特集 2017年3月9日

なるとから「ぬ」を出す

なるとが「の」にならない切り方をさぐる
なるとが「の」にならない切り方をさぐる
近所で食べたタンメンに円錐状にカットされたなるとが入っていた。
円錐状にカットされたなるとの模様は「の」ではなく、不思議な線を描いていた。

なるとが「の」になるのはひとつの面でまっすぐ切った場合だけである。
複雑な形にカットすれば、別のひらがなが出てくるのではないか。
そう、「ぬ」だって不可能ではないのではないか!
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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6人の叡智を結集

企画会議でなるとから「ぬ」を出したいと話したところ、挑戦したいというライターが集まった。そのようすは2月にニコニコ生放送で中継したが、今回はその結果を文章でお知らせしたい。
なるとを切る6人を中継してしまった
なるとを切る6人を中継してしまった
しかしなるとの入手が難しかったのだ。池袋・新宿のデパート4軒を回ったが、なるとが売ってない。
デパート地下の練り物屋さんはエビやチーズが入ってますみたいなしゃれたものばかりだし、なるとは正月のみの販売と言っていた。
「なるとは季節もの」
今日ひとつめの教訓である。

結局なるとは会社の下にあるスーパーに大量にあり、こんなときに青い鳥の比喩はいらんのじゃ、と思わず広島弁になった。
見つけたときは声が出るぐらい嬉しかった
見つけたときは声が出るぐらい嬉しかった

机上の空論

集まっての「ぬ」を出す大会の前に練習してみた。それでわかったことは「偶然でぬは出ない」ということである。狙っていかないとぬは出ないのだ。
木から仏像を彫ることを、木の中に仏様を見つけると表現した人がいるらしいが、まさにそれだ。ぬを彫るのではなくて見つけるのだ。
なるとのなかにある赤い部分を描いたもの。どういう面で切るとどこが削られるのか考える
なるとのなかにある赤い部分を描いたもの。どういう面で切るとどこが削られるのか考える
考えた結果、「ぬ」の交差している部分はどうやっても出ないのではないか、ということに気づいた。確かにそうかもしれない。
しかしこのあと、コペルニクスもトリプルアクセルぐらいの大転換で「ぬ」が出るのだ。

ノーマルアプローチ

まずは断面を工夫して「ぬ」を出そうとするアプローチ。「ぬ」でないが意外な文字が次々と出てくるのだ。
もしかしたら次当たり出るかも!と宝くじの2桁違い(要は外れ)みたいな気持ちになって期待してしまう。
「ル」
「ル」
「る」
「る」
「西」? まさかの漢字出現にざわめく参加者
「西」? まさかの漢字出現にざわめく参加者
ちょっと「ぬ」に近づいてきてないだろうか?
ちょっと「ぬ」に近づいてきてないだろうか?
複数の面を組み合わせてカットすると思いもしない形が出現する。なるとのなかにこんな豊かな世界が隠されていたなんて。
自分たちの無知さを感じる。なるとで。

歪ませるという発明

なるとは柔らかいので、外側から力を加えて線を曲げることができる。
向かい合う断面を並べることができる
向かい合う断面を並べることができる
握って出てくる「る」
握って出てくる「る」
非ユークリッド幾何学である。よくわかってないうえに調べないで書いているので完全に雰囲気で言っているが。
べつやく目みたいなのもなるとのなかにあった
べつやく目みたいなのもなるとのなかにあった
そしてこの歪ませる方法での到達点はこのライター北村さんの作品である。
「ぬ」だ。「ぬ」が出てきたぞ。
「ぬ」だ。「ぬ」が出てきたぞ。
奥に続く赤い線を開いて「ぬ」の斜め線にしたところが発明である。ノーベル「ぬ」賞があれば受賞確実だ。

なるとを再構成する

いったんなるとを解体してしまい、ぬとして再構築してしまう方法にも気づきはじめた。開始30分でポストモダン入ってきた。
ライター伊藤さんは最初から赤い部分だけを切り出すという方法
ライター伊藤さんは最初から赤い部分だけを切り出すという方法
できちゃったかも!と言って立ち上がった
できちゃったかも!と言って立ち上がった
できてない
できてない
改良作
改良作
ほかの参加者からは「気持ちは分かるけど、おちつけ」との声があがった。さんざん「ぬ」の前で挫折した後だとこれでも十分「ぬ」に見えるのである。

この再構築の手法でいちばんぬに近づいたのはこれだろう。
けっこうな「ぬ」である。
けっこうな「ぬ」である。
実はこの「ぬ」スライスしたなるとを組み合わせているのだ!
実はこの「ぬ」スライスしたなるとを組み合わせているのだ!
さらに横にカットして、なるとの赤い部分をドットにしてドット絵の「ぬ」を作るという案も出たが、それはさすがに倫理上の問題があるのではないかという議論になったために見送りとなった。
(なるとを細かく切るの大変だし)

飾り包丁的なアプローチでも「ぬ」が出てきた。
ガッタガタだけど、「ぬ」に見える。「ね」ではないかという声も
ガッタガタだけど、「ぬ」に見える。「ね」ではないかという声も
しかし斜め線は赤ではなく、溝でもよかったのだ。ぬを作りたいとき、すべてを赤で表現しなくていいというのはメモしておきたい事項である。

早すぎた「ぬ」たち

ライター伊藤さんは「ぬ」の形の穴を持ってきた。
ぬ型
ぬ型
中が渦巻きでも輪郭がぬになっていたら「ぬ」に見えるはず、という理屈である。目の錯覚でそういう話を聞いたことがある、ような気がする。
ここに無理矢理なるとを通す。
その結果は!
まったく見えず
まったく見えず
惜しさがみじんもない結果がむしろ清々しい。冷戦中に極秘に開発されていた奇妙な航空機を図鑑で見ているようだ。
裏から見るとかわくなっちゃっているし
裏から見るとかわくなっちゃっているし
渦巻きを開いて赤い板にして彫るという方法もある。
しかし今となっては無難さすら感じる
しかし今となっては無難さすら感じる
むしろこれぐらい企画意図を間違っているほうがいい
むしろこれぐらい企画意図を間違っているほうがいい

なるとからぬは出せる、空も飛べる

以上、わずか1時間半の放送ではあったがいくつかの「ぬ」を出すことが出来た。結論としては
なるとから「ぬ」は出る。
である。

より難易度の高い「む」や「薔」「而」などの文字も今後挑戦してしていきたい。いや、どうかな。
なるとは全部ラーメンに入れて食べました。ちょっとしょっぱい。
なるとは全部ラーメンに入れて食べました。ちょっとしょっぱい。
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