チャレンジの日曜日 2016年11月13日
 

書き出し小説大賞 第111回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。
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吉報である!先日人気番組『アメトーーク!』の読書芸人の回で光浦靖子さんが書き出し小説単行本『挫折を経て、猫は丸くなった』を推薦して下さった。翌日には色めき立った新潮社の担当さんから増刷決定の知らせが届いた。現在Amazonでは品切れ中だが今月中には刷り上がるそうなので、テレビで興味を持った方は是非ともゲットしていただきたい。これも毎回力作を送ってくれる書き出し作家たちと読者のおかげです。 それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご招待しょう!

書き出し自由部門

多分、走馬灯は天井の染みになる。
義ん母
カーテンの埃が僕らをスローモーションにした。
井沢
カメレオンの舌は月に届かず、しかたがないので体色を変え、月の光に溶けこんだ。
ウリムク
二年くらい前にビルの外壁に登りニュースになった男がソーセージを試食している。
きょうこ
雨粒が静かに瞼を叩いた。彼の目はもう開かない。
夏猫
鼻歌にこぶしをきかせると自転車をこぐスピードがぐんと早くなった。
茂具田
木陰のベンチで寝息をたてる彼女は、まるで木漏れ日に溺れているようだった。
小柳はる
これはカヌーではない。カヌーを入れるケースだ。
ヘリコプター
外れたドアノブはみるみる冷たくなっていった。
もずく酢
今度は手袋なしで君の内臓を触る。
ミミズグチュグチュ
細い月が優柔不断な僕らに、不純な決断をさせた。
トミ子
雑学王とふたり、無人島に取り残された。
紀野珍
顔の前で折りたたみ傘をたたまれている。
もんぜん
横道へ隠れると、私達の影はビルに折られていた。
merumo
コタツ、これこそが冬の要塞であり、私が死守すべきジオフロントなのだ。
タクタクさん
父は当然のように毒茸を食べ、当たり前のように死んだ。
prefab
ささくれた畳の上にステンドグラスの光が散らばる。
xissa
自由部門は毎回季節の影響を少なからず受ける。最近は冷え込む日も多くなり冬の到来を感じる。季節を命のサイクルに例えると冬は死であろう。今回はそこはかとない死のイメージを感じるものに秀作が多かった。義ん母氏「多分、走馬燈〜」見上げるシミは前の住人の走馬燈だろうか。だとしたら事故物件か。夏猫氏「雨粒が静かに〜」映像的。妄想するとしたら犯人を愛した女性刑事、その別れのシーンとか合いそう。もずく酢氏「外れたドアノブ〜」ドアノブの死はその役目を果たさないことか。ミミズグチュグチュ氏「今度は手袋なしで〜」今度は、を頭につけることでさらに猟奇的な物語が広がる。prefab氏「父は当然のように〜」なんの葛藤もヒネリもない展開が読むモノを宙づりにしざわつかせる。xissa氏「ささくれた畳の〜」畳の俗と光の聖が象徴的な死を想起させる。ウリムク氏「カメレオンの舌は〜」の詩情、きょうこ氏「二年くらい前に〜」の絶妙なセンスが印象に残った。 つづいては規定部門。今回のモチーフは「ぼっち」であった。ぼっちの作者とぼっちの読者、読者とはぼっち同士の対話である。

書き出し規定部門・モチーフ「ぼっち」

テレビに話しかけたのに、電子レンジが相槌を打った。
八重樫
タッチパネルが全く反応しない時、私は世界から取り残されたような感覚に陥る。
梅肉
人差し指を一本立てたままファミレスに入る。
紀野珍
たかしほどのぼっちともなれば、キスだって一人で出来た。
夏猫
クラスの人数が素数だから何人組に分かれても余る。
Mch
お互いぼっちになっただけの絶交だった。
ふじーよしたか
俺が辛い時に抱きしめて慰めてくれるもう一人の俺が欲しい。
prefab
「袋いらないです」三日ぶりに発した言葉はレジ袋の音にかき消された。
ぴすとる
見知らぬ他人と同じ場面で笑えるのが面白いからあえて一人で映画を観に行くのだ。
七世
両隣りはカップルで私が使えるドリンクホルダーが無い。
g-udon
もし向かいの席の誰かと喋っていたら、この景色を見ることは一生なかっただろう。
シモカワ ヨウヘイ
話したこともない同級生がなつかしい。
TOKUNAGA
流鏑馬の動画を見ているうちに、クリスマスは終わっていた。
もんぜん
体育館に、爪切りの音がよく響く。
けー
「最後の侍」だからしかたない。
xissa
よっこいしょういち。立ち上がった瞬間パンツが破ける音がした。誰か笑って欲しい。
g-udon
錆び付いたハッチを強く閉め切って、ふたりぼっちの冬が始まる。
Mch
満員の小型バスに乗っている全員がぼっちであると気がついたのは、到着した倉庫でだった。
魚子
マジックミラーの内でひとり。
TOKUNAGA
ネットもセックスも、つながってるときが一番寂しい。
ミミズグチュグチュ
「寝ます」と言って寝る。
エミタス
尾崎放哉の自由律に『咳をしても一人』という句がある。ぼっちを表現した至高の作である。採用作も現代の放哉を彷彿とさせる秀作が集まった。八重樫氏の「テレビに〜」や梅肉氏の「タッチパネルが〜」を読むと孤独と家電の密接な関わりが分かる。紀野珍氏「人差し指を〜」誰でも出来る出来のいいショートコント。Mch氏「クラスの人数が〜」同趣向の作は多かったが素数を持ち出したMch氏が抽んでた。七世氏「見知らぬ他人と〜」シモカワ ヨウヘイ氏「もし向かいの席が〜」ぼっちをポジティブにとらえると世の中ぐんと楽しくなる。けー氏「体育館に〜」謎の状況w もんぜん氏「流鏑馬の〜」今年のクリスマスは流鏑馬動画で決まり。TOKUNAGA氏「マジックミラーの内でひとり」尾崎放哉が企画モノのAVを撮ったらこうなるだろう。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「賭け」
競馬にパチンコ、カジノに麻雀……世の中はギャンブルに溢れている。また金銭が絡むギャンブル以外にも私たちは生活の中で、あるいは人生の中でさまざまな賭けをしているのではないだろうか。そんな「賭け」をテーマにするとさらに世界は広がりそうである。締め切りは11月25日正午、発表は11月27日を予定している。下記のフォームから自由部門、規定部門を選択して送って頂きたい。力作待ってます!
最終選考通過者

unnnunn/九官鳥級艦長/まじいい/kwsk/うぃけっと/菅原 aka $UZY/suzukishika/ろっさん/ウチボリ//大伴/吉田髑髏/七藻/雨の日は寝る/東ことり/ボーフラ/小夜子/あつし/あたみぃ/高田/
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