特集 2017年3月21日

イカスミ汁を応用して昼でも闇鍋を試みる

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沖縄の汁物にイカスミ汁というのがあるが、真っ黒なので具材になにが入っているのか分からない。これを応用すれば明るい日中でも闇鍋が楽しめるのではないだろうか。
大阪出身。美味しいものと猫には目がない永遠の離島トラベラー。泡盛好きが高じて泡盛マイスターの資格を習得。最近のお気に入りは『時雨』。

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沖縄に「イカスミ汁」という郷土料理がある。これはシルイチャー(白イカ)というイカの墨を汁に溶かして、具は豚肉と白イカ、ニガナ(苦みのある葉野菜)などが入った汁物だ。見た目は上の写真を見て頂いて分かるように完全にゲテモノっぽいのだが、しっかりとイカと豚肉の旨味が汁に溶け出していて、なかなかうまい。ちなみに沖縄ではイカスミ汁は「サギグスイ(下げ薬)」と呼ばれ身体の悪いモノを対外に排出すると言われている。

さて、そんなイカスミ汁だが大量のイカスミが汁に入っているために汁は漆黒、丼の中は何が入っているかぱっと見では全然分からない。

…ということはイカスミををうまく使えば昼間の明るい中でも闇鍋ができるんじゃないだろうか。

イカスミで闇鍋を作ってみる

一応闇鍋について補足しておきたいのだが、闇鍋とはそれぞれ参加者が材料を持ち寄り鍋に入れて部屋をまっ暗にして何が入っているかを楽しむ、というものである。色々なやり方はあるようだが、今回はその前提で進めてきたいと思う。
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部屋を暗くする代わりに用意したのがこのイカスミ。
520円。高いのか安いのかわからない。
520円。高いのか安いのかわからない。
沖縄では汁物用にスーパーなどでも普通にイカスミが売られているが、今回は漁港で買ったものでイカスミにを酒、みりんでのばしたもの。これを煮立ててればすぐ汁物が作れるという代物だ。
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まずはイカスミを土鍋に入れて温める。すでに真っ黒だ。
いちゃガリガリ、ジーマミー豆腐、ポチギ、塩せんべい、ふちゃぎ、タンナーファクルー、ポーク、かまぼこ、海ぶどうの9品を用意しました。
いちゃガリガリ、ジーマミー豆腐、ポチギ、塩せんべい、ふちゃぎ、タンナーファクルー、ポーク、かまぼこ、海ぶどうの9品を用意しました。
闇鍋なので、奇抜な具材を用意しようとも思ったのだが、できれば食べられるものを入れたい。悩んだ末に鍋の具材として用意したのは「いちゃガリガリ」(沖縄の固い駄菓子)、ジーマミー豆腐(ピーナッツの豆乳をデンプンで固めたもの)、ポチギ(沖縄でなぜかよく食べられる辛いソーセージ)、塩せんべい(小麦粉で作られたせんべい)、ふちゃぎ(味のない白餅に小豆をまぶしたもの)、タンナーファクルー(黒糖味の沖縄のお菓子)、ポーク、海ぶどうである。
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大きすぎる材料は食べやすく切っておく。
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汁が煮立ってきたので、具材をいれてみたのだが、どうだろう。
汁が黒すぎてピントが合いませんでした
汁が黒すぎてピントが合いませんでした
まさにブラックホール。全く入れた具材が見えなくなった。これは闇鍋としてのポテンシャルはかなりのものなんじゃないだろうか。期待で胸が膨らむ。

どんどん具材を入れてみる。
ジーマミー豆腐
ジーマミー豆腐
ふちゃぎ
ふちゃぎ
塩せんべい
塩せんべい
タンナーファクルー
タンナーファクルー
ちょっと困ったことになってしまった。
調子に乗りすぎた感
調子に乗りすぎた感
水に浮くタイプの具材は表面に浮かんでいる状態で、さすがに何が入ってるか分かってしまうのだ。
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箸でイカスミをかき混ぜて、なんとか存在を隠すことにした。
海ぶどうは
海ぶどうは
最後に一番火が通りそうな海ぶどうを入れて、かき混ぜれば闇鍋の完成である。
すぐいなくなった
すぐいなくなった
ちょっと表面が怪しいが、そこそこ中身は分からなくなった気がする。

明るい場所で闇鍋は成立するのか

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さて、出来上がったイカスミ鍋だが、実際にうまく闇鍋として機能するのだろうか。
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実際に食べて検証してみよう。
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ここら辺の闇鍋のルールがはっきりしないのだが、とりあえずじゃんけんで先攻後攻を決めて、お互い箸にかかった具材を食べていく。
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最初に箸に引っかかった素材は海ぶどうとジーマミー豆腐。
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味の感想:
ジーマミー豆腐は密度があって汁が染み込まないから普通にジーマミー豆腐の味。美味しい。海ぶどうはなんだろう・・・あのプチプチ食感は皆無で(たぶん熱でしぼんだ)茎の部分だけなんかずっと口の中でシャキシャキいってる。味がない。
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続いて後攻。
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鍋に丸のまま入っていたふちゃぎが取れた。
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味の感想:
ふちゃぎだけは取るまいと思ってたんですが鍋の中の大半をふちゃぎが占めていたので自然とふちゃぎが取れました。ちょっと煮込むことによって餅の歯ごたえが皆無でよくわからないモノになってました。砂糖入りなのでちょっと甘いのでそれにも混乱します。


とりあえず、何も考えずに箸を入れてみたのだが、本当に何の具材があたるのか分からない。2人とも何が入っているのかは把握しているので引き上げた時点で自分が取った具材は何なのかわかるのだが、鍋に具を入れる人が別だったらもっと闇鍋として楽しめそうである。
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二回戦。取れたのはカマボコ。

味の感想:
これも普通にかまぼこの味。美味しいよ。ていうかこの闇鍋、口の周りと歯がすごいことになるんだけど。
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後攻はポーク。

味の感想:
当たりの具材があたって良かったです。まあ味は普通にポークです。


二回戦は双方、当たり障りのない具材に。
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三回戦。取れたのは塩せんべい。

味の感想:
にっが!!! なにこれ、めっちゃ苦い。岩手の名物"せんべい汁"みたいなノリでイケるかと思ったんだけど。苦いわ。なんでだろう。
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後攻はタンナーファクルーとポチギ。

味の感想:
ほんとだ!なぜだか知らないけどタンナーファクルーが苦い...!


なぜだか知らないが、お菓子類は苦くなる。イカスミの力なのか何なのかは分からないが、味の変化も闇鍋としては面白いのかもしれない。

ここまで読み進めて頂いてどうだろうか。そう。「イカスミを使えば明るい中でも闇鍋はできる」。しかも結構楽しむことができるのでおすすめである。
固い駄菓子いちゃガリガリはやっぱり固かった
固い駄菓子いちゃガリガリはやっぱり固かった
実際に作ってみてのポイントだが、

・水に浮く素材はわかりやすいので煮込みまくるか、沈む素材を用意した方がよい。
・なぜかお菓子は苦くなる。
・具材が溶け出すとマジでどこに行ったのか分からない


ということが分かったので読者諸賢も参考にして頂きたい。

問題があるとしたら
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イカスミが沖縄県外では手に入りにくいのと 闇鍋は2人でやっても全然盛り上がらない、ということではないだろうか。
もしイカスミで闇鍋をやってみたいという方は大人数でワイワイと、そして具材は持ち寄りでやることをおすすめしたい。

イカスミを使うことで翌日も驚きを

結構スリルはあった
結構スリルはあった

さて、イカスミで闇鍋を作る試みだったがいかがだったろうか。余談だが、イカスミ汁を飲むと翌日のトイレで毎回びっくりする。尾籠な話で恐縮ではあるが、便が真っ黒になるのだ。だいたいイカスミ汁を前日食べたことを忘れているので何か深刻な事態に身体が陥ったのではないかと結構焦る。このびっくりも含めてイカスミ闇鍋を沖縄名物としてPRしていきたいと思う。
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