フェティッシュの火曜日 2016年11月22日
 

人はどれだけ音を立てて食べられるのか?

人はどれだけ音をたてて食べられるんだろうか? そばを思いっきりすすった
人はどれだけ音をたてて食べられるんだろうか? そばを思いっきりすすった
娘が口を開けてぺちゃぺちゃとごはんをたべている。唇を閉じないといけないと教えていて気づく。どうして音を立ててはいけないのだろうか。

一体音を立てたらどういうことが待っているのか。そしてやろうと思ったらどれくらいまでやかましくできるのだろうか。ちょっと実験してみよう。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます
> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

一番最初に私たちの成果を見てもらおう。これが新しい祭りの始まりだ

盗み食い、拾い食いのつぎはうるさ食いだ

かつて私たちはここの記事で安全に拾い食いをしたらどういう味になるのか? じゃあ盗み食いはどうだ? と同様のことをやった。拾い食いと盗み食い、どちらもタブーの向こう側の味を得ることができた。(記事「してみよう! 拾い食い」「盗み食いの味とは」

今回はタブーというほどではないがマナーの向こう側の味である。音をズルズルに立てて食べるスパゲッティはどういう味になるのだろう?
騒音計で測ろう。部屋の環境音でこれくらい
騒音計で測ろう。部屋の環境音でこれくらい

うるさく食べて騒音計で計る

実は少し前に動画コーナーでも同じ企画にいどんだ。しかし計測をiPhoneアプリでやったので精度がわるかった。専用の計測器でないとむずかしいようだ。

その後別件で騒音計を借りる機会があったので今このタイミングしかないと思い実行に至った。

さあ、測ろう。執事に「お嬢様!」「嘆かわしい!」「先代が見ていたらなんと言ったことか!」と怒られるくらいおてんばに音を立てよう。
そばをたべてみよう。考えてみれば唯一音を出すことを許された食べ方が「すする」である。リミッターを解除してそばを思いっきりすすってみよう
そばをたべてみよう。考えてみれば唯一音を出すことを許された食べ方が「すする」である。リミッターを解除してそばを思いっきりすすってみよう
ふつうに食べて60dB、がんばって70dBだった。

そばを全力ですすると自分がうるさい

そばをすする。60dBだった。全力ですする。70dBに上がった。その差は10dBである。

やってみて思ったことは自分がうるさい。「うるせえ!」と思いながらそばをすすっている。70dBはたとえるなら「騒々しい事務所の中」くらいの音量だそうだ。そば食ってズズズ。「おっ、粋だねえ」そんな世界に事務所が持ち出されるのだ。

そば食ってズズズ。「おっ、騒々しい事務所だねえ」。な。

なにが「な。」なんだろうか。とにかくパーティーを、いや実験をつづけよう。
この人、汁飲むのうるせえなあ! と怒り出すほどにうるさい
この人、汁飲むのうるせえなあ! と怒り出すほどにうるさい

スパゲッティをすすって食べよう

しかしそばはそもそもがうるさく食べるものである。大きくしたところで心理的に大きなちがいはなかった。

そこで逆の方向にしてみよう。音を立ててはいけない麺料理といえばスパゲッティである。ここには確実にマナーが存在する。そこを打ち破るのだ
龍が昇るように勢い良くスパゲッティをすする。ズッゾーゾゾッゾゾ…75dB。2m以内のセミの鳴き声と同じくらいだそうだ。それはうるさい
龍が昇るように勢い良くスパゲッティをすする。ズッゾーゾゾッゾゾ…75dB。2m以内のセミの鳴き声と同じくらいだそうだ。それはうるさい

音をたてたスパゲティはおいしくなった

いったん他人はどう思うかは置いておこう。その味である。結論からいえば音を立てたスパゲッティは美味しい。

そもそも醤油やワインのテイスティングでも口の中に空気を含ませるというものがある。香りや味が立ちやすいのであろう。

すまない。格好をつけた。本当のことをいうと静かな大平原で思いっきりおならをするような開放感があった。
やはりスパゲッティを食べてるとき口の形ではない。ところてんのそれだ!
やはりスパゲッティを食べてるとき口の形ではない。ところてんのそれだ!

やってやったぞの味

「口の周りがべっちゃべちゃになってもいいと思うとうまかった」と経験した古賀さんが言う。これこそ規範から解き放たれた味というものではないか。家に帰ってネクタイを外してごはんを食べるようなものか。

それがもっと進めば夜の校舎の窓ガラスを叩き割った十五の夜の感覚かもしれない。スパゲッティを口の周りでべちゃべちゃにすすった十五の夜だ。
食事をまるごとうるさくして食べてみよう。これはフォークとナイフで洋風定食
食事をまるごとうるさくして食べてみよう。これはフォークとナイフで洋風定食

ふつうのごはんをどれだけうるさくできるか?

ここからはふつうのものをうるさくして食べてみる。

ハンバーグ、マカロニサラダ、スープ、ごはんで構成された洋風定食と、焼きさんま、ひじき煮物、味噌汁、ごはんの和風定食である。
ガギガギガギ。とんでもねえやつが来た。クラシックなコントのようでもある
ガギガギガギ。とんでもねえやつが来た。クラシックなコントのようでもある
この人、マカロニサラダを吸うのである。ズズズ。68dB
この人、マカロニサラダを吸うのである。ズズズ。68dB
べっちゃべっちゃ音を立ててハンバーグを食べる。58dB。淡々と計測していく
べっちゃべっちゃ音を立ててハンバーグを食べる。58dB。淡々と計測していく

まさかさんまをすする日が来るとは

ふつうのごはんをできるだけうるさく食べた。4人が2つの定食をたべて合計8回。実験であるといいながらもこれが可笑しくてしょうがなかった。

さんまをすするのである。とんでもない豪傑が現れたなと思ったら次のやつはさんまを箸でだんだん突き刺してほぐすのである。

この豪傑につぐ豪傑感は少年がマンガにもとめるものと同じものだ。食べ方がおかしいワンピースたちがここにいるのである。
君はごはんをすすったことがあるか。ファサッ、ホソッ、と独特の響きがある。米農家に謝るべきかどうか、それさえもわからない。前人未踏の地である
君はごはんをすすったことがあるか。ファサッ、ホソッ、と独特の響きがある。米農家に謝るべきかどうか、それさえもわからない。前人未踏の地である
さんまをすするという新たな局面に入ってきた人生。長細いものはたいていすすれる
さんまをすするという新たな局面に入ってきた人生。長細いものはたいていすすれる
あらゆるものをすすって口に入れ、口を開けてぺっちゃぺっちゃ食べる。

マカロニをすすった古賀さんは「こういう食べ方が本来なのかなと思った」と間違った伝統にたどりつきそうになっていた。

私もごはんをすすって食べた。すすって食べる行為はほら貝鳴らして突進するようなもので「食べるぞ!」と周りに宣言してる気持ちよさがある。

一方、口に入れてからのクチャクチャはかなりの背徳感がある。やはり体にしみついた規範は強固なものなのだろう。クチャクチャやって気持ちいいというものではなく、ストップする気持ちが強い。

ここを乗り越えるのは相当な力が必要だろう。相当な力というかまあただの変態である。
君は食パンをすすり倒したことがあるか? ちがう星やまったくちがった文化から来た人のように一瞬でなれる。
君は食パンをすすり倒したことがあるか? ちがう星やまったくちがった文化から来た人のように一瞬でなれる。

なにがもっともうるさいか探そう

今度はどこまでうるさくできるかを実験してみよう。今のところ味噌汁をすすった80dBがトップだ。これは1mで聞くピアノだそうだ。心を動かす何かが味噌汁の調べにあった。

今回は参加者に自分がもっともうるさいと思うものを持ってきてもらった。なにがうるさいか調べてみよう。
マクドナルドのジュースがうるさいのではと小堺。70dBくらいまではいくが、氷入ったジュースはちょっとずるい気がするな……いや、ずるいってなんだ!
マクドナルドのジュースがうるさいのではと小堺。70dBくらいまではいくが、氷入ったジュースはちょっとずるい気がするな……いや、ずるいってなんだ!
優勝は小堺さんが持ってきた一番うるさいと思うのはとろろ汁。他の参加者で82dBを超えてもっともうるさいものに。窓を開けた地下鉄の車内くらいだそうだ
優勝は小堺さんが持ってきた一番うるさいと思うのはとろろ汁。他の参加者で82dBを超えてもっともうるさいものに。窓を開けた地下鉄の車内くらいだそうだ
古賀さんが持ってきたのはサブウェイのサンドイッチ。包み紙がうるさいらしいが60dB付近で伸びず。
古賀さんが持ってきたのはサブウェイのサンドイッチ。包み紙がうるさいらしいが60dB付近で伸びず。
ドロリッチのストローで果物ゼリーを吸うトル村真一。工夫をこらすも凡庸な結果に。
ドロリッチのストローで果物ゼリーを吸うトル村真一。工夫をこらすも凡庸な結果に。

食事の音は4つしかない

その後いろいろ試してみたのだが、考えてみると食事でうるさくするというのはそんなにバリエーションがない。

1.食器をぶつけて音を立てる、2.ズルズルと空気と一緒にすする、3.くちゃくちゃと口を開けて食べてる音をだす、4.バリバリ歯ざわりのいいものを食べる、の4つに分類される。

最もうるさいのは「すする」である。これは唇付近の音なので口の外にも届きやすい。

くちゃくちゃは聞いている不快感がすごい。生まれてからずっと反抗期で育った人間のようだった。トル村真一は「全員もれなく犬のようだ」と言っていたが、たしかに狼に育てられた感じが出た。

また、バリバリしたものも特徴的だ。これは自分の口の中がうるさいだけで記録がまったく伸びないのである。
じゃがりこを口に入れまくって一気に噛む。その瞬間は60dBは超えたものの以降は伸び悩む。しかし本人はうるさくてしょうがないらしい
じゃがりこを口に入れまくって一気に噛む。その瞬間は60dBは超えたものの以降は伸び悩む。しかし本人はうるさくてしょうがないらしい
同じくバリバリと口いっぱいのおのろけ豆を食べる古賀さん。「53dBです」「ちがうよ、100だよ、100!」と反発。バリバリしたものは自分がうるさいようだ
同じくバリバリと口いっぱいのおのろけ豆を食べる古賀さん。「53dBです」「ちがうよ、100だよ、100!」と反発。バリバリしたものは自分がうるさいようだ
新たな発見。バリバリしたものは自分がうるさいだけなのである。これをトル村真一は「クラブだ」と評した。たしかに周りの声が聞こえないくらいにやかましくなる
そして冒頭の動画にもどる。こういう祭りだったのだ

そして人々はアメリカを目指す

大北「感想を聞いてみたいんですが、そもそもが全員食べ方がむちゃくちゃなんでずっと笑ってました。そういうパーティーとか祭りとかそういう感じじゃないかな。祝祭性がある」

古賀「人がやってるのをみるととにかくただ笑えるんだけど、自分がやるのはかなり躊躇するというか、やっててドキドキするかんじありました『これ怒られないかな!?』って」

大北「拾い食いとか盗み食いのときの興奮とかとはちがう背徳の味でしたね。じとーって嫌なやつというか。後味のわるさがあって、これが私たちの体にしみついた規範か!という驚きがあった」

古賀「すごくいいなと思ったのは”おぎょうぎわるいことをする”ということがやっぱり一つあって、アメリカのドラマとか見てると学食で友達にクルトン投げたりすんだよね、あれがずっとかっこいいなと思ってて」

小堺「わたしは古賀さんがさんまを吹き出したときのシーンをあれから毎日のように思い出してます。
たしかに自由の国アメリカを感じましたね。ロックでした」

大北「古賀さんがさんまを吹き出したのが謎の行動だったんだけどそれで合点がいきました。なんか雄叫びみたいな、規範を乗り越えて『やってやったぞ!』って勝どきをあげる感覚なんですね」

古賀「子どもが左手テーブルに出てなかったり、ひじをついて食べたりすると叱るけど、くだけた友達との間だったらちょっとやって空気を柔らかくするみたいなところあると思う。

”食べ方”と”場の空気”みたいなものを一回壊す活動としてうるさ食べはおもしろかった」

大北「たしかに壊すおもしろさかも。拾い食いや盗み食いはダメな食べ物を食べて『うまい(ダメじゃなかった)!』っていう感覚だったんですけど、これは逆。どちらかというとまともな食べ物をダメな方向にする。物質的にというより規範的にダメにしてる。となるとやっぱり後ろめたさがあるんだけど、でもそれって規範があるということだからそこを壊すおもしろさは感じるんじゃないかなと思います。こういう許された場で規範をやぶるおもしろさ。なんだけど、今は一時的に音を立てていい場所だし、食べ物はひとつもムダにしてないんですよね」

古賀「結論がどうでもよくなるくらい腹がいっぱいだ」

大北「帰ろう、みんな帰ろう」

この日の最高の数字は82dB。とろろをすすった結果である。人はだいたい窓を開けた地下鉄の車内くらいの音を食べながら出せるようだ。山芋をすったもので。
とろろ汁で82dBの最高記録を出したところ小堺さんからなぜか福山雅治のポスターが贈呈された。わけがわからない。このわからなさは後世にまで語り継ごうと思う。
とろろ汁で82dBの最高記録を出したところ小堺さんからなぜか福山雅治のポスターが贈呈された。わけがわからない。このわからなさは後世にまで語り継ごうと思う。

ライターからのお知らせ

この週末に主宰する"明日のアー"がテアトロコントというイベントに出ます。詳細は
http://eurolive.jp/  にて
12/10 AR忘年会2016(売切)
http://peatix.com/event/215462
12/11 えるえふる大忘年会@新代田FEVER
http://goo.gl/kY9RH1
にも出ます。
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