特集 2017年1月30日

氷上を歩く幻想的な鹿を目撃する

なんなら捕まえに行く勢いで鹿を目撃します!
なんなら捕まえに行く勢いで鹿を目撃します!
鹿という生き物がいる。基本的には山で暮らす生き物だ。東京周辺でも、山に行くと目撃することができる。動物園に行っても飼育されていることが多い。ディズニー映画の「バンビ」も鹿だ。

この鹿が氷の上を歩いている場所がある。冬限定の景色だ。海が凍ってそこを鹿が歩くのだ。滑らないのだろうか、何が目的で草もない氷の上を歩くのだろうか。ぜひ見てみたいと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

海が凍る

冬は寒いものである。雪が降り、気温の低下で道路が凍る。地域によって寒さのレベルは異なり、河川が凍ったり、海が凍ったりもする。全てが凍るのだ。北海道の野付半島もそうである。海が凍るのだ。
これが野付半島です!
これが野付半島です!
野付半島は北海道の別海町あたりにある半島で、日本最大級の「砂嘴(さし)」である。地理の教科書に出てくる言葉だ。この野付半島が凍るのだ。凍るので本来は歩くことのできない海の上を歩くことができるのだ。
野付半島の冬以外の景色
野付半島の冬以外の景色
野付半島の冬の景色。海が凍っています!
野付半島の冬の景色。海が凍っています!
冬以外はアザラシがいたりするそうだけれど、海が凍る前にどこかに出て行ってしまうらしい。その代わりのこの氷の上を鹿が歩き出す。幻想的な気がする。みんな大好き「ラッセン」の絵を思い浮かべて欲しい。それの冬版が野付半島で見ることができるのだ、きっと。
ということで、野付半島にやってきました!
ということで、野付半島にやってきました!

海の上を歩く

そんな幻想的な風景を見るために野付半島にやってきた。完璧に海が凍っていた。九州生まれの私にとっては海が凍るなんて考えられず、目の前の風景にテンションが上がった。「凍ってる! 凍ってる!」というわかりきったことを連呼していた。
別海町観光協会の山内絵理さんに案内していただきます!
別海町観光協会の山内絵理さんに案内していただきます!
この謎のテンションではしゃいで、凍ってないところを歩いてしまうのが怖いので、別海町観光協会の山内絵理さんに案内してもらった。1月から3月中旬くらいまでの間、この凍った海を歩くことができるそうだ。
歩きます!(この時期以外、ここは海です!)
歩きます!(この時期以外、ここは海です!)
凍った海の上を歩く鹿を見たくて、ここにやってきた。果たして見ることはできるのだろうか、という心配がある。山内さんは見れますよ、と言っていたけれど、相手は野生動物だ。こういうのはだいたい見ることができないのだ。
めっちゃいるね!
めっちゃいるね!
めちゃくちゃいた。アサインされたかのように群れていた。氷の上には草は生えていないので、移動のために横切っているのだろう。本来はグルっと回らないとダメなのだけれど、この時期だけは海を歩けるので、ショートカットできるのだ。
幻想的ですね!
幻想的ですね!
幻想的だ。白一面の氷上を鹿が悠々と歩いている。ゆっくりと一歩、また一歩と確かめながら歩いているように見える。海が凍っていることを彼等は知っていて、悠々とただ氷が割れないように確かめながら一歩を踏み出す。これが幻想的ということなのだ。
捕まえに、行きます!
捕まえに、行きます!
逃げました!
逃げました!
トボトボ戻る
トボトボ戻る
温泉に入っているおじさん、みたいにのんびりしていた鹿だけれど、追いかけたら逃げていった。映画だと鹿と心の交流が生まれると思うのだけれど、現実では逃げていった。でも、スキップみたいな跳ね方で逃げていくので、向こうのテンションが読めない。
こっちのテンションは高い!
こっちのテンションは高い!
必死に追いかける
必死に追いかける
とにかく追いかける
とにかく追いかける
普段、鹿は山で見かけることが多く、起伏があり、さらに木々が生い茂っているので、追いかけるのは困難だ、そもそも木に隠れて見つけにくい。体力的にも精神的にも疲れる。ただここは氷の上。起伏もなければ、木々もない。絶好の追いかけ日和なのだ。
逃げられるんだけどね
逃げられるんだけどね
普段は山だから、と思っていたけれど、山でなくても無理だった。やつら、速い。幻想的というスピードではない。現実的な速さを誇っている。結果、私だけが疲れて、寒い北海道で、ずっと疲れていた。
疲れた
疲れた

海なの?

ずっと氷の上を歩いていると、ここが本来は海であることを忘れてしまう。山内さんに聞いたら、たまに氷が割れて鹿が落ちたりしているそうだ。ここは海なのだ。たまに亀裂を見つけて、現実に戻る。
亀裂があります
亀裂があります
下は水があります!
下は水があります!
氷の上に雪が少し積もっているので、滑ったりはしない。雪を払うと氷が見える。この氷は海の水でできた氷なのだ。塩辛いのだろうか。海の水でできた氷なので、塩辛いはずなのだ。
舐めてみる
舐めてみる
全然塩辛くなかった。むしろ味はないと言ってもいいかもしれない。氷に舌がくっついて取れなくなるのが嫌なので、ペロペロと鹿の逃げ足より速く舌を動かしながら舐めた。その結果、味はないとわかったのだ。
土下座しているみたいになっていた
土下座しているみたいになっていた
全体的に海を歩けていることが嬉しい。私が画家ならラッセンみたいな絵を描きたくなるような幻想的な感じなのだ。鹿を追いかけたりで、息は上がっているけれど幻想的なのだ。吐く息が白くなる感じが幻想的。いま私は幻想的な人なのだ。
疲れ方が幻想的ではないけれど
疲れ方が幻想的ではないけれど

海を歩く選択肢

海というと泳ぐものだと思っていたけれど、このように歩けるものだとは知らなかった。歩いていると海の上だということを忘れるけれど、亀裂を見つけて現実に戻る。しかも、鹿はたまに落ちて死んじゃうらしい。そんなドキドキと一緒に歩くとより楽しいのだ。
冬以外はこんな感じです!
冬以外はこんな感じです!

協力:別海町観光協会
http://betsukai-kanko.jp/
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