特集 2017年4月28日

魚醤を舐め比べてみた

各地の魚醤を舐め比べます。
各地の魚醤を舐め比べます。
魚を塩漬けにした際に出てきた汁を発酵、熟成させて作る魚醤。醤油と同じように食べ物にかけたり、調味料として料理に使われたりします。

今回は様々な材料で作られた魚醤を舐め比べてみます。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

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> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

4種の魚醤舐め比べ

今回用意したのは以下の4社の製品。

・イワシの魚醤 よしる
・イカの魚醤 いしる(いしり)
・ハタハタの魚醤 しょっつる
・タイのイワシの魚醤 ナンプラー

それぞれ少量器に入れて舐めてみて味の違いを比べてみます。
物によって色がかなり違う。
物によって色がかなり違う。
魚醤は日本をはじめ、中国や東南アジア諸国で多く作られ、今回用意した物のほか、香川県のイカナゴ醤油、ベトナムのニョクマムなど各種あります。

その歴史は古く、紀元前から。古代ローマでもガルムといわれる魚醤が多く使われていたとされています。基本的にどの魚醤もクセの強い香りや味があり、塩分も強いです。

イワシの魚醤 よしる

最初の魚醤は石川県より。イワシの魚醤の「よしる」です。
材料や地方によって言い方が微妙に違います。
材料や地方によって言い方が微妙に違います。
いわしを長期間塩漬けにして発酵させて作る魚醤です。この後に出てくるイカの魚醤「いしる」も石川の物。能登地方には、いしる、いしり、よしる、よしりなど、材料や地方によって魚醤の名前が微妙に変わります。
比較的薄い茶色。薄口醤油ぐらいか。
比較的薄い茶色。薄口醤油ぐらいか。
香りはたまり醤油に鰹節を沢山加えたような感じ。結構強く香ります。
うわー、しょっぺー!
うわー、しょっぺー!
舐めてみるとダシの味が強い濃い醤油といった味がします。かなりしょっぱい。ただし塩味そのものは柔らかく、旨味も強いです。通常の醤油よりも当たりは優しい感じがします。刺身には醤油よりも合うかもしれません。

ただ、そのまま舐めるには非常にしょっぱいです。
香り ☆☆
旨味 ☆☆☆
しょっぱい度 ☆☆☆☆☆☆

イカの魚醤 いしる

2番目は同じく石川県から。イカの魚醤「いしる」です。
鍋物や漬物で結構使います。
鍋物や漬物で結構使います。
色々調べると、本来「いしる」は輪島地方のサバやイワシを使った魚醤。イカを使ったものは能登地方のもので「いしり」と言われているようです。
原材料はイカとなっています。
原材料はイカとなっています。
こちらの製品は石川県のメーカーの物ですが、原材料がイカと書いてあるので、ここではイカの魚醤「いしる」としておきます。
イワシの魚醤よりも色は濃い目。
イワシの魚醤よりも色は濃い目。
イカの魚醤だけに干したスルメイカの香りがします。色はかなり濃いです。
うーん、しょっぺー!
うーん、しょっぺー!
舐めてみるとスルメを漬け込んだ濃い醤油といった感じです。旨味が強く、イカの風味も強い。この風味が魚を使った鍋物などに入れると大変美味しいのですが、そのまま舐めるには非常にしょっぱいです。
香り ☆☆☆☆
旨味 ☆☆☆
しょっぱい度 ☆☆☆☆☆☆

ハタハタの魚醤 しょっつる

3番目は秋田県から。ハタハタの魚醤「しょっつる」です。
鍋以外にスープに入れたり、ドレッシングに使ったりしても美味しい。
鍋以外にスープに入れたり、ドレッシングに使ったりしても美味しい。
ハタハタを使った郷土料理「しょっつる鍋」でもその名を知られている秋田の名産品。最近ではハタハタ以外にアジやイワシを使った物もあるようです。
色は薄く澄んでいる。
色は薄く澄んでいる。
香りは先の二つと比べてかなり穏やかです。色も薄い。
いやー、しょっぺー!
いやー、しょっぺー!
舐めてみると、薄口醤油に魚の旨味を沢山入れた感じです。角がなくまろやか。鍋物に合う味ですが、これに七味を入れて白身魚や餃子と合わせても美味しそうです。旨味がいいですが、そのまま舐めるには非常にしょっぱいです。
香り ☆☆
旨味 ☆☆☆☆
しょっぱい度 ☆☆☆☆☆☆

タイのイワシの魚醤 ナンプラー

最後はタイから。イワシの魚醤「ナンプラー」です。
タイ料理には欠かせない。
タイ料理には欠かせない。
日本の醤油と同じくタイでは欠かせない調味料。タイに行けばどこのレストランでもテーブルに常備されているそうです。
色は薄い茶色。
色は薄い茶色。
香りは同じイワシをつかった「よしる」に近いが、それよよりも軽く爽やかな感じです。なんとなくエスニック。
ひやー、しょっぺー!
ひやー、しょっぺー!
味も比較的よしるに似ていますが、かなりライトな感じです。ただ、旨味は強い。辛味の利いた料理にもこの旨味なら合うでしょう。レモン汁やオイルなどを足してドレッシングとすると美味しいですが、そのまま舐めるには非常にしょっぱいです。
香り ☆☆☆
旨味 ☆☆☆
しょっぱい度 ☆☆☆☆☆☆

魚醤はそのまま舐めるものじゃない

魚醤は料理に使うには旨味やその独特の風味が美味しいのですが、そのまま舐めるにはちょっと厳しすぎました。全部かなりしょっぱいです。

主に鍋物の季節に使われて終わる事の多い日本の魚醤ですが、みりんや昆布と混ぜて漬け汁として野菜を漬けると美味しい漬物になります。また、レモン汁や柚子果汁とオリーブオイル、黒胡椒などを混ぜ、ドレッシングとして野菜や肉や魚にかけても美味しいです。

冷蔵庫の奥で眠ってしまっている、鍋の季節しか使わなかった魚醤に活躍の場を。
いしるを使ったカブの漬物。いしるの風味が後を引くうまさです。日本酒に合います。
いしるを使ったカブの漬物。いしるの風味が後を引くうまさです。日本酒に合います。
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