フェティッシュの火曜日 2017年2月14日
 

美容室の「頭ぽふぽふ」で笑ってしまうあなたへ

このような理由から、「頭ぽふぽふ」で笑ってしまう人がいるはずです。
このような理由から、「頭ぽふぽふ」で笑ってしまう人がいるはずです。
床屋さんや美容室で髪を切ってもらった後、不意に両手を合わせて横向きにして、頭をぽふぽふしてもらえることがある。
あれをされるとどうも面白くってしょうがなくなってしまう。
美容師さんはどんな気持ちであの「頭ぽふぽふ」をやっているのか。
原宿の美容室を3軒周り、少しずつ髪を切ってもらいながら聞いてきました。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。

「頭ぽふぽふ」にどうしても笑ってしまう

頭ぽふぽふである。
小気味いい間の抜けた音を出しながら頭をリズミカルに叩かれるあれである。
これだ。指圧師で当サイトのライターの斎藤充博さんに再現してもらった。
これだ。指圧師で当サイトのライターの斎藤充博さんに再現してもらった。
「何が始まったのだ」
心中はすごく動揺するのだが、やってる方はこれが当たり前みたいな顔をしているし、それを見て止めに来る他のスタッフもいない。
やってる方の目の焦点も合っている。昨日寝てないなどの話は聞いていない。意識はしっかりあるようだ。
だとしたら静かに受け入れようではないかと、平静を装って鏡に映る自分を見るとどうしても笑ってしまう。
野暮だとは思うが、笑っちゃう理由、8,000個あるうちの7個を紹介する。
野暮だとは思うが、笑っちゃう理由、8,000個あるうちの7個を紹介する。
これはなんの時間だ。
一体何をしているのだ。

分からないので原宿の美容室を回って聞いてみることにした。

美容室を3軒回ることにする

話を聞くにあたって、「客」という立場なら相手も気持ちよく頭ぽふぽふについて教えてくれるだろうと思った。
そしてせっかく聞くなら色々な美容師さんから話を聞きたい。

というわけで、一日で原宿の美容室を3軒回って髪を少しずつ切ってもらいながら取材をすることにした。
そのために髪を伸ばしたのだ。
当日朝の寝癖。鉄腕アトムみたいになっていた。
当日朝の寝癖。鉄腕アトムみたいになっていた。
今日はジェットの限り原宿の美容室を回る。

「原宿の美容室」は緊張する

朝方の原宿。まだ人通りは少ない。
朝方の原宿。まだ人通りは少ない。
寝癖は直した。
寝癖は直した。
思春期は過ぎたので、さすがにもう「原宿」という土地への苦手意識はない。
だが「原宿の美容室」となると話は別だ。
そこには原宿の原宿らしさを煮詰めた独特の威圧感があるんじゃないかという恐怖がある。
原宿のイメージ。
原宿のイメージ。
そんな気負いもあって、予約した時間の1時間前に着いてしまい、店の周りをうろうろしたり別の美容室を覗いたりしながら時間を過ごした。
それも一通り終わると、我慢できず予約の30分前にお店に入ってしまう。待合所に案内されてじっと座っていた。

1軒目

後から来るおしゃれな方々が次々に案内されていく。
「待合所のヌシのようになってしまった…」
後悔しながら呆然としていたら名前を呼ばれて案内される。
待合所のヌシ。無害。
待合所のヌシ。無害。
席について担当の方に、頭ぽふぽふについて教えて欲しいこと、3軒回るのであまりバッサリ切らないで欲しいこととシャンプーは軽めにして欲しいことを伝えるとあっさりOKしてくれた。
思ったより懐が広いぞ原宿は!と感謝しながら疑問だったことを聞いてみる。
筆者   :あの最後に頭ぽふぽふしてくれるやつ、
美容師さん:ああ、マッサージですねー
筆者   :あれってどんな効果があるんですか?
美容師さん:んー、なんですかね?
筆者   :名前とかあるんですか?
美容師さん:知らないですねー
とにかく全然分からない。分からないのだ。
とにかく全然分からない。分からないのだ。
しかし分かったこともあった。
美容師さんは新人の頃、シャンプー係をしながら先輩の美容師さんの教育を受ける。その時にマッサージのことも一通り教わるそうだ。
つまり教育する先輩によってマッサージの内容にもかなり差が出るのだ。
個性的なマッサージを習得した美容師さんは、次の新人に更に個性的なマッサージを教え、そうしてマッサージの多様性が連綿と受け継がれていく。生命の神秘である。
美容師さん:なんか、私の師匠だった人がちょっと変わった人で、
筆者   :はい
美容師さん:頭ぽんぽんするやつは、なんか古い?とかなんかそんな理由で教えてくれなかったんですよ。
筆者   :へえ!
美容師さん:音?(BGMのことらしい)とか立ち振る舞いにうるさい人で、
      美容師が髪切ってる時、見習いの子が後ろで立ってたりするじゃないですか。
      その立つ位置が違うとかで怒られるんですよ。お客さんいる前でですよ?
筆者   :頭ぽふぽふするやつは、何がいけなかったんですかね。
美容師さん:…わっかんないですね。とにかく、変わった人でしたねー。
立ち位置を間違えると鏡に映りこむからイラっとしちゃうんだろうか。勝手な想像ですが。
立ち位置を間違えると鏡に映りこむからイラっとしちゃうんだろうか。勝手な想像ですが。
頭ぽふぽふについてはとにかく全然分からないが、美容師さんのマッサージ事情についてはなんとなくイメージができてきた。
その後、シャンプー係は手が荒れて大変で、それが原因で美容師を諦める人もいるとか、最近はアイリスト(まつエクを上手にしてくれる人)になるために美容師免許が必要だからお店に習いに来る子もいて、美容師になるつもりがない子に自分の技術を教えるのはなかなかしんどいとかそんな話をしてもらった。
分かったこと
● 頭ぽふぽふするやつはマッサージ
● 名前は分からない
● 頭ぽふぽふは古いという人もいる
● 立ち位置が悪い新人は怒られる
● 美容師はシャンプーで手が荒れて大変
● アイリスト志望の子に指導をするのがしんどい
これは古いらしい。
これは古いらしい。
ちゃんと程よく切ってくれた。
ちゃんと程よく切ってくれた。
お昼にケバブを食べた。ケバブは食べるぞと決心した瞬間が興奮のピークだと思う。
お昼にケバブを食べた。ケバブは食べるぞと決心した瞬間が興奮のピークだと思う。
ぶらぶらしていたら見つけた、生命が潰えた空間。タバコも吸えないし。
ぶらぶらしていたら見つけた、生命が潰えた空間。タバコも吸えないし。
あとラフォーレ原宿にあるオブジェはすごく迫力があった。なんなのか分からないけど。
あとラフォーレ原宿にあるオブジェはすごく迫力があった。なんなのか分からないけど。

2軒目

頭ぽふぽふについて、概ね分からなかったが、収穫はゼロではなかった。
調査を続行することにして原宿をぶらぶらしていると、「待ち時間なしで入れます」という看板が下げられた美容室が。
やはり怖いがチャンスなので入ってみる。
シンプルで清潔感のある店内。
シンプルで清潔感のある店内。
このお店は、先ほどの話で聞いた「新人のシャンプー係の子」がまず髪を洗ってくれた。
先ほど同様、頭ぽふぽふについて教えて欲しいこと、3軒回るのであまりバッサリ切らないで欲しいこととシャンプーは軽めにして欲しいことを伝える。
人当たりの良い方で、「へーそんなことしてるんですかー!」と好意的なリアクションをしてもらった後、仰向けになり顔の上に薄い小さい紙を乗せられ、まさに機関銃のように発せられるその子の夢の話や最近見たテレビの話に相槌を打ちまくった。
ドキュメンタリーが好きみたいでした。
ドキュメンタリーが好きみたいでした。
「あれ、なんだこれ…!これもなんだこれだこれ!!」
真っ暗な視界の中でイージーリスニングな害のない話が延々と流れてくる。その間頭は泡だらけでびしょびしょである。犬のようにわしゃわしゃされている。
美容室でおかしな状況があるなあと思って話を聞きに行ったら別のおかしな状況にはまり込んでいる。
ミイラ取りがゾンビになった感じだ。
シャンプーが終わったらマッサージをしてもらった。頭ぽふぽふしたり、
シャンプーが終わったらマッサージをしてもらった。頭ぽふぽふしたり、
指先でリズミカルに叩いたり、
指先でリズミカルに叩いたり、
おでこを抑えて首をぎゅうぎゅうしたり、
おでこを抑えて首をぎゅうぎゅうしたり、
腕を持って上にぎゅーっとしてくれたりした。この一連を全部大きな鏡で見ているのはやはりおかしな感じがある。
腕を持って上にぎゅーっとしてくれたりした。この一連を全部大きな鏡で見ているのはやはりおかしな感じがある。
そして、「先輩」に変わってカットしてもらう。
筆者   :実は今日、美容室を3軒回って〜〜(一連の説明)
美容師さん:マジっすか!?超ヤベェ!
企画にノリノリな美容師さんだった。ありがとうございます。
企画にノリノリな美容師さんだった。ありがとうございます。
筆者   :マッサージって新人の頃に教わるんですよね?
美容師さん:そっすねー。あとは勝手に上手くなっていきますね。たまに仕事終わった後やってもらうとびっくりする時ありますね。
筆者   :でも、自己流だと変なマッサージ覚えちゃったりしませんか?
美容師さん:んー、あんまりないっすね。お客さんから言われて変わったことやる時はありますけど。
筆者   :え、どんなのですか?
美容師さん:えーっと、一回、女のお客さんなんすけど、肘で肩に全体重かけてくれとか言われたことありますね。
再現してみた。指圧師の斎藤さんが「これはただの攻撃ですね」と言っていた。でも程よくやれば肘も「あり」だそうだ。
再現してみた。指圧師の斎藤さんが「これはただの攻撃ですね」と言っていた。でも程よくやれば肘も「あり」だそうだ。
美容師さん :あとなんかあるかなー、ちょっと待ってくださいね。
      (レジにいた美容師さんを連れてくる)
       なんかさー、変わったマッサージしたことある?
連れてこられた美容師さん:えーー、
筆者    :(良い人達だ…!)
散髪そっちのけで変わったマッサージについて話し合うことに。
散髪そっちのけで変わったマッサージについて話し合うことに。
結果、耳の中をシャンプーで洗ってくれ、というお客さんの話と、
結果、耳の中をシャンプーで洗ってくれ、というお客さんの話と、
とにかく手をマッサージしてくれという頭髪からかけ離れたオーダーの話が聞けた。
とにかく手をマッサージしてくれという頭髪からかけ離れたオーダーの話が聞けた。
やはり頭ぽふぽふは、個人の裁量によってやる人はやるしやらない人はやらない、という感じだった。
あと「お店に一応、マッサージのマニュアルはありますね、すげえ古いですけど」ということだった。
ライターのネッシーあやこさんのお知り合いから提供してもらった、マニュアルの画像。頭ぽふぽふは何ッピングなんだろう。
ライターのネッシーあやこさんのお知り合いから提供してもらった、マニュアルの画像。頭ぽふぽふは何ッピングなんだろう。
分かったこと
● 仰向けでたくさん話しかけられながらシャンプーされるのも、すごく面白い
● 顔に乗せる薄い紙は、ちょっと笑うとすぐ飛ぶ
● 顔に乗せる薄い紙は、顔のパーツを動かすと位置を微調整できる
● 顔に乗せる薄い紙は、ちょっと透けてるような気がする
● 美容師さん同士でシャンプーやマッサージをすることもある
● お客さんのオーダーで変わったマッサージをすることもある
切った。もう西日である。
切った。もう西日である。

3軒目

ちやほやしていただきほわーっとした気持ちで街を歩く。
この勢いで3軒目に行ってしまおうと、ホットペッパービューティーで空いてる美容院を探す。
土日の原宿の美容院は予約しておかないと入れないと1軒目の美容師さんに心配されたが、運よく空いてるところがあったので急いで予約をして向かう。

お店に入ると、今までとは違う、むしろ昨日まで想像していたような世界観が完成されすぎたテーマパークばりの内装に迎えられ、完全に気後れしてしまった。
薄暗かった。
薄暗かった。
沈みすぎるソファで、プレーリードッグのように順番を待っていると、奥に座っていた女性がため息交じりに立ち上がり入口のドアを閉めた。

「愚図」

そう思われたことだろう。
!

噛みしめよう。

しばらくぼんやりしていると、大きなハットを被った、腕にタトゥーが見える男性が僕の前で膝をつき「ショータ(仮)でぇす☆」と名乗った。
もう後ろは壁で、これ以上後ずさりできないというところまで気後れしている。
ドキドキしました。
ドキドキしました。
結論から言うと、このお店では頭ぽふぽふの話は切り出せなかった。
ショータ(仮)から繰り出される話題に、害のないあいづちを必死に探しては打つ作業の繰り返しだった。
マッサージはしてもらえなかった。
そういうお店ではないのだ。
分かったこと
● 美容師同士はよく付き合う
● でも仕事に支障が出るので恋愛禁止にしているお店もある
● でも付き合う
● そういうカップルが結婚する時は、すごく言いにくそうに遠回しに報告をしてくるが、聞く側としては「いや知ってたし!」と思う
● 学生時代、もっと楽しんでおけばよかったなと思う時がある
● でももう戻れない
切った。ショータ(仮)、ありがとう。
切った。ショータ(仮)、ありがとう。

「頭ぽふぽふ」とは、なんだったのか

1日かけて調査をしたが、頭ぽふぽふとはなんだったのだか。
分かったことは、「どうやらマッサージらしい」ということと、「やってる人は先輩が教えてくれたからやっている」ということだ。
そしてそもそも、「原宿の美容室はあまりマッサージをしない」ということも分かった。
一日を通して分かったこと
● 頭ぽふぽふはマッサージらしい
● マッサージは先輩から教わる
● 原宿の美容室はあまりマッサージをしない
あと、美容師さんの新人の頃の話、将来の夢の話、面白かったテレビの話、変なお客さんの話、恋愛事情、全部面白かった。
色々話してくれてありがとうございました!
最後に、1日を通して感じた、頭ぽふぽふで笑わないための対策である。
頭ぽふぽふで笑わないためには
● 緊張して「笑っちゃいけない」とか思うとどんどん面白くなってくるので、マッサージまでに美容師さんとうち解けて、笑っちゃっても不審がられないぐらいの雰囲気を作っておけば、結果笑わないで済むと思います。

「袋打の術」といいます

美容室での様子を再現するために斎藤さんの治療院に行ったら、マッサージの教科書のような本を開いて頭ぽふぽふについて教えてくれた。
「袋打の術」というのだ。
理気止痛(気を整えて止痛する)や鎮静安神(精神を鎮静してやすませる)の作用があるらしい。
今まで僕は、「精神を鎮静させる」マッサージをされながら、それが面白くってしょうがなくなっていたのだ。
「これは肩とか背中とかにやるものだと思うんだけど…」とのことでした。今まで特殊なマッサージを受けてきたようだ。
「これは肩とか背中とかにやるものだと思うんだけど…」とのことでした。今まで特殊なマッサージを受けてきたようだ。
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