はっけんの水曜日 2017年1月18日
 

幻の廃駅「銀座線萬世橋駅」をキラキラさせる

廃駅を派手にした
廃駅を派手にした
「まんせいばしえき」といえば、JRの万世橋駅が有名だ。

しかし、東京メトロ銀座線にもかつて「萬世橋駅」が存在していたことはご存知だろうか?

現在は閉鎖され、使われていないものの、遺構は当時のまま残っている。

その「銀座線萬世橋駅跡地」に、特別に入れてもらえることになったので、行ってキラキラさせてきた。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。

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銀座線萬世橋駅ってなに?

今回、銀座線萬世橋駅に入れてもらえることになったのは「銀座線リニューアル情報サイト」での潜入レポートに同行させてもらうという形で実現した。

銀座線萬世橋駅は、今から80年以上前、まだ銀座線が全線開通していない頃、一時的に設けられた駅だ。(※ちなみに、当時はまだ「銀座線」という呼び方はありませんでしたが、便宜上、銀座線萬世橋駅と呼びます)

この駅は、銀座線の末広町から神田駅までが開通するまでの2年ほどのあいだ使われたあと、廃駅となり、施設の一部がそのままの形でのこされているものの、いまは通気口としてしか使用されていない。

現在の秋葉原萬世橋交差点のすぐ北側、エディオンAKIBAとオノデン前の地下に存在しているが、入り口はグレーチングで封鎖されており、もちろん立ち入ることはできない。
赤くなってるところが、銀座線萬世橋駅跡の地下空間部分である。土日祝日には歩行者天国になる中央通りの地下だ。

好奇心強めのおっさんが行きました

某日深夜。銀座線の終電が終了したあと、人通りの絶えた秋葉原の歩道に集合。ここに銀座線萬世橋駅への入り口がある。
歩道にあるグレーチングを開けると、階段が
歩道にあるグレーチングを開けると、階段が
本当に営業していたのかと思うほど穴が小さい。
本当に営業していたのかと思うほど穴が小さい。
見た目は完全にドラクエの階段である。ザッザッザッザッっていうやつ。
左から、デイリーポータルZライターの松本さん、ぼく、伊藤さん
左から、デイリーポータルZライターの松本さん、ぼく、伊藤さん

全体的に小さい

はしごを伝って、下に降りていくと、行く手をさえぎるように鉄の棒が横たわっており、さらに、浸水を防止するための機械が取り付けてある。

これらの設備は、駅が廃止されてから後に設置されたものなので、駅が稼働してたころにはなかったものだ。
昔は存在しなかった設備
昔は存在しなかった設備
浸水防止の装置は通路を遮るように設置されているので、身をかがめて階段を降りなければ下に行けない。

入り口も、階段も、いずれもサイズが小さいので、よけい窮屈に感じる。
階段は、人がやっとすれ違えるほどの幅しかない
階段は、人がやっとすれ違えるほどの幅しかない

これが銀座線萬世橋駅

ススだらけの階段を降りていくと、ちょっとしたスペースに到着する。
この空間が、萬世橋駅……
この空間が、萬世橋駅……
ここが、銀座線萬世橋駅跡地だ。
なんにもない地下空間
なんにもない地下空間
もやっとした暖かさのある地下空間が広がる。
ぶっとい柱が並んでおり……
ぶっとい柱が並んでおり……
柱の外はすぐ銀座線の線路だ
柱の外はすぐ銀座線の線路だ
コンクリートむき出しの地下空間
コンクリートむき出しの地下空間
この空間、実はホームではない。詳しくは後述するが、ホームにつながるコンコースのような場所だったのではないかと思う。
線路側から萬世橋の遺構を見てみる。
線路側から萬世橋の遺構を見てみる。
壁に、なにか古いものが残ってないか探してみたものの、なにもなく、ただただコンクリートの壁が存在しているのみである。

せっかくなので廃駅をキラキラさせてみたい

銀座線萬世橋駅は基本的に照明が無く、取材時は各自照明を持参してくださいとのことだったので、この照明を持ち込んだ。
ハンディタイプのミラーボール
ハンディタイプのミラーボール
USB給電で光るミラーボールである。

実はこの取材、危険をともなうため、取材の人数や持ち込めるカメラの台数や照明などを、事前にことこまかく東京メトロに報告しなければいけなかった。

正直に「照明1台」と申告し、現場にこの照明を持ち込んだところ、東京メトロの広報担当の方の顔がたちまちくもった。

やばい、萬世橋駅をキラキラさせることができないかもしれない……。と、気をもんだが、ミラーボールは限られた空間でキラキラするだけで、夜間工事等に影響がないことがわかったので持ち込みが許可された。

そんなわけで、萬世橋駅をキラキラさせてみた画像がこちらだ。
BGMはアート・オブ・ノイズの『ロビンソン・クルーソー』でお願いします
BGMはアート・オブ・ノイズの『ロビンソン・クルーソー』でお願いします
あまりふざけると怒られる感じの取材で、精一杯の冗談がうまくいったという安堵感から、しぜんと笑みがこぼれる。こんな笑顔、今後死ぬまで出ないかもしれない。
みてください、この満面の笑み
みてください、この満面の笑み
ミラーボールのキラキラが、おもいのほかコンクリートむき出しの萬世橋駅とよく合う。

地下鉄の萬世橋駅は1930年の1月に開業し、1931年の11月のわずか2年足らずの営業を終え、廃止された。

それから太平洋戦争を経て、高度経済成長、バブル時代から昭和の終焉、平成の時代、そして21世紀と、85年以上、秋葉原の地下に存在し続け、ついに、USB給電のミラーボールでキラキラすることとなった。

歴史的瞬間といえよう。

トンネル内もキラキラさせよう

コンコースだけではなく、線路にも降りることが許可されたので、トンネルもキラキラさせてみた。
「まんせいばし」の駅名標は最近つけられたものとのこと。
「まんせいばし」の駅名標は最近つけられたものとのこと。
トンネルの天井ぐらい高くなるとキラキラも弱くなるな
トンネルの天井ぐらい高くなるとキラキラも弱くなるな
キラキラなしだとこんな感じ
キラキラなしだとこんな感じ
地下鉄の萬世橋駅は、日本ではじめて開通した浅草から上野を結ぶ地下鉄道が、神田まで延伸されるさい、神田川の下を抜けるトンネルが完成するまでの一時的な仮駅として設置された。

銀座線は、建設費を抑えるためオープンカット工法で、道路を掘り返し、トンネルを浅い位置に埋設して作ってきた。したがって、神田川の下をくぐり抜けるためには、川の手前で線路を傾斜させなければならない。

銀座線萬世橋駅は、その勾配の途中にホームを設置することになるため、水平で長いホームは設置できない。そこで、木製で、長さも車両二両分だけの短いホームを線路の上に設置した。
萬世橋駅の断面図と平面図。赤い部分が木製ホーム部分(「東京地下鉄道史 坤」より)
萬世橋駅の断面図と平面図。赤い部分が木製ホーム部分(「東京地下鉄道史 坤」より)
上の図の断面図をみると、トンネルは傾斜しているのに、木製ホームは水平に保たれているのがわかる。

現在残っているコンコースのような地下空間は、当時の図面をみると、木製のホームと地上を結ぶための空間のようだ。

当時は、末広町からやってきた電車は銀座線萬世橋仮駅で折り返し、浅草方面へ戻っていく。つまり、単線の終点駅のような形で運用されていた。

銀座線萬世橋駅が開業した1930年当時、近くにあった国鉄萬世橋駅は、7年前に発生した関東大震災で大きな被害を受けたうえ、1914年に東京駅が開業した影響で、鉄道のターミナル駅としての意義は失っており、寂れていた。しかし、周辺は依然として東京市電(路面電車)のターミナルであり、地下鉄の萬世橋駅は仮とはいえ、かなりの利用者がいたらしい。
昭和19年(1944年ごろ)の萬世橋駅周辺。すでに地下鉄の萬世橋駅は無いが、市電と国鉄の萬世橋駅は存在している。市電のターミナルぶりはこのころも変わらない
昭和19年(1944年ごろ)の萬世橋駅周辺。すでに地下鉄の萬世橋駅は無いが、市電と国鉄の萬世橋駅は存在している。市電のターミナルぶりはこのころも変わらない
末広町駅と神田駅のあいだは、駅間距離が1.1キロもあり、銀座線の駅間距離の中では長い方だ。
ちょうど、この萬世橋駅あたりに銀座線の駅があれば、秋葉原に近くて便利なのに……と思うが、神田川にむかって線路が傾斜しているため、現在の列車が停車できるほどの駅を設置するのは難しいらしい。

川の下は風が強い

せっかくなので、神田川の真下まで歩いて行ってみる。
神田川の下のトンネルはA線とB線で別れているので、さらに狭くなる
神田川の下のトンネルはA線とB線で別れているので、さらに狭くなる
地下鉄はふだん、営業中で電車が運行していてるなかでも、線路の上を職員が歩いて点検を行っている。
職員は、電車が近づくと退避場所に移動するのだが、トンネル内には、安全を確保するためのさまざまな標識が掲げられている。
駅までの距離が書かれている
駅までの距離が書かれている
オレンジと黄色のラインは、退避できる場所と退避できない場所を見分けるためのものらしい
オレンジと黄色のラインは、退避できる場所と退避できない場所を見分けるためのものらしい
空気鉄砲のしくみで、電車に空気が押されるので、地下鉄のトンネル内はめちゃめちゃ風がつよい。手すりは点検作業で退避した作業員が風で飛ばされないようにつかむためのもの
空気鉄砲のしくみで、電車に空気が押されるので、地下鉄のトンネル内はめちゃめちゃ風がつよい。手すりは点検作業で退避した作業員が風で飛ばされないようにつかむためのもの
神田川の底もキラキラさせました
神田川の底もキラキラさせました
わー、きれいー、だけどキラキラさせる必要性はあったのかという思いがよぎる
わー、きれいー、だけどキラキラさせる必要性はあったのかという思いがよぎる

東京メトロの方が言うには、萬世橋駅跡地は走っている銀座線の電車の中からも、がんばって目を凝らせば一瞬だけ「あっ」という感じで、見られるかもしれないという。
その場合、末広町駅から神田駅方面に向かう電車に乗り、進行方向右側の窓の外を見たほうが見える確率は高いが、逆方向の電車が邪魔する可能性もある。
普段は照明などはつけていない上に過ぎ去るのは一瞬なので、よほど頑張って目を凝らさないと見えないだろうということであった。

「それは、もはや見えないのでは?」と喉元まで出かかったが、飲み込んだ。
取材協力
東京メトロ
銀座線リニューアル情報サイト
http://www.tokyometro.jp/ginza/
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