特集 2017年5月1日
 

若者が集まる昭和アイドルオフ会を見に行く

生まれた時代を間違えた人たちの集いを見に行く
生まれた時代を間違えた人たちの集いを見に行く
高校生や大学生が集う昭和アイドルのオフ会があるらしい。主催者とたまたま知り合い、見に行かせてもらうことになった。

高校生だと21世紀生まれで、昭和が終わって十数年経ってから生まれた人たちだ。どういう経緯で昭和のアイドルのファンになったんだろう。オフ会ではいったい何をやってるんだろう。
島根県生まれ。毛糸を自在に操れる人になりたい。地元に戻ったり上京したりを繰り返してるため、一体どこにいるのか分からないと言われることが多い。プログラマーっぽい仕事が本業。
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マンガきっかけで知ったオフ会

オフ会を見に行く前に、ひとつ紹介したいマンガがある。週刊スピリッツで連載中の「スローモーションをもう一度」。

主人公は、80年代の文化が好きな男子高校生(大滝くん)。普段は同級生と無理に話を合わせ、本当の自分の趣味は隠している。うわべだけの付き合いにつまらなさを感じつつ生活してたが、クラスのある女子(薬師丸ちゃん)が自分と同じ80年代好きだと判明し……!? というようなストーリーだ。
こちらが「スローモーションをもう一度」
こちらが「スローモーションをもう一度」
私もわりと80年代の文化が好きなこともあり、このマンガに出てくる歌やおもちゃも含めて、楽しんで読んでいる。
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2月にこのマンガがテーマのトークイベントを見に行ったのだが、そのときに登壇者に質疑をしたひとりがこのオフ会の主催者だった。

その流れで出たのが、

「このマンガのように、表向きには自分の趣味をあまり言ってないけど、80年代好きな若者がSNSにはいっぱい居る」

という話だ。会場がざわめいた。

そしてその後、その「若者たちが集うというオフ会」を見学をさせてもらうことになった。
この南野陽子のコンサートTシャツを着てるのが20歳の大学生・Canaryさん(顔出しNG)。「若者の昭和アイドルオフ会」の主催をやってる。
この南野陽子のコンサートTシャツを着てるのが20歳の大学生・Canaryさん(顔出しNG)。「若者の昭和アイドルオフ会」の主催をやってる。
主催者のCanaryさんの場合は、

「元々古い音楽が好きで、最初はオフコースから入ったが、高校生の頃から80年代のアイドルに興味を持つようになった。」

「友人もだいたい何かしらのマニアが多いので、自分の趣味も認められてる。」

というが、他の人たちはどうなんだろう。きっと色んなパターンがあるはずだ!

カラオケの集いを見に行く

そもそも普段どんなオフ会をしているかというと、

・古めの喫茶店に行ったり
・レコード店をめぐったり
・昭和しばりのカラオケをしたり

という感じらしい。

見学させてもらう日の活動内容を聞くと、
「朝から夕方まで延々と若者が古い曲を歌うという謎な光景が展開されると思います」

と言われた。「延々と」か。
カラオケ屋に見にきた(中二階っぽいスペースがある部屋)
カラオケ屋に見にきた(中二階っぽいスペースがある部屋)
「昭和アイドル」というワードで人を集めてるので、80年代だけとは限らない。70年代好きの人も集まる。

「若者」というしばりはなく、色んな世代が入り混じる会のときもあるらしい。世代が幅広すぎるので、去年から「平成生まれ限定」という会が開かれるようになった。
カラオケ大会は細かくスケジュールが組まれてた
カラオケ大会は細かくスケジュールが組まれてた
参加者をつのるときに「若者=平成生まれ」としてるが、20代後半は少なく、22歳以下になるとドッと人数が増えるらしい。この日も15〜22歳が10名程度だ。

なんでその年齢層が多いんだろう? という疑問を投げかけたら、「リアルタイム世代の人が、自分の子どもに影響を与える(洗脳する)パターンが多いからでは?」 と返ってきた。

な、なるほどー!
参加者によって好きなポイントが多少ズレるから、序盤はみんなが知ってそうな曲を入れるようにするらしい
参加者によって好きなポイントが多少ズレるから、序盤はみんなが知ってそうな曲を入れるようにするらしい

高校生に話を聞いてみよう

参加者の中でも若い、高校1年生と2年生のふたりに話を聞いてみよう。

まずは高校2年の、ののこさん。
ご両親によって、小さいころから80年代の曲を聴かされるなどの英才教育をされてきた。
ののこさん。今の流行についても知ってるし、ブルゾンちえみのモノマネもする! と言ったら、みんなから「ちえみって堀じゃないの?」という声があがってた
ののこさん。今の流行についても知ってるし、ブルゾンちえみのモノマネもする! と言ったら、みんなから「ちえみって堀じゃないの?」という声があがってた
当時の曲はずっと何気なく耳にしてはいたが、中2ぐらいのころ、お母さんが昔聞いてたカセットテープが出てきて、それを聴いた途端、バーーーン!!!! と覚醒した。
これがその問題のテープ(イラストは当時流行った「レモンヴィレッジ」というキャラ)。そのとき聴いたのは、松田聖子の「レモネードの夏」
これがその問題のテープ(イラストは当時流行った「レモンヴィレッジ」というキャラ)。そのとき聴いたのは、松田聖子の「レモネードの夏」
当時のグッズもいっぱい持ってきてくれた。自分で買ったもののほかに、両親それぞれの実家にあったのを譲り受けたものもある。

ちなみにご両親は46〜7歳で、80年代に10代だったドンピシャ世代。 娘がこんなに自分たちの若いころの文化に興味を持ってくれてるなんて、さぞかし喜んでるのでは? と思ったら、「喜ぶけど、色々聞きすぎてたまにウザがられる」らしい。
ブロマイドやタレント大百科は、最近自分で買ったもの
ブロマイドやタレント大百科は、最近自分で買ったもの
お父さんが好きだったおニャン子の本や当時のポスター。ふろくのカレンダーは、オススメの「トシちゃんの変なポーズ」を開いてくれた
お父さんが好きだったおニャン子の本や当時のポスター。ふろくのカレンダーは、オススメの「トシちゃんの変なポーズ」を開いてくれた
グッズに関しては、こんなふうに「この世代の親から、子が譲り受けるパターン」はどうやら多そう。

もうひとりの高校生……というか、取材をしたときはギリギリ中学生だったが、「お母さん(71年生まれ)が光GENJIの追っかけだった」という増田くん。
中森明菜のテレカを持ってるが、そもそも興味を持ったのが「2015年の紅白に出てて、ヤバいなと思った」って、えっ! そこからか
中森明菜のテレカを持ってるが、そもそも興味を持ったのが「2015年の紅白に出てて、ヤバいなと思った」って、えっ! そこからか
増田くんは、80年代というよりむしろそれ以前への方が興味が強い。

確かにカラオケの選曲がめちゃめちゃ渋かった。「高校三年生」や「越冬つばめ」や「また会う日まで」などを、すごい声量で歌い上げていた。
カラオケは70年代多め。60年代も興味あるらしい。
カラオケは70年代多め。60年代も興味あるらしい。
親も生まれてないような時代の歌に興味を持ったきっかけを聞いたところ、

小3のころに震災が起きて、テレビに坂本九の「上を向いて歩こう」がよく流れるようになった。

それを見て「これは誰だ!?」と気になり、動画を見るようになり、そこから入った。それが小4〜5ぐらい……って、へぇぇ〜そんな流れで!

ついでに言うと、昭和初期(藤山一郎とか)にも興味があって、それは国民栄誉賞について調べてた流れで入った……って、どこにでも入口あるな!
……という渋い話をする一方で、通学カバンの時間割を入れるところに入れてるブロマイドを見せてくれた。気分によって入れ替えるらしい。
……という渋い話をする一方で、通学カバンの時間割を入れるところに入れてるブロマイドを見せてくれた。気分によって入れ替えるらしい。
ブロマイドについては、結構みんな持ってて(オフ会でみんなで買いに行くときもある)主催のCanaryさんも、筆箱に入れてるという写真を見せてくれた。
「勉強でつらいときとか、この奈保子ちゃんを見て元気出してます」とのこと
「勉強でつらいときとか、この奈保子ちゃんを見て元気出してます」とのこと
そのほかに、参加者に共通してるのはみんな「動画(Youtube)を見て覚えた」という点だ。すごく気になるものを見つけると、芋づる式にどんどん詳しくなる。

フリを完璧に覚えてる人も何人かいて、踊れる曲では踊りつつ歌ってた。(撮影NGだったので写真はない。)

リアル「大滝くん」みたいな学生たち

マンガの主人公「大滝くん」がリアルに出てきたみたいな、「表向きには自分の趣味をあまり言ってない若者」は、今回の参加者の中にもいた。

普段はまったくそんな古い文化への興味なんてみじんも周りに感じさせないように生きてる、というのがえどわーどさん。(22歳/男性。推しは岡田有希子。)

家族もいわゆるお堅い人たちで、一切言ってないとのこと。

まわりの友人たちがカラオケ行きたい気配を醸し出し始めると「ビリヤードいこうぜ」とか言ってごまかすらしい。もしカラオケに行くことになった場合は、特に興味のない最近の歌をうたう。
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あとは心を開いた親友や家族にはその話をするという蒼いフォトグラフさん(20歳/男性)は、あまりにその話ばかりするため、80年代から来たという設定になってるらしい。
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参加者みんなに言えることだが、同世代の友だちとのカラオケでよほど歌いたい曲を歌えてないせいか、

このオフ会については
「すばらしすぎる」
「画期的なシステム」
「歌いたい曲を歌って、反応があるなんて」
などなど、終始感激がにじみ出てた。

40〜50代と話が合う

そこそこ「あるある」だったのが、「友だちの親と仲良くなれる率が高い!」だ。中には友だちの親のほうからカラオケに誘われてる人もいた。

基本的に「40〜50代との会話にはまず困ることはない」ようなのだが、それなら社会に出たときにかわいがられるのでは……!?

……と思ったが、社会に出るまで10年近くある場合、そのとき「50〜60代」ってことになる。となると、通じる人が社内でも少ない……ということに。
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そもそも参加者のみなさんは、90年代の歌は知らないのだろうか。

どうやら
「90年代前半だと、まだバブルっぽさが残ってるので聴くことがある」
「93年ぐらいまでなら……」
「90年代後半になるとわからない」

という声が多い。

ついでに、「93年ごろを過ぎると昔っぽさが薄れる」という話も出て、それは確かにわかるけど、当時生まれてない人たちでも思うらしい……というのに驚いた。

夢の時代へのあこがれ

みんな「生まれる時代を間違えた」とか言う。昭和は「景気がよくて明るい夢の時代」に感じるらしい。

今みたいに人によって娯楽や興味がそんなにバラバラな訳じゃなく、テレビで人気のものをみんなが知ってて、みんなが同じベクトルを向いてる感じが良いらしい。
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あとは「生まれたときから日本が暗いんです!」と口々に言われ、そうかーと思いつつ聞いてたが、そういや私(80年代初頭うまれ)だって明るいときは無意識に生きてたのでよく知らない。
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上でインタビューしたのの子さん(高2)は「今はどこにも存在しない高嶺の花に憧れてるみたいなイメージを持ってもらえるとうれしい」とも言っていた。

「古いものが好き」という感覚は分かるが、そんな「夢の時代」のような、時代へのあこがれについてなんて考えたこともなんてなかった。

この「昭和アイドル」に限らず、「自分の趣味が同世代の趣味と合わない人」ってきっとほかにもいるんだろうなー。

東京だけで、こんなにささっと10人ぐらい集まってしまうってことは、きっと全国探せばもっといっぱいいるんだろうと思う。学生のうちにぜひ全国行脚を!
レコードも見せてもらった
レコードも見せてもらった

生まれた時代を間違えた人募集

このオフ会の若者たちのように
「同年代の友人とは趣味の話ができない」
「自分の世代と自分の趣味にズレがある」

……というそこのあなた、その思いのたけをここにぶつけてみませんか。

「年齢・趣味について・どう合わないか」などを、詳細が分かるように記入し、投稿お願いします。
ある程度まとまったらコーナーになります。
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