特集 2017年1月26日

タイの自家製焼肉ダレがなめたい

幻のタレを求めて右往左往しました
幻のタレを求めて右往左往しました
日本に来たタイ人観光客が、焼肉屋に行くときに自家製のタレを持参するらしいという噂を聞いた。

なんだそのタレは、うまそうだ。舐めてみたい。
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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タイ人専用焼肉のタレ?

ということで噂を聞いたレベルなのだが、「タイの人が日本の焼肉屋に持ち込む焼肉のタレ」というものがあるそうなのだ。備え付けのタレでは満足できないのか、わざわざ母国から自家製のタレを持ってくるらしい。
タイ人がよく来るらしい新宿の焼肉屋
タイ人がよく来るらしい新宿の焼肉屋
ただ不幸にしてタイ人の知り合いがいない。さらにタイの人が自家製の焼肉のタレを持ってきてる場面にも遭遇したことがないので、タイ人の焼肉ダレは本当にあるのかわからない。ぼくにとってオリハルコンや火鼠の皮衣にならぶ幻想の素材である。

仮に焼肉屋でタイの人が自家製ダレを使っていたとしてに「そのタレ、なめさせてください」というのも問題がありそうだ。

どうしたらいいのかわからないまま灰色の日々を過ごしていた。

タイで聞いたタレ情報

そんな折、昨年末タイのチェンマイに行くことになった。タイで「顔がでかくなる箱」を披露するためだ。チャンスである。

そのときにお世話になった通訳の人に、タイ人が日本に持ってくる手作りの焼肉のタレについて聞いてみた。
「自家製のタレを持っていく? ないと思います」
「自家製のタレを持っていく? ないと思います」
・タレを持ってく? そんな話は聞いたことがない
・仮に持っていくとしても自家製ではなく、店で売っているものだ
とのことだった。噂に間違いがあったのかもしれない。自家製というところに魅力を感じていたので、ちょっとがっかりである。

市販のいいタレを教えてもらう

自家製のタレはあきらめざるをえない。あらためて通訳さんにスーパーで売られているおすすめタレを聞いてみた。

上の写真にばっちり写っているがひとつピックアップしてもらうことに成功。
私はもっとからいのが好きだけど日本人向けにマイルドなのを選ぶとしたらコレがいいのでは、と教えてもらった。
これがそのおすすめのタレ
これがそのおすすめのタレ
さっそくスーパーに向かい、その商品を探す。
さっそくスーパーに向かい、その商品を探す。
たのしそうな職場
たのしそうな職場
それにしてもタイのスーパーの調味料&タレコーナーは膨大なストックだった。
それにしてもタイのスーパーの調味料&タレコーナーは膨大なストックだった。
なかなか見つからなかったが、冷蔵コーナーにあった。
なかなか見つからなかったが、冷蔵コーナーにあった。
やった、タイの焼肉タレだ! タイで一番の秘宝を手に入れた気分である。ホテルに戻ったあとは、タレの写真を撮りながらタイの熱い夜を過ごした。

舐めてみよう

そうこうして入手したタレ。舐めてみよう。あこがれのタイの焼肉ダレである。
日本に持ち帰ってきたタイのタレ
日本に持ち帰ってきたタイのタレ
なめた
なめた
スイートチリソースという言い方が一番近いか。日本人向けにマイルドめ、という話だが決して甘口というわけではなくしっかりと辛い。唐辛子のかけらも見えている。

タレのジャンルとしては味噌ダレに近いような濃厚さもあり、焼肉というよりはしゃぶしゃぶや鍋にあいそうだ。
広東火鍋醤と書いてあるな
広東火鍋醤と書いてあるな
これかあ、これをタイの人は焼肉に持ってくるのかあ。でも鍋の絵が書いてあるな。なんとなく釈然としない。

もうひとつ釈然とできない理由がある。このタレの画像をSNSにアップしたときに入ってきたこの情報である。
もらいましたよ、という情報
もらいましたよ、という情報
やっぱり自家製ダレを持ってくるタイ人はいるのだ。もう少し調べてみる必要がありそうだ。
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タイ食材の店で聞いた

世界の何処かにあるはずの本当のタイのタレが諦めきれず、素直に新宿にあるタイ食材の店に出向いてみた。もう今年ぶんの情熱と素直さをこれで使い尽くしてしまいそうだ。
大久保にある「アジアスーパーストアー」さんに来た
大久保にある「アジアスーパーストアー」さんに来た
見慣れない食材が多く売られている。
見慣れない食材が多く売られている。
生酸っぱい魚
生酸っぱい魚
ドライ雷魚
ドライ雷魚
あのタレもあった。
あのタレもあった。
店のラインナップの中には、当然のようにあのタレもあった。しかし、わざわざタイで買ってきたタレが売られているのを見ると、じゃっかんショックである。ホテルで撮影するほど喜んだのがばかっぽさが際立った。
話を聞かせてくれた店員さん
話を聞かせてくれた店員さん
店員さんを捕まえて、ここで「タイの人が焼肉のときに使うタレがあると聞いたんですが」と訪ねてみた。「あ、虫ですか?」といったん虫が売られてるところに案内される。話が通じてないにもほどがあると思った。
フライドイナゴ
フライドイナゴ
ほしいのは虫ではないのであらためて聞いてみる。やはり、
・そんな話は聞いたことがない
・焼肉のタレなら、タイの味付けのが売られているのでそれを使う
・日本のタレはしょうゆ味ばっかりだ。タイにはたくさん種類がある。
とのことだった。自家製タレは局所的なムーブメントなのか。

話を聞かせてくれた店員さんにもおすすめの市販の焼肉のタレあるというので、聞いてみた。
これのいちばん右がおすすめだそうだ。もちろん買った。
これのいちばん右がおすすめだそうだ。もちろん買った。
これは一体どんな味だろう。このお店でのアドベンチャーの途中だが、一旦なめます。
見た目的に、からそうだ。
見た目的に、からそうだ。
なめる
なめる
からい! ナンプラーの中にからさがまみれている味だ。奥の方に酸っぱさがあって、タイらしいエスニックな味にまとまっている。日本の焼肉屋には絶対ない味だが、これはこれで焼肉に確実にあうだろう。しかし、からい。

しつこく聞く

話はタイ食材の店に戻る。ぼくはまだ夢のタイの自家製ダレを諦めていなかった。

ずうずうしく「手作りしたいんです。この店で揃う材料で作れるタレはないですか」とお願いしてみると、レシピサイトを検索して紹介してくださった。親切だ。
出してもらったレシピ。タイ語だ
出してもらったレシピ。タイ語だ
へ~、ちょっと画面の写真撮らせてもらっていいですか?と撮影していると、カウンターの上にタレの材料が並べられていた。親切アンド手際の良さである。
へ~、ちょっと画面の写真撮らせてもらっていいですか?と撮影していると、カウンターの上にタレの材料が並べられていた。親切アンド手際の良さである。
これを混ぜるだけで作れますよというので、言われるがままに購入。ほくほくと家路についた。

手作りダレ

さて、タレをつくろう。タイの自家製ダレのレシピはこのようになっている。(このページを参考にしました。)
材料
材料
唐辛子 大さじ2
ココナッツシュガー 大さじ1
炒った米粉 大さじ1
ライム 大さじ1
ナンプラー 大さじ2
パクチー おこのみ
これらを混ぜていくだけだ。
こんなに唐辛子入れて大丈夫なのか。
こんなに唐辛子入れて大丈夫なのか。
味露とかいてある。タイで見かけてタイの「ミロ」は変わってるなと思っていたが、ナンプラーだった。
味露とかいてある。タイで見かけてタイの「ミロ」は変わってるなと思っていたが、ナンプラーだった。
ココナッツシュガーと米粉でマイルドになるのかもしれない(願望)
ココナッツシュガーと米粉でマイルドになるのかもしれない(願望)
まぜあわせて…
まぜあわせて…
自家製タイの焼肉ダレができあがった。禍々しい赤さだ。見るからに辛そうだ。
自家製タイの焼肉ダレができあがった。禍々しい赤さだ。見るからに辛そうだ。
ではなめてみよう。
からい
からい
からい。

唐辛子、ナンプラー、ライムの構成はタイ食材屋で買った市販のタレと同じはずなのだが、それぞれが荒々しく主張しあっていてまるで別物だ。ただケンカしてるわけではないので、ウイスキーでいうところの「若い」というような印象だ。味の解像度が低い。

これが本場の味なのか。レシピ通りなので、たぶん、そうなのだろう。

焼肉につけて食べる

せっかく手に入れたタレ、舐めるだけではもったいない。満を持して焼肉につけて食べよう。焼肉と食べてこその焼肉ダレである。

本来なら焼肉屋で試したいところだが、タレの持ち込みはよくないと思い、おとなしくスーパーで買ってきた肉を焼いて食べる。
この皿は火が使えないオフィスでも電子レンジで肉が焼ける便利なしろものをつかった。
この皿は火が使えないオフィスでも電子レンジで肉が焼ける便利なしろものをつかった。
唐突に登場する不思議なテクノロジー。
唐突に登場する不思議なテクノロジー。
デイリーポータルZ編集部安藤と営業橋本を呼び出した。ほぼ幻と言っても過言ではないぜいたくなタイの焼肉ダレをおすそ分けする気持ちからだ。
いただきます
いただきます
こういうのエスニックっぽいの好きなんだよね、と曰く安藤さん。自家製タレの唐辛子ぶぶんを肉で包むようにして一口食べた。どうか。
うっ
うっ
とにかく「これはすごい」と言っていた。付けすだとおもった。

僕も自家製ダレをつけて食べたのだが、肉と合わせても相変わらずの荒々しさだ。肉が甘く感じるほどからい。しかしこれが本場の味なのだ(たぶん)。
市販のタレはふつうにタイっぽくておいしかったそうです
市販のタレはふつうにタイっぽくておいしかったそうです
一通り、タレのつけ具合を調整したりして食べたところ、我々の味覚での美味しさで言ったら市販のタレに軍配があがった。ふだんの焼肉とは一味ちがうエスニック風味がおいしかった。

しかしお手製のタレはそういう味覚とはかけはなれた、夢がかなった味がした。ぼくだけ。

タレを持って海外旅行に行く

それにしてもタイの人がやっているという「自国のタレを海外に持っていく」という行為はなんとも楽しそうだ。

ぼくが日本のタレを海外に持っていくというアプローチもあったのではないかという思いにさせられる。

いつか小脇にポン酢を抱えてタイに行きたい。
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