フェティッシュの火曜日 2017年3月14日
 

ライターインタビュー「記事を書く人生とは」

時には橋から飛び降りるのもライターの仕事
時には橋から飛び降りるのもライターの仕事
デイリーポータルZには現在40名ちょっとのライターが執筆中でして、月にひとりあたり1〜3本ほどの記事を書いてくれています。

専業のフリーライターもいるし、平日は別の仕事をしながら土日に原稿を書いている兼業ライター(会社員から学校の先生、居酒屋の店主までさまざま)もいます。40人のいろんな大人たちが日々「なんか面白いことねぇかな〜」と自宅のキッチンから海外までいろんなところを毎日ウロウロし、その名珍場面集を毎日3本の記事にまとめたものが、このデイリーポータルZというわけです。

記事を書く人生

今回、そんな40人の大人達に、ライターとして記事書き続けるのってどうですか、というインタビューをしてみました。

というのも、もともと、いま募集中のデイリーポータルZ新人賞にたくさん投稿してもらうために「記事を書くのって楽しいですよ」という話を集める予定だったんです。しかし、聞いてみるとどうも記事を書く/書かないの話だけじゃなく、生き方のレベルでライター業が影響を及ぼしていることがわかってきました。

この記事では2本のインタビューと、アンケートの回答により、「記事を書く人生」について浮彫りにしていきたいと思います。
ケース1
西村まさゆき(フリーライター)
安藤昌教(編集部・ニフティ社員)
インタビュアー:編集部 石川

取材で遺書を書く

――先日、「ライターになってよかったことありました?」って聞いたら、西村さんが「普段行けないところに、取材で行けること」って

西村:何個かあるんですけど、ぱっと思いついたのがそれで

安藤:西村さんとはずいぶんいろんなところに行った気がするな。
バンジージャンプに行った茨城で前日の夜、一緒に遺書書いたの覚えています。家族に。


西村:遺書っていうか、遺言ですね。あれ、生々しすぎて記事に書かなかったんですけど

安藤:墨で書きました。
あれもライターやってなかったら行かなかったな
バンジージャンプする西村さん
バンジージャンプする西村さん
――その遺書どうしたんですか

西村:家にありますよ

安藤:おれたぶんまだ持ってますよ

――今後まだ取材で死ぬ可能性あるから?

西村:そう。

安藤:なぜかそのとき、西村さんと同じ部屋だったんですよ、泊まるのが。
なんだったんだろう、あれ


――墨はどうしたんですか?

安藤:遺書書くからっておれが買っていった気がします
書くだけ書いて西村さん記事で使わないから、普通に遺書書いたみたいになった


西村:写真あった
西村さんが書いた遺書
西村さんが書いた遺書
――なんで遺言の最後にオチつけるですか(笑)

西村:落ちる取材だけに、オチをつけたんでしょうね。

――はい。

ライターは背中を押してくる

西村:いやでもね、バンジージャンプって、たぶんライターやってなかったらやってなかったなー

――やらないですよね。安藤さんはやってたタイプかもしれないけど

安藤:僕は一般人のころにやりましたよ

――あ、やっぱり

西村:バンジージャンプは、ぼくの興味だとギリギリなんですよ。やる、やらないの。
そこでライターやってると、背中押してくれる。


安藤:仕事だし、って

――あー、境界線上にあるものをやらせてくるっていうか

西村:バンジージャンプだけじゃなくて、なんでもそう

安藤:ガンジス川で泳いだのも勇気いりました
あれもライターだからですよね


西村:インド。そう。

安藤:「泳いでみないとわからないことがある」って。
病気になるって言ってんのに


西村:パンツ一丁で。水がね、ちょっとしょっぱいんですよ

安藤:よこで子どもがおしっこしたりしてますからね

――出所の分かるしょっぱさですね
ガンジス川にて
ガンジス川にて
安藤:でもバンジーにしろガンジスにしろ、西村さんは躊躇がない気がするんです
ライターだから、っていう後押しがあるからか


西村:そうですよ
「ここでガンジス川はいっとかないと」って


――プロ意識なのか

安藤:でも、べつにガンジス川入っても記事にしなかったです
ただ入った


西村:そうですね

――「ガンジス川に入る」っていう企画じゃないんですか

西村:あのね、めちゃめちゃ気持ちよさそうなの、沐浴してるインド人

――もうなんか「企画だから」とかじゃなくて、人生レベルで気が大きくなる気がしますね。ライターになると

西村:そう、気持ちが大きくなりますよ

安藤:きっかけとして「デイリーのライターやってるからには」、っていうのはありますね

――攻めに入るっていうか

安藤:オモコロに先にやられる前に、みたいな

西村:そこはね、常に意識の下には

――今ネタに使わなくてもめぐりめぐっていつか使えるかもしれない、みたいなのは?

安藤:そうですね、人の記事読んで、あ、これならおれもやったことあるよ、記事にしてないけど
って言いたいだけかも


――記事で余談入れたい時に「以前ガンジス川に入った時も」とか書いてあるとちょっと格が違う感じがしますよね

西村:なんでも、経験はしときたい。

安藤:でもあと、東北の鬼とかは、見とかないといつかなくなっちゃいそうで。
今のうちに行かなきゃっていう使命感みたいなものもありますね


――民俗学者みたいなことになってますね
東北の鬼、アマハゲ
東北の鬼、アマハゲ
安藤:北海道の秘境駅行ったときは本当にそう思いました
これ、すぐなくなるぞ、って


西村:いやほんと、それはライターになってから強く思うように。いつかやろうとか、いつか行くから、っていう「いつか」って絶対来ないから、自分で企画してやったりいったりしないと。

安藤:自分じゃ行かないですよね。家族旅行で秘境駅いかないもの

――TODOリストの優先度の低いところをすごい勢いで消化してる感じでしょうか

西村:できることから、かたっぱしからやってる感じはありますね。

情報発信してない人に会いたい

安藤:でも東北に鬼見に行くとさ、いるんですよね、家族で来てる人が。ライターでもないのに

――「ライターでもないのに」(笑)

西村:いましたね。

安藤:記事も書かないのに来るんだ、って思う
ディズニーランドとかならわかるけど、鬼ですからね
あの動機はなんだろう?


――ツイートくらいするのかな。instagramアップしてるかもしれないですね。鬼にフィルターかけて

安藤:いや、記事書いたりTweetしたりしてるのってたぶん一握りですよ
みんな好きで行って何もアウトプットしないで帰っていくんだと思う


西村:すごいことしてるひとって、情報発信してなかったりすることあるじゃないですか
そういう人に会いに行くってのも、ライターになってよかったと思うことのひとつですよ


――例えば?

西村:ファミマの入店音作曲したひととか
ファミマの入店音にも使われるチャイムの作曲者、稲田康さんにインタビューする西村さん
ファミマの入店音にも使われるチャイムの作曲者、稲田康さんにインタビューする西村さん
――ポップ体の人とか

西村:それこそ、バンジージャンプのときのボラのおっちゃん
あのひと情報発信してないのにすごいんですよ

(編集注:ボラの大量発生を見に行った時に出会ったおっちゃん。その後バンジージャンプに誘われて行ったり家に遊びに行ったりと記事3本にわたって登場。家に露天風呂と滝とゴルフコースがある。)

安藤:ぜんぜん有名じゃないのにおかしい人ですよね
ボラが大量発生してたときに…


西村:さいしょ、僕が偶然出会って。
バンジージャンプに誘われて、それで行ったんです
ボラのおっちゃん、バンジーしてもらえばよかったかなー


安藤:危険ですよね、それこそ
本人はやりたそうだったけど


――こういう人を世の中に紹介できるのもライターの醍醐味?

西村:そうですね。紹介できるというか、自分が会って話をきいてみたい。っていうのがまず大きいですよね。

安藤:たぶんテレビの番組にはならないと思うんですよ、ボラのおっちゃんは。
そこをとりあげられるのはwebならではかなと


――こういうのって何なんでしょうね。スクープ的な、これ書いたらバズるぞーみたいな感覚とは違うじゃないですか

安藤:そこは単なる好奇心なのかも。人に見せたいというより

情報が勝手に集まる

安藤:西村さん、もしライターやってなくても県境とか行ってましたか?

西村:それなんですよね。行ってたかなー。

安藤:2000mの山までは登らないんじゃないかな

西村:そうですね、山はのぼらなかった。それは確実に言えます。だって危ないもん。

安藤:ライターやってても危なさはかわんないですけどね
でもライターだったら遺書書いてでも行く


西村:そこはやっぱり背中押してくれるんですよ。ライターだからっていう。
あ、あとですね。
特殊な趣味で記事を書いてると、まわりから情報が来るようになるんですよ。


――あー、あるある

西村:だから、特殊な趣味をもった人は絶対ライターになるべき
県境の山も、デイリーで県境の記事を書いてたから「一緒にいきませんか?」ってさそってもらって行けたんで。


安藤:僕のところには「これむかずに食ってみろ」っていう挑戦状みたいなのしか来ないな

――それも、記事書いてなくて急に知らない人から「県境行きましょう」って言われても行かないじゃないですか。取材だと行っちゃう

安藤:「取材です」っていうのはいい言い訳というか理由になりますね

西村:そうなんですよ。取材って言葉ほんとに便利。

安藤:新しいカメラ欲しい時に「取材で使うから」って言って買うから

西村:ぼくは、本を取材のための資料だからって

――あとなんかあって怒られたりしても、プライベートで行ってるのと仕事で行ってるのでダメージが違う

安藤:そうですね、プライベートで怒られると立ち直れないですから

――もうこの趣味やめようかなって思いますよね。取材だとハイ次って感じで

西村:プライベートで怒られるって普通に子供ですね。

安藤:職務遂行のため、しかたなくやってしまって、その結果怒られたんだ、って思えばいい

西村:趣味への情熱が消えづらくなりますね。

――継続するモチベーションになりますしね
県境のためだけに2000mのぼる
県境のためだけに2000mのぼる

家で死ぬよりは県境の崖から落ちて

西村:ぼくは、ライターやめちゃったら多分死ぬから。

安藤:ライターやってても死にそうですけどね
県境の崖から落ちて


――どのみち死ぬなら、ねえ

西村:家で無職で死ぬよりましかなー

安藤:深いところまで来ましたね。これ読んでライターやりたくなる人いるのかな

――踏み外した人の会話かもしれないですね

安藤:後戻りできない人たちの集まりって感じがする

西村:楽しいのは本当にたのしいですよ。会社員時代に比べてストレスはゼロになりましたもん。

安藤:ああ、ストレスはないですね。〆切り以外

西村:あ、〆切ね。〆切のストレスだけあります。
でも〆切りがなくなったらボケるんじゃないかなって思う


ライター生活と同時に、ボラのおっちゃんにかなり影響を受けた人生を歩む二人。
まとめるとこうです。
・やるかやらないかギリギリのラインで、ライターの肩書が背中を押してくれる
・やっとかなきゃという使命感が生まれる
・勝手に情報が集まってくる
・怒られても平気になる
・ストレスはゼロ。ただし〆切以外。
最後にそんな二人に、「これはライターじゃなかったらやってなかった」という記事を聞いてみました。
西村:ジャカルタで「急行日吉行き」に出会う旅</a>
西村:ジャカルタで「急行日吉行き」に出会う旅
「ライトな鉄道ファンなので、ライターになってなかったらわざわざジャカルタまで電車見にいってなかった」
ハイタッチでギネス世界記録を更新しました!</a><br />ライターになっていなかったらギネス取ろうとか思わなかった
安藤:ハイタッチでギネス世界記録を更新しました!
「ライターになっていなかったらギネス取ろうとか思わなかった」

デイリーポータルZ新人賞実施中

みなさま、記事を書く楽しさが伝わっておりますでしょうか?なにぶん最初にインタビューした2人がライター陣屈指のガチ勢すぎましたが、それでも「記事を書いてるとなんか可能性が広がるぞ」という雰囲気は伝わったのではと思います。みんなも記事を書いて人生の可能性を広げよう!ということで記事コンテストのご案内です。
デイリーポータルZの未来を担うライター発掘コンテストです。なんでも経験しときたいあなた、ぜひその経験をブログにしたため、新人賞に応募してください。

 ▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓