特集 2017年4月30日
 

書き出し小説大賞 第121回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。 著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。
> 個人サイト バカドリルHP 天久聖一ツイッター

GWである。GWになると毎年GWとはなんの略かというネタを考えてしまう。今年はG(ギョウ虫)W(わんさか)にしておいきます。
それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しょう。

書き出し自由部門

「めでたしめでたし」から二年後のある日。
大伴
クビになった帰り、近道に気づいた。
もずく酢
傘に何かが落ちた。雨は降っていない。
ふじーよしたか
校庭でつむじ風を追いかけている幽子は今年も卒業しなかった。
けー
テキスタイル科の学生と、パターンのないキスをする。
あや幹部
プエルトリコ側から言わせれば、そっちこそ南米だろって感じだ。
あや幹
大学やめたって言ったら、フルCG化した父さんはどんな顔するだろう。
Mch
年金のことが頭をよぎったら、そこで冒険は終わりだ。
Mch
女はコインが出なくなるまで、俺を殴り続けた。
義ん母
死んだジジイの書いた文字が今も生々しい。
xissa
大根リレーのアンカーは、左手のおろし金をもう一度強く握り直し、前走者の到着を待っていた。
菅原 aka $UZY
「タネも仕掛けもありません」という言葉は、箱に入った僕に言っているような気がした。
terayo
音を立てると、スープに電流が流れます。
くのゐち
そろそろ、運命も妥協案を出す頃だろう。
ぬこ助
行列が進むにつれ、ああ、ほんとうに財布を忘れて家を出てきたのだと実感する。
井沢
手品師と占い師が睨み合ったまま、空調の音だけが廻り続けている。
風馬牛
一生好きだ。吐き気がするよ。
豆ん棒
寸評。●大伴氏「めでたしめでたし〜」マーベールヒーローの映画はだいたいこんな感じ。●ふじーよしたか氏「傘になにか落ちた〜」木の実ならトトロっぽい世界観。垂らしたツバならただのイタズラ。●あや幹部氏「テキスタイル科の〜」これもBL(美大系LOVE)。●Mch氏「年金のことが〜」壺やタンスから年金を見つける勇者も見てみたい気がする。●菅原 aka $UZY氏「大根リレーのアンカー〜」これは走りながら大根おろし切ったらゴールという解釈でいいのかな?バラエティ番組とかで実際見てみたい。●くのゐち氏「音を立てると〜」太宰の『斜陽』はお母さまがスープを吸う書き出しからはじまるけど、こんな設定だったら面白いと思う。●井沢氏「行列が進むに〜」じゃあなぜ並ぶ!?●豆ん棒氏「一生好きだ〜」若さゆえの『痛さ』も感じるけどそこがなんとも言えずキュンとする。

続いては規定部門。今回のモチーフは『飲み屋』であった。お酒にピッタリのおつまみ小説をどうぞ。

書き出し規定部門・モチーフ「飲み屋」

居酒屋にいたはずなのだが、今は煙突の上にいる。
morin
頼んだ枝豆に続いてお通しの枝豆が出てきた。
Mch
自分がカウンターに突っ伏しているのを上から見ている。
きょうこ
「お客さん、起きてください。もう開店時間ですよ」
g-udon
やたら発色の良い凍った明太子が、薄いお湯割に合った。
g-udon
彼のカミングアウトは、隣席の乾杯にかき消された。
タクタクさん
泣きながら炊飯器を抱きしめることが出来るバーがあった。
もんぜん
チャージ料金で揉めに揉めた。
チチカステナン号
常連と土手で飲む。
正夢の3人目
また部長の「仇で恩を釣る話」が始まった。
東ことり
自分の名を付けた焼き鳥屋を全焼させたのは一度だけじゃない。
マークパン助
やってるかい?って暖簾出てるでしょうが。
くずきり
酒が売り切れた飲み屋に、極彩色の鳥が迷い込んだ。
松っこ
ままごとなのだろうがなんかスナックっぽい。
xissa
「最初にお揉み物のご注文を」
「生」
「えっ」
「えっ」
suzukishika
翌日飲み屋から届いたのは、綺麗にアイロンがけされた「スケベ代表」のタスキだった。
ぴすとる
居酒屋にしらふでいる僕に「あなたにはそういうズルいところがある」と言った女がいる。
ミミズグチュグチュ
僕はジョッキを沢山持てる先輩が苦手だ。
ヘリコプター
ここには蛇酒しかない。茶柱のかわりに鱗が立つ。
木乃机
「あちらのお客さまからです」と伝票が滑り込んできた。
セッドあとむ
酔っぱらいだけが私に優しかった。
トミ子
それでもみんな家には帰っている。
まじいい
寸評。●morin氏「居酒屋にいたはず〜」正体はサンタかもしれない。●Mch氏「頼んだ枝豆に〜」せめてお通しが先であってほしかった……●g-udo氏「やたら発色のいい〜」読むと試してくなる組み合わせ!●正夢の3人目氏「常連と土手で〜」店主側の視点がいい。花見に行くと明らかに飲み屋のオフ会だなっていうオッサンたちがいるよね、ちょっとうらやましい。●東ことり氏「また部長の〜」恩を仇で返す、と海老で鯛を釣るのミックス。矛盾してるけどあり得そう。●suzukishika氏「最初にお揉み物〜」居酒屋イメクラ?●ぴすとる氏「翌日飲み屋から〜」次回のスケベサミットはいつ?●セッドあとむ氏「あちらのお客さま〜」キザな食い逃げ。●まじいい氏「それでもみんな〜」全員履き物を間違えてるけどね。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「コンピュータゲーム」
次回のテーマはコンピュータゲーム。本当は潔くゲームとしたかったが、どこまでも拡大解釈できる言葉なのでコンピュータゲームに限らせてもらった。懐かしのファミコンからいまのアプリものまで、誰にでもひとつくらいは思い入れのあるゲームがあるのではないだろうか。それらを題材にするのもいいし、架空のゲームでもいい。また普段の小説では馴染みのないゲーム用語も効果的に使えるだろう。最近ネットをみると『10連ガチャ』とか『石』など、知らない人にはぜんぜん分からない用語がある。そういう用語が平然と使われる作品も(分からないなりに)面白いかもしれない。いつものテーマとは毛色の違う作品を期待する。締め切りは5月12日正午、発表は5月14日を予定している。下記の投稿フォームから応募して欲しい。力作待ってます!
最終選考通過者

prefab/君と僕と雨/くずきり/ウウタルレロ/八重樫/住民パワー/なおい/トモマリ/ 高田/茂具田/
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