も自撮りのときにまぬけになりたくない。額に「肉」と書くのはいつも自分ではなく他人である。自ら書くやつがいたらそいつはキン肉マンである。

だから、こんな誰かのいたずらみたいなことをやるとしたらケースを作った自分なのだけど、これは自分で遊んでもおもしろいんじゃないだろうか。とにかく、顔がうつりそうな場所で自撮りをしてみた。
作ったあとすぐにトイレの鏡で
作ったあとすぐにトイレの鏡で
車の、中が見えないタイプの窓で
車の、中が見えないタイプの窓で
またトイレで
またトイレで
やはりけっこうなクオリティでまぬけになっているのがわかる。けっしてかっこよくはない。

一方、スマホが透けてるみたいにも見える。スマホではない何か別の特殊なデバイスを持っているようだ。きっとひみつ道具である。まぬけの未来人が持ってきた。
新幹線の車窓で
新幹線の車窓で
車のサイドミラーで
車のサイドミラーで
運転席の日よけの鏡で
運転席の日よけの鏡で
スマホケースのせいで、すべての写真で僕の表情がドヤ顔になっているのがやや憎たらしい。

しかしスマホの向こうの僕の表情といえば、誰もいないところで一人で写真を撮っているので信じられないくらいの真顔である。
こういう写真も
こういう写真も
スマホをずらすとこう
スマホをずらすとこう
これはたまたま疲れているときに撮ったので、とくに表情がひどい。

このケースは空元気には使えそうだとわかった。インフルエンザのときに親に体調を聞かれても、このケースを使った自撮り写真を送ればバッチリである。きっと。

自撮りスマホケース、別の使いみち

このスマホケースを持っていると、やはり見た人がなんだこれとなる。

その場で撮影が始まったりする。僕の顔で遊ぶなという気持ちと、正直遊ばれてすこし嬉しい気持ちである。これが本物の顔ならすぐ怒るけど、そうじゃないので余裕がある。
場がすこし盛り上がる
場がすこし盛り上がる
遊ばれてわかったのは、ほかの人が僕の顔の半分を手に入れたときにもおかしな感じになることだ。
「うわー、これすごい!」
「うわー、これすごい!」
「(フフッ)」
「(フフッ)」
「うわ、キモッ」
「うわ、キモッ」
全員僕の子孫みたいである。

ケースと顔との距離をうまく調整すれば、どんな人でも僕の顔半分にあてはめることができる。おかげで僕の血筋が繁栄したみたいになっている。

ケースを当てはめて気持ち悪いという人もいるが、僕からすると、他人を自分のひげづらにさせることができてやったぜという気分である。なにかを達成した気になる。

ひげのせいでみんなどことなく豪族っぽいので、僕の一族が巨大な権力を手にしたと錯覚しての達成感かもしれない。自分で考えておいて、空想があまりにも虚しい。

それから、まだ何人かの知り合いに僕の顔をあてはめてもらった。
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最初に子孫とか余計なことを思いついたので、だれが当てはめても自分の親戚にしか見えなくなってしまった。

せっかくいろんな人のパターンを見てコメントしようと思ったのにもうなにも思いつかない。だいなしにもほどがある。全員苗字が「江坂」になっただけだ。

ただ、女の人の場合はちょっと別の感じになる。
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性別がよくわからなくなるのだ。

あと、ひげのせいでなんとなくスマホを持っている手が男の人の手に見えてしまうのは不思議である。

自撮りにとどまらないスマホケース

男の人にあてはめてもらったときは、「すげー!」とか「ひげが思ったより似合う」など、よさげな反応だったのに対し、女の人は大体「うわー」であった。

まあそりゃそうなるだろうなというスマホケースである。

途中ケースを通じて僕の顔のおおきさがいじられたりもしたが、プリントのときにいくらでもサイズ変更できるのでほんとは関係ない。
電車の窓に映る自分を撮ろうとしたら、ひしゃげた車体が写った
電車の窓に映る自分を撮ろうとしたら、ひしゃげた車体が写った
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