土曜ワイド工場 2017年2月11日
 

デンキウナギを捕まえて、感電して、蒲焼きにして食べた

デンキウナギの電撃と味はどんなものなのだろう?
デンキウナギの電撃と味はどんなものなのだろう?
「ピラニアはどうってことない。やっぱり、一番怖いのはエレクトリックイールだな!」
そのエレクトリックイール、すなわちデンキウナギを探してアマゾンを訪れた際に、現地の漁師が語った言葉である。

※この記事は、生物採集の専門サイト「Monsters Pro Shop 」の記事を一般向けにリライトしたものです。
自然と冒険のデジタルメディア Monsters Pro Shop 編集長 「五感を通じて生物を知る」をモットーに各地で珍生物を捕獲している。 にょろにょろした生き物がすごく好き。
> 個人サイト Monsters Pro Shop

アマゾン最恐の魚類 「デンキウナギ」

アマゾンにはピラニアなど歯の鋭い魚は多数いるが、彼らに噛まれる機会はあまり無い。
そうした魚たちは好んで人に襲い掛かってくることはしないので、あるとすればせいぜい網や釣り針に掛かったものに触れる際。
油断や慢心を突かれてガブッとやられる程度である。
恐怖の象徴のように語られがちなピラニアだが、デンキウナギと比べればかわいいもの…らしい。
恐怖の象徴のように語られがちなピラニアだが、デンキウナギと比べればかわいいもの…らしい。
つまり、人間側が気を付けてさえいれば事故はおおむね避けられるということだ。
ところがエレクトリックイール、つまりデンキウナギに関してはそうもいかない。
水浴びや漁のために水へ入った際に、うっかり踏みつけたりしてしまうととんでもないことになる。
600Vにも達すると言われる強烈な電撃を不意打ちでお見舞いされるのである。場合によっては死に至ることもあるという。…いわば川底に設置された生きた地雷だ。
600Vにも達すると言われる強烈な電撃を不意打ちでお見舞いされるのである。場合によっては死に至ることもあるという。…いわば川底に設置された生きた地雷だ。
「川を渡ろうとした馬がデンキウナギを踏みつけて溺死した」という逸話もある。
……にわかには信じがたい。

たかが魚が、せいぜい体重数キロ程度のひょろ長いウナギが、そんな電流を撃ち出せるものなのか。眉唾だ。
実際に捕まえて、事の真偽を確かめるべく、僕はアマゾンへと飛んだのだった。
デンキウナギが潜むアマゾン奥地の川
デンキウナギが潜むアマゾン奥地の川
…が!しかし!!
いやー、見つからねえ見つからねえ。
前情報はおおよそ「デンキウナギなんていくらでもいるよ!えっ、捕りたい?大丈夫大丈夫!楽勝楽勝!」というものであった。
ものの見事に思惑は外れ、大苦戦を強いられている。まあ、海外で野生生物を探すとあらば、こんな事態は日常茶飯事である。

でも、そりゃあ正直言ってめちゃくちゃ焦る。アマゾンに来るチャンスなんて一生に何度あるだろうという話なのだから。
そして今回、デンキウナギの生息する奥地への滞在期間は七日間のみ。
ちなみに今回はこういうかっこいい熱帯魚を狙う釣り人たちのフィッシングツアーに便乗する形でジャングル奥地へもぐりこんだ。単身だとセスナのチャーターとかガソリン代とか折半できないから大変なんだ。
ちなみに今回はこういうかっこいい熱帯魚を狙う釣り人たちのフィッシングツアーに便乗する形でジャングル奥地へもぐりこんだ。単身だとセスナのチャーターとかガソリン代とか折半できないから大変なんだ。
三日目を過ぎたあたりから同行者ら(大ナマズとかを釣りに来ている人たち)と別行動を取り、朝も夜もなくまだ見ぬ電気魚を追う時間が増えた。
朝も夜もなく、雨も晴れもなく、両手にゴム手袋を装着して亡者のようにデンキウナギを求める日本人。現地人の目にはさぞ不気味に映っただろう。
朝も夜もなく、雨も晴れもなく、両手にゴム手袋を装着して亡者のようにデンキウナギを求める日本人。現地人の目にはさぞ不気味に映っただろう。
…やがて最終日を迎えるころには心身ともに疲弊しきり、完全にあきらめの境地へと至った。
おかげで晴々とした気持で皆と一緒にネイチャーウォッチングや釣りを楽しむことができたのだった。
ブラックピラニアが釣れたのは嬉しかったなあ。なんだかんだ言ってもやっぱりおっかない。このサイズだと指先くらいあっさり飛ばすらしいし。
ブラックピラニアが釣れたのは嬉しかったなあ。なんだかんだ言ってもやっぱりおっかない。このサイズだと指先くらいあっさり飛ばすらしいし。
やがて日も傾きかけ、キャンプへ戻る頃合いに。
あとは最後の晩餐を終えて朝を迎えれば、小型機で排気ガス臭い都市部へ舞い戻るのみである。

「ああ、デンキウナギはダメだったな〜。電波が入る環境に戻ったら、またすぐに南米行きのチケットを手配しよう。」
前向きな諦観を胸にアマゾン再訪を具体的に計画し始めたその時だった。
キャンプ手前の岩場で先行していた同行者二名が「エレチィー!エレチィー!」と叫びながらこちらを招きしている。
「エレチー!エレチィー!!」日が傾きかけたころ、謎の呪文が大河にこだました。
「エレチー!エレチィー!!」日が傾きかけたころ、謎の呪文が大河にこだました。
…エレチィーって何だ?
ポカンとしていると、船頭が驚きを含んだつぶやきを漏らした。
「Eel...!!」

イール?ウナギ?
…!!
エレチィーって、“electric eel”のことか!!
発音ネイティブすぎてわかんなかった!ていうか二人は日本人なんだからデンキウナギって言ってよ!ここにきて急にかぶれないで!

ともあれ、あの二人の足元にデンキウナギが潜んでいるのだ。
正真正銘、最後の最後にものすごいチャンスがやってきた!

直接触れずに釣り上げろ!

上陸した岩場の裂け目に、腕ほどの太さの黒い物体が沈んでいる。
自然下では初めて見るが、何度も何度も夢には見てきたのだから間違えようもない。デンキウナギだ!

二人を案内していた現地の漁師が偶然見つけたらしく、わざわざ僕のボートが通りがかるのを待って呼び込んでくれたのだ。
こいつを捕まえれば、僕の夢は逆転サヨナラホームランで叶う!
この岩の裂け目にデンキウナギが!!
この岩の裂け目にデンキウナギが!!
というわけで、興奮しつつ捕獲作業に移る。
まず、デンキウナギの捕獲に最も適した漁法は釣りである。
致命傷を与えることなく、かつ魚体に直接触れずに生け捕ることができる唯一の術であるからだ。

…ここでダメージを与えないようにわざわざ配慮するのは、電撃を放つための体力を喪失されては困るからである。
また、捕獲後に釣り糸を掴んで魚の動きをコントロールできる点でもこの方法は都合が良い。

デンキウナギは鼻や水の振動を感じる感覚器が鋭敏で、それらを駆使して泥水の中で餌を探す。
その代わり、視力が極端に弱い。そしてよほど電撃に自信があるのか、その振る舞いはかなり無防備だ。たとえばワニや水鳥がたむろする浅瀬で、息継ぎのためにぬぼーっと水面へ浮いてくることもあるという。
生け捕りにするのであれば、釣りがもっとも確実な方法。入水して網で掬おうとすると感電してしまう恐れがある。
生け捕りにするのであれば、釣りがもっとも確実な方法。入水して網で掬おうとすると感電してしまう恐れがある。
こうした性質を利用すると、彼らのごく間近へ接近した上で、目視しながら釣り上げることが可能となる。岩の隙間に潜んでいる個体を見つけたらそっと近づき、目の前にブラックピラニアの切り身をつけた釣り針をぶら下げてやる。
もちろんこれはさきほど釣り上げたものである。

魚肉の匂いを感知するや否や、デンキウナギは首をもたげ、スパン!と勢いよく針を吸い込んだ。
「やった!」
勝利を確信して釣り糸を引くが、針は口に掛かることなくスポンと戻ってきた!
えっ、なんで!?

「だめだめ!デンキウナギは口周りの骨が硬いからもっと奥まで飲み込ませてから引かないと。」
地元民のアドバイスを頼りにもう一度トライ。
針が口の中に収まったのを確認してから、ズイっと釣り糸を引っ張り、針を顎の肉と骨へ突き立てる。
今度は掛かったぞ!
釣れた!!
釣れた!!
異変を感じたデンキウナギはそのままバックして逃げようとするので、岩の隙間に潜られぬよう一気に引き抜く。
やったー!!
やったー!!
雄叫びを上げ続けたせいで、その後三日間はまともに声が出なかった。
雄叫びを上げ続けたせいで、その後三日間はまともに声が出なかった。
これが同じような体型のウナギやウツボ相手ならば、とんでもない馬鹿力を発揮して迫真の綱引き合戦にもつれこむところである。しかし、デンキウナギの場合は比較的スムーズに降参してくれる。
……実はこの非力さも、電撃の強さに関わりがあるのだが。

釣り上げたデンキウナギは陸上ではビタビタと情けなくのたうつばかり。
同サイズのウナギ型魚類に比べて、力強さにも大きく欠ける。
また、この手の体型の魚にありがちな、いわゆる「デスロール」と呼ばれる身体を錐揉みする動きや、魚体を自ら結ぶような動きも見られない。

だがこの間、彼は眼には見えない攻撃を繰り出し続けているのだ。馬をも倒すと言われる、必殺の一撃を。
顎の骨が分厚く硬いので針が刺さりにくい。針に掛かってしまえば、たいして暴れることもない。
顎の骨が分厚く硬いので針が刺さりにくい。針に掛かってしまえば、たいして暴れることもない。

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