とくべつ企画「○○丼と○○ライス」 2017年3月6日
 

そろそろヤギ丼の時代ではないか

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※この記事はとくべつ企画「○○丼と○○ライス」の1本です。
大阪出身。沖縄に流れ着いて10年ぐらい。「ぱちめかす」という沖縄方言が、やることと響きのギャップがあって好き。

沖縄の肉といえば「鳴き声以外は全部食べる」と言われる豚肉と、「年に1人は食べ過ぎておっさんが病院に搬送される」と言われるヤギ肉である。病院に搬送されるのは、ヤギだけが悪いのではなく一緒に冷たいもの(おそらく泡盛の水割り)をとりすぎると胃の中でヤギの脂が凝固してしまうらしいのだが、これは噂にすぎず本当かどうかはわからない。
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沖縄には妊婦がヤギを食べるとお産が早まるというジンクスもある。
本当かどうか確かめたら翌日産まれた。
写真は「妊婦が山羊汁を食べるとお産の日程が早まるのか?」(DEEokinawaより)。

さて、今回我々が提唱したいのは『ヤギ丼』だ。
牛肉を用いた牛丼、鶏肉を用いた親子丼は言わずもがな、北海道帯広地方の名物である豚丼も最近ではチェーン店で提供していることもあり一般的になった。しかし、ヤギに関していえばもっぱらヤギ汁にするか刺身で食べるばかりで『丼』がないのである。牛豚鶏と同じ畜肉なのに、これではあまりにもヤギが不憫ではないだろうか。日本人にとって庶民的な親しみのある丼料理へと昇華させることによって、ヤギ肉の地位向上、消費拡大を狙えるのではないかと考えたのだ。

ヤギ肉を探して

さっそくヤギ肉を買いに市場へ。
まずは那覇の栄町市場。
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ここは日中は地元の人が利用するお肉や野菜などをメインにした商店や惣菜店が賑わい、夜は居酒屋やバーなど若い人で賑わう面白い場所である。
しかし、精肉店に行ってヤギ肉が欲しいと言うと「ない」という答え。5年ほど前まではヤギ肉を売っているお店もあったが、なくなってしまったそうだ。ただ「牧志の公設市場にはあるよ!」と教えてもらったので、車で10分ほどの那覇市牧志の公設市場へ行ってみることに。

公設市場である。
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まずは近くにいたおばさんに聞いてみると「公設市場でヤギ肉を扱っているのは1店舗だけ」。そしてそのヤギ肉を扱っているお店に行ってみると「ヤギ肉は扱っているけど、注文が入り次第の発注だから今はない」という答え。
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ヤギの刺身は1キロ1万円

困った。
ヤギ丼を作りたいのにヤギ肉が(すぐには)手に入らない。

冷凍ならもしかしたら、ということで市場近くのスーパーへ。
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冷凍のヤギ肉があった

お店の人にヤギ肉は売れないのか聞いてみると「ぼちぼちは売れる」ということであった。ぼちぼち。
たしかにヤギ肉を家で調理したことはない。お店で食べるか、レトルトのヤギ汁を温めるかぐらいである。
沖縄の人にとってもヤギ肉は遠い存在になっているのでは…そんな不安を持ちつつ、買って来た食材でヤギ丼を作りたいと思う。

ヤギ刺丼

まずはヤギ刺丼を作る。
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ヤギは獣臭が強いので、ヤギ汁にするときはヨモギとすりおろし生姜を添えるのが一般的。
ヤギ刺丼にも同じくヨモギと生姜を添えたい。
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冷凍のヤギ肉を切る。お店で食べるヤギ刺はもっと薄い気もするが、家庭の包丁ではこの薄さが限界だ。
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ご飯の上にヨモギを敷き詰め、ヤギ刺を置いて千切り生姜を添えれば完成だ。

ヤギ肉丼

続いてはヤギ肉丼。
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焼肉丼、やき肉丼、ヤギ肉丼。
レシピの考案方法が言葉の響きだけである。
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ヤギ刺丼用よりも厚く切ったお肉(上)を
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焼肉のたれで焼いて
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サニーレタスと青ネギを添えて完成。

鶏とヤギの完璧な他人丼

最後はヤギ汁を煮詰めて卵でとじる、ヤギと鶏の卵のまったくの他人丼である。
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冷凍のヤギ肉ではそんなに感じなかった獣臭が、レトルトのヤギ汁パックからはものすごい勢いで放出される。
部屋が一気にヤギ臭くなった。
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煮詰めに煮詰めて…
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卵でとじた。これは料理と言えるのだろうか。
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完成!

ヤギ丼の時代は来るのか

ということで3品のヤギ丼が完成した。
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美味しそうだ。

それぞれ食べてみたい。

ヤギ刺丼

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うーん・・・・・・・。
獣臭はないけれど肉の旨味も感じられない。刺身だけで食べるとそれなりに美味しいのに、ご飯と一緒に食べることでヤギがなくなったかのようだ。
あと噛んでも噛んでもなくならないので、顎まわりの筋肉の鍛錬にはいい。
これは丼としてアリかナシかでいえばナシである。

ヤギ肉丼

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ぐぐ。噛みちぎれない。
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まず言いたいのは「カッタイ!」。
焼肉っぽく厚切りにしたのが裏目に出て、肉の弾力が半端ないのだ。
あまりの硬さに一緒に食べたはずのごはんはすぐになくなり、あとは肉を永遠に噛まなければいけない苦行に入る。
唯一焼肉のタレの味が美味しいのと獣臭がないのが救いだが、そうなるとヤギ肉でなくても良いという事実。
残念だが、これも丼としてナシだ。

鶏とヤギの完璧な他人丼

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美味しくなさそうな顔になっているが、そこそこ美味しい。
もともとがレトルトのヤギ汁だったので、肉も柔らかく、味も濃厚で染み渡っている。
が、煮詰めすぎて少し塩辛いのと、ヤギ骨が残ったままだったので油断をすると口を怪我しそうだ。
「ヤギより豚か牛がいい」とも思ったが、前出の2品と比べれば可能性は十分感じられる。
ヤギ丼としてはこのレシピがもっとも有力だ。

ヤギ丼の時代は遠いのかもしれない

というわけで新時代を担う(はずだった)三種類のヤギ丼を作ってみたわけだが、まあまあアリかなという線でも「鶏とヤギの完璧な他人丼」だけという残念な結果に終わってしまった。しかもレトルトの山羊汁をベースにしているので、我々の調理スキルが結果に大きく影響している感も否めない。
古来よりヤギ食文化のある沖縄でも、現代の一般家庭においてヤギ肉が日常の食卓にのぼることがほとんど無い理由がなんとなくわかった気がする。 切るときはとにかく薄く。もしくは徹底的に煮込んで。それがヤギ肉を調理する時の鉄則のようだ。

とはいえ、高タンパク低カロリーで通にはたまらない野生の旨味が楽しめるヤギ肉。今後、もっと手軽に美味しく調理できる技術が確立されることを期待して本日は箸を置きたいと思う。

そしてこれらを全て食べ終わる頃には全員、あごがガクガクになっていたことを付け加えておきたいと思う。
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